一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2010年度・女流将棋名局トップ3

2011-06-02 01:22:41 | ランキング
2010年度に指された女流将棋の中で、私が感動した名局トップ3を挙げてみる。

■第1位 2011年2月6日 第3期天河戦挑戦者決定戦
中井広恵女流六段×松尾香織女流初段

天河戦はLPSAの公認棋戦。第1期は中井女流六段、第2期は石橋幸緒女流四段が天河位を獲得した。第3期予選も中井女流六段が挑戦者決定戦に勝ち上がり、これは中井女流六段が石橋天河へのリターンマッチに臨むものと誰もが予想していた。
しかし本局の松尾女流初段は得意のゴキゲン中飛車から大豪相手に一歩も引かず、ねじりあいから優勢になった。中井女流六段、石橋女流四段以外のLPSA女流棋士がタイトル戦に登場する機会は皆無に近い。本局はネット中継をリアルタイムで観戦していたのだが、松尾女流初段が会心の指し回しに、「これはやったか!」と手に汗を握ったものだった。ここで松尾女流初段には①△9七銀②△7九角③△9七角④△9九角と、おもに4つの王手があった。この中で△9七角だけが詰まない。しかるに松尾女流初段の指し手は△9七角!
中井女流六段は玉をするすると逃げ延びると反撃に転じ、最後は松尾玉を華麗に仕留めたのだった。
世の中は無情である。これだけいい将棋を指しながら、松尾女流初段には残念な結果となってしまった。松尾女流初段の無念の胸中を察するに余りあるが、観戦者の胸を揺さぶる棋譜は、それだけで価値がある。文句なく、今年度の名局第1位となった。

■第2位 2011年1月27日 第3期天河戦準決勝
中井広恵女流六段×船戸陽子女流二段

上の挑戦者決定戦に先立つこと10日前に、この準決勝が行われた。予選の大本命は中井女流六段だから、中井女流六段を破れば、挑戦権にぐっと近づく。
本局の船戸女流二段は得意の力戦形に持ち込み、松尾女流初段同様、一歩も引かぬ戦いを展開した。形勢は二転三転し、途中は船戸玉に即詰みの順があったが、それを逃してからは船戸女流二段に形勢が傾き、必勝態勢を迎えた。
しかし時間に追われた船戸女流二段は、▲6三金という簡単な「待ち駒」を逃し、「王手は追う手」で、中井玉を上部に逃す。
やがて中井女流六段の巧妙な反撃を喫し、自玉は受けなしに。船戸女流二段、最後の王手に△7四桂合がピッタリ。船戸女流二段、残念無念の投了となった。
この将棋もパソコンで観戦していたが、船戸女流二段が呆然とする姿が、目に浮かぶようだった。田町まで飛んで行って、抱きしめたかった。
船戸先生、よく頑張ったよ。感動をありがとう。
ということで、これを第2位に推す。

■第3位 2010年7月17日 第4期マイナビ女子オープン予選
室谷由紀女流2級×小野ゆかりアマ

LPSAの公認棋戦では絶対にない、女子高生同士の対局。当日は東京竹橋・マイナビルームでの一斉対局で、この将棋は間近で見ることができた。
室谷女流2級は前局に鹿野圭生女流初段(当時)に勝って、昇級ホヤホヤ。これに勝てば本戦入りで、どうも女流1級に昇級するのではないか、といわれていた。
将棋は両者得意の振り飛車から捌き合いになり、小野アマ勝勢の中、室谷女流2級が114手目、△4七銀と放り込む。これに小野アマが▲2七玉と上がったのが、室谷女流2級の運命を変えた。室谷女流2級は△1七桂成から王手ラッシュをかける。138手目△2八竜で、小野アマ無念の投了。この瞬間、室谷女流2級の1級昇級と本戦出場が決まった。その後室谷女流1級は本戦でも活躍し、今年の4月1日付で女流初段に昇段したのは周知のとおりである。
勝負事に「たら、れば」を言っても詮無いが、もし小野アマが△4七銀の王手に▲4九玉と引いていたらどうなっていたか。恐らく小野アマが勝ち、室谷「女流1級」もなかっただろう。そう考えると、本局は室谷現女流初段の将棋人生を語る中で、ターニングポイントとなる1局だったと思うのである。
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