『灰になるまで』(死ぬまで)――この言葉は私が若い時分に聞いた言葉であり、自分なりに解った積りでいた。 そしてその内容は、“死ぬまで男は助平である”と解釈していた。実際の経験でも高齢のおばさんから、「・・・もう60を過ぎれば女には全然そんな気はないわよ。女は義理でのお付き合いなのよ」と聞かされそれを真に受けていた。 だが途中から、それまでの自分の考えは間違いではないかと思うようになった。 近年は時代の変化に伴い、女性も正直に気持ちを語るようになった。テレビ等でもはっきりと“灰になるまで”を認めている女性が少なくない。もちろん個人差があるから一概には言えぬが、そうした人がいるとすれば、女性なのであろう。それとは対照的に男は情けない。ある時期を過ぎると口だけで、昔の元気はどこへやらである。そうした話は殆ど聞かれない。 昔、大岡越前守(新井白石との説もある)が母親に対して「人の性欲はいつまで続くのか?」と質問したのに対し、古い時代の女性であった老母は、ただ黙って火箸で火鉢の灰をかき回したといわれている。この『灰になるまで』は、そもそもが女性に関しての言葉であったのだ。私以外にも誤解している人が多いのではないだろうか?