喜多院法興寺

住職のひとりごと

歌舞伎俳優の中村勘三郎さん逝く 57歳

2012-12-06 06:25:22 | Weblog

12月6日 編集手帳 読売新聞

{樋口一葉は随筆に書いている。〈鈴虫はふり出てなく声のうつくしきければ、物ねたみされて 齢 よは ひの短かきなめり…〉(あきあはせ)。鈴虫は鳴き声がひいでて美しいので、妬まれて寿命が短いのだろう、と◆芝居の神様にも嫉妬深い 野暮天 やぼてん がおられるのか。声がよくて姿がよくて、芝居がよくて舞踊がよくて、古典がよくて現代劇がよくて、笑わせてよくて泣かせてよくて、“芸の虫”っぷりがよくて、遊びっぷりがよくて、人柄を誰からも愛されて――◆足りないものは何ひとつない 梨園 りえん の華、中村勘三郎さんが病気で急逝した。57歳は若すぎる◆「平成中村座」公演などで新風を吹き込み、新しい観客も開拓した。60代、70代での円熟を、あるいは円熟を拒絶しての冒険を、装いの改まる歌舞伎座で見たかったファンは無念だろう◆勘三郎さんがかつて父親とも息子とも踊った『連獅子』の長唄にある。 牡丹 ぼたん は百花の王にして 獅子は百獣の長とかや…。歌舞伎界の牡丹となり、獅子となるはずの人だった。死なれてみて惜しくない人などこの世にいないが、許された齢ひのあまりに短き中村屋は格別である}


 歌舞伎界に新風を吹き込み、テレビや映画、時代劇などで人気を集めた歌舞伎俳優の中村勘三郎さんが5日午前2時33分、急性呼吸窮迫症候群のため都内の病院で死去した。57歳だった。勘三郎さんは今年6月に食道がんであることを公表。7月に摘出手術を受け成功。術後経過も順調で病棟内を歩けるほど回復していたという。だが、抗がん剤治療などで免疫力が低下し肺炎を発症、呼吸不全が進行する重篤な事態に陥っていた。57歳は若すぎる死だ。中村勘三郎は寿命が短いのを無意識のうちに察知して、短い間にどん欲に芸の道に奔走し力尽きた感がしてならない。ご冥福を祈りたい。





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