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漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「岡コウ」<山の尾根> と 「崗コウ」「綱コウ」「鋼コウ」「剛ゴウ」

2025年01月11日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 コウ・おか   山部 gāng


 上は岡、下は网(あみ)
解字 岡の篆文は「山(やま)+网あみ(モウ⇒コウ)」の形声。网モウは下の甲骨文で、左右の支柱に網を張って立てた形。これに山がついた岡は、山と山のあいだの山の尾根(山脊サンセキ)をいう。[説文解字注]は「山脊サンセキ(山の尾根)也(なり)。山に従い网の聲(声)。発音は网モウ⇒コウの古郎切(コウ)とする。現代字は、网のメメ⇒䒑(ソ+一)に変化した岡になった。山の尾根は風雨に直接さらされ、かたい岩石が露出して続くので、岡を音符に含む字は、「かたく強い」イメージがある。日本では岡(おか)とよみ、丘キュウ(こだかい土地)の意味で用いるが、原義は山の尾根(山脊)をいう。

山脊サンセキ(山の尾根)。
意味 (1)山の背・尾根。山脊サンセキ(山の尾根)。「彼(か)の高岡コウコウ(高い尾根)を陟(のぼ)る(詩経・周南)」「岡コウの如く陵の如く(詩経・小雅)」(岡と陵が、同じ意味であることを示す)。「岡陵コウリョウ」(山の背が続くさま)(2)[日本]おか(岡)。小高い土地。岡阜コウフ」(小高いおか。岡も阜も、おかの意)(3)地名。日本の県名、市名など。「岡山おかやま」「福岡ふくおか」「静岡しずおか」(4)姓。「岡おか」「岡本おかもと」「岡山おかやま」「岡田おかだ」ほか。

イメージ  
 「おか(山の尾根)」
(岡・崗)
  山の尾根は岩石が露出し「かたく強い」(剛・綱・鋼)
音の変化  コウ:岡・崗・綱・鋼  ゴウ:剛

おか・山の尾根
 コウ・おか  山部 gǎng・gāng
解字 「山(やま)+岡(おか・山の尾根)」の会意形声。岡の意味を、山をつけて表した字。岡と同じ意味で使われる。
意味 (1)おか(崗)。山の尾根。岩山。山脊セキ(山嶺)。(2)岩石の名。「花崗岩カコウガン」(堅く美しい火成岩で、御影石ともいう)(3)地名。「雲崗ウンコウ」(中国山西省大同市の西にある地域。名前の由来は不明)「雲崗石窟ウンコウセックツ」(山西省大同市雲崗にある仏教遺跡。山脊(崗)の層をうがち多くの石仏が彫ってある)

雲崗石窟(ウィキペディアより)

かたく強い
 ゴウ・コウ・つよい  刂部 gāng 
解字 「刂(刀)+岡(かたくつよい)」の会意形声。かたく強い刀を剛ゴウという。転じて、つよい意味となる。
意味 (1)つよい(剛い)。(⇔柔ジュウ)。かたい。「剛気ゴウキ」(強く屈しない意気)「剛力ゴウリキ」(①力が強い、②登山者の荷物を背負って登る人)「剛柔ゴウジュウ」(かたいと、やわらかいと)(2)「金剛コンゴウ」とは、堅くて破れない意。「金剛石コンゴウセキ」(ダイヤモンド)「金剛杖コンゴウづえ」(修験者 しゅげんじゃや巡礼者の持つ白木の杖)「金剛力士コンゴウリキシ」(金剛杵ショ (仏教の法具) を持って仏法を守護する神。阿形・吽形の一対)「金剛山コンゴウサン」(大阪府と奈良県境にある山。名前の由来は山頂の西側にある金剛山転法輪寺からとされる。標高1125m)

金剛力士像(欅製)海宇工芸館のHPから)
 コウ・つな  糸部 gāng
解字 「糸(より合わせる)+岡(かたく強い)」の会意形声。網(あみ)を引くかたく強いつな(綱)をいう。網(あみ)を引く「つな」に使うことから、物事を支え引き締める意ともなる。
意味 (1)つな(綱)。おおづな。「大綱おおづな」(①太い綱。②おおもと)「横綱よこづな」(①相撲力士の最高位の称、②白麻で太く撚り合わせた化粧まわし)(2)物事を支え保つ。おおもと。物事をとりしまる。「綱紀コウキ」(綱は大づな、紀は小づなで、大小のつなの意。大小の綱で引きしめて国を治めること)「綱紀粛正コウキシュクセイ」(国を治める政治家や役人の乱れを正すこと)「綱領コウリョウ」(統べる(領)ための綱。物事の要のところ) (3)分類上の区分け。「綱目コウモク」(綱はあみのつな、目はあみの目の意。物事の大綱と細目)
 コウ・はがね   金部 gāng・gàn
解字 「金(金属)+岡(かたく強い)」の会意形声。かたく強い金属。
意味 はがね(鋼)。かたくきたえた鉄。鋼鉄コウテツともよばれる。「鋼玉コウギョク」(ルビー・サファイヤなどの硬い玉石)「鋼索コウサク」(ワイヤーロープ)「粗鋼ソコウ」(転炉や電気炉などで精錬され、圧延や鍛造などの加工を施す前の鋼)「鉄鋼テッコウ」(銑鉄と鋼の総称)「鉄鋼業テッコウギョウ」(粗鋼等を生産する産業のこと)
<紫色は常用漢字>

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音符「曷カツ」<請い求める>と「渇カツ」「葛カツ」「褐カツ」「蝎カツ」「蠍カツ」「羯カツ」「掲ケイ」「歇ケツ」「偈ケツ」「臈ロウ」「靄アイ」「藹アイ」 謁エツ」 

