最近「出世したくない若者が増えている」という話を聞きます。確かに、若手社員の研修のときに「給料がちょっとしか上がらないのに責任が重くなるのは嫌だ」、「プライベートを重視しているので、仕事はあまりしたくない」、「残業手当もつかないのに遅くまで仕事をしている上司を見ると可哀そうになる」という声を耳にします。
ある転職サイトが行ったアンケート※によれば、会社員の51%が「出世をしたい」と回答しています。その理由として一番多かったのは「給料が上がるから」でした。一方「出世にはこだわらない」と回答した残りの人たちは、「給料の見返りが小さいから」を一番に挙げています。
このアンケートだけでは判断はできませんが、「給与水準」が出世に対する考え方を決めているように見えます。出世しても「自身の成長」や「仕事から得られる充実感」は確実に手に入るとは限りませんが、給与だけは確実に上がります。
出世はコスパ(コスト・パフォーマンス)の問題のようです。人は不確実性を回避する傾向がありますから、これは合理的な考え方と言えます。
日本企業において終身雇用が崩壊しつつあるとすれば、仕事と給与をリンクした成果主義の方がより良いシステムであるように思えます。私はどちらかといえば、終身雇用制度を支持していますが、転職による労働力の移動が今よりも多くなってくれば、成果主義の方が有効に機能するでしょう。
さて、東洋経済の「上場企業版!平均年収が高い500社」※を見ると、金融や商社、放送局などが軒並み上位を占めています。多くは就職人気ランキングの上位であり、転職市場でも同様に人気があります。そして、偏見かもしれませんが「出世したい人」が多く集まっている会社のようです。
また、製造業はあまり多くありません。「技術立国」、「ものつくりで世界一」の日本ですが、製造業には「出世したくない」人が多いのでしょうか。(製造業では、設備投資と長期雇用の人材が必要である・・・という議論もあるとは思いますが、ここでは省略いたします)
先のアンケートと合わせて考えると、出世して高給を得たい人と、そう思わない人に二分化しているように思います。
結論めいたことを言いますと、「出世したくない若者が増えている」というのは何も今に限ったことではなく、個人の意見や考え方がネットを通じて広く拡散できるようになったため、そうした声が目立つようになったのではないでしょうか。
「出世したくない若者」については、これからも調べてみたいと思います。
(人材育成社)