教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

10月職員会議への報告

2008年10月30日 | 不登校問題
1.表1 欠席生徒と日数 略
2.表2 学年欠席率 略

3.考察
【各学年の分析】 略

【欠席数の増加は学校不適応の増加である】
 学校への不適応は、暴力・いじめ・喫煙・家出など非行という形態をとる場合と、不登校・引きこもりという形態をとる場合がある。非行と不登校とは、現れ方の違いはあるが、どちらも子どもたちが学校生活に意味を見出さず苦痛を感じているという点では同一であり、生徒指導上の重大な課題であることに変わりがない。
 ◎中のように、すぐに非行傾向が現れにくい学校では、欠席という形で現れる子どもの『変化』に気づき、対応をしていく必要が大切である。豊中市内中学生によって引き起こされた轢逃げ事件の加害者も、学校を休みがちであったと報道されている。学校を休んでいる間に子どもの心の中でどんな変化が起きているのかは、誰も予測できないのである。
 欠席は子どもたちの不適応のサインだと気づき、支援の手を差し出していかなければならない。

【不登校は連鎖する】
 「不登校はどの学校、どのクラス、どの生徒にも起こりうる」とされている。煽られる競争主義の中で子ども集団の一番弱い部分が不登校となる。不登校の生徒が多いというのは、生徒たちにとって居心地の悪い集団=競争主義・力の論理・無関心などの傾向が強い子ども集団が、すでに小学校時代から形成されているといえる。(2007年9月)
 不登校は個人の問題ではなく、子ども集団の質が、その弱い層に及ぼした結果である。
 一人の不登校生徒がいるということは、その周囲に数名の不登校予備軍がいると考えなければいけない。その予備軍となっている子どもたちにとっては、教室で主のいない机を見続けていることは、そこに自分を重ね不安を増大させることとなる。今、欠席している生徒に対して、担任や学年教員が心を痛めている姿が周囲の子どもたちに見えれば、「次にしんどい子ども」は、自分も支えられることが実感でき、不安が和らぐ。欠席した生徒について、誰も口にしない重苦しい空気ができると、「次にしんどい子ども」の不安は倍増し、不登校の連鎖が生まれる可能性が増大する。たとえ成果が上がらなくても、休んでいる子どもへの支援は、今来れている子どもたちへのためにも必要である。

4.方針 略


平成20年度 不登校対応専任教員の取組について~大阪府教育委員会への報告から

2008年07月26日 | 不登校問題
1. 配置市及び配置校における不登校の現状について
       市中学校    市小学校  ◎中学校   在籍生徒数
 平成16年 348(3.60)  73(0.35)  21(6.38)  329
    17年 342(3.58)   96(0.45) 11(3.93)  280
    18年 279(2.96)   77(0.35)   6(2.44)  246
    19年                 3(1.32)  227
   ※小規模校のため数人の転校生により不登校出現率が大きく変化し統計的な意味は薄い。

2. 平成18年度の活動計画及び取組状況について
(1)配置校における今年の「不登校の未然防止に向けた取組」について
①これまでの取組(3月~10月)
・小中連絡会(3月と6月)   
・欠席がちな生徒への支援について(4月 基本方針論議)
・別室登校支援体制開始(該当者1名…月と木の週二日登校が本人目標)
・校内ケース会議開始および社会福祉協議会との連携と家庭訪問(5月)
・生徒会主催中学校新入生歓迎会(5月)  
・支援室夏季登校(宿題の取組みと調理実習~週2回)
・三校合同研修会(8月 中学校スクールカウンセラーの取組についての報告)
・夏休み明けの子どもたちの欠席をどうみるか(対策委員会・職員会議9月)
・小学校キャリア教育への中学校教員参加(9月)

②今後の取組(11月~3月)
 11月 校区不登校対策委員会…行事の中で子どもたちの変化の報告を中心に
 12月 小中一貫教育研究発表会(不登校・学力保障・行事交流を中心に)
 2月 校区不登校対策委員会…中3の進路と小6の課題を中心に