2025年01月09日 | 漢字の音符
 増訂しました。
 カツ・なんぞ・いずくんぞ  日部 hé  


 上は曷、下は匃カイ
解字 篆文は「曰エツ(いう)+匃カイ(もとめる)」の会意。カイは死者をだいて、そのよみがえりをねがう形。曰エツは、いう意(現代字で日に変化)。両者を合わせた曷は、よみがえりの願いを大きな声で言う形で、「請い願う」意味となる。しかし、本来の意味でなく、「なんぞ」「いずくんぞ」の助字に仮借カシャ(当て字)された。新字体の音符になるとき、下部が、匃⇒匂に変化する。
意味 曷(なに)。曷ぞ(なん-ぞ)。曷んぞ(いずく-んぞ)。「曷若(いかん)」「曷為(なんすれぞ)」「曷以(なにをもってか)」

イメージ 
 「仮借カシャ
(当て字)」(曷) 
 「請い求める」(謁・靄・藹・渇・葛・褐・蝎)
 「形声字」(喝・歇・蠍・掲・羯・臈・偈) 

音の変化  カツ:曷・渇・葛・褐・蝎・蠍・喝・羯  ケイ:掲  ケツ:歇・偈  ロウ:臈  アイ:靄・藹  エツ:謁    

請い求める
 エツ・まみえる 言部 yè
解字 旧字は謁で「言(いう)+曷(請い求める)」の会意形声。請い求める意の曷カツが、仮借カシャされ別の意味になったため、言をつけて元の意味をあらわした。また、身分の高い人に請い求める形から、まみえる(謁見する)意となる。
意味 (1)請う。求める。申し上げる。 (2)まみえる(謁える)。身分の高い人に会う。「謁見エッケン」「拝謁ハイエツ
 アイ・もや  雨部 ǎi
解字 「雨(あめ)+謁(=曷。請い求める)」の会意形声。雨を神に請い求めること。それに応えて神がその徴候をみせること。
意味 もや()。雲気がたちこめること。空気中に一面に水蒸気が立ちこめること。霧より見通しのよいものをいう。「朝靄あさもや」「夕靄ゆうもや」「靄靄アイアイ」(雲やかすみの集まりたなびくさま。ゆったりしているさま)
 アイ  艸部 ǎi
解字 「艸(草)+謁(=。もや)」の会意形声。は雲気のたちこめるさま。艸がついたは、草の気がたちこめる意。草木が繁茂しその気のたちこめる状態をいう。また、人の心にたとえて、心が充実しおだやかなことをいう。
意味 (1)草木のしげるさま。さかんなさま。「藹然アイゼン」(①草木の盛んなようす。②気持ちがおだやかなさま)(2)おだやかなさま。心がなごむさま。「和気藹藹ワキアイアイ
 カツ・かわく  氵部 kě
解字 旧字は渴で「氵(水)+曷(請い求める)」の会意形声。咽がかわいて水を欲しがること。また、水がかわく・かれる意味となる。新字体は渇になる。
意味 (1)ひどく欲しがる。咽がかわく。「渇望カツボウ」(2)かわく(渇く)。かれる。「渇水カッスイ」「枯渇コカツ
 カツ・くず・かずら  艸部 gě・gé  
解字  「艸(草)+曷(請い求める)」の会意形声。光りを求めてツルをのばして繁茂する草。つる性の植物をいう。※新指定の常用漢字のため下部を匂にしても可。

葛のつる(「葛の蔓」より)

葛の根(「吉野本葛天極堂」より)
意味 (1)くず(葛)。マメ科のつる性の多年草。根から生薬や葛粉を作り、つるの繊維から布を作る。「葛布くずふ」「葛粉くずこ」「葛根湯カッコントウ」(葛の根から作る生薬) (2)かずら(葛)。かつら(葛)。つる草。「葛藤カットウ」(かずらや藤のつるがもつれ、からむこと。もつれ。心の迷い)(3)人名。地名。「葛飾北斎かつしかホクサイ」(江戸後期の浮世絵師)「葛飾区かつしかク」(東京都の区名)「葛城かつらぎ」(奈良盆地南西部一帯の古地名)(4)姓。「葛西かさい」「葛城かつらぎ」「葛巻くずまき

 カツ・カチ・ぬのこ  衤部 hè
解字 旧字は褐で「衤(衣)+曷(カツ)」の形声。[説文解字注]は「未(いま)だ績(つむ)いでない麻(あさ)之(の)編(編んだもの)で之(これ)を足衣(足袋・たび)と為す。如今(いまどき)は艸鞵(草鞋)之(の)類(たぐい)。一に曰く粗衣ソイ」とあり、麻の衣とするが、一方で葛(くず)の繊維の衣とする説もある。下の写真は中国明代の葛紗シャ制(葛糸の薄い織物)の衣服で、色も褐色をしている。私は麻でなく葛(くず)の繊維の衣と思うが、いずれにしても意味は粗末な衣服で、色は褐色(かわいた感じの茶色)となる。

