サンタクロースのような営業をする人がいます。お客様に喜んでもらおうと、「与える」ことに喜びを感じるのです。お客様が「試供品がほしい」と言えば気前よく差し出したり、「使ってみたい」という希望があればどんなに高価な製品でも無償で貸し出したりします。
「お客様の要望を満たせば必ず売上げにつながります」とか「多少出費はかさみますが”損して得取れ”ですよ」などと言います。お客様性善説と言えるのかもしれません。
さて、そんな「サンタクロースな」営業パーソンですが、意外と営業成績はぱっとしません。決して悪いというのではないのですが、上位ではないのです。それが私が過去に見てきた「営業サンタさん」たちでした。
一方、お客様は常にずるいことばかり考えていて、隙あらば「食い逃げ」しようとしているという、お客様性悪説に立つ営業パーソンはというと、実はこちらも成績はいまひとつです。
私は個人相手の営業(BtoC)のことはよく知らないので、あくまでも企業相手(BtoB)に限ってのことですが、単にモノやサービスを与えるだけの営業は「百害あって一利なし」だと思っています。
誤解しないで頂きたいのですが、「与える」気持ちで営業活動をすることが間違っていると言っているわけではありません。お客様が喜ぶからといって、サンタクロースのようにモノやサービスを一方的にばら撒くことが間違いなのです。
お客様である発注担当者は企業の「代理人」です。個人の損得で購入を決めることはありません。もしあれば背任行為です。
さらに、試供品や製品の貸し出しによってお客様の企業が正しい評価を下せるとは限りません。お客様自身が自社の問題点を誤解していて、間違ったソリューションを求めている可能性もあるからです。
真の問題点は何か、それを解決するために自社の商品やサービスが本当に役に立つのか、お客様と一緒になって考えることが営業パーソンには必要です。
ですから、営業パーソンとお客様である発注担当者は、(与えたり与えられたりする)サンタクロースと子供のような関係ではなく、同じサイドに立って仕事をする共同作業者なのです。
与えるだけのサンタクロースなんて要りません。
(人材育成社)