(2)小中連携による取組の状況
 子どもを繋ぐ…クラブ体験(11月~3月)・夏祭り企画・文化祭招待(9月)・体育大会招待(10月)・中学生絵本読み聞かせ(12月)
 職員を繋ぐ…小中連絡会・三校合同研修・校区人権研修・研究授業参加・校区不登校対策委員会
 中学校を知る…中学校見学会・体験授業・合同特設授業
 小学校への支援…中学校スクールカウンセラーの教育相談・キャリア教育授業実施
 校区教育相談室…小中三校を対象とした教育相談・校区新聞発行
 小中連携での教材作成…算数(数学)・国語
(3)不登校対応専任教員として配置市全体の取組に対する活動状況
 市不登校対策研修会講演(8月)市立中学校夏季研修での講演(8月)
 少年文化館だよりを通じた校区の取り組み紹介
 担当指導主事との連絡会

3.取組の成果と課題について
 ①中学校新入生への丁寧な指導を踏まえ不登校数の激減ができた。
 ②職員組織(校区不登校対策委員会・校内不登校対策委員会)を機能化させ、中学校入学前の情報を収集できた。また別室登校支援体制を定着させ引きこもり→別室登校→教室登校という道筋を作れた。
 ③異年齢集団交流により同世代のつながりだけでは見ることのできない中学生の優しさを引き出すことができ、生徒集団の安定につながった。
 ④これら成果は小中連携で可能となったが、まだまだ担当者間で小中が繋がっている側面が大きい。生徒指導・学力保障・自主活動などで多くの分野で小中の絆を深めたい。

大阪府不登校対応専任教員の配置と任務

2008年04月21日 | 不登校問題
 大阪府独自の取り組みにより府下に14名が選任教員として配置されました。私は今年4年目の担当となりました。

大阪府不登校対応専任教員の配置と任務
1 主旨(略)
2 任務
  不登校対応専任教員は、おおむね次の事項を担当する。
  ○ 配置市町村における不登校の課題解決のために、学校内外にわたって活動する。
  ○ 配置拠点校においては、不登校児童生徒及び保護者の対応、スクールカウンセラーや相談員等との連携、校内適応指導教室などへの関わりなど、不登校解決のための核となる。
  ○ 家庭、地域や関係機関との連携を担うことにより、学校内外からサポートの充実を図る。
  ○ 各中学校及び小学校との連携を図り、市町村内の不登校児童生徒の状況を把握するとともに、不登校児童生徒に対する取組及び不登校の予防・早期発見についての調査研究を進める。
  ○ 大阪府教育委員会が主催する研修及び研究会等に参加し、配置市町村内にその成果の普及にあたる。
3 資格
不登校対応専任教員は教諭のうちから、次の各号に該当するものを市町村教育委員会が任命し、府教育委員会に報告するものとする。
○ 生徒指導及び不登校の課題解決に熱意と識見を有し、実践力、企画・調整力に優れた者
○ 教職経験が豊かな者

参考
大阪府指導総合コーディネーターの配置と任務
3.資格
指導総合コーディネーターは教諭のうちから、次の各号に該当するものを市町村教育委員会が大阪府に報告するものとする。
○ 教育指導に熱意と識見を有し、実践力、企画・調整力に優れた者
○ 教育経験が豊かな者

不登校問題を考える①子どもが学校に来るということ

2008年04月18日 | 不登校問題
子どもたちの不登校を考える前に、子どもたちと学校がどのように繋がっているのかを考えてみたいと思います。言い換えると、子どもたちがなぜ学校に来ているのかを考えなければなりません。私は子どもが学校に来る要因を次のように考えています。

 ≪第1に規範意識≫学校には行くものだし、行かねばならないと親子共に考えている場合です。
 ≪第2に家庭の力≫子どもを学校に送り出す力で、衣食住の安定を基本としながら子どもの就寝や起床習慣を身に付けさせたり、子どもの抱える問題を解決してやったり時にはほめたり励ましたりしながら登校させるという環境作り全般を指します。
 ≪第3に利益誘導≫将来○○高校に行き××大学に入り安定した生活をしたいという願いです。
 ≪第4に目標≫中学校生活に目標を持っている子どもです。クラブ活動・行事・学校生活・友人関係・学習などに自分なりの目標を持っていて、それを達成したいと考えている子どもたちです。
 ≪第5に楽しさ≫とにかく学校に行くのが楽しく学校が好きと考えている場合です。

