中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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人財の価値を測る

2018年05月06日 | コンサルティング

当社は人財ではなく人材を社名に使っています。「じんざい」には4つあり、一番優れているのが人財、すなわち会社の宝のような人、次が人材でごく普通に仕事をこなす人、その次の人在はいるだけで役に立っていない人、最後の人罪は会社に損失をもたらす罪な人、といった「分類」が知られています。

当社の社名を、会社の宝を育てる「人財育成社」としたらどうかと言われたことがあります。しかし、何度かブログでも書いていますが、当社は人を「財」として考えることはしません。

財とは金銭的な価値を意味しています。財務諸表はまさに会社の財産を表わす書類です。財務諸表のひとつであり、最も重要な書類である貸借対照表(バランスシート)を見てみましょう。貸借対照表の借方(左側)は会社が所有している資産、つまり財産のリストになっています。一番上には現金・預金があり、下に行くにしたがって棚卸資産、固定資産などとなっています。

言うまでもありませんがそこに「人財」はありません。なぜなら人は会社の所有物ではないからです。「貸借対照表になくても優秀な人材は会社の財産である」という考え方もありますが、どうもピンときません。まあ、一種の簿外資産(ちょっと粉飾のにおいがします)なのかもしれません。

さて、ここで思考実験をしてみます。人を資産として計上しても良いとしましょう。「それは奴隷ではないか」とおっしゃるかもしれません。奴隷はさすがにまずいので、たとえば社員を一定期間義務的な契約で縛ることが可能だとします。年俸1千万円で2年間働くことを義務付け、その間転職はできないといった契約です。もちろん憲法違反ですが、契約をするかしないかは自由とします。

こうした制度があれば、人を財として考えることが容易になります。先の例で言えば、年俸1千万円×2年=2千万円の契約をすることは、2千万円の設備投資をするのと同じことになります。毎月の給与は減価償却費のように費用化していきます。また、税金、社会保険については考えないことにします(経理担当者や税理士さんからツッコミが入ると思いますが、ご容赦ください)。

これで人は投資の対象となり、人的資産として貸借対照表に乗せることができます。その際、人財には2つのタイプを設定すると良いでしょう。ひとつは「プロジェクト」タイプの人財です。収益を確保することが目的の人財で、例えばセールス担当者のような「稼ぎ」がはっきりと見込める人です。もうひとつは「固定資産」タイプの人財です。建物や事務機器のように、直接収益を上げることはありませんが、企業活動に不可欠な人財です。

人財が「プロジェクト」タイプであれば、会社は契約する際、期間中にその人財がもたらすであろうキャッシュフローを予測します。どのように計算するかはファイナンス理論の領域ですので省きます(当社はファイナンス理論や設備投資の経済性の研修も行っていますので、ご興味のある方はご連絡ください)。

一般に、人財についての考え方は非常にあいまいで、いわゆる「仕事のできる人」を総称して言っているようです。しかし、財というからにはどのくらいの金銭的価値があるのか、経営者ならこの例のように計算するべきでしょう。

しかし、人の能力は測ることが困難です。1人の人間が会社を大きく変えることもあれば、つぶしてしまうこともあります。人を育てることはあらゆる可能性を含んだ仕事です。そして、人の育成は1つの小さな苗を1本の大きな木に育てるように、気の長い作業の積み重ねが必要です。

人材育成という表現の正しさを再認識した次第です。

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