中国明代の葛紗制の衣服(「衣之道・葛布」より)
https://zhuanlan.zhihu.com/p/373573260
意味 (1)ぬのこ(褐)。あらい布の粗末な衣服。「褐衣カチエ」(褐布の狩衣)「褐夫カップ」(粗布を着ている身分の卑しい者) (2)かわいた感じの茶色。暗褐色。「褐色カッショク」「褐炭カッタン」(暗褐色の質のよくない石炭)「褐鉄鋼カッテッコウ」(暗褐色の製鉄鉱石)
 カツ・きくいむし・さそり  虫部 xiē
解字 「虫(むし)+曷(もとめる)」の形声。エサを求めて木のなかに巣くう虫のキクイムシを蝎カツという。また、蠍さそりの意味にも用いる。
意味 (1)きくいむし。キクイムシ科の甲虫。木の中に入って木を食い荒らす虫の通称。(2)「蝎虎カッコ」とは、やもりをいう。(3)さそり(蝎)。サソリ科の総称。「蛇蝎ダカツ」(蛇とサソリ) 

形声字
 カツ・しかる  口部 hē・hè・yè
解字 旧字は噶で「口(くち)+曷(カツ)」 の形声。口からカツと大きな声を出すことを噶カツという。新字体は喝に変化。
意味 (1)しかる(喝る)。「喝破カッパ」(①しかりつける。②邪説をしりぞけ真理を言う)(2)おどす。「恫喝ドウカツ」(2)大声をはりあげる。「喝采カッサイ」(やんやともてはやす)
 ケツ・やむ  欠部 xiē
解字 「欠(口をあけて声をだす)+曷(=噶。大きな声をだす)」 の会意形声。大きな声を出している相手に、口をあけて声を出し、相手の勢いを止めること。
意味 (1)やむ(歇む)。やめる。「歇後ケツゴ」(後をやむ。成語の後半を省略すること)「間歇カンンケツ」(一定の間隔をもって止み、また起きること)「間歇泉カンケツセン」(一定の間隔をおいて周期的に熱湯を噴き出す温泉)(2)やすむ。「歇坐ケツザ」(宴中の小休憩)「歇家ケッカ」(旅館)(3)つきる。「歇滅ケツメツ」(ほろびる)
 カツ・ケツ・さそり  虫部 xiē
解字 「虫(むし)+歇(ケツ・やすむ)」の会意形成。夜行性の昆虫であるサソリをいう。昼間は岩陰や土の中、隙間などに隠れて過ごす虫であるので、歇(やすむ)を用いたものと思われる。なお、サソリの意味である蝎カツに通じ、カツの発音も慣用音となる。

サソリ(ウィキペディアより)
意味 さそり()。サソリ目の節足動物。尾の先の針に毒をもち刺す。蝎カツとも書く。「蛇蠍ダカツ」(蛇とさそり)「蠍座さそりざ」(サソリの形をした星座。夏の星座)「蝮蠍フクカツ」(まむしと、さそり。凶悪な人)
 ケイ・ケツ・かかげる  扌部 jiē
解字 旧字は揭で「扌(手)+曷(カツ⇒ケイ)」の形声。扌(手)で高くかかげることを揭ケイという。新字体は掲ケイに変化。
意味 (1)かかげる(掲げる)。高くさしあげる。「掲揚ケイヨウ」 (2)目につくよう示す。貼り出す。「掲載ケイサイ」「掲示ケイジ
 カツ・ケツ  羊部 jié
解字 「羊(ひつじ)+曷(カツ)」の形声。カツは割カツ(わける)に通じ、オスの羊の精巣を取り去って去勢すること。また、羊を飼う民族である五胡(西晋末期から華北に侵入した5つの異民族)のひとつをいう。胡は中国の北方・西方に住む遊牧民族。
意味 (1)異民族の名。五胡のひとつで匈奴の別種。中国の山西省内に居住した。「羯鼓カッコ」(①雅楽に使う両面太鼓。②能楽や歌舞伎で使う小太鼓。異民族で五胡のひとつである羯ケツが用いた鼓から)(2)去勢した雄羊。「羯羊カツヨウ

羯鼓(中国のネットから。https://baike.sogou.com/v494290.htm)
 ロウ  月部にく là
解字 「月(肉)+葛(ロウ)」の形声。ロウは臘ロウ(冬至の後、第三の戌(いぬ)の日に、猟のえものの獣肉を供えて先祖百神をまつる祭)に通じ、冬至後に歳を送る祭り。日本では、仏教寺院の僧侶の年功によって得られる身分をいい、地位の称。
意味 (1)まつりの名。冬至後に歳を送る祭り。(=臘ロウ) (2)[国]僧の位。また、宮廷の官女の高位のもの。「上臈ジョウロウ」(①修行を積んだ高僧。②宮中の高位の女官。③江戸幕府大奥の御殿女中の高位のもの)
 ゲ・ケツ  イ部 jì・jié
解字 「イ(ひと)+葛(カツ⇒ケツ・ゲ)」の形声。サンスクリット語のqāthā(韻文の歌)の音訳字に用い、現在はこの用法が主になっている。
意味 (1)げ(偈)。梵語で仏の功徳をほめたたえる韻文体の歌。本来は「偈陀ゲタ」(サンスクリット語のqāthā(韻文の歌)の音訳字)だが、偈一字で表す。「偈頌ゲジュ」(仏の功徳や教えをたたえた歌)「偈文ゲブン」(偈の文章)(2)「偈偈ケツケツ」とは(骨折って努めるさま)
 アツ・とどめる  辶部 è
解字 「辶(ゆく)+葛(カツ⇒アツ)」の形声。進んで行こうとする者をとどめることを遏アツという。
意味 (1)とめる(遏める)。とどめる(遏める)。さえぎる。「遏雲アツウン」(行く雲をとどめる。歌声の美しいこと)「遏防アツボウ」(とどめ防ぐ)(2)たつ。禁じる。さしとめる。「禁遏キンアツ」「遏密アツミツ」(音曲停止。鳴り物をやめて静かにする。密は静の意)
<紫色は常用漢字> 

