教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

子どもの育ちを保障する学校間連携のために~私立中学校からの転入生受け入れ③

2008年09月28日 | 進路保障
3.再出発しようとする子どもへの支援のあり方
 先に○中学校に転入した子どもたちの様子について報告しました。転入の理由は、イジメや、不適応(「入学前の期待とは違った」「校風を知らず入学した」などが原因)、経済理由など様々です。しかし少なくともいったんは自分で選んだ学校を辞めるのですから、多かれ少なかれ挫折体験を経て転校するわけです。公立中学校同士なら、課題を持って転校する子どもたちについては、指導の引き継ぎがなされます。しかし私立中学校からの転入で引き継ぎができたのは、一件だけでした。中には「本人から聞いて下さい。どうせ学校を悪く言うでしょう。」という投げやりな回答が寄せられたこともありました。挫折体験がある子どもを何の引き継ぎも無く受け入れるというのは、内科からのカルテ無しに外科手術をするようなものだと思います。

 せっかく入学試験に受かり安くない学費を払った子どもたちが学校を辞めることに対して、私立中学校の先生方は残念な思いがいっぱいだと思います。しかし「転校はあり得る」という前提に立ち、「転校しても中学校3年間の子どもたちの育ちは保障する」という方針を確立する必要があると思います。

 私は公立中学校に勤務する中で、時には「こんな状態で子どもたちを卒業させてよいのか」と歯軋りをするような経験を何度も重ねました。しかし卒業後の子どもたちとの再会で、「子どもは変わる」と確信を持つこともできました。この経験が「子どもたちの次の出会いに期待する」ことにつながりました。

 私立中学校を辞めていく生徒にも、転校先で新たな出会いがあり、成長があるのです。公立中学校を様々な課題を持ちながら卒業した後私立高校に進学した子どもが、想像以上の成長を遂げたことがあるのと同じように。「子どもたちは、きっと変わる」ことを全ての教員が信じ、学校間の連携を始めて行きたいというのが私の願いです。

子どもの育ちを保障する学校間連携のために~私立中学校からの転入生受け入れ②

2008年09月27日 | 進路保障
2.国・私立中学校進学層の抱える問題
 私は長く中学校に勤務していたため、私立中学校受験が、学級や個々の子どもたちにどのような影響を及ぼしているのかを知る機会がありませんでした。しかし小学校との兼務となり、公立中学校には来ない子どもたちに出会うことができました。 

 ○中学校というのは、どの時期をとっても落ち着いた雰囲気で子どもたちが学習に取り組んでいる学校です。穏やかな中学生に囲まれているため、小学校に行けば天使のような子どもたちばかりがいるのかと思っていました。しかしそれは大違いでした。先に塾で勉強したことを他の生徒に自慢し、学習が遅れている同級生をばかにする、学校行事を欠席する、「偏差値○○の中学校なんて受験したくない」と互いの受験先を牽制する、私には子どもたちが受験ストレスの影響で攻撃的になっているように思えました。

 関西の大手進学塾が、「常時戦場」を標榜し、「隣の生徒が消しゴムを落としたら、それを遠くに蹴飛ばす」と言った心構えを入塾説明会で行ったというのは新聞の投書でも報道された有名な話です。こんな生き方を真に受けた子どもたちが、小学校高学年の教室の雰囲気を変えつつあると言うと、それは言い過ぎでしょうか。

 私は、この2月に東京の国立大学附属小学校の研究発表会に参加する機会がありました。社会の上澄みばかり集めているような附属小の研究会に学ぶべきものがあるだろうかと、私は斜めに構えて参加したのですが、すぐに私の偏見は消え去りました。研究テーマは「協働して学びを生み出す子どもを育てる」というものでした。先生たちからは「進学塾で先に学んだ者が後から学ぼうとする者を蹴落とそうとする」「塾が学びの主体で学校が息抜きとなる」「受験学力の上位に立つ者が下位の者を圧倒する」「受験ストレスからパニックを引き起こす子どもたち」といった子どもたちの課題が語られ、この現状をどう変えるかが論議されていました。私が公立小学校で感じた同じ課題が国立小学校にも存在したのです。これは関西の私立中学校でも同じだと思うのです。

 大手進学塾の存在は、国・私立中学校が子どもたちを集めるのに役立っている反面、進学する子どもたちの中に強い競争主義や格差意識を植え付け、教育活動を困難にしていると考えます。


