パオと高床

あこがれの移動と定住

三島由紀夫『潮騒』(新潮文庫)

2006-05-27 20:54:10 | 国内・小説
言わずとしれた有名作品。○○文庫の百冊とかの定番。
それにしても、この人は言葉で勝負しているホントに凄い作家だ。ストーリーテラーでないわけではない。ストーリーは作る。また、観念性がないわけでもない。観念を見事に具象化する。だが、例えば、優れた劇作家がそうであるように、あるお決まりの形の中で見事に場面を言葉化し、そこに溢れるような豊かさを感じさせることができるのだ。
ここからここへ到ると決まった道筋を大きく膨らます創造力。場面である島の描写、登場人物の動く空間の表現、あざとさであるにもかかわらずそこに現れる作り物が持つリアリティ、一貫して作り出そうとする世界の統一性など、小説が、そこに書かれた言葉が作り出す小説世界で勝負しているのだ。現代文学が現代文学としてあるための意匠が、古典を衣装飾りしてしまう。


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