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音符「㒸・遂スイ」<やりとげる>と「燧スイ」「隧スイ」「邃スイ」と「隊タイ」「墜ツイ」

2025年01月07日 | 漢字の音符
 増訂しました。
 スイ・ズイ  八部 suì・xuán


 上は㒸スイ、下は豕
解字 甲骨文は「ハ+豕(野生の豚)」の会意。狩猟法の一種として用いられており、豚をあい路(ハ)に追い込んで捕らえる様子であろう[甲骨文字辞典]。篆文以降、遂と同じく、とげる意で用いられており、豚を追い込んで捕らえたので「とげる」意になったと思われる。この字は単独で用いられることは稀(まれ)で、遂と同字として用いられる。
意味 (1)甲骨文字で、獣をとらえる狩猟法のひとつ。(2)とげる。=遂スイ。(3)したがう。

イメージ 
 「やりとげる」
(遂・燧)
 「形声字」(隧・邃)
音の変化  スイ:遂・燧・隧・邃   

やりとげる
 スイ・ズイ・とげる・ついに  辶部 suì・suí
解字 「辶(ゆく)+㒸(やりとげる)」の会意形声。㒸スイの意味(やりとげる)を辶(すすむ)をつけて強調した字。
意味 (1)とげる(遂げる)。やりとげる。なしとげる。「遂行スイコウ」(なしとげる。やりとげる)「完遂カンスイ」(完全にやりとげる)「未遂ミスイ」(未だなし遂げていない)「未遂罪ミスイザイ」(犯罪は未遂であるが罪になること)「既遂キスイ」(既になし遂げたこと)(2)ついに(遂に)。とうとう。おわりに。
 スイ・ひうち  火部 suì
解字 「火(ひ)+遂の旧字(やりとげる)」の会意形声。火を起こすのをやりとげること。火打ち石などで、火を得ることが原義。火を起こすことは簡単なことでなく、道具と技術が必要で、やりとげることだった。のろしの火を起こすので、のろしの意ともなる。
意味 (1)ひうち(燧)。火を得るため用いる道具。「燧火スイカ」(① 火打石で打ち出した火。きり火・うち火。②のろし)「燧石スイセキ」(火打ち石)「燧ヶ岳ひうちがたけ」(尾瀬国立公園内にある山。日本百名山の一つ。名前の由来は諸説ありはっきりしない)(2)のろし(燧)。辺境警備隊が警報のために火をもやしてあげるけむり(中国)。「燧烽スイホウ」(燧も烽も、のろしの意)
火打ち石と火打ち金で火をおこす[沼津市歴史民俗資料館]

形声字
 スイ・ズイ  阝部 suì
解字 「阝(おか:陵墓)+遂の旧字(スイ)」の形声。おか(陵墓)の中心に通じる墓道を隧スイという。現在はトンネルの意味でも使う。
意味 (1)みち。はかみち。トンネル。地中をくりぬいた道。「隧道スイドウ・ズイドウ」(①墓へ通じる地中の道。②トンネル)「清水隧道しみずズイドウ」(1931年(昭和6)に完成した上越線の日本一長い清水トンネル。当時は清水隧道と書かれた。)
 スイ・おくぶかい  辶部 suì
解字 「穴(あな)+遂の旧字(スイ)」の形声。穴の奥深いことを邃スイという。
意味 (1)おくぶかい(邃い)。土地や場所が深くて遠い。「邃宇スイウ」(広く奥深い邸宅)「邃淵スイエン」(深い淵)「幽邃ユウスイ」(幽も邃も、奥深い意)「邃冥スイメイ」(奥深く暗い)(2)学問や道理にくわしく深い。「深邃シンスイ

    ツイ・タイ <おちる>
 ツイ・タイ  阝部 duì・zhuì

解字 甲骨文は「阝(はしご)+逆さになった人」の会意で、人がおちる意。篆文で、逆さになった人⇒発音を表す㒸スイ⇒ツイ)に置き換えた「隊ツイ・タイ」となった。一方、もう一つの発音であるタイは𠂤タイ(師の原字。軍隊の象徴)に通じ、軍の部隊の意で使われ、のちこの意味が主流となった。おちる意味の隊ツイは、のちに土をつけた墜ツイで表すようになった。
意味 (1)兵の集まり。「軍隊グンタイ」「部隊ブタイ」「隊長タイチョウ」(2)くみ。むれ。統一された集合体。「隊商タイショウ」「隊列タイレツ」(3)おちる。=墜ツイ

イメージ 
 「形声字」
(隊)
 「おちる」(墜) 
音の変化 タイ:隊  ツイ:墜

おちる
 ツイ・おちる  土部 zhuì   
解字 「土(つち)+隊(おちる)」 の会意形声。隊ツイ・タイは、もともとおちる意だが、軍隊の意に使われたので、土をつけ土の上におちる意とした。
意味 (1)おちる(墜ちる)。おとす。「墜落ツイラク」(墜も落もおちる意)「撃墜ゲキツイ」(撃ち落とす)「墜死ツイシ」(墜落して死ぬ) (2)うしなう。「失墜シッツイ」(失も墜もうしなう意)
<紫色は常用漢字>

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音符「里リ」と「俚リ」「狸リ」「理リ」「裏リ」「鯉リ」「厘リン」「埋マイ」「霾バイ」「糎センチ」「哩マイル」「浬カイリ」