子どもの育ちを保障する学校間連携のために~私立中学校からの転入生受け入れ①

2008年09月26日 | 進路保障
はじめに
 9月17日、大阪府福祉人権推進センターで三人研合同交流会が行われました。三人研合同交流会とは、大阪府人権教育研究協議会・大阪市人権教育研究協議会・大阪私立学校人権教育研究会の三者が、子どもたちの進路保障のため公立・私立あるいは小学校・中学校・高等学校といった学校種類の違いを超えて実践交流を行う場です。今年は『進路保障と中・高連携』『集団づくり』『公・私立連携』の3分科会に分かれて交流会が持たれました。私は『公・私立連携』の分科会でレポート報告を行いました。以下はその内容です。

1.増加する私立中学校からの転入
 私立小・中学校は増加の傾向にあります。私が教員になって以降、近隣だけをみても、履正社・関西大倉・摂陵・薫英が中学校を開校しました。更に関関同立の四私大が相次いで小学校を開設させました。私立小・中学校の増加は、当然の結果として私立学校での不適応生徒の増加につながります。私立からの転校生は今後ますます増えるという認識に立ち公・私立学校間での転校と連携の在り方を考える必要があると思います。

 ○中学校では、【表1】のように、38期生(2004年3月卒業)から42期生(2008年3月卒業)までの5年間に、8人の国私立中学校からの転入がありました。○中学校は、全学年2クラス(1年生のみ少人数学級とし3クラス編成)全校生220人あまりの市内で最も小規模な中学校です。○中にとって8人(現役中学生を含めると10人)という数字は、決して少ない数ではありません。


 【表1】年度毎の国私立中学校からの転校生とその転入時期
転入時期
08年卒 3年2学期
07年卒 2年3学期 3年1学期
06年卒 2年2学期
05年卒 3年1学期
04年卒 1年1学期 1年2学期 3年2学期

 転入後の学校生活への適応を転入時期と転校の仕方の2点から見てみます。もちろんたった10人を対象とした調査なので、統計学的には意味がありません。あくまでも参考資料として聞いて下さい。

 【表2】をみると転入時期が遅くなればなるほど転入後の学校生活が不適応になるケースが多いことが分かります。子どもたちの多くは3年生になって初めて不適応状態に陥ったのではないと思います。(多くは保護者が)転校するという決断をできないままズルズルと状況が悪くなり、打つ手が無くなってしまった後に転校するケースが多いのではないでしょうか。不適応の時期が長いほど、転入後の学校生活にマイナスの影響を与えていると思います。

 また転校の仕方では、【表3】で見るように他の地域から転居を伴って転入した場合は、転入後も不適応が続くケースが多いことが分かります。私立中学校で挫折した生徒を受け入れる集団が小学校時代に形成されていれば、転居の必要など無いわけです。「あんな奴と机を並べたくない」という思いが、私立中学校進学グループ・公立中学校進学グループのどちらかにでもあれば、地元中学校への転入は不可能となります。逆に挫折した仲間を包み込む集団が形成されていたら、転入後の中学校生活が実りあるものとなる可能性が広がります。そういう意味では、私立中学校からの転入生がやり直すことができるかどうかは、小学校時代の学級集団形成にかかっていると言えると思います。

【表2】転入時期と転入後の不適応
転入時期 総数  不適応
3年生   5    2
2年生   2    1
1年生   3    0

【表3】転校の仕方と転入後の不適応
転校の仕方    総数  不適応
転居し転入     3    2
地元校に戻る    7    1


セミの世界に見る温暖化の影響?~小学校4年の調査

2008年09月22日 | 学校の話題
○○小学校4年生は、理科の時間に学校内のセミの抜け殻を集め、どんな種類のセ
ミがいるのかを調べました。見つけることができたセミの種類は次のようなものです。クマゼミの数が、他を圧倒していることが分かります。

クマゼミ…589・アブラゼミ…240・ニイニイゼミ…1・ツクツクボウシ…1

もう45年ほど前のことです。私が小学生のころ市内で採れたセミの多くはニイニイゼミでした。次に多かったのはアブラゼミ。クマゼミは数が少なく、なかなか捕まえることができませんでした。ニイニイゼミは体長が4cm足らずの小型のセミで、桜の木の幹に似た模様のある羽を持ち、その抜け殻は泥だらけなので一目見て他の種類とは区別がつきます。1960年代までは一般的であったニイニイゼミは、1970年代以降急激に姿を減らしました。