 規範意識は大切ですが、既に形成された規範意識に頼っているとそれが崩れると学校は窮地に陥ります。家庭の力も大切ですが、親たちの生活も脅かされている今、家庭の教育力も危うくなります。利益誘導も、それが達成されないことが分かるや否や消え去ります。ようするに第1から第3は学校が作り出したものではないので、そんなものに頼っていては(もちろん「ある」に越したことはないのですが・・)子どもたちと学校の絆はできません。
 
 学校が頼れる子どもとの繋がりは、第4の『目標』と第5の『楽しさ』です。この二つは、学校の取り組みによって伸ばすことができます。不登校・生徒指導・集団づくり・学習指導の取り組みの中で、第4第5の要因がどのように生かされているか意識しなければならないと思います。
 
 

不登校対策委員会の論議から(200X年4月)

2008年03月24日 | 不登校問題
1.11月の欠席者(略)
2.各学年の欠席率(略)
  学年延べ欠席者数÷授業日数÷学年在籍数=学年欠席率

3.考察~昨年度の取り組みを振り返って
 【欠席問題をどうとらえていたか】昨年の不登校対策委員会で①小規模校であるが故に学年の子ども集団の持ち味の差が、顕著になりやすい、②小学校時代から不登校生を抱えていた学年は不登校者を増大しやすいというのが経験則としてある、③それぞれの学年の傾向をよく把握し指導にあたる必要があるという指摘を行った。

 【不登校を作り出す要因】としては所属する学年集団の弱さとして考えた。文部科学省も認めるように「不登校はどの学校、どのクラス、どの生徒にも起こりうる」ものである。社会生活が不得意という個性を持っているものは残念ながらいつの世にも存在する。しかしどの層まで抱えられるかがその集団の質であると思う。多様な個性を受け入れられる強い集団の中では活かされる個性が、少数者を排除しようとする脆弱な集団の中では弾かれてしまう。その結果、煽られる競争主義の中で子ども集団の一番弱い部分が不登校となる。不登校の生徒が多いというのは、他の生徒たちにとっても居心地の悪い集団=競争主義・力の論理・無関心などの傾向が強い子ども集団が、すでに形成されていると考えられるのではないだろうか。
数字についても①数字を目標とする「成果主義」・「ノルマ主義」は教育的とは考えられず、数字に表れないものを感じ取る感性こそが教員にとって大切と考える。②しかし同時に数字を検討し私達の感性や感覚が間違っていないか検証することも大切であり、そのため子どもの実態把握と私たちの取組の検証のためにも不登校の数字を大切にしていきたいとした。

 【転入生への対応】3年生は、2年時の3学期に○(私立M中)、3年時の4月に○(私立R中)というように相次いで転入生を受け入れながらも、彼らの学校生活定着に成果を上げてきた。更に卒業間近の1月15日に不登校生徒○の転入を受け入れ、彼女の1年ぶりの教室登校を得ている。受け入れ時の学校・クラスでの丁寧な対応が成果をもたらしたと思う。保護者との懇談で話し合ったのは、「小規模校で家庭的」いう保護者の意見は、反面では「同学年の生徒はみんな知り合い」という濃い人間関係を作っている面もあり、それがストレスになる可能性もあるというリスクについても説明した。それ以外では①担任の性別への希望②クラス生徒への説明の仕方③教室・保健室・別室・カウンセリングルームなど中学校として可能な選択肢を提示④転校決定への本人の意志意欲のあり方⑤卒業写真の掲載の有無などについて話し合った。

