一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

LPSA芝浦サロン・松尾香織女流初段4・マッカラン勝負ラスト1(後編)

2011-06-20 01:05:04 | LPSA芝浦サロン
私は受けることを諦め、前の手を継承して、▲3二とと入る。しかしこれがまたも緩手。一手の価値がまったくなく、ハッキリ形勢を損じた。この忙しいときに、何という危機感のなさか。
松尾香織女流初段は予定どおり△6五歩と突き、バタバタと手が進んだ。
「陽子ちゃん、ちょっと良くなったみたい」
船戸陽子女流二段が様子を見に来ると、そのたびに松尾女流初段は、船戸女流二段に現在の心境を吐露する。私はというと、序盤のアドバンテージがとっくにフイになって、やや諦めムードになっていた。
私の▲8五香打に、松尾女流初段、△7一桂。ここで私は▲5八歩と、5七の金を助けた。3九の角で取られそうだっただけに、これは大きな一手だった。またもやる気が出てくる。
松尾女流初段、△6六歩▲同金を利かして、△3四角。一見よさそうな角で、次に△6六角成がある。そこで私は▲8八玉と角筋を避ける。いまは辛抱するしかない。
松尾女流初段、それでも7五の地点で角を切って金を取り、△7六銀と打つ。好調のようだが、この金は5七の地点で、タダで取られていたはずだった。それが角金交換の形になり、楽しみが出てきた。
私は▲7八銀。さらに▲9八角、▲7九桂、▲5九桂と、松尾女流初段の攻めに、なりふり構わず受けた。
私はさっきから頭に血が上り、興奮状態である。松尾女流初段はほんのり上気し、色っぽい。やはりシナモノが懸かっていると違う。しかし女流棋士に真剣に指していただき、私はひそかに感動していた。
△9五歩と来た。私は穏やかに▲同歩。どこかで反撃したいが、やっぱり▲1一竜が△5一歩で遮断されているのが痛い。先の▲5七歩の前に、▲5二歩△同香の交換を入れたのが余計だったと、いまさらながらに悔やまれた。
松尾女流初段、頃はよしと△6八成銀から△6七歩成と殺到する。▲6七同銀△同金。それが下の局面である。ここで私の指した手が問題だった。

上手・松尾女流初段:1三歩、1八竜、2七歩、3四角、3五歩、4三歩、4四銀、5一歩、6一金、6七金、7一桂、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、9五香、9六歩 持駒:金、銀、歩
下手・一公:1一竜、1七歩、3二と、4七歩、5八歩、5九桂、6四歩、6八金、7五歩、7六角、7九桂、8五香、8六歩、8八玉、9九香 持駒:銀、香、歩2

この時点では、私の持ち時間もかなり少なくなっていた。そこから時間を割いて、私は▲6七同金。これが、ここまでの粘りをあたら棒に振った、大悪手だった。6八の金は動かさず、▲5八歩とともに防波堤でなければならなかった。
松尾女流初段は当然、△5八竜。
「あっ!」
私は叫ぶ。この王手をうっかりしていた! てっきり、△6七同角成▲同角と進むものと思っていたのだ。
本譜は王手だから何か合い駒をするしかないが、▲6八香や銀では△6七角成で、次に△6八竜がある。それゆえ仕方なく▲7八香と受けたが、受けになっておらず、△9七金▲7七玉△8八銀とされ、ここで私の投了となった。そしてこの瞬間、松尾女流初段へのマッカラン進呈が決まった。
投了以下は、▲6六玉△5五竜までの詰み。戻って▲6七同金では、▲6七同桂右が正着だった。上手が△6六金ならば、▲9四香がとりあえず詰めろになる。感想戦ではこのあたりをかなり突っつき、△9七歩成~△9三歩や、玉の逃げ道を開ける△6三桂!という手まで出たが、明確な結論は出なかった。よって▲6七同桂右と指せば、松尾女流初段が秒読みだったこともあり(ただし秒読みは1分だった気がする)、勝負はどう転んだか分からない。
年末のこの時期に臨時の出費は痛いが、松尾女流初段との2010年は、10戦して2勝しか挙げられなかったのだから仕方がない。結局、松尾女流初段が強かったということだ。
後日、私はマッカランを購入し、松尾女流初段にプレゼントした。賭けに負けたんだから当然だが、この1年間、指導をしてくださった御礼でもある。松尾女流初段にはたいそう喜んでいただき、今年のバレンタインデーには、お返しのお菓子をいただいた。松尾女流初段には、あらためて御礼を申し上げたい。
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LPSA芝浦サロン・松尾香織女流初段4・マッカラン勝負ラスト1(前編)