ニイニイゼミの減少は、地球温暖化と都市の乾燥が影響しているのではないかと言われています。元々亜熱帯地方が生息地であったクマゼミは、1960年代までは主に九州地方で見られる種でした。それが1970年代には関西で、現在では神奈川県や東京都内でも見られるようになりました。(東北・北海道には今もいない)

そういえば小学生の頃、夏休みの宿題で書いた日記には、毎日の天気と気温を記入しなければならなかったのですが、午前10時に測った気温は27℃~28℃がほとんどで、30℃を超える日は少なかったと思います。更に水田は住宅地に、池は埋め立てられ学校や市民会館に、道路はコンクリート舗装され乾燥化も進んでいます。こういった環境の変化が、ニイニイゼミには住みにくく、クマゼミには繁殖しやすい条件になったように思えます。小さく可愛かったニイニイゼミは、どこにいったのでしょうか。

中学校総合劇発表会に小学校2年生が参加します

2008年09月18日 | 小中連携
9月19日(金)は、中学校3年生総合学習の発表日です。中学校では総合学習の時間に創作劇の製作・発表を行っています。特に2005年からは、小中連携の一環として隣接する○○小学校低学年の子どもたちを招待し、小学生にも喜んでもらっています。今年は小学校2年生が参加し、以下のような時程で実施されます。

場所:体育館
時程:12:35 開会式
   12:40 3年1組『探偵学園8』
   13:20 3年2組『JOURNEY TO THE 北京』
   13:40 閉会式

「体育大会はクラスの団結がなくてもできるけれど、劇はクラスがまとまっていなければできない」と先輩教員から言われたことがあります。シナリオを作り、配役を決め、放課後も練習を重ねるということは、子どもたちの中に規律と自治力がなければ、決してできません。多くの中学校で劇の発表が中止に追い込まれている状況下で、クラス劇ができるというのは、○中の特色であり、誇りでもあります。(3年生の皆さんは受験・体育大会の準備等で大変と思いますが)中学校保護者の皆さんだけでなく、小学校の保護者の皆さんも含め、たくさんの皆さんのご来場をお待ちします。

全国学力調査について~改訂

2008年09月17日 | 教育行政・学校運営
「かけはし」に学力テスト問題を掲載することについては、校区3校の各校長と何度も協議を重ねました。その結果、以下のような内容に改訂して発行することとなりました。改訂は2点です。第1は、私の個人的な経験に基く記事(東京の友人との会話を含む第2節の内容)を避ける方が記事の質を高める、という点にあります。第2は、「就学援助と学力の関係」という表現です。新聞記事の内容は、たとえそうであっても、そのまま引用すると就学援助を受けている多くの保護者を傷つけることになるのでは、という指摘です。私は、そのどちらの指摘も受け入れ、以下のように改定し発行しました。
ある校長は、「敢えてこの記事を載せるか」と苦笑いをしていましたが、「これだけ話題となっているのに、触れない方が不自然」と説明すると、納得してくれました。「かけはし」は、校区3校の校長の「度量の大きさ」にも支えられ、発行ができている新聞なのです。

【公開された結果】
8月29日、再開二度目となった学力調査の結果が文部科学省から公開されました。文部科学省のHPには、膨大なデーターが掲示されています。今後、各教育委員会レベルで分析・検討がなされると思いますが、新聞を見ながら私が気になった項目をいくつか書き留めます。
①新聞では各教科の正答率が都道府県ごとに明らかになり、大阪府の子どもたちの正答率が昨年に続いて振るわなかったことが報道されていました。特に正答率の上位と下位が共に増え学力二極化の進行が浮き彫りになったと言われています。また、全国的にみると②正答率が高い地域や学校の取り組みについては、少人数学級でのきめ細かい指導、自宅学習の習慣付け、ボランティアによる授業サポート、授業中に私語が少なく落ち着いているといったことがらが挙げられました。③学力と家庭生活との関連では、学力調査と同時に行われた生活アンケートの分析を行い、朝食を毎日食べる児童は全く食べない児童に比べすべての科目で正答率が大幅に上回っていること、さらに『読書好き』で『家族と学校での出来事について話をしている』という児童ほど正答率が高いとなっています。④家庭の経済力についても関心を向け、「経済格差=学力格差」(8/30産経新聞)という見出しをつける新聞もありました。

