生まれてから一度だけ、お金を払って占いをしてもらったことがある。二十歳の頃だ。渋谷かどこかの道路脇に並ぶ辻占いである。私の質問は、たった一つ「いつ死ぬか」だった。
占い師は、憮然として「60才までは、大丈夫です」私は、心底がっかりした。それ以上は、聞く気にもなれずお金を払って立ち去った。
「大丈夫です」とはふざけている、と思った。早く死にたい私にとって、それは予想外の返答だったのだ。
当時、全く先の見えない自分を悲観していたのは、三島由紀夫や太宰治などの影響があったかもしれない。
シラン(紫蘭)