 【新学期へ向けた働きかけ】別室登校の生徒に対しては冬休み中に年賀状やメールを送るなど冬休み中に連絡をとりあったことが新学期のスタートに結びついていると思う。
 昨年のケガ以降休んでいた養護学級在籍の○への働きかけは、3学期始業式の欠席を見て翌日から開始した。初日は障担と私が迎えに行ったが登校にはつながらなかった。特にテレビに対する執着が強く、無理に消すと自傷行為につながった。枕元にはお菓子も転がっていた。本人にとってあまりにも快適な環境が登校をしぶる原因にもなっていると考え、母親に「本人が寝ている間にテレビのアンテナを外す」ことをお願いし帰宅した。その結果、翌日迎えに行ったときには、テレビが映らず本人も諦めができ、意外とあっさり登校できた。今後の長期休業明けの参考としたい。


不登校対策委員会の論議から(200X年11月)

2008年03月23日 | 不登校問題
1.11月の欠席者(略)
2.各学年の欠席率(略)
  学年延べ欠席者数÷授業日数÷学年在籍数=学年欠席率

3.考察
 【問われる生徒を見守る視点】北海道のイジメ遺書問題をきっかけとして11月には、全国で子どもたちのイジメ・自殺問題がクローズアップされた。学校に行きにくい子ども、学校が苦痛に思える子どもたちの訴えは、多くの場合言葉にならない。しかし報道された事件を見てみると、死に至る「きざし」に周囲の者が気づいていたケースがほとんどである。事件になった学校の関係者も「気づいてはいたが、まさかそこまで思い詰めていたとは・・」と悔やんでいるのではないだろうか。私たちはこのような事件報道に接し、チームとして子どもたちの情報を集め、その問題解決にあたれるよう、取り組みを強めなければならない。そのため職員朝礼・学年会さらに雑談の中でも子どもたちの指導に必要な情報が共有されるようにしていきたい。

 【欠席傾向にない生徒の体調不良の増加】11月になり体調不良による単発の欠席者が増えた。1年では○/○、2年では○/○、3年では○/○が単日の欠席者である。そのうち前月に休んでいる者は1年で○/○、2年で○/○、3年で○/○であり、今まで欠席傾向になかった生徒の欠席が目立った。

 【急増した3年の欠席】10月の3年生は欠席率を減少させた。前回の会議で「3年生の欠席率の低さは①別室登校の定着②総合学習発表会・体育大会などの行事への集中とクラスの盛り上がりが影響したのではないかと考えられる。そうだとすれば今後子どもたちが進路で孤立しないための工夫が必要だと考える。」と分析した。しんどい取り組みではあったが、子どもたちの力を結集させた学校行事の成功は、欠席者を減らすことを実証した10月であった。11月になり3年生の欠席は大きく増えた。○君と○君の欠席が改善された中でもやはり増えてきた。厳しい時期を迎える3年生であるが、今後の進路や卒業の取り組みの中で、子どもたちの悩みや不安を受け止めていくことが大切である。

 【1年の欠席減少】2・3年生ともに欠席率を増やした11月でしたが、1年生だけは欠席率を○%→○%へと減らした。これはほぼ全欠状態であった○さんが別室登校を始めた影響が大きい。○さんが来なければ○%と、前月と変わらない数値である。小学6年時の欠席数を考えれば、欠席者がいつ激増するか分からないことを常に意識しなければならない。

 【家庭の支えの厳しさ】厳しい家庭環境の中で生活をしている子どもたちが増えている。○小学校を卒業した今年の1年生は一人親家庭が50%だった。府下の研究会で「4割にせまる一人親家庭で子どもたちの生活が大変」という指導困難校の声を聞くが、私たちの学校はそれを遙かに上回っている。欠席者の中にも、家庭の厳しさを抱える生徒が少なくない。表面上の落ち着いた環境に目を奪われ、子どもたちの置かれている状態の厳しさを忘れてはならない。

4.方針(略)

不登校対策委員会の論議から(200X年10月)

2008年03月22日 | 不登校問題
1.10月の欠席者(略)
2.各学年の欠席率(略)
  学年延べ欠席者数÷授業日数÷学年在籍数=学年欠席率

3.考察
 【9月報告】小規模校であるが故に学年の子ども集団の持ち味の差が、顕著になりやすい。その中で「小学校時代から不登校生を抱えていた学年は不登校者を増大しやすい」というのが経験則としてある。それぞれの学年の傾向をよく把握し、指導にあたる必要があると思う。小学校6年時に子ども間のトラブルで不登校傾向の多かった○年生は、不登校に陥りやすい傾向を抱えた学年集団であるという認識を持っておく必要がある。