【学力向上と無縁なテスト対策】
現在、学力テストの平均点を公開し、市町村や学校ごとの順位付けを行うことが、教職員の努力を生み出し、結果として子どもたちの学力向上につながるという意見が見られます。しかし日弁連は、学力テストの結果を公開している地域の実態を調べたうえで、学力テスト実施方法の是正を求める意見書を文部科学省へ提出(2008年2月15日)しています。意見書を読むと、点数公開による学校間競争が、子どもたちの学力向上とは無縁な方向に向かいつつある現状がわかります。例えば、「教育委員会が類似した問題集を作成配布し、時間配分や問題の解き方を児童・生徒に指導すること」「問題集を解かせたページ数や正答率等を報告する」(広島県北広島町)というように学力テストのための授業を行うことが、市町村ぐるみで行われていることが明らかにされています。更に、テストの成績の伸び率に応じて学校予算を傾斜配分するとした東京都足立区では、昨年度の東京都学力テストで「教員が児童の誤った回答を指差し、正解を誘導する」「学力テストの採点・集計から、障害のある児童の答案を本人や父母に無断で除外する」といった人権侵害を伴う不正があったことも指摘されています。

【学力向上のための取り組みとは】
教員であれば、学校や教育が子どもたちの可能性を広げる場になることを願わない者はないと思います。親世代の経済格差が子どもたちの学力格差にストレートに繋がるようでは、格差は後の世代に受け継がれ、学校や子どもたちから希望は消え去ります。全国学力調査で数値化された点数が、子どもたちの学力の全てを表現しているとは考えられませんが、私たちは子どもの学力向上への道筋を引き続き考えていく必要があります。しかし学力向上の道筋は、決して「練習テストの繰り返し」や「欠席扱い」などの平均点競争であってはなりません。市町村や学校ごとの平均点の公開が、教員や子どもを無意味な競争に巻き込んでいる現状を改める必要があります。

商店街でみた地域の力

2008年09月16日 | 地域連携
私は市役所の近くに住んでいますが、家から数分歩いた所に古くからの商店街があります。夏休みのある日、出張からの帰りに商店街を歩いていると、体操服姿の女子中学生数人が、お菓子屋の店先でジュースを飲んでいるのを見かけました。彼女たちが一気にジュースを飲み干した時に、店の小母さんが「あんたらコレ、食べとき。」とアイスキャンディーを差し出しました。遠慮する中学生たちに「いいんよ。おばちゃんは、あんたらの元気そうな姿を見てるだけで嬉しくなるんよ。」と更に押し付けていました。

買い食いの是非については、敢えて触れません。クラブ帰りの中学生の元気な姿を見るだけで嬉しいと感じる大人の眼差しが、子どもたちを支える『地域の力』であり、子どもたちの汗をかく姿もまた、地域の大人たちを元気づける『地域の力』であると感じたのです。秋には、運動会・体育大会や学習発表会・総合劇発表会など、広く地域に開かれた学校行事が続きます。大人の眼差しと、子どもたちの伸びゆく力が、大きな『地域の力』に合流することを願います。

市長への手紙~コンサート参加のお礼状

2008年09月08日 | 話題
2008年8月26日
○○○○様

お礼

栗ヶ丘フィルコール合唱団
団長 ○○○○ 事務局長 ○○○○  理事 ○○○○

ようやく夏の暑さも和らいでまいりましたが、貴職におかれましては、ますますご清祥のことと存じます。
先日は、栗ヶ丘フィルコール20周年コンサートを行いましたところ、激務の合間を縫ってご来場賜り、まことにありがとうございました。私たちの歌声が皆さまの心に響き、少しでも楽しんでいただけたのなら、うれしく思います。
今回のコンサートは、中学時代、私たちに素敵なコーラスをご指導くださった岩崎先生と○○中学校への感謝の気持ちを形に表したいと思い、企画したものです。
しかし、全国に散らばった団員たちが、コンサートに向け力を結集することは、想像してはいましたが容易ではありませんでした。
中学生時代とは違い、時間や場所を作る事や仲間を集める事に、多くの力を割きました。しかし、その甲斐あって、コンサートの成功を目指した団員が埼玉・千葉・東京・横浜・岐阜・名古屋・松江など全国から集まりました。そして、岩崎先生の指揮には、お互いを隔てた時間や距離を一瞬にして吹き飛ばす力が満ちていました。私たち合唱団の持てる力を最大限に発揮するコンサートができたと思います。
今、教育や学校を巡る厳しい環境があります。そうであるが故に、巣立った中学校を核とする、このような合唱団が根付いていることが、私たちの街にとって相応しいと、手前味噌ではありますが考えております。
長年私たちを見守ってくださった岩崎先生には、ひとまずお休みいただきますが、「栗ヶ丘フィルコール」は、これからも元気に歌い続けます。
今後とも変わらぬご指導ご鞭撻賜りますよう、よろしくお願いいたします。まずは書面にて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