2011-06-19 00:21:48 | LPSA芝浦サロン
昨年12月15日(水)のLPSA芝浦サロン、私は松尾香織女流初段におかわり対局を申し込んだ。これが松尾女流初段とのマッカラン勝負、いよいよ最後の対局だ。私が勝てばマッカラン回避、負ければマッカラン進呈である。マッカランといってもピンからキリで、マッカランの味など分からぬであろう松尾女流初段には安物でいいとフンでいたが、あとで調べられても困るので、もしものときには、安売りの店で1万円前後のものを進呈する予定だった。
またも対局時計を使用。松尾女流初段10分、私は30分の持ち時間で、対局開始となった。
▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩。これで松尾女流初段のゴキゲン中飛車がほぼ確定。やはり最後はエースを投入してきたか。
私は▲3六歩から▲3七銀の「超速」を採る。ゴキゲン中飛車は飛車をドンと真ん中に振って玉を囲う分かりやすい戦法だが、「超速」も玉の囲いを後回しにし、素早く銀を出て行くという、これも分かりやすい対抗法である。
対振り飛車では、玉頭位取りなどのじっくりした戦いが自分の棋風に合っていると思う。ただ本局は2局目で、私はスタミナが切れかかっており、速戦即決で行きたかった。
▲7八玉の瞬間に△5六歩。中井広恵女流六段、石橋幸緒女流四段をのぞくLPSAの女流棋士には、それぞれ「マイシステム」があり、松尾女流初段は▲7八玉の瞬間に必ず△5六歩とくる。私がプロだったら、LPSA女流棋士の「マイシステム」を徹底的に研究して、しかるのち力戦形に持ち込むだろう。とにかく、LPSA女流棋士の将棋は研究しやすい。
私は角を換わって▲6八銀。△7六歩を取るなら取れ、だ。と、松尾女流初段は穏やかに△5一飛。いままでは△7六歩を守ろうとしてヘンな形にしていたが、これで飛車を引いてくれるなら、私も満足である。
△8二王の瞬間に、▲3五歩と突っかけた。△3五同歩なら▲4五角で、両成りが受からない。
ここで松尾女流初段の手が止まった。傍らで見ていた船戸陽子女流二段に、
「まずいよー」
とか言っている。それなら▲3五歩は△同歩と取らなければいいのであって、△4四歩ぐらいで互角と思っていた。
ところが松尾女流初段は△3五同歩。私は▲4五角から労せずして馬を作る。私はこのとき、松尾女流初段がわざと緩めてくれているのだと思った。しかし
「陽子ちゃんごめーん、マッカランだめかもー」
と謝る姿は本心のようである。同僚に謝るくらいなら、将棋を勝ちたいだろう。やはり本気を出してくれているようだ。
△2七歩に、私は▲4一馬と切って、▲5八飛と逃げる。△2七歩を空振りさせる意だったが、局後、大事な馬を切ってくれたのはありがたかった、と松尾女流初段の感想があった。
確かにそうで、△2七歩に▲5八飛△同飛成▲同金なら、△4一金取りが残って、下手十分だったかもしれない。しかし上手の美濃囲いも固く、実戦的にはむずかしい。
松尾女流初段、△5一飛。今度は私が、ありがたい気がした。私は▲同飛成から▲3一飛と先着する。お互い桂、香を取り合い、私は「8六」、松尾女流初段は「5一」に香を据えた。
私は▲5二歩と打ってから▲5七歩と守る。しかし歩切れの上手に歩を渡して、疑問だった。松尾女流初段に△5一歩と打たれ、松尾陣が見違えるように固くなったからだ。ここで指す手が分からなくなった私は▲2三歩成。しかし2階から目薬のようなと金が間に合うはずもなく、これは一手パスだった。
松尾女流初段は△1八竜、△3九角とヒタヒタと迫る。私は▲6八金打、▲6六銀と懸命の防戦だ。はなはだおもしろくない展開だが、ここで投げるわけにはいかぬ。
松尾女流初段、
「笑われちゃうかなー」
と△7四銀と打った。この局面が下。