 【数字について】数字を目標とする「成果主義」・「ノルマ主義」は教育的とは考えられない。数字に表れないものを感じ取る感性が教員にとって大切と考える。しかし同時に数字を検討し、私達の感性や感覚が間違っていないか検証することも大切であると考える。そのため子どもの実態把握と私たちの取組の検証のためにも不登校の数字を大切にしていきたい。

 【○年がトップに】2学期明けの欠席の多さが気になった9月であった。(9/11の調査参照)3年生はその後の欠席率が○%から○%に持ち直した。その結果9月期の欠席率で、○年生はどの学年をも上回る欠席率となってしまった。
 
 【不登校を招く集団の弱さ】「不登校はどの学校、どのクラス、どの生徒にも起こりうる」とされている。煽られる競争主義の中で子ども集団の一番弱い部分が不登校となる。不登校の生徒が多いというのは、生徒たちにとって居心地の悪い集団=競争主義・力の論理・無関心などの傾向が強い子ども集団が、すでに小学校時代から形成されているといえる。

 ○年生では( )( )( )( )などの欠席数は、小学校時代と比べ改善されているが、( )( )のように新たに休みがちになった生徒も見られる。更に欠席日数は少ないが人間関係にストレスをかかえ登校をしぶる生徒も出現している。長期間引きずってきた集団の弱さが、この時期に顕在化したと考えられるものもある。私たちの取組の効果を上げるため、子どもたちの情報を学年を越えてつなぎ合わせ、共有していく事が大切である。

 【3年減少の要因は?】3年生の欠席率の低さは①別室登校の定着②総合学習発表会・体育大会などの行事への集中とクラスの盛り上がりが影響したのではないかと考えられる。そうだとすれば今後子どもたちが進路で孤立しないための工夫が必要だと考える。


4.方針(略)

不登校対策の取組について~国立教育政策研究所への報告より

2007年09月01日 | 不登校問題
1 学校の概要
千里ニュータウンの開発にともない1966年に開校した本校は、校区全てが集合住宅という特徴を持っている。広い敷地にゆったりと建てられた校舎の中で、子どもたちは伝統的に落ち着いた生活・学習態度をおくっている。開発後の人口急増により、かつては児童数1400人を超える大規模校であったが、その後地域住民の高齢化が急激な小規模校化を招き、児童数は200人を切るまでに減少した。しかし4年ほど前から住宅の建て替えが始まり、一昨年は半年で児童数が1.5倍になるという激増期を迎えた。保育園や幼稚園時代からほぼ同じメンバーで育ってきた子ども集団にとって転入生を迎えることが新鮮な喜びであると同時に、生活環境の急変が新・旧双方の児童に対して大きなストレスを与える要因にもなっている。築40年を越える団地が立ち並ぶ中に現れたオートロック式の高層マンション群は、校区内の様々な課題を顕著化させた。今までほぼ全員が隣接する公立中学校に進学していた子どもたちの中から私立中学校を受験する集団が現れた。また学級集団になじみにくかったり、欠席がちになるという子どもが低学年から出現し、同時に子育てに悩む若い親たちも増加してきた。中学校では多くの不登校生を生み出していたことが課題となっていた。このような校区の変化に小学校と中学校がそれぞれの持てる力を併せ立ち向かうため、平成16年度から市小中一貫教育研究指定校、平成17年度から不登校対応専任教員配置校となり、隣接中学出身の専任教員が小中兼務となった。

2 取組の概要
(1)不登校未然防止に向けた取組~子ども集団の質を高める
(2)小・中連携した教育活動により学校の教育力をアップさせる
(3)不登校解決へ向けた職員組織の機能化

