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梅雨空に「九条守れ」の女性デモ  さいたま市

2017年10月23日 11時47分05秒 | 文化・美術・文学・音楽


何の変哲もない俳句のように見えるが、14年6月に詠まれたこの句の「公民館だより」への掲載をめぐってさいたま市と作者の女性(77)と支援する市民有志の双方が、さいたま地裁に続いて、東京高裁さらに最高裁で争い、最高裁は18年12月下旬、「不掲載の違法性を認める一方で、掲載は命じない」という女性側を支持する判断を下した。

これを受けて市の細田真由美教育長は「義務はないとしても作者の気持ちに配慮する」と19年2月1日発行の「公民館便り」に掲載した。

各新聞の報道を読むと、さいたま市大宮区の三橋公民館には句会があった。句会が選出した秀句は3年8か月にわたり、毎月、この公民館が発行する公民館だよりに掲載されていた。

この句を選出したところ、公民館は「世論を二分する題材を扱っている」「公民館の考えであると誤解を招く」と掲載を拒否し、公民館便りの俳句コーナーも閉鎖した。

女性側は、不掲載の撤回を求める請願をしたものの、市側は「公平・中立であるべき」と掲載拒否を続けたため、女性は1年後の15年6月、市を相手取りさいたま地裁に、「表現の自由を保障した憲法21条などに違反する」「掲載を期待する権利を侵害された」などとして、その掲載と慰謝料200万円余の支払いを求めた国家賠償請求訴訟を起こした。

口頭弁論は、同年9月から始まり、原告側は、表現の自由だけでなく、憲法と主に成人に対する教育活動について定めた社会教育法を根拠に、句会の活動と、成果を発表する場である掲載が、行政によって阻害されたと主張した。

市側は「公民館だよりは公民館側に発行、編集の権限がある」と請求棄却を求めていた。

さいたま地裁は17年10月13日、「思想や信条を理由に俳句を掲載しないという不公正な取り扱いをしたのは国家賠償法上、違反」として、市に5万円の賠償を命じた。

不掲載が発覚してから3年4か月、提訴以来2年4か月経っていた。

裁判長は俳句には句会や作者の名が併記されるので「公民館が俳句と同じ立場にあるとは考えがたい」「公民館の中立性や公平性を害するとは言えない」と判断、女性の思想や信条を理由に不公正な扱いをし、不掲載には正当な理由がないと指摘した。また、掲載への期待を「法的保護に値する人格的利益」と位置づけ、これを侵害したと結論づけた。

一方、表現の自由の侵害に関しては「公民館だよりという表現手段を制限されたに過ぎない」などとして退け、公民館は提出された句をそのまま掲載する義務も負っていないとし、句の掲載請求も認めなかった。

東京高裁は18年5月18日、一審と同じく「思想、信条を理由に不公正な取り扱いをした」と違法性を認めたが、賠償額は5千円に減額、掲載については「公民館は秀句をそのまま掲載する義務はない」と一審判決を支持し、訴えを退けた。

双方は同年5月31日、市側に続いて女性側も最高裁に上告した。

同年12月20日最高裁は、不掲載の判断を違法と認め、市に慰謝料5千円の支払いを認めた高裁判決を支持した。 



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