一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

四たび大野教室に行く(後編)・まだ残っている

2011-06-23 00:07:50 | 大野教室
「後はあなたたちで指してください」
大野八一雄七段がピタリと動きを止めてしまったので、困った私たちは、大野七段の端攻めの構想を参考にして、勝手に指し手を進めた。
すると大野七段が、
「そうだ、こう進んだんだ。思い出した」
と言ったので、安心した。しかし続けて「いや~、このあたりは頭の中が真っ白というか精神的におかしくなっていて、もう何を指したか、忘れていました」
と言うので、私たちの笑いもひきつった。
▲9三桂成△同桂▲9四香。やや細い攻めだが、次に▲9三角成(香成)があるので、後手はふつうは、△9二歩と謝る。しかし吉田正和四段は、△8五桂と跳ねた。これが好手。これに▲9三角成なら△7三玉と逃げた形が軽く、後手には△7七香▲同桂△同桂成▲同玉△7九竜の狙いも生じている。先に先手が△7四歩を咎められれば優勢、と書いたが、本局は△7四歩が好手に変わってしまった。まさに「勝ち将棋鬼のごとし」である(注:△8五桂は、▲9四香の数手後に指されたことが判明しました)。
この△8五桂で、大野七段は観念してしまったようである。このあとは、「自分が負けるよう負けるよう考えて」、「二人がかりで負けにしてしまった」ようだった。以下の進行は意味がない。ここで解説も終了となった。
解説を拝聴して、確かに大野七段は、いい将棋を落としたと思った。そんな大野七段は、いまでもこの局面が頭から離れないという。その無念、レベルは違うが、私にもよく分かる。私も高校1年生の新人戦で惜敗した将棋は、しばらくの間、脳裏から離れなかったものだ。
さらに大野七段は、
「明日で(この対局から)1ヶ月になります」
とも言った。何だか死んだ子の歳を数えているようで、私たちはかける言葉もない。プロ棋士という仕事は、私たちから見れば花形職業だが、内実はかなりシビアで、精神的には必ずしもよくない。大野七段の述懐を聞いて、本心からそう思った。
しかし不幸中の幸いというか、大野七段には、竜王ランキング戦5組昇級のチャンスがまだ残っている。この悔しさを以降の対局にぶつけて、是非とも昇級を勝ち取ってもらいたい。

…と、以上の文章を加筆修正して、次号の「将棋ペン倶楽部」に投稿してしまおうか、などと考えたりする。ブログに発表したものを投稿しても別に構わないと思うが、どうなんだろう。もう、タイトルも決まっているのだが。
コメント (3)
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