Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

マルセイユの海洋教育ーその3 ナチュレスコープ

2009-10-10 | フランスの海洋教育
 セカルディー博士に案内され,ナチュレスコープという,博士の教え子がディレクターを務める海洋教育センターを訪問する。彼は,マリンサイエンスを大学で学び,修士は教育学である。このNPOは,国や州政府,マルセイユ市から資金的な支援を受けている。職員は,10名ほどおり,マネージメントの他に教材作成などを彼が担当,指揮する。

 毎日のように訪れる小学生の生徒に,事務所に併設された教室で海のことを教え,目の前に広がる美しい遠浅の海岸でフィールドワークを行う。この教室の大きなテーマは,海洋保護である。漁業についても教えている。漁獲が減少していることを問題視している。いわゆる日本のような食=海という印象ではない。海は保護の対象だ。漁業者は毎年減少し,現在はマルセイユで1000人足らずである。かつての漁港は,高所得者が所有するヨットでひしめきあっている。漁船は景観から外された。今は離れた場所が母港になっている。

 マルセイユ周辺は1年中海水浴が出来る。気候がとても安定している。リゾートの場所として観光客が大勢集まり,漁村のイメージはまるでない。確かに,シーフードが堪能できるレストランは多い。スズキとタイの養殖はここマルセイユで始まった。しかし,今は漁村というイメージは薄い。

 ポシドニアと呼ばれるスガモによく似た海草を増やす運動が活発だ。稚魚のゆりかごとして重要であるという。これも,海洋保護活動の一環である。しかし,話の中で,海藻にはあまり触れられていない。小さな海藻はあるが,ラミナリヤ(昆布)のような食用となるものは生えていない。実際,海岸線に海藻が打ちあがっていない。

 また,アメリカと同様に産業活動を許可されたエリアと保護エリアを分けている。地中海大学の対岸に広がる産業エリアからは,黒い空気がもくもくと上がり青い空を覆う。ちょうど,昨年海洋教育者学会でジョージア州をおとずれた際,サバンナの保護区と産業エリアの極端な空気のギャップに驚いたことを思い出す。

 マルセイユでは,約60近くのNPOが海洋教育活動に従事している。ナチュレスコープでは,年間1万人の子どもたちに海洋教育を施しているという。(写真はナチュレスコープのディレクターのクリルさん,事務所にある生物と環境との関わりを学習する教室)