「サッカー文化フォーラム」夢追い人のブログ

1993年のJリーグ誕生で芽生えた日本の「サッカー文化」。映像・活字等で記録されている歴史を100年先まで繋ぎ伝えます。

7-0の大勝、バルサとU-16日本代表、メッシと久保クン

2016年09月17日 16時20分08秒 | サッカー選手応援
たまたま7-0という同じスコアの試合を2つテレビ観戦しました。数日前始まった16-17欧州チャンピオンズリーグと、U-16アジア選手権の試合です。どちらも初戦でした。

勝ったバルセロナとU-16日本代表、2つの試合に共通していたのは終盤まで攻撃の手をゆるめず、まんべんなく点を取り続けたことです。こういう試合は、応援している側にとって、点差もさることながら、試合全体を通しての満足度が非常に高くなります。

しかも、両チームともスター選手が期待通りに活躍してくれましたから、こたえられません。

どういう試合だったか、試合経過の詳細はネット上の記事に譲りますが、バルセロナvsセルティック戦は、いわゆるMSNと呼ばれているメッシ、スアレス、ネイマールの3人、ほとんどのゴールに誰か2人が絡むコンビぶりでした。

試合の実況を担当した倉敷保雄アナウンサーと、解説の福田正博さんが「今日のベストゴール」選びをやっていましたが、それぞれ形の違う、どれも見ごたえのあるゴールでした。

グループリーグとはいえ、チャンピオンズリーグの試合でこれだけの大差がつくことは、そんなにないと思います。

とかく力の差があるチーム同士の試合では、弱いと目されるチームがアウェーで戦えば、いわゆるドン引き、ゴール前をガチガチに固めて、うまく行けば0-0、悪くても最少失点に収めようとするチームが多い中、セルティックが、そういう戦術をとらずに正攻法で戦いを挑んできたことも結果として、こういう大差がついた要因ではあります。

そういうセルティックを、放送の中でお二人は「勇気ある戦いをしました」と評しました。ある意味、相手にも恵まれないと、こういう試合にはお目にかかれないということでしょうか。

もう一つの7-0、インドで開催されているU-16アジア選手権のグループリーグ初戦、日本代表の相手はベトナム。

前回のアジア選手権ではベスト8で敗退したため、U-17世界選手権への出場権を逃しているとかで、今大会はベスト4まで進み世界選手権への出場権を獲得することが目標とのことです。

今大会の日本代表には、何といってもチーム最年少でありながら注目度ナンバーワンの久保建英クンがいます。カテゴリー別の公式大会に初見参で、いわば、そのベールを脱ぐ大会になります。

そもそも私は名前の読み方を、いままで調べもせず、そのまま「くぼ けんえいクン」と呼んでいましたが、今回おかげさまで「たけふさクン」であることを知りました。

その久保クン、いきなりの見事なデビューでした。右サイドハーフでスタメン出場を果たした久保クン、前半16分、ペナルティエリアの近くで得たフリーキックを、得意の左足でゴール右サイドネット奥に突き刺したのです。

大切な初戦の先制点を叩き出したのが、注目のチーム最年少、しかもフリーキックによるゴールでしたから、この一撃でチームのエース的立場をも手中にしたといえます。

久保くんは、試合後の取材で「試合前に『相手の壁が飛ばないから、あんまりコースを狙いすぎずにしっかり強くボール蹴れば入るよ』っていうのをアドバイスもらっていた」と答えたそうです。(フットボールチャンネル掲載、元川悦子氏レポートより)

NHK-BSの放送を解説された戸田和幸さんは「蹴る前のたたずまいからにして(決まりそうな)雰囲気を感じさせましたね」「自分の技術に対する自信からくる余裕を持っています」とコメントしていました。

後半にはペナルティエリアの中、やや左側でボールを受けると軽いフェイクで目の前のDFをかわしエンドラインぎりぎりまでボールを持ち出すと、角度のないところからシュートを放ち、これも右サイドネットに決めています。

これについても試合後に「最初はクロスを上げてみようかと思ったけど、GKが前に出ているのが見えて、『じゃあ、逆を狙ってみようか』と考えた」と答えたそうです。(フットボールチャンネル掲載、元川悦子氏レポートより)

確かに画像でも、GKが少し前に出ていたため、久保クンから見てGKの左側が空いており、久保クンは、角度がないながらもそれを見切って余裕を持ってシュートしたのがわかります。

引用させていただいたフットボールチャンネルサイトの元川さんのレポートは「最年少・久保建英が見せた老獪さ。本人は不満足も卓越したセンスで攻撃陣けん引」という見出しを打っていました。

それぞれのシュチュエーションで、キチンとした判断でプレーをしていることを「老獪さ」と表現したわけです。試合全体としては、決して上出来ではなかったようで本人も「今回は初戦だったんですけど、次はもう言い訳できないんで、もっと余裕を持ってしっかりプレーしたいと思います」と話したそうです。(フットボールチャンネル掲載、元川悦子氏レポートより)

