【写真:宮崎県から買い付けた生後12か月の牛=近江八幡市安土町大中、松井牧場提供】
宮崎県で猛威をふるう家畜の伝染病、口蹄疫(こう・てい・えき)の影響が近江牛に及び始めた。県内で感染例は確認されていないが、近江牛に育てる子牛の多くを宮崎産に頼る畜産農家は、最大の買い入れ先の惨状に不安を隠せない。県は5月17日、感染予防のための新対策を発表したが、子牛確保のめどは立っていない。(浅野有美、飯竹恒一)
■宮崎県産最大3割
全国ブランドの近江牛は出生地を問わず、生後に最も長く過ごした飼育場所が県内である黒毛和種とされる。県畜産課によると、県内で飼育している約1万頭のうち、9割が県外産の子牛で、宮崎産子牛は最大の3割を占める。
「全頭異常がないことを確認している」。県は17日、口蹄疫の感染が県内に及んでいないと発表した。
3月以降に宮崎から県内に入った計271頭の子牛について、最長3週間の潜伏期間も踏まえた臨床検査を繰り返した結果、今月11日までに異常は確認していないという。さらに感染する可能性がある乳用牛や繁殖のための雌牛なども含めた約2万2千頭の牛と、約1万頭の豚についても、飼育する182の畜産農家に聞き取り調査を実施し、異常はなかったという。
県は今後、飼料運搬車などの車両や農家に出入りする人の靴の消毒を徹底する方針。このため、畜産農家や県立農業高校の関係者を対象にした研修を今月19~21日に県内各地で開催する。畜産農家や県立農業高校に消毒薬として粉末炭酸ソーダを無償配布する方針だ。
また、県内で感染があった場合には、即時に知事を本部長とする対策本部を立ち上げることも決めている。
■品質保持に不安
感染の不安とは別に、宮崎を含む九州で子牛の市場がストップし、買い付けができなくなった余波が広がる。近江牛となる子牛の買い入れ先は宮崎のほか熊本、鹿児島など九州全体で6割を占める。
「別の市場を探さなくてはいけないが、いつ入手できるかめどが立たない」。県内有数の頭数を飼育する竜王町山之上の澤井牧場では、毎月約80頭を九州から仕入れている。うち7割は宮崎産だが、今月は仕入れることができなかった。
同町の別の牧場は今月、急きょ福島産の子牛約10頭を買い付けた。現在飼育している約500頭のうち半分は九州産で、今月入荷予定だった熊本産約20頭が入ってこなかったためだ。「来月も調達できるかわからない」という。
近江八幡市安土町大中の松井牧場も、近江牛として育てている約200頭のうち8割が九州産。5、6月に予定していた計16頭の買い入れはできなくなった。「畜産業全体に影響が出ている。力になれることがあれば」と、全国の畜産農家とともに宮崎の農家への支援金を募っている。
約50軒の畜産農家向けの子牛の買い付けを受託している全農しが畜産部の米谷幹男部長は「子牛の産地が変わると飼育方法やえさが変わり、今の品質を保てるかどうか不安がある。農家と相談しながら様子を見ている状況だ」と話している。
【関連ニュース番号:1005/111、5月18日】
(5月18日付け朝日新聞・電子版:同日付け京都・電子版なども報道)
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001005180003
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P20100518000187&genre=C4&area=S00
宮崎県で猛威をふるう家畜の伝染病、口蹄疫(こう・てい・えき)の影響が近江牛に及び始めた。県内で感染例は確認されていないが、近江牛に育てる子牛の多くを宮崎産に頼る畜産農家は、最大の買い入れ先の惨状に不安を隠せない。県は5月17日、感染予防のための新対策を発表したが、子牛確保のめどは立っていない。(浅野有美、飯竹恒一)
■宮崎県産最大3割
全国ブランドの近江牛は出生地を問わず、生後に最も長く過ごした飼育場所が県内である黒毛和種とされる。県畜産課によると、県内で飼育している約1万頭のうち、9割が県外産の子牛で、宮崎産子牛は最大の3割を占める。
「全頭異常がないことを確認している」。県は17日、口蹄疫の感染が県内に及んでいないと発表した。
3月以降に宮崎から県内に入った計271頭の子牛について、最長3週間の潜伏期間も踏まえた臨床検査を繰り返した結果、今月11日までに異常は確認していないという。さらに感染する可能性がある乳用牛や繁殖のための雌牛なども含めた約2万2千頭の牛と、約1万頭の豚についても、飼育する182の畜産農家に聞き取り調査を実施し、異常はなかったという。
県は今後、飼料運搬車などの車両や農家に出入りする人の靴の消毒を徹底する方針。このため、畜産農家や県立農業高校の関係者を対象にした研修を今月19~21日に県内各地で開催する。畜産農家や県立農業高校に消毒薬として粉末炭酸ソーダを無償配布する方針だ。
また、県内で感染があった場合には、即時に知事を本部長とする対策本部を立ち上げることも決めている。
■品質保持に不安
感染の不安とは別に、宮崎を含む九州で子牛の市場がストップし、買い付けができなくなった余波が広がる。近江牛となる子牛の買い入れ先は宮崎のほか熊本、鹿児島など九州全体で6割を占める。
「別の市場を探さなくてはいけないが、いつ入手できるかめどが立たない」。県内有数の頭数を飼育する竜王町山之上の澤井牧場では、毎月約80頭を九州から仕入れている。うち7割は宮崎産だが、今月は仕入れることができなかった。
同町の別の牧場は今月、急きょ福島産の子牛約10頭を買い付けた。現在飼育している約500頭のうち半分は九州産で、今月入荷予定だった熊本産約20頭が入ってこなかったためだ。「来月も調達できるかわからない」という。
近江八幡市安土町大中の松井牧場も、近江牛として育てている約200頭のうち8割が九州産。5、6月に予定していた計16頭の買い入れはできなくなった。「畜産業全体に影響が出ている。力になれることがあれば」と、全国の畜産農家とともに宮崎の農家への支援金を募っている。
約50軒の畜産農家向けの子牛の買い付けを受託している全農しが畜産部の米谷幹男部長は「子牛の産地が変わると飼育方法やえさが変わり、今の品質を保てるかどうか不安がある。農家と相談しながら様子を見ている状況だ」と話している。
【関連ニュース番号:1005/111、5月18日】
(5月18日付け朝日新聞・電子版:同日付け京都・電子版なども報道)
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001005180003
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P20100518000187&genre=C4&area=S00