2025年01月05日 | 漢字の音符
  増訂しました。 
 リ・さと  里部 lǐ・li


  上は里、下は土
 金文は「田(区画された耕地)+土(つち)」の会意。土は下図の甲骨文で、土をまるめて盛った形の象形。単独では①土地(支配下の領域)②大地の神格、の意味で用いられている。金文の土は第二字(下)で里の下部と同じ形になったが、土を祭る(=社やしろ)意味がある。ここから、里は耕地とその土地神を祀(まつ)る場所がある集落(さと)をいう。金文の意味は[簡明金文詞典]に、①基層となる住民の組織、②里をつかさどる宰相である「里人リジン」「里君リクン」の意味があり、すでに住民を治める地方組織が確立されている。篆文から現代字と同じ形になった。また、耕地の大きさから、距離の単位も表す。
意味 (1)さと(里)。むらざと。いなか。「村里むらざと」「郷里キョウリ」「里謡リヨウ」(民間で歌い伝えた歌=俚謡)(2)みちのり。距離の単位。一里は周代で三百歩(405m)、現代中国は500m、日本では約3.9 km。「里程リテイ」(みちのり)「五里霧中ゴリムチュウ」(広さ五里にわたる霧の中にいる)「千里眼センリガン

イメージ 
 「村里・いなか」
(里・俚) 
 意味(2)の、みちのりから「距離の単位」(哩・浬)
 区画された耕地に「すじめがつく」(理・裏・鯉)
 「形声字」(狸・埋・・厘・糎)
 
音の変化  リ:里・俚・狸・理・裏・鯉  リン:厘  マイ:埋  バイ:  センチ:糎  マイル:哩  カイリ:浬

村里・いなか
 リ  イ部 lǐ
解字 「イ(人)+里(村里・いなか)」の会意形声。村里に住む人。都ふうでない人。
意味 いやしい。いなかくさい。「俚言リゲン」(①上品でない言葉・②地方の特有の言葉)「俚俗リゾク」「俚諺リゲン」(民間のことわざ)「俚歌リカ」(民間で流行する歌)

距離の単位
 リ・マイル  口部 lī・lǐ・li
解字 「口(くちまね)+里(距離の単位)」の会意形声。一里の長さを英語で口まねする意で、英語のマイル(mile)を表す。 意味 マイル(哩)。1マイルは1.6km。
 リ・カイリ  氵部 lǐ・lí
解字 「氵(海)+里(距離の単位)」の会意形声。海で用いる長さの単位を、浬リ・カイリといい、(海里)の意。 意味(1)カイリ(浬)。1海里は1.852km。(2)ノット(浬)。1ノットは1海里/毎時

すじめがつく
 リ・ことわり・おさめる  玉部 lǐ
解字 「王(=玉)+里(すじめがつく)」の会意形声。宝石の表面にすけて見えるすじめ。転じて、物事の筋道・ことわりの意となる。また、玉の原石を磨いて肌理(きめ)を出すことから、ととのえる意がある。
意味 (1)宝石のすじめ。きめ。もよう。「玉理ギョクリ」(玉のあや・模様)「節理セツリ」(①岩石の割れ目。②物事の筋道)「地理チリ」(①土地のすじめ・もよう、②地上の土地利用の状態、③地理学の略)(2)ことわり。物事のすじみち。「理解リカイ」「理由リユウ」(3)おさめる。ととのえる。「管理カンリ」「理事リジ」「整理セイリ」(4)自然科学。「理科リカ」「理学リガク
[裡] リ・うら  衣部 lǐ
解字 「衣(ころも)+里(すじめがつく)」の会意形声。衣を縫うとき、縫い目(すじめ)が表にでないように縫う。すると縫い目が裏側になるので、うらの意味を表す。また、衣の裏である内側をいう。裡は同字。もと、うちがわ・内部の意で、よく用いられた。
意味 (1)うら(裏)。うらがわ。「裏面リメン」「表裏ヒョウリ」「裏打うらうち」(2)うち(内)。うちがわ。「脳裏ノウリ」(頭のなか)「屋根裏やねうら」「袖裏そでうら
 リ・こい  魚部 lǐ

鯉(こい)(「市場魚介類図鑑・コイ」より)
解字 「魚(さかな)+里(すじめがつく)」の会意形声。うろこのすじめが左右斜めにはっきり見える魚の「こい」。観賞用・食用として珍重される。
意味 (1)こい(鯉)。コイ科の淡水魚。「緋鯉ひごい」「錦鯉にしきごい」「鯉濃こいこく」(輪切りにした鯉を濃い味噌汁で煮た料理)「鯉幟こいのぼり」(2)人名。「孔鯉コウリ」(孔子の子の名)「鯉庭リテイ」(子が父の教えを受ける所。孔子が子の鯛を庭でさとした故事による。=庭訓テイキン