上手・松尾女流初段:1三歩、1八竜、2七歩、3五歩、3九角、4三歩、4四銀、5一歩、5二香、6一金、6四歩、7二銀、7三歩、7四銀、8一桂、8二王、8三歩、9一香、9四歩 持駒:角
下手・一公:1一竜、1七歩、2三と、4七歩、5七歩、5八金、6六銀、6七歩、6八金、6九金、7六歩、7七桂、7八玉、8六香、8七歩、9六歩、9九香 持駒:桂2、歩

次の狙いは△6五歩▲同桂△同銀▲同銀△5七香成▲同金右△同角成だ。
松尾女流初段、序盤のボヤキはどこへやら、すっかりヨリも戻って、いまは自信ありげな顔だった。
(つづく)
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6月17日のLPSA芝浦サロン・将棋学徒

2011-06-18 13:14:44 | LPSA芝浦サロン
17日(金)のLPSA芝浦サロンは、島井咲緒里女流初段の担当だった。仕事が午後4時半で終わったので、すぐに向かいたいが、最近のサロンは、5時~6時の時間帯はガランとしていることが多い。私は一休みしてから田町に向かった。
5時15分ごろサロンに入ると、島井女流初段のキュートキュートな姿があった。きょうはオシャレなメガネをかけている。
「おひさしぶりです」
と笑顔で挨拶をくれた。この一言がうれしい。
たしかに久しぶりで、サロンで島井女流初段に教えていただくのは2月25日以来になる。それまで「ジャンジャンマンデー」や「みんなハッピー!LPSA将棋パーク」で顔を合わせてはいたのだが、将棋を指すまでには至らなかった。
ちなみに3月18日の芝浦サロンは島井女流初段の担当だったが、大震災の余波で、サロンは休止。この日は私にとって特別な日だったので、絶対に島井女流初段に会いたかったが、叶わなかった。まあ、やむを得ない。
きょうは先客が2名いた。Hi氏とTo氏である。いずれも旧金曜サロンのメンバーだ。どちらも当ブログを読んでくださっている。ありがたいと思う。
ふたりが対局を始めたので、私は「小諸そば」で早めの夕食。
戻ってくると、Hi氏に
「明日は行くの?」
と聞かれた。19日(日)の「LPSA芝浦将棋フェスタ」のことかと思い、「いえ」と答えたが、18日、19日の「大野教室」のことだった。それでも答えは「ノー」である。もっとも、私はよくウソをつくので、「行かない」と言いつつ訪れることがある。しかし土曜日はバタバタしていて、行きたくても行けないのが実情だ。
島井女流初段との指導対局に入る。3面指しで、中には珍しや、F氏の姿もある。
島井女流初段は、「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキング」の第2位である。1位は船戸陽子女流二段で盤石、と考えている読者も多いだろうが、順位は日々変動しており、少なくとも島井女流初段と指している時は、彼女が1位に上がっている。
そんな島井女流初段とは「チョコレート勝負」を行っている。しかしまだ3局目だ。
「今年中に決着をつけるんですか?」
「そのつもりです」
これからは金曜以外にも、島井女流初段の登板のときには、出向かなければならない。
Hi氏に、
「この将棋はいつブログに載るの?」
と聞かれる。
「半年後です」
と答えたが、半年後にこのブログがあるかどうか分からない。
Hi氏とTo氏が帰った後、入れ替わりでY氏が来る。Y氏はふだん、女流棋士と指導対局は指さず、会員との将棋を楽しむ。だがきょうは、相手がいない。
手合い係の大庭美樹女流初段が気を利かせ、きょう行われた松尾香織女流初段と中村桃子女流1級の女流王座戦の棋譜を、Y氏に渡した。こうやって、会員をヒマにさせないことが大事だ。
私の指導対局が終わり、Y氏とのリーグ戦に入る。この将棋の初手から数手を、以下に記そう。

先手・Y氏 後手・私
▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△6二銀▲6六歩△4二玉▲4八玉△3二玉▲3八銀△6四歩▲3九玉△6三銀▲2八玉△5二金右▲5八金左△8五歩▲7六飛△5四銀▲7四歩△6三金▲7三歩成△同金▲7四歩△6三金▲7七桂△8四飛▲7三歩成△同桂▲8五桂△同飛▲8六飛△同飛▲同歩△8七歩▲7七角△7六歩…