わたしがテレビ観戦して、さらにネット上のレポート記事を読んで、痛切に感じたことは「これほどのサッカーセンス」を持った子を、わずか10歳の段階で発掘してバルセロナに連れ帰る、この「目利き力」とはどういうことなのだろう、ということです。

ボール扱いがいいとか、視野が広そうだとかは10歳前後になれば一つの才能として表に出てきますから、峻別できそうですが、状況をよく把握できる選手かどうか、状況に応じて余裕を持って判断を下せる選手かどうかなど、いわゆるサッカーセンスに優れているかどうかを、わずか10歳前後の子供のプレーを見ただけで見分けられるというのは、一体どういうスカウト力なのだろう、ということです。

しかもスペイン国内ならまだしも、遠く東洋の国の一少年を見極めて、バルセロナのカンテラに連れていく、これまでの私の感覚では、ダメ元でいいから連れていって「ハズレ」ならさっさと帰す式の選抜方法なのだろうぐらいに思っていたのですが、久保クンのこのプレーぶりを見ると、メッシを発掘しているバルセロナの「目利き力」というのはハンパない力量なのだと思い知ります。

メッシ選手も、かつて少年時代にアルゼンチンを離れ、バルセロナのカンテラで成長して現在のスーパーな選手に育ったことはよく知られている話ですし、我が日本の久保クンも「めざせメッシ」と応援したくなる道を歩んでいます。

これまで、欧州などのビッグクラブの日本でのセレクションの模様がテレビのドキュメンタリー番組で紹介されたことがあったり、サッカー専門誌の特集記事で紹介されたことがあって、見たり読んだりしてきました。

その中で、クラブ側のセレクションの基準に「たとえゴール前のスクランブルの場面でも動じないで一瞬の判断ができる子」だとか「相手チームの特徴を頭に入れて対応できるような子」であるかどうかを見極めるといった要素があるのかどうかについて、あまり意識したことがありません。

メッシ選手も久保選手も決して上背は大きくありませんが、状況判断の確かさ、あわてないでプレーできるメンタル面での落ち着きといった点では共通するものを感じます。そういう選手が優れたテクニックと当たり負けしない体の強さを身に着けた時、ホレボレするようなプレーを見せてくれるのかも知れません。

ひるがえって国内でのセレクションはどうでしょう。セレクションの時、視野の広さや、基本技術の確かさを重視している話はよく聞きますが、メンタル面、特にプレッシャーがかかった時の落ち着き、すばやい判断が必要な時の的確な判断力といった資質を、どの程度重視しているのか、気になるところです。
(以上23行は、一旦投稿したあとに加筆しました)

さて、ベトナム戦ですが、試合終了間際、久保クンは相手選手との接触プレーでどこかを痛めたらしくタンカでピッチの外に運ばれたまま試合を終えました。この大切な宝がケガで欠場を余儀なくされたらと、心配でネットを確認しましたら本人は「よくある接触プレーなので全然大丈夫です」と語ったそうです。(フットボールチャンネル掲載、元川悦子氏レポートより)

これから先、心配の一番がケガです。過去に、1994年のカズ選手(ジェノア移籍のセリエA開幕戦、ACミラン・バレージ選手との激突による離脱)、1996年の小倉隆史選手(アトランタ五輪代表合宿練習中のケガによる離脱)、1999年の小野伸二選手(シドニーオリンピックアジア一次予選、対フィリピン戦で後方からのタックルを受け離脱)など、これからという時にケガをしてしまい、その後のサッカー人生の軌道をスローダウンしてしまった才能豊かな選手のケガが思い起こされます。

これらの選手のケガは、日本代表ひいては日本サッカー全体の成果にも影響が出てしまったと残念でなりません。

とりあえずは、この大会、久保選手がケガなく活躍してくれて、ベスト4まで勝ち上がり世界大会への楽しみを私たちにもおすそ分けしてくれればと思います。

初戦の結果、久保クンばかりが注目を浴びる形になりましたが、7-0の大勝をもたらしたチームメイトには、なかなかの好選手が揃っているようです。中田英寿選手の世代、小野伸二選手の世代、宇佐美貴史の世代のように、チームに存在する「飛び抜けた才能」久保クンの効果で周りも成長していって欲しいものです。

久保クンと同じFC東京のユースチームに所属する今回のU-16メンバー平川怜クンという選手も、久保クンと一緒にFC東京のトップチームに引き上げられたとのことです。もしや、身近にスーパーな選手がいると周りも成長が加速する好例なのかも知れません。

バルセロナのメッシとU-16日本代表の久保クン、奇しくも7-0の大勝劇を演じたことで見えた共通点、サッカーの世界において、日本と世界の距離は少しづつ縮まっているのかも知れません。

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