地球散歩♪

いもとなおこのBLOG

モザンビークの楽園編。

世界での避難所(キャンプ)運営について

2011年03月21日 | development

 

以下の質問が届いたので、長いですけれど、私なりに回答してみました。

「実は昨日、日本財団で震災避難所の問題を議論していた中で、国連難民高等弁務官事務所の避難所アセスメントのシートが議論になりました。日本の避難所は、避難させることまでしか考えておらず、避難所運営は素人。ここから運営で余計な死者を出さなくてすむようにするにはどうしたらいいか議論していた中で、アセスメントシートが出てきました。ご存知ですか?また、難民キャンプが多数立ち上がって、運営していく場合、どういう体制を国連で組み、情報共有や運営をどう行っているのか、わかりやすいソースはありますか?ご存知でしたら、教えてほしいです。」 

自然災害時のキャンプ運営の体制
国によって難民キャンプ、国内避難民キャンプの運営方法は異なりますが、たとえば今のハイチでは一時期4000以上ものキャンプを、「キャンプ・マネジャー」と言われる担当のNGOまたは国際移住機関(IOM) が運営しています。ハイチは国内避難民なので、国連高等難民弁務官(UNHCR) ではなく、IOMの役割になっています。避難民が国外に出ると、難民となり、UNHCRの出番になります。

<コーディネーション>
コーディネーションは、大まかにわけて、(1) 全体のコーディネーション(インター・クラスター・コーディネーション)と、(2) セクター割りのコーディネーション(クラスター・コーディネーション)と、(3) キャンプごとのコーディネーション、との3つの単位があります。

クラスター・コーディネーション
まず、大規模な自然災害や紛争が発生すると、キャンプ調整運営、シェルター、物流、水・衛生、保健、食糧、教育、子どもの保護、といったセクター(クラスターと呼ばれています)の調整役を担うそれぞれの担当機関が、NGOなどのアクターを集めてセクターごとの調整を行っていきます。たとえば水・衛生や教育セクターでは、ユニセフが指揮をとって、どこで何が必要、ということをアセスメントをし、ニーズを把握し、それをシェアし、NGOなどがそのニーズを埋めていきます。クラスターの調整役は、ニーズと進捗をどんどんアップデートして、どこに何が行き届いていないかを把握し(gap analysis)、皆でそれを埋めていく作業をします。

インター・クラスター・コーディネーション(ICC)
そのセクター割りの調整役が、情報をシェアして、無駄な作業を省くように作業を分担し、できるだけうまく調整するのが、ICCの場で、国連人道問題調整事務所(OCHA) が調整しています。たとえば、キャンプの場所、名前、人数などのリストをキャンプ・コーディネーションの調整担当であるIOMがシェアし、その情報を各セクターの調整担当も自分たちのセクターでそれを使います。合同アセスメントもこの場で決められます。

キャンプ(避難所)・コーディネーション
キャンプマネジャーは、ひとつひとつのキャンプで、キャンプの住民と一緒にキャンプを運営します。各キャンプで、誰が何を支援しているということを把握し、残されたニーズを把握します。ユニセフが水を供給して、ワールド・ビジョンがシェルター、というように。
ハイチのキャンプの情報はこちら

<アセスメント>
アセスメントは、いろいろな機関がばらばらに行くと情報がひとつにまとめられませんし、何より被災者にも迷惑がかかりますので、皆で合同でまたは分担して行うように努力がなされています。通常、Rapid Joint Needs Assessment (RJNA) と言われます。

合同アセスメント・シートは国によってバラバラですが、たとえばスリランカの場合

↑このシートはあまり包括的ではないように思います。

合同アセスメントは、包括的かつ簡潔でなければならなく(情報量が多くなると収拾がつかなくなるため)、さらに、男女何人で何がどのくらい必要、といった一般的な情報だけでなく、子どもやお年寄りや障害者などの社会的弱者のニーズもきちんと把握できるように作られる必要があります。

ハイチの場合は、Departement de la Protection Civil という国の機関が合同アセスメントを調整していて、そのシートをあらかじめ作られ、配布されてあります。ハリケーンなどの災害が来たときにはそれを各地方自治団体が使うことになっています(実際はそこまで行き届いていませんが)。そのフォームは今は手元にないので同僚に送ってもらったら共有します。
合同アセスメントとは別に、各セクター調整役はさらに詳細の全体情報を作り、セクターの関係者と共有しています。通常、3W (Who does What Where) と言われるものです。
<情報共有>
以上のアセスメントや3Wの情報は、調整会議やメーリングリストで共有され、さらにひとつのウェブサイトにまとめられています。One Response
(残念ながらこのサイトは機能がよくなくて、ハイチは以下にごっそり引っ越しました)

他にもたくさんお話しできることはあると思いますが、今日はこの辺で。

またご質問があれば何なりとお知らせください。
私も日本でどのようにコーディネーションがされているのかが興味津々です!
井本直歩子

 


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1 Comments

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ありがとうございます (原尻淳一)
2011-03-21 15:56:35
龍谷大学の大林先生から井本さんにつないでいただきました。運営についてのアドバイス、ありがとうごいざます。とてもわかりやすいです。日本の避難所は、避難したら終わりのような面もあり、その後の運営に関するプロフェッショナル・スキルが低いように見られます。ここのアドバイスをしていただけるのは、大変頼もしいことで、今後も質問をさせていただければと思います。わたしのメールアドレスは、junichi.harajiri@gmail.comになります。メールを通じて、やり取りさせていただけますと幸いです。今後とも、よろしくお願いいたします。

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