トシ子さん、おはよう
おはようございます!
今から宿題に答えるわ
え?
宿題って?
アンタきのうワシに宿題を残したやんか
あ
ヒキ
ですか?
そう
ヒキ
ちょっと
あたらしいウエーダー持ってきて
あ
ソコにあります
その棚の横
ホイホイ
じゃあちょっと待っててね
どうよ
なによ
この姿でわからん?
わかりません
じゃあコレ
あ
わかりました!
カエル!
そう
カエル
じゃあ
ヒキガエルだから
ヒキ
なんですか?
いやいやそうじゃなくて
カエルのことをヒキって呼ぶの!
どこで?
え?
知らない?
使わない?
知りませんし使いません
土佐弁でカエルはヒキ
調べてみい
(すぐに検索するトシ子さん)
出てきませんケド!
そんなことないって
調べ方がわるいがよ(笑)
(とオジさんが調べるといくつも出てくる)
ほら
ヒキ
オンビキ
ゴトンビキ
どうよ
あらホントだ
お
コレおもろいわ
「かえる(蛙)の総称」地図(『日本言語地図』)
(『方言の多様性から見る日本語の将来ー標準語ばかりでよいのかー』木部暢子、『学術の動向』2011.5より)
木部暢子さんによると
日本の中央部では「カエル」類が
東北や紀伊半島南部、九州といった地方では
「ビッキ」(ビッキ、ビキタン、ビキタローなど)類が使われてるらしい
あ
そうそうそう言えば
なんです?
またなんか思いついた?
いや
思いついたんじゃなくて
思い出した!
ワシの奥さんが東北の人やって知っちゅうろ?
知ってますよ
秋田の人でしょ?
そう
彼女は今でも
カエルのことをビッキと呼ぶ
ああ
ビッキとヒキ
似てますよね
そうやろ?
で
この地図では
高知県全域と愛媛県南部
それに
山口県のほとんどと広島県西部が
「カエル=ヒキ」圏
っちゅうわけやね
え?
ちょっと待ってくださいよ
それはわかったんですケド
たしか
九州と東北が「ビッキ」というおなじ呼び名だったですよね?
そう
それが何か?
え
だって日本の北と南じゃないですか
全国がすべていっしょだったらわかるけど
北と南だけがいっしょって
不思議じゃないですか?
ちっちっちっ
じゃあオジさんが答えてあげよう
また
すぐそうやって自慢気にする
もう
わるいクセですよ!
じゃあやめる?
いや聞く
よしよし
よい子だ
それはネ
「方言周圏論」って言ってね
柳田国男
知っちゅうろ?
知りません
あ
そう
まあええわ
その柳田国男が『蝸牛考」っていう本で提唱した学説でね
蝸牛っていうのはカタツムリのこと
カタツムリをあらわす方言が
近畿地方ではデデムシ
中部地方や中国地方ではマイマイ
関東地方や四国でカタツムリ
東北地方と九州の一部でツブリ
東北地方北部と九州西部でナメクジ
っていうふうに
近畿地方を中心として同じ言葉が同心円状に分布することをハッケンしてね
ほぉ
それで
うん
日本の中心はむかし京都やったろ?
その京都では
カタツムリという言葉が
古い順から
ナメクジ
ツブリ
カタツムリ
マイマイ
デデムシ
っていうように変化した事実があって
その時系列に比例して
東西南北へ放射状に広がったと推定した
だから?
ああ
わからんかなぁー
じゃあ
木部さんが書いた説明がわかりやすいキ
読むね
******
方言周圏論は、
柳田国男が『蝸牛考』(1930)で提唱した考え方で、
次のようなものである。
①中央で新しい語形が生まれ波紋を描くように周囲へ広がっていく。
②その間に中央では次の新しい語形が生まれ、波紋を描くように広がっていく。
③これを繰り返すうちに、語形が同心円状に分布するようになる。
④従って、周辺部に分布する語形ほど都で古く生まれた語形、中央部に分布する語形ほど新しく生まれた語形である。
******
で
それを絵であらわすと
こうなる
(『方言の日本地図』真田信治より)
ああナルホド
これならわかりやすい
それにしても・・・
なに?
ヒキ
ってやっぱり
やっぱり
なに?
だっさー
え
そうかぁ?
ヒキ
カエルっぽくてええやんか
え~
いいですかぁ~?
と言うてもワシ
ヒキって言わずに
カエルって呼ぶしね
そこはヒキじゃないんか~い
ない
カエル
なんでよ
もーええわ
ー・ー・ー・ー・ー・ー
以上
トシ子さんの疑問に答える(その29)は番外編
「ヒキについて」でした。
ちなみに当社は
12日から16日までが盆休み。
17日から業務を再開いたします。
したがって
当ブログも右へならえで
12日から16日まで休ませていただきます。
ということで
次の更新は17日。
それまでしばしの別れです。
でわ。
(みやうち)
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