形声字
狸[貍] リ・たぬき  犭部 lí
解字 「犭(いぬ)+里(リ)」の形声。リという名の犬に似た動物の「たぬき」を狸という。本字は貍で「豸むじなへん(野生動物)+里(リ)」の形声で貍(たぬき)の意。楷書から略字の狸が用いられた。
意味 (1)たぬき(狸)。イヌ科の哺乳類。山地・草地に穴を掘って巣として生活する。「狐狸コリ」(きつねとたぬき)「狸穴まみあな」(狸が住んでいる所を意味した地名)(2)(化けて人をだますとされたことから)ずるがしこい人。「狸親父たぬきおやじ
 マイ・メ・バイ・うめる・うまる・うもれる  土部  mái・mán
解字 「土(つち)+里(リ⇒マイ)」の形声。土のなかに物をうずめることを埋マイという。
意味 (1)うめる(埋める)。うずめる。「埋葬マイソウ」「埋蔵マイゾウ」(地下などにうずもれていること)(2)うまる(埋まる)。うもれる(埋もれる)。「埋没マイボツ」(①埋もれて没する、②世に知られていない)(3)(国)うめる(埋める)。他の物でおぎなう。「損を穴埋めする」
 バイ・マイ・つちふる  雨部 mái
解字 「雨(ふる)+バイ(=(埋):うずめる)」の会意形声。雨は、ここで降る意。貍バイは同音のバイ(埋の異体字)に通じ、うずめる意。土ぼこりが降り地上をうずめること。中国で黄砂が降る意で用いられる。
意味 つちふる(ふる)。モンゴルや中国北部の黄土地帯で、春の吹き荒れる季節風によって大量の細かな砂塵が空高く舞い上がって大気中に広がり、遠くまで及ぶ現象。3月から5月に多く、日本にも飛来する。春の季語。「霾翳バイエイ」(巻き上げられた土砂が空を覆って暗いこと)「霾晦バイカイ・よなぐもり」(風が土をふらして暗いこと。訓の[よな]は、日本で噴火による降灰をいう)「霾風バイフウ」(土ふらす風)「黄霾コウバイ」(黄砂の土ふる)
[釐] リン  厂部 lí
解字 本字は釐で意味は、①おさめる。あらためる。「釐正リセイ」(正しくあらためる)「釐定リテイ」(おさめさだめる) ②りん。単位の名。分の一〇分の一。 ③きわめてわずか。「毫釐ゴウリ」(ごくわずか)などの意味がある。厘リンは意味の、②りん。単位の名。③きわめてわずか、を表すために、釐を簡略化し発音を厘リンとした字。
意味 (1)貨幣の単位。円の1000分の1。1銭 の10分の1。(2)長さの単位。尺の1000分の1。(3)重さの単位。匁(もんめ)の100分の1。(4)割合の単位。1の1000分の1。「五厘差で首位になる」(4)きわめてわずか。「厘毛リンモウ」(①ごくわずかな金銭、②わずか)
<国字> センチメートル  米部 lí
解字 「米(メートル)+厘(少数の単位。百分の1)」の会意。1メートルの百分の1の長さ。 意味 センチメートル(糎)。長さの単位。1メートルの100分の1。
<紫色は常用漢字>


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音符「受ジュ」<うける・うけとる> と 「授ジュ」「綬ジュ」

2025年01月03日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ジュ・シュウ・ズ・うける・うかる  又部 shòu


 上は受、下は舟
解字 甲骨文は「上からの手+舟シュウ(ふね)+下の手」のかたち。[甲骨文字辞典]は「舟の上下に手の形を加えており、水上で舟を受け渡すことを表している。舟は発音も表す亦声エキセイ(意味と発音を兼ねる)の部分で、意味は、①うける。うけとる。②さずける。授与する。③祭祀の名。④地名」とする。金文も同じ形であり、意味も、①受ける。②さずける、意味がある。篆文にいたり、上の手が水平に、舟⇒冂、下の手⇒又」になり、現代字は、さらに変化した受になった。発音は、舟シュウから転音した、シュウ(漢音)・ジュ・ズ(呉音)の3音がある。
意味 (1)うける(受ける)。うけとる。もらう。「受賞ジュショウ」「受験ジュケン」「受付うけつけ」(2)うけいれる。「受諾ジュダク」「受容ジュヨウ」(3)こうむる。「受難ジュナン

イメージ  
 「うける・わたす」(受・授・綬)
音の変化  ジュ:受・授・綬

うける・わたす
 ジュ・さずける・さずかる  扌部 shòu
意味 「扌(手)+受(うける・わたす)」の会意形声。手でわたす意では、さずけるになり、手でうける意では、さずかるとなる。
意味 (1)さずける(授ける)「授業ジュギョウ」「授乳ジュニュウ」「授賞式ジュショウシキ」(賞をさずける式)「教授キョウジュ」(2)さずかる(授かる)。「神授シンジュ」(神からさずかる)「天授テンジュ」(天からさずかる。生まれつき備えているもの。また、その才能)
 ジュ  糸部 shòu
解字 「糸(いと⇒織物)+受(うける)」の会意形声。印章や勲章・褒賞をさずかる時に付属している絹織物の小幅帯(テープ)を言う。印章や勲章・褒賞の種類によって小幅帯の色が異なる。現在の勲章の綬は縁取りの線が入っているものが多いので、褒賞ホウショウの綬と、印章インショウの綬について説明する。
意味 (1)褒賞の綬。特定の社会的分野における、事蹟や徳行のすぐれた方に与えられる賞。種類は紅綬、緑綬、黄綬、紫綬、藍綬とあって、綬色によって名称づけられている。金色のメダルを嵌めこんだ装具の上に短い綬が付いており、受賞者は綬を衣服に止めて飾る。

  褒章一覧(「叙勲コム」より)下の丸印は略綬(円形の綬で胸に着用できる)
(2)印章の綬
 古代中国で、官の職員が職務で用いる印章を、身につけるのに用いた絹織物の幅のある薄帯を綬ジュと言った。印章をもつ官員は書類を見て承認すると押印して、次の官職に回してゆく。現在の押印は朱肉に色を付けてから紙に押すが、古代の書類は竹簡だったから直接の押印はできない。したがって読み終わると竹簡を紐でしっかりと括って袋などに入れ、他の人に読まれて改竄ざんされないよう工夫をした。
 それは紐の両端を、印章より少し大きめの四角く掘りこんだ木枠に通して泥をかぶせ(封泥)、その上から印章を押すことだった。泥が乾くと印章の跡が残るので誰の印章か判る。もし、紐を切って竹簡の一部を改竄しても、封泥を壊さないと紐を換えることができない。そのため印章は現在の印鑑の文字面が凸版になっているのに対し、凹版になっていた。これだと封泥の文字は浮き上がって見える。以下の「中国古代の封泥」(東京国立博物館オンライン講演会)を見ると古代の印章の役割がよく分かる。