3 取組の具体的な内容(経緯、組織上の役割分担等)
(1)について~「不登校はどの学校、どのクラス、どの生徒にも起こりうる」と言われる。競争主義の中で子ども集団の一番弱い部分が不登校としてあらわれる。不登校生が多いというのは、子どもたちにとって居心地の悪い集団=競争主義・力の論理・無関心などの傾向が強い集団が形成されているといえる。だとするならば、あらゆる学校行事を通じて、「競争ではなく切磋琢磨」「排除ではなく相互理解」を大切にする子ども集団の形成を目指さなければならない。遠回りかもしれないが、小学校での異年齢集団の交流(遊び・給食)、中学校での新入生歓迎会・総合劇発表会(文化祭)・体育大会等の取組を大切にする。
(2)について~小・中学が互いに最良の相談機関となり中学での不登校急増を防ぎたい。
 ①中学校の取組を広げ小中の子どもをつなげる…そのため夏季クラブ体験・文化祭や体育大会招待・中学生創作絵本読み聞かせ・中学校見学会・授業体験・合同特設授業等、小中が共に取り組める行事を行う。
 ②職員を繋ぐ…小中連絡会・三校(校区)合同研修会・校区人権研修会・研究授業参加・校区不登校対策委員会等を通じ、小中合同での子ども論議を行う。
 ③校区教育相談室…小中三校を対象とした教育相談(教員・保護者対象)や校区新聞発行(週1~2回)を通じ、取組を校区職員・児童生徒・保護者全体に広げる。
(3)について~子ども集団の育ちの問題として不登校をとらえ返しデーターを共有する。数字のみを目標とする「成果主義」は教育的とは考えられない。数字に表れないものを感じ取る感性が教員にとって大切である。しかし数字を検討し私達の感性や感覚が間違っていないかを検証することは大切である。不登校対策委員会は子どもの実態把握と私たちの取組の検証のため日々の欠席者やそれらの推移といった数字を大切にし、欠席数や欠席理由への分析を行い職員会議に報告する。また別室登校の指導体制を充実させる。

4 取組の成果
①中学校新入生への丁寧な指導を踏まえた不登校数の激減…隣接中学校における年間30日以上の不登校生徒数は平成14年度18名(4.08%)、15年度19名(5.21%)、16年度21名(6.38%)と非常に高い出現率を示していたが、17年度は11名(3.93%)、18年度は6名(2.43%)に減少した。小中の段差解消に向けた取組の成果が数字に現れたと考えられる。昨年の中学1年生は小学校6年時に10日以上休んだ生徒は12人、そのうち5人は20日以上の欠席という休みがちな学年であり、中学校への受け入れがスムーズにいかなければ不登校生の大量出現も考えられる状況があった。しかし校区小中連携連絡会の設置により小中学校が子どもたちの学校生活上の課題を共有し、必要な手だてを迅速に打てる体制を作り上げた。また小学6年生を対象とした夏休みのクラブ体験、中学校体験授業の実施や中学校の様々な行事への小学生の参加、校区3校への「校区新聞かけはし」の発行は、中学校進学に対する漠然とした不安を解消することにつながっている。
②職員組織の機能化…校区不登校対策委員会・校内不登校対策委員会が必要な情報を収集し、分析・方針を職員会議に提起することにより指導の改善を行った。また不登校支援協力員の配置により別室登校生徒への専任指導体制が始まったことの効果は大きい。「少ない教員が空き時間をやりくりし、それでも生徒への支援が届かない」状態から「何度も約束を破られながらも門の陰で生徒の登校を待てる」余裕が生まれた。これにより担任は別室登校を自信も持って勧めることが可能となった。その結果、一時は不登校になっていた生徒が土日の登校練習を経て別教室への登校ができるようになり、更に教室に入れる生徒もでてきた。小学校6年の7月から全欠だった生徒も中学校入学後、別教室に登校できるようになった。
③異年齢集団交流の効果…中学校行事に参加した小学生の率直な歓声や喜びの声は、あるときは中学生を和ませ、またあるときは勇気付けるものとなった。特に中学校3年生が小学校1・2年生を膝に抱き上げながら行った創作絵本の読み聞かせでは、同世代のつながりだけでは見ることのできない中学生の優しさを引き出すことができた。
④研究授業や合同研修会の開催は職員の交流と相互信頼を深めた。また中学校スクールカウンセラーの小学校での積極的な活用も行われ、子育ての悩みを抱く保護者の安心につながっている。校区新聞の発行は中学生の前向きな姿や学校の取組を保護者に伝えることにつながり、小学校での学校教育自己診断アンケートでは9割を超える保護者が小中連携の取組に理解と期待を示した。

