一本のモミジでこんなに素晴らしい巨木を見たことはない。
12年11月17日に歩き仲間と訪ねた、秩父札所8番の西善寺の境内にあるコミネモミジである。
思わず
小倉山峰の紅葉心あらばいまひとたびの御幸待たなん
百人一首の歌を口ずさみたくなるほどだ。
目の前に武甲山が迫り、削られてはいても、威容を見せる。
埼玉県の指定天然記念物で樹齢約600年。
幹回り3.8、高さ7.2m、枝の幅は南北18.9、東西20.9、傘回り56.3m
というから、高さよりも枝が四方にひろがり、その広がりの輪が大きいことが分かる。初めて見ると圧倒されるほどだ。太い幹はまるで波のようにうねり、風格を感じさせる。(写真)
関東地方では最大のモミジと考えられるという。
西善寺が、「東国花の寺百ヶ寺 埼玉1番」に指定されているのもうなずける。関東1都6県の「花の寺」と称される寺院が集まり、01年にできたもので、モミジは花ではないものの花として扱われている。
11月中旬の紅葉シーズンには、札所参り・御朱印以外の見物人や写真撮影者からそれぞれ100、200円を任意で徴収している。昨年集まった20万円余はコミネモミジ基金として、軽自動車が東北大津波の被害地、気仙沼商工会議所に寄贈された。
このモミジは東北復興にも役立っているわけである。
モミジに興味を持ち始めたのは、前年、川口市安行のモミジ専門植木園「小林もみじ園」を訪ねて以来である。約3千坪に400種余が植わっていて、まるで植物園のようだ。
そのホームページなどを読んでいると、「日本はカエデ科植物の宝庫」だと分かる。
植物学では、モミジもカエデも「カエデ」といい、どちらもカエデ科カエデ属に分類されている。モミジという科も属もない。その区別は主に盆栽や造園業で行われている。
カエデは、カエルの水かきのように葉の切れ込みが浅いので、蛙手(かえるて)から「カエデ」、モミジは「紅葉ず(もみず)」という動詞の古語が転じたもので、葉の切れ込みが深く赤ちゃんの手に似ている。葉は5枚以上。
西善寺のコミネモミジは、数えてみると葉が五つに分かれていた。
日本の代表的なモミジ、イロハモミジ(別名タカオカエデ)は葉が5-9裂するので、イロハモミジの一種なのだろう。
世界的にみてカエデは、数多くの野生種が凝縮したように日本に自生している。紅葉が美しく、モミジとして親しまれているカエデは、中国や朝鮮半島に数種の自生があるだけで、それ以外は日本列島にあるのだそうである。
日本は「さくらの国」であると同時に「モミジの国」なのだ。
もみじは春モミジも含め、日本には原種、園芸品種合わせて400種類以上あるというから驚く。
モミジは秋だけでなく、春の芽吹きも夏の緑葉も真冬の雪化粧も美しい。今度はその季節にも訪ねてみよう。
「花の寺」というだけあって、初夏にはボタン、初秋には約30本のキンモクセイ、さらにムクゲやサルスベリ・節分草・福寿草なども咲き、年間を通じ花を楽しめるというから。
「ぼけ封じの寺」の別名もある。
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