 印章は封泥をして次の官に回すため、多くの官職がそれぞれの印章を持ち常に身に帯びていた。印章と衣服を結びつけていたのが綬である。古代の綬がどんな形だったかはっきりしないが、阿部幸信著「印綬が創った天下秩序」(山川出版社)によると「公印だけでなく綬も官給品であり、文献の伝える製法によると綬は細長い絹の織物だった。それぞれの綬には基調となる色が定められており、色の色調が官職の上下によって異なっていた。綬の幅は1尺6寸(38.4㎝)と一定であった。綬の長さは、上位の綬ほど長く、皇帝の綬は2丈9尺(7メートル弱)にも及び、下級官吏の綬でも1丈5尺(約3.6メートル)あったという(「続漢書」)。古代の綬は幅が広く、かなり長い織物だった。
 上記の記述などを簡潔にまとめ、図版にして展示しているのが、福岡市博物館の「印と綬の説明パネル」である。(https://4travel.jp/travelogue/11727193 )

パネルの右は、印の材質と綬の色の関係を示しており、最上位の印材である玉璽の綬色は黄赤であり、次の金印は緑と紫の綬、銀印は青綬、銅印は黒綬および黄綬となっている。
 綬がどんな形であったかを図示したのが左図であり、「綬は長く巾広い絹綬で、帯から垂らして端を印章につなぎ懐に入れていた。綬は位によって色が異なり、外見でその人の身分を知ることができる」との説明がある。パネルの人物は青綬を垂らしているので、銀印をもつ身分の綬を表している。
 以上、綬について説明させていただいた。東京国立博物館と福岡市博物館案内のオンライン上の資料を利用させていただきました。御礼を申し上げます。
参考写真 金印の上部(左)と刻面(右下)、および左右反転させた印影(右上)

印の上部蛇鈕と印面の「漢委奴國王」と、その反転した印影(中国ネットから。金印はレプリカと思われる)。印面の文字が彫り込まれているので、印影の文字が白くなっている。粘土に押し付けた(封泥)ときは、文字が浮き出る。蛇鈕の穴に紐などを通して綬と結びつけたと思われるが、具体的な方法は分っていない。
<紫色は常用漢字>

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音符「婁(娄)ロウ」<髪を巻きあげた女>「楼ロウ」「鏤ロウ」「螻ロウ」「髏ロ」「縷ル」「屢ル」「褸ル」「数スウ」「藪ソウ」

2025年01月01日 | 漢字の音符
婁[娄] ロウ・ル  女部 lóu 


参考図版・中国古代女性の巻きあげた髪型(中国ネットから)                          
解字 金文は女性の頭髪を(他人の)両手が結っているかたち。篆文第一字は説文古文で、金文から両手を省いた古いかたち。篆文第二字は髪の毛を高く巻き上げて重なったかたちで、髪の横につきでているのはカンザシか。この字をもとに現在の婁が成立した。
 髪の毛を巻き上げるには、まず長い髪を三つ編みにし、これを丸く巻いて上に重ねたと思われる。したがって、髪の毛が「かさなる」、三つ編みにした長い髪の毛が「つらなる」イメージがある。しかし「婁」単独では星座のひとつに仮借カシャ(当て字)されている。新字体になる時、婁⇒娄に変化する。
意味 (1)星座の名。たたら星。「婁宿ロウシュク」(たたら星。二十八宿のひとつ。西方白虎七宿の第2宿)(2)ひく(婁く)。摟ロウ・ひくに通じる。ひきよせる。「婁曳ルエイ」(ながくひく)(3)(髪の毛を巻いた形から)すきまがある。中空。すきま。から。「婁婁ロウロウ」(すきまだらけ。粗いさま)(4)地名。「牟婁郡ムログン」(和歌山県・三重県(紀伊国)にあった郡)(5)姓。「婁 圭ロウケイ 」(中国 後漢時代末期の武将、政治家)

イメージ 
 「仮借カシャ(婁)
 巻き上げた髪が「かさなる」(楼・数・藪)
 三つ編みにした髪が長く「つらなる」(縷・髏・屢)
 「形声字」(褸・鏤・螻)
 
音の変化  
 ロウ:婁・楼・鏤・螻  ロ:髏  ル:縷・屢・褸  スウ:数  ソウ:藪

かさなる
 ロウ・たかどの  木部 lóu 
解字 旧字は樓で「木(き)+婁(かさなる)」の会意形声。階をかさねた木造の建物。新字体は、樓⇒楼に変化。

武雄温泉楼門(国指定重要文化財)
意味 (1)たかどの(楼)。高い建物。「楼閣ロウカク」「楼門ロウモン」(二階造りの門)(2)やぐら。物見やぐら。「望楼ボウロウ」「楼櫓ロウロ」(敵を見るやぐら)「鐘楼ショウロウ」(かねつき堂)「摩天楼マテンロウ」(高層建築)(3)茶屋。料理屋。「酒楼シュロウ」「青楼セイロウ」(遊女屋)
 スウ・ス・シュ・かず・かぞえる  攵部 shù・shǔ・shuò

