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地下500メートルの巨大秘密基地に潜入(神流川発電所訪問記②)

2024年08月12日 | 土木構造物・土木遺産


東京電力「神流川(かんながわ)発電所」は、群馬県上野村の山深い場所にある。御巣鷹山の山中、地下500メートル、そこには巨大空間が存在する。上野村が東京電力と協力して開催している見学ツアーに申し込み潜入に成功した。
神流川発電所の1号機は、2005年(平成17年)に運転開始。翌年2号機が稼働し、47万キロワット×2基、最大94万キロワットを発電する日本でも屈指の純揚水式水力発電所である。上部ダムは南相木ダム、下部ダムは上野ダムである。
分水嶺をまたいで、全長6,000メートル強を地中の導水路・水圧管路・放水路で結び、この間落差653メートルを利用して発電電動機6基を設置し、最大282万キロワットの発電を行う計画である。これが完成すれば、世界最大級の揚水式発電となるが、現在そのうち2基が稼働中ということである。(見学ツアー時は、1機がメンテナンスのため運転停止中だった。)



見学通路入り口から、排気用の機材が設置されているスペースを抜けると、突如広がる巨大空間に発電設備がある。天井には、無数のアンカーボルト(高張力鋼)で補強されているが(写真下)、一般者が立ち入る場所でないことから、トンネルを含めてコンクリートは打ちっ放し。確かに秘密基地の様相を極めている。
ここには日本初の技術がいくつかある。勾配48度の水圧管路の掘削にはトンネルボーリングマシーン(TBM)を採用し、斜坑を下から一気に掘削。また、水車のスプリッタランナ(立軸形フランシス水車の翼に長短を設けて出力増を可能にしたもの)を東芝と東京電力が共同開発したものが採用されている。
見学時、作業用クレーンが1号機と2号機の間にあり、多少視界を妨げているところはあったが、メンテナンス中ということもあって取り出された貴重な水車ランナの部分を僅かであるが見ることができた(写真下)。これに関心を示した見学者は私以外にはいなかったようだがー。



注目は世界最大級の揚水式発電。実に大掛かりなものであり、早くから世界最大級を謳っていた東京電力だが、その点を同行説明にあたってくれた係員に尋ねてみたが、3号機以降の設置予定は具体化していないようだ。蓄電装置の進化によりここまで大掛かりなものがコスト的にいかがなものか!ということなのであろうか?
大規模蓄電装置がどのように改良を遂げていて、メリット・デメリットがあるかないかは自分には分からないが、揚水式水力発電は自然を利用した再生可能エネルギーであり、しかも3号機・4号機用の水圧管路もすでに完成しているというのに、電力需要が切迫している中で何を躊躇しているのであろう?
東京電力では、神流川発電所の付帯施設として設置したPR施設を福島第一原発の事故後廃止した。同じく、東京電力の揚水式発電を行う葛野川発電所(こちらは最大出力120万キロワット)のPR館も然り。いまこそ揚水式発電をアピールする時だと思うのだが。(続く)



(※神流川発電所は、御巣鷹山の地下にあるが、日航機事故の現場とされる「御巣鷹の尾根」は発電所より南1.7キロほどの谷を隔てた場所であり、事故現場の地下に発電所があるわけではない。実際の事故現場は、正式には「高天原山(たかまがはらやま)」の中の一つの尾根であり、当時、墜落現場となった場所を特定するために当時の上野村村長が命名したとされる。この書き込みが、図らずも39年前の事故当日になったことは偶然であるが、事故犠牲者の冥福を祈るとともに、今回上野村にお世話になり、事故当時救助活動で尽力された村民の方々に敬意を表したい。)
(※葛野川発電所(山梨県)については、規制区域があるので紹介できるかどうかわからないが、J-POWERや東京電力その他の揚水式を含む水力発電施設(ダムや概要など)についても、順次紹介していきたい。)


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