教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

「出て行け」のひと言

2006年08月19日 | 子育て
以前は伝家の宝刀。聞き分けのない子どもを叱りつけ、最後に「これでもわからんかったら出て行け」と言えば、一件落着となりました。しかし「出て行け」のひと言に効果があったのは、当時の社会的な背景があったからです。

第1に「出て行け」と父親が言っても、子どもに対して「お父さんの気持ちが分かるか」とホローしてくれる貴重な人材がかつてはいたわけです。それがおじいちゃんであるか、お母さんであるか、兄姉であるか、近所のおじちゃん・おばちゃんであるかは別として。しかし核家族化の進行と地域社会の空洞化の中で、親が発した「出て行け」のひと言は、子どもだけで受け止めなければなりません。そして多くの子どもには、その言葉に込められた親の気持ちを理解することができないのです。

第2に、昔の子どもたちには親の許可なく寝泊まりするところがなかったのです。以前は町内のどこを探しても子どもの溜まり場になっているような家は存在していませんでした。しかし現在では、友人の出入りどころか寝泊まりさえも自由になってしまっている家が、たとえみなさんのご近所にはなくても、残念なことに世間にはあるのです。
この社会の変化は、子どもたちの「家出」という概念を全く変えてしまいました。子どもにとって家を出るということは、お気楽な無断外泊(「プチ家出」と名付けられている)でしかありません。そこには、昔の「家出」という言葉に込められた強い決意=「二度とこの家の敷居をまたぐか!」は、全くありません。親がうっとうしいと思えば友人や彼氏・彼女宅に外泊し、お金に困れば家に帰ってくるのです。

「まさか本当に出て行くとは思わなかった」と言ってあわてるのなら「出て行け」という言葉を使わないことが得策です。