解字 金文は「髪を両手で結ってかさねた形+言(いう)」で、重ねた髪の結びを数えて言う形で、かぞえる意味を表す。篆文は「婁+攴」の形。[説文解字]は「計(かぞ)える也(なり)。攴に従い婁の聲(声)」とするが、日本語の発音は、スウ・ス・シュであることから、婁(かさなる)が意符であり、発音は攴シ⇒ス・シュ・スウへの変化、と考えられる。旧字は數となり、新字体は数になった。
意味 (1)かず(数)。かぞえる(数える)。「数学スウガク」「点数テンスウ」「数珠ジュズ」(珠たまを数える意。仏を礼拝するとき手にかける珠をつらねた用具)(2)いくらか。いくつか。「数回スウカイ」「数個スウコ」(3)めぐり合わせ。運命。「数奇スウキ」「命数メイスウ」(生命の長さ)(4)[国]「数寄スキ」とは、好き(スキ)の当て字で風流の道(茶の湯など)を好むこと。
藪[薮] ソウ・やぶ  艸部 sǒu・còu
解字 「艸(草木)+數(スウ⇒ソウ)」の形声。ソウは叢ソウ(あつまる)に通じ、草木がむらがり生えている所をいう。
意味 (1)やぶ(藪)。草・低木・竹などが生い茂っているところ。「藪入(やぶい)り」(奉公人が盆と正月に実家に帰ること。草木の茂った田舎に入るから)「藪蛇やぶへび」(藪をつついて蛇を出すこと)「藪医者ヤブイシャ」(野巫医ヤブイ」の略。野(田舎)で巫フ・ブ(呪術)で治療を行っている医者の意。転じて、医術の下手な医者)(2)さわ。沼地。鳥獣が集まるところ。「藪沢ソウタク」(草木が生い茂る沼沢)

つらなる
 ル  糸部 lǚ
解字 「糸(いと)+婁(つらなる)」の会意形声。糸がながくつづくさま。また、絶えずに続くさま。
意味 (1)いと。いとのように長いもの。いとすじ。「一縷イチル」(わずかにつながるさま)「一縷の望み」(2)絶えずに続くさま。「縷縷ルル」(①絶えずにつづく。②こまごまとくわしく述べる)「縷言ルゲン」(こまごまと詳しく言う=縷縷ルル
 ロ・ロウ  骨部 lóu
解字 「骨(ほね)+婁(つらなる)」の会意形声。骨がつらなる形で骨ばかりとなった死骸の意。
意味 髑髏ドクロ(されこうべ)に使われる字。ドクは「骨+蜀(=獨。はなれる)」で、はなれた骨。髑髏とは野ざらしとなって、つらなる死骸のなかで、はなれた頭蓋骨をいう。されこうべ。しゃれこうべ。(「され」は、さらす(晒す)意で、「されこうべ」は日光や風雨に晒された頭骨の意。しゃれこうべは、その転音)。
屢[屡] ル・しばしば  尸部 lǚ
解字 「尸(亡き死者に代わって座る人)+婁(つらなる)」の会意形声。尸は、人が椅子に腰かけた姿勢の象形。祖先の祭祀の時に亡き死者に代わって近親者が椅子に座った姿をいう。それに婁(つらなる⇒連続する)がついた屢は、祭祀で死者の位置につくことが続く、そうした祭祀がしばしばある意。新字体に準じた屡も使われる。
意味 しばしば(屢)。たびたび。「屢次ルジ」(たび重なること。しばしばあること)「屢述ルジュツ」(何度も述べること。繰り返し述べる)「屢雨しばあめ」(時おりさっと降る雨。にわか雨)

形声字
 ル・ぼろ・つづれ  衤部  lǚ・lóu
解字 「衣(ころも)+婁(ル)」の形声。使い古して破れた衣や、それをつぎはぎした衣を褸という。
意味 ぼろ(褸)。つづれ。破れたのをつぎはぎした衣。ぼろぎれ。「襤褸ランル・ぼろ」(ぼろきれ。襤も褸も、ぼろの意)「襤褸(ぼろ)をまとう」
 ロウ・ル・ちりばめる・きざむ  金部 lòu・lǘ
解字 「金(金属)+婁(ロウ)」の形声。金属に模様をこまかく彫りこんで、ちりばめることを鏤ロウという。
意味 (1)ちりばめる(鏤める)。技巧をこらす。「鏤句ロウク」(技巧をこらして句をつくる)(2)きざむ(鏤む)。きざみつける。「鏤刻ロウコク」「鏤骨ルコツ・ロウコツ」(①骨に刻んで忘れないこと。②骨に刻み込むような苦労)「鏤氷ロウヒョウ」(氷を刻んで模様をつくる。無駄で効果がないこと)「鏤塵ロウジン」(塵ちりにきざむ)「吹影鏤塵スイエイロウジン」(影を吹き塵にきざむ。無意味な努力のこと)
 ロウ・ル  虫部 lóu
解字 「虫(むし)+婁(ロウ)」の形声。ロウという名の虫。「螻蛄ロウコ(けら)」に用いる。「螻蛄ロウコ」とは、けら科の昆虫。こおろぎの一種で、土の中にトンネルを掘り、作物の根を食う。おけら。

ケラ(螻蛄)(「温泉ドラえもんのブログ」より)
意味  おけら(螻蛄)。けら(螻蛄)。直翅目ケラ科の昆虫。体長は約3センチ。頭部と前胸は頑丈で、前足はモグラに似てくまで状をしている。地中に穴を掘ってすみ、昆虫や植物の根などを食べる。「螻蚓ロウイン」(ケラとミミズ)。「螻蟻ロウギ」(けらとあり。つまらぬもののたとえ)「螻蟻潰堤ロウギカイテイ」(けらやありが掘ったようなごく小さな穴でも、いずれは大きな堤防を壊してしまうことになる意)
<紫色は常用漢字>

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