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研修会場のS席に座ってもらうには

2016年02月24日 | コンサルティング

「前の席が空いていますよ」

事前に席が決められてない講演や研修などで、会場に来た人にこのように声をかけても、ほとんどの人は会場前方のいわゆるS席ではなく、真中や後ろの方のA席やB席に座ります。

たまに席を探して周囲を見回している人に、「ここが空いていますよ」と前列を案内すると、ためらいつつ「仕方がない」というような表情でS席に座る人もいらっしゃいます。

このようになかなかS席が埋まらない現象は、有料の講演会や研修であっても起こります。

コンサートや舞台などでは積極的にS席を希望する人であっても、いざ講演や研修などで受講者という立場になると、途端に後方の席を希望するのはなぜなのでしょうか?

理由は人それぞれ、いろいろだろうと思います。たとえば学生時代、教室の前列に座っていて先生に指された経験があったり、前列だと睡魔が襲ってきてうとうとした時に目立ってしまうのではないかと心配したり、あるいは途中で退席したいからなどなど。さらには、周囲からやる気があると思われると困るなどと考える人もいるでしょう。

以前は、これは日本人特有のもの、日本ならではの風習のようなものなのではと思っていたのですが、実は研修などで出会う外国人の受講者にも同様の傾向があります。最初は日本人受講者に合わせているのかなと思って彼らに質問したところ、アメリカやイギリスでも同様の傾向とのことでした。

講師の側からすると、よほど大きな会場でない限りは特に前列に座っている人から質問するということはあまりないですし、パワーポイントなどを使う場合には会場の大きさに合わせて文字の大きさをできる限り調整はしても、前方の席の方が見やすいことは確かです。私は前の方の席が空いている場合には「前の席の方が断然お得ですよ」とお奨めしています。

ところで、先日あるテレビ番組で高速道路のサービスエリアの女性トイレの混雑をある方法で解消した例が紹介されていました。その方法とは、照明を工夫することだったのです。

番組では、トイレの奥の方の個室が空いているにもかかわらず、手前の個室から使う人が多いために、入口近くの個室に待ち行列ができ、その結果トイレが混雑してしまうことを説明していました。そこでトイレの奥の方の照明を明るくし、反対に手前側を暗くしたところ奥にある個室を使うようになり、混雑が解消されたとのことです。つまり、電球がトイレの混雑を解消したわけですが、これはサバンナ効果と呼ばれるものです。

サバンナ効果とは、木々が生い茂る森の中で迷った人が、森の外に広がる日差しが降り注ぐ明るい草原(サバンナ)を見て、暗い森から草原をめがけて走り出したというたとえから名付けられたそうです。

人には暗い所から明るい所へは入りやすく、明るい所から暗い所には入りにくいという性質があるということでしょう。確かに長いトンネルを走っている時に、走る先に光が見えると、「ああ、ようやくトンネルの終点だな」とホッとした気持ちになるのも、まさにこのサバンナ効果なのでしょう。実はこのサバンナ効果、住宅をはじめ店舗づくりなどにおいて積極的に取り入れられているようです。

さて、本日のタイトルの解決策ですが、講演や研修会場などでも前方の席を明るくして後方の席を暗くすれば、S席である前方の席から埋まるようになるのかもしれません。

はたしてサバンナ効果が証明されるのか、状況が許せばぜひ一度トライしたいと思っています。

(人材育成社)