5 今後の課題と対策等
①小中の連携が進んだとはいえ、まだまだ担当者間で小中が繋がっている側面が大きい。今後は企画・行事日程調節・学力保障・小中連携の理念の追求などを組織的=点と点ではなく面で行っていく体制づくりが大切であると思う。
②「義務教育を終えるとき、どんな子どもに育てようとしているのか」これは小学校6年中学校3年だけでは達成できない課題である。小学校で目指す目標と中学校で目指す目標をつき合わせ、小中9年間を通した校区の教育目標を設定しなければならない。
③上記のためにも校区の子どもたちの実態について把握し、学校教育自己診断で明らかになったデーターを踏まえた論議が必要である。
④学力保障については、校区3校が連携し「国語と算数(数学)の小学校まとめプリント教材」「中学校へとつなぐ春休みの宿題」「中学校入学後に実施される学力診断テスト」の共同作成を目指したい。

6 その他(参考となる事項等)






◆大阪府の不登校施策の考え方 平成17年8月29日

2006年07月20日 | 不登校問題
不登校施策について、不登校の児童生徒を持つ保護者の方をはじめ、府民の皆様から、「不登校半減という言葉のみが先行するのではないかという不安を感じる」、「当事者の身になってその声を十分聞いて欲しい」、「不登校の原因は本人にあるのではなく、学校の側にある場合もあるので、そちらを変えることが必要」、「地域の人による働きかけは、かえって子どもと保護者を追い詰める」などのご意見をいただきました。
 不登校につきましては、平成15年4月、文部科学省の不登校問題に関する調査研究協力者会議の「今後の不登校への対応の在り方について(報告)」の中で、「不登校が増加し続けている現状にあって、豊かな人間性や社会性、生涯学習を支える学力を身につけるなど、すべての児童生徒がそれぞれ自己実現を図り、また、社会の構成員として必要な資質・能力の育成を図るという義務教育制度の趣旨から、不登校に関する取組みの改善を図ることは、我が国社会にとって喫緊の課題であって、早急に具体的な対応策を講じ、実行する必要がある。」と述べられています。
 大阪府におきましても、公立小・中学校の不登校児童生徒数は、近年減少傾向にあるものの、なお毎年合計1万人を超えている状況が続いています。不登校の背景には、いじめや校内暴力、体罰や児童虐待など、現代社会や学校教育に対する問題提起が含まれている場合もあり、子どもが発する悩みのシグナルという受けとめも必要です。また、子どもたちが、自分の受けている様々なストレスを和らげるためやいじめから自分を守り立ち直るため休養期間が必要な場合など、学校に行かないことが一定の意味を持つこともあります。
 大阪府では、こうした子どもたちを含めた全ての子どもたちが楽しく充実した学校生活を送れるようにしたいと考えています。
 そのため、府内の全中学校でスクールカウンセラーが子どもたちの相談に応じるとともに、特に不登校児童生徒の多い学校には専任教員を配置して、学校の対応力を高めます。さらに、地域の人材も活用しながら、多面的な支援に取り組んでいこうと考えています。
 大阪府といたしましては、不登校児童生徒一人ひとりの状況をしっかり把握し、子どもや保護者の方々一人ひとりの願いやご意向を十分に受けとめ、時には、寄り添い見守り、時には積極的な働きかけを行ないながら、子どもたちが学校に復帰し、将来、精神的・経済的にも自立し、豊かな人生が送れるよう、その社会的自立に向けて支援していきたいと考えています。
(問合せ先)
大阪府教育委員会市町村教育室小中学校課生徒指導グループ
TEL:06-6941-0351(内線 3437)