2度目の▲7四歩が疑問手で、△8四飛とこの歩を取りに来られたため、先手は▲7三歩成から▲8五桂、▲8六飛と暴れざるを得なくなった。ただ▲7三歩成の成り捨ても疑問で、ここで1歩を渡したため、私は△8七歩~△7六歩(これが打てる)と反撃し、以下はむずかしいところもあったが、私が勝った。
F氏も交えた感想戦では、2度目の▲7四歩に替えて▲6五歩と開戦するのがY氏らしい、という話になった。
すなわち△6五同銀▲2二角成△同銀▲7三飛成△同桂▲7一角。この攻めは、意外に厳しい。
さらに序盤の感想戦が続く。私はサラッと流したいところだが、これがY氏の真骨頂で、序盤から将棋を極めるタイプなのである。まるで将棋学徒だ。私も彼の爪の垢を煎じて飲みたいほどだが、どうせ飲むなら室谷由紀女流初段の爪の垢がいい。もちろん山口恵梨子女流初段の爪の垢もいい。
検討に戻る。1度目の▲7四歩に私の△6三金が危険で、ここは素直に△7四同歩がよかった。▲7四同飛△7三歩▲7六飛。
ここでどう指すか、さらに美樹女流初段も交えて検討したが、私は「ここは△6三金の一手」と譲らなかった。固さを重視するLPSAの女流棋士は別の指し手を選ぶだろうが、ここはバランスを取って△6三金である。
さらに感想戦は進む。もう感想戦というより、研究会の様相を呈してきた。Y氏は▲7二歩と垂らし、△7二同飛に▲8三角から▲5六角成と馬を作る。
以上の手順を整理したのが、下。

(1度目の▲7四歩に△6三金と上がらず、△7四同歩と取った場合)
▲7四歩△同歩▲同飛△7三歩▲7六飛△6三金▲6五歩△同銀▲2二角成△同銀▲1六飛△3三銀▲7七桂△5四銀▲7二歩△同飛▲8三角△8二飛▲5六角成。

この岐れをどう見るか。Y氏は「馬が手厚いから先手十分」と主張したが、私も「二歩得が大きく後手十分」と、譲らなかった。ここは読者の判断に任せたいところである。ただしいま考えてみると、▲5六角成では▲6一角成とこちらに成る手もあり、これは後手が容易でないと思う。
帰りはY氏、F氏とガストへ。サイゼリヤの数メートル先にあり、Y氏はこちらがお気に入りなのだ。いい歳をしたオッサン3人が、11時すぎまで、オッサントーク。実に楽しいおしゃべりだった。
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私と島井咲緒里女流初段との結婚生活を、激しく妄想する

2011-06-17 00:09:40 | 将棋雑記
いつぞやも書いたが、妄想するのは自由である。しかし思ったことをそのままブログに公開してしまうのは別問題で、深く検討したほうがいい。と言いつつ公開してしまう。

私と島井咲緒里女流初段が結婚することはまずないが、いや99.99%ないが、もし結婚したらの話。
とある賃貸マンションの一室。季節は夏。外ではセミが鳴いている。
ガランとしたリビングルームで、私と島井女流初段が、ちょっと離れたところで、グターッとした感じで、仰向けで寝ている。上から見ると「ハ」の字型だ。私はTシャツにジーンズ、島井女流初段はTシャツにジャージ姿である。

「…シマイちゃん…起きてる…?」
「…起きてるよ…。イッコーさんは…?」
「うん…? 起きてるよ…」
「…よかった」
「……」
「……」
「…ねえ、お腹空かない…?」
「…そうね」
「…食事の支度、したほうがいいよね」
「…そうね」
「……」
「……」
「…カップラーメン、あったっけ」
「…あった」
「…食べよっか」
「…うん」
「……。お湯、沸かさない?」
「…うん」
「……」
「……」
「お湯、沸かさなくちゃ、食べられないよね…」
「うん…」
「……」
「……」
「…シマイちゃん?」
「……」
「…ねえ」
「zzz…」
「……」
「…うん?」
「……」
「…イッコーさん?」
「zzz…」
「……」
「zzz…」
「zzz…」
「ンガッ!」「ンガッ!」


※くり返し

きょう17日のLPSA芝浦サロンは、島井咲緒里女流初段の担当。
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LPSA芝浦サロン・松尾香織女流初段3・マッカラン勝負ラスト2

