パオと高床

あこがれの移動と定住

ケン・リュウ「紙の動物園」

2022-01-15 07:57:58 | 海外・小説
『Arc ベスト・オブ・ケン・リュウ』に収録の短編「紙の動物園」。2011年発表の出世作。

母が、クリスマスギフトの包装紙を折って作った動物に息を吹き込むと、動物は動きだす。

 母さんの折り紙は特別だった。母さんが折り紙に息を吹きこむと、
 折り紙は母さんの息をわかちあい、母さんの命をもらって動くのだ。
 母さんの魔法だった。

中国人の母とアメリカ人の父の間に生まれた「ぼく」。幼い頃の世界は、大人になるにつれて齟齬を生みだす。
作者のケン・リュウは、1976年中国蘭州の生まれ。街の中央を黄河が流れる都市だ。蘭州ラーメンが美味しかった。
で、11歳の時に家族とともにアメリカに移住したと、略歴に書かれている。

小説には、英語を話せない母とアメリカ社会の中で生きていく「ぼく」とのズレが書き込まれていく。
それが紙の動物たちとの交流と離反を通して描かれる。
小さな世界と大きな世界の違和。何がささやかな生活に亀裂を入れ、そのわずかな亀裂がかなしみをもたらすのか。
読み終えてそんなことを考えた。ヒューゴ—賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞の3冠受賞作と紹介されている。
じわりかなしい小説だった。
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