三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「そらのレストラン」

2019年02月06日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「そらのレストラン」を観た。
 https://sorares-movie.jp/

 感心する点はいくつかあった。
 肉を食べるにはその動物を殺さなければならない。白魚など、小さな動物は生きたまま食べることもあるが、最終的には殺すのである。動物に名前を付けてしまうと、殺すのに心理的なブレーキが掛かってしまう。だから畜産業者は家畜に名前を付けない。昔は自宅で鶏を飼っていて、その鶏を食べるときには子供が〆ることが多かった。首をはねて逆さまにして血を出し、羽をむしる。内蔵を取り出して血を洗い、それから捌いてモモとムネと手羽とササミとガラに分け、ササミは生で食べたり、肉は唐揚げにしたりする。そういうものだと思っているから抵抗はない。
 しかし分業の発達した社会では、主婦が鶏の首をはねたり牛の脳天にゲンノウをおろしたりすることはない。殺す人と捌く人はそれぞれ別にいて、主婦はせいぜいスーパーで買った生の肉を料理するくらいである。スーパーで買った肉も、生前は元気に歩いていた筈だが、そんなことを考えたりすると、食べづらくなる。しかし、あえて牛や豚を殺したりする必要はないが、生き物を食べているということを忘れないでいるのは悪いことではない。植物も含めれば、人間が食べているものはすべて生き物なのだ。
 農業や漁業は生き物と直接に接し、その生命で多くの人々の空腹を満たしている。とても立派な仕事だと思う。嘘ばかりついている政治家にはの現場の厳しさはわからないだろう。生命を育てて食料とするのは、戦争で人を殺すことの正反対のことである。農業や漁業は生命を大切にすることで成り立っている。戦争は生命をゴミのように捨て去ってしまう。「それが世界平和だ」というマキタスポーツのセリフは、実は奥が深いのだ。

 料理はおそらく本職の料理人か、フードコーディネーターによるものだと思う。盛付けも食材の組合せもバランスがよくて綺麗だ。食べてみたい料理だ。そう思うのは見た目だけではない。使っている野菜がすべて無農薬なのだ。その上、羊は無農薬の野菜を食べているらしい。つまり映画に出てくる食材は皆、高級食材ばかりなのである。無農薬の野菜が高くて農薬をいっぱい使った野菜や遺伝子組換えの野菜が安いということは、安全な食材が高くで危険な食材が安いということだ。そんな状態は、なんとしても改善しなければならない。政治の役割である。戦争の準備ばかりをしている場合ではないのだ。

 本上まなみがいい。綺麗だし上品だ。謎めいているところも含めて、掃き溜めに降り立った鶴のようである。こういう人が奥さんで素直で明るい子供がいて、何の不足があろうか。幸せを絵に描いたような暮らしだが、それなりに不安や人間関係の軋轢はある。苦労はするが、悪人は登場しない。昭和のホームドラマのようである。登場人物のあまりの前向き加減に少し辟易させられるが、役者陣の演技は実に達者で、それなりに楽しく鑑賞できた。裏のテーマに食の安全があるとすれば、意外に奥行きのあるドラマである。

 感心する点はいくつかあった。 肉を食べるにはその動物を殺さなければならない。白魚など、小さな動物は生きたまま食べることもあるが、最終的には殺すのである。動物に名前を付けてしまうと、殺すのに心理的なブレーキが掛かってしまう。だから畜産業者は家畜に名前を付けない。昔は自宅で鶏を飼っていて、その鶏を食べるときには子供が〆ることが多かった。首をはねて逆さまにして血を出し、羽をむしる。内蔵を取り出して血を洗い、それから捌いてモモとムネと手羽とササミとガラに分け、ササミは生で食べたり、肉は唐揚げにしたりする。そういうものだと思っているから抵抗はない。 しかし分業の発達した社会では、主婦が鶏の首をはねたり牛の脳天にゲンノウをおろしたりすることはない。殺す人と捌く人はそれぞれ別にいて、主婦はせいぜいスーパーで買った生の肉を料理するくらいである。スーパーで買った肉も、生前は元気に歩いていた筈だが、そんなことを考えたりすると、食べづらくなる。しかし、あえて牛や豚を殺したりする必要はないが、生き物を食べているということを忘れないでいるのは悪いことではない。植物も含めれば、人間が食べているものはすべて生き物なのだ。 農業や漁業は生き物と直接に接し、その生命で多くの人々の空腹を満たしている。とても立派な仕事だと思う。嘘ばかりついている政治家にはの現場の厳しさはわからないだろう。生命を育てて食料とするのは、戦争で人を殺すことの正反対のことである。農業や漁業は生命を大切にすることで成り立っている。戦争は生命をゴミのように捨て去ってしまう。「それが世界平和だ」というマキタスポーツのセリフは、実は奥が深いのだ。
 料理はおそらく本職の料理人か、フードコーディネーターによるものだと思う。盛付けも食材の組合せもバランスがよくて綺麗だ。食べてみたい料理だ。そう思うのは見た目だけではない。使っている野菜がすべて無農薬なのだ。その上、羊は無農薬の野菜を食べているらしい。つまり映画に出てくる食材は皆、高級食材ばかりなのである。無農薬の野菜が高くて農薬をいっぱい使った野菜や遺伝子組換えの野菜が安いということは、安全な食材が高くで危険な食材が安いということだ。そんな状態は、なんとしても改善しなければならない。政治の役割である。戦争の準備ばかりをしている場合ではないのだ。
 本上まなみがいい。綺麗だし上品だ。謎めいているところも含めて、掃き溜めに降り立った鶴のようである。こういう人が奥さんで素直で明るい子供がいて、何の不足があろうか。幸せを絵に描いたような暮らしだが、それなりに不安や人間関係の軋轢はある。苦労はするが、悪人は登場しない。昭和のホームドラマのようである。登場人物のあまりの前向き加減に少し辟易させられるが、役者陣の演技は実に達者で、それなりに楽しく鑑賞できた。裏のテーマに食の安全があるとすれば、意外に奥行きのあるドラマである。