2011-06-16 00:08:37 | LPSA芝浦サロン
昨年12月15日(水)は金曜ではなかったが、LPSA芝浦サロンに出向いた。この日の担当は松尾香織女流初段。倉敷藤花戦とは別に、彼女に「マッカラン勝負」を挑んでいたからだ。その経緯は省くが、2010年の残り2戦で2勝しないと、つまり1勝で終わると、松尾女流初段に「マッカラン進呈」という事態になっていた。
昨年の対松尾女流初段の戦績は、この対局まで1勝7敗。「大沢さんには絶対負けない!」宣言をされたということはあるが、それにしたってこれは負けすぎだ。実際、松尾女流初段との平手戦、最初の9局は私の6勝3敗だったのだ。この辺で連勝の目が出ても、ちっとも不思議ではない。ただ、もちろん松尾女流初段は地力があり、残り2戦2勝の確率は五分五分と見ていた。
この日の手合い係は船戸陽子女流二段。ほかに石橋幸緒女流四段や中倉宏美女流二段の姿もあった。ちなみに昨年は、船戸女流二段や宏美女流二段とは、マッカラン勝負をしていなかった。
対局開始。今回は特別に、対局時計を使った。松尾女流初段は持ち時間10分。私は30分のハンデ戦である。松尾女流初段は2面指しだったから、実質持ち時間は5分だ。
松尾女流初段の思いやりであるが、指導対局で対局時計を使用するのは、下手が思う存分考えることができないから味がわるい、ともいえる。ただ私はメリハリをつけて考えるタイプなので、自分の好きなように時間を使えるこのシステムは、私も大歓迎であった。
▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩から、矢倉模様に進む。矢倉は知る人ぞ知る松尾女流初段の得意戦法で、「松尾矢倉」の異名もある。植山悦行七段も、「松尾さんは、矢倉はうまいよ」と太鼓判を押していたほどだ。私との矢倉戦も4局あり、私の1勝3敗となっていた。
宏美女流二段が来て、
「がんばって」
と熱い声援をくれる。この一言をいただけただけで、マッカラン勝負をした甲斐があったというものだ。
このまま組み合っては負けそうなので、私は矢倉中飛車に変化する。といっても矢倉中飛車はほとんど指したことがない。この直前に、NHK杯トーナメント戦で、島朗九段が矢倉中飛車で快勝したのを観たから自分もマネをしたのだと思うが、記憶違いかもしれない。
私は落ち着いて指し、微妙に形勢が揺れながら、中盤の難所を迎えた。傍らでは、石橋女流四段による、第23期竜王戦第6局の大盤解説が行われていたが、見ている余裕はない。
私は4六の飛車で、▲5六飛と桂を外す。△5六同歩なら▲4四角と後手の角を素抜く狙いだ。
松尾女流初段は△4五銀と私の桂も外したが、私は▲5八飛と落ち着いて引く。これで駒の損得はなしだが、△5六の桂馬が▲6八の銀と交換にならなかったから、私が一本取った形となった。
一進一退の中、終盤に突入する。と、松尾女流初段がシビレを切らし、暴走気味の手を指した。これで私が勝勢になったようだ。▲5二銀に△5四王と逃げた局面が下。

上手・松尾女流初段:1一香、1四歩、2三歩、3五歩、4二金、4四角、4五銀、5三銀、5四王、5五歩、9一香、9四歩 持駒:飛、桂2、香、歩5
下手・一公:1六歩、2六歩、3六歩、4一竜、5二銀、5九銀、6六角、6七歩、7五歩、7八金、7九玉、8七歩、8九桂、9六歩、9九香 持駒:金2、桂、歩

最初は▲6五金△同王▲7七桂に、△5四王▲6五金までの読みで、実戦も▲7七桂まで進んだ。ところがここで△6四王とまっすぐ引かれて、アオくなった。しかし▲7六桂がピッタリで、以下は即詰み。実戦もここで投了となった。
「桂があったのかー」
と松尾女流初段。さすがに悔しそうだったが、まだ余裕が感じられた。
将棋は勝てば嬉しいのは当たり前だが、とくに嬉しいのは、指しなれない戦法で勝ったときだ。本局はしっかりと読みも入っていて、自分としてはまずまずの将棋だったと思う。
ともあれ私はカド番を返し、次のおかわり対局が、マッカランを決める大一番となったのである。
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