教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

人の命を奪う『うわさ』と『デマ』~始業式での生徒指導の講話

2006年08月18日 | 生活指導
関東大震災が起こったのが76年前の今日、1923年9月1日です。この地震では14万人以上の人々が命を失いました。しかしこの中には地震による災害で亡くなったのではない人々がいます。中学の歴史の教科書には、こう書かれています。

…この混乱のなかで「朝鮮人が井戸に毒をなげこんだ」「社会主義者が暴動をおこす」などのうわさが、警察などによって広められた。そのため、数千人の朝鮮人や数百人の中国人が、軍隊・警察、住民などがつくった自警団によって虐殺された(日本書籍『中学社会・歴史的分野』P240)

不確かな情報に踊らされた結果、数千人の朝鮮人、数百人の中国人が命を奪われたのです。これは76年も昔のことで、今ではこんな事件が起こるわけがないと言えない状況が私たちの前にあります。

昨日、北海道で高校2年生の男の子が殺されたという事件がありました。その日のうちに15歳から18歳の5人の少年少女が容疑者として逮捕されました。警察の調べによると、逮捕された5人のうちの一人が、「あいつは生意気だ」といううわさをを聞いたので少年を呼び出し、5人で殴る蹴るの暴行を行った末に、殺してしまったということでした。逮捕された5人のなかには、殺された少年とは全く面識のない者もいたということです。

 人を傷つけるうわさ、他人をおとしいれるデマ、それが人の命を奪ってしまうことがあるということに、今も昔もかわりありません。私たちが歴史を学ぶということは、過去のできごとを知ることによって、そこから私たちが生きていく教訓を導き出すということです。(千里馬85号1999年9月4日号)

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この始業式での講話から7年の月日が過ぎました。しかし今も命をもてあそぶ「うわさ」や「デマ」は後を絶ちません。1学期には大阪の大学生が「俺の女にちょっかいをかけた男は暴力団関係者」という話を信じ、2人の学生を生き埋めにして殺してしまいました。被害者とは何の面識もない大学生も加害者として参加していました。国連の場で建物やトラックの写真を見せ、「これが大量破壊兵器の動かぬ証拠だ」と言って戦争を始め、何十万人もの命を犠牲にしている大統領がいます。歴史を学ばない人たちによって不幸な歴史が繰り返されます。