市内全中学校にAED設置

2008年09月05日 | 学校の話題
 AEDという名称を聞いたことがあるでしょうか。自動体外式除細動器という名がつけられているこの装置は、体調不良や外的ショックにより心停止に陥った人に電気ショックを与え心臓の活動を蘇えさせる装置です。心停止が起こり119番通報しても、救急隊の到着までに数分かかります。人は心停止から3分経つと生存率は急激に低下します。救急車が来るまでの間、周りの者が倒れた人の心臓を動かし脳に血液を送り続けることができたかどうかが重要になります。それを手助けするのがAEDです。○○中学校の場合、体育館入口に設置してあります。

全国学力調査について①

2008年09月04日 | 教育行政・学校運営
《公開された結果》8月29日、再開二度目となった学力調査の結果が文部科学省から公開されました。文部科学省のHPには、膨大なデーターが掲示されています。今後、各教育委員会レベルで分析・検討がなされると思いますが、新聞を見ながら私が気になった項目をいくつか書き留めます。

 ①新聞では各教科の正答率が都道府県ごとに明らかになり、大阪府の子どもたちの正答率が昨年に続いて振るわなかったことが報道されていました。特に正答率の上位と下位が共に増え、学力二極化の進行が浮き彫りになったと言われています。
また、全国的にみると②正答率が高い地域や学校の取り組みについては、少人数学級でのきめ細かい指導、自宅学習の習慣付け、ボランティアによる授業サポート、授業中に私語が少なく落ち着いているといったことがらが挙げられました。③学力と家庭生活との関連では、学力調査と同時に行われた生活アンケートの分析を行い、朝食を毎日食べる児童は全く食べない児童に比べすべての科目で正答率が大幅に上回っていること、さらに『読書好き』で『家族と学校での出来事について話をしている』という児童ほど正答率が高いとなっています。④家庭の経済力についても関心が向けられました。その結果、学用品や給食費の公費負担を受けている就学援助の需給率と学力テストの正答率の関連を調べ、「経済格差=学力格差(8/30産経新聞)という見出しをつける新聞もありました。

《親の総力戦の結果としての『学力』というとらえ方》親の経済格差が子どもの学力格差につながる傾向というのは、多くの教育関係者が指摘しています。ある塾の入塾説明会に参加したことがあります。その中で「子どもの学力というのは、親の学歴・経済力・しつけ力(=親の強制力)・子どもに関わる時間など全てを動員した総力戦でつくられる」と説明されていました。このような分析は、学力を受験学力という面から見ると、当たっている面もあると思います。しかし、「どんな生き方をしようとするのか」「いつか学校を卒業し社会人になったとき、社会に役立つ人になれるのか」という問いかけをしないままに受験学力だけを身につけた子どもたちが、傍(はた)からみたら些細(ささい)な挫折をきっかけに自暴自棄になり、果ては無差別殺人や家族を殺す事件を引き起こすまでになることを見聞きするにつけ、この薄っぺらな学力だけに頼ってはいられないと思うのです。

《学力向上のための取り組みとは》教員であれば、学校や教育が子どもたちの可能性を広げる場になることを願わない者はないと思います。親世代の経済格差が子どもたちの学力格差にストレートに繋がるようでは、格差は後の世代に受け継がれ、学校や子どもたちから希望は消え去ります。全国学力調査で数値化された点数が、子どもたちの学力の全てを表現しているとは考えられませんが、行政や学校は、子どもたちの学力向上への道筋を引き続き考えていく必要があります。

 そのことは、決して「学力調査」対策の練習問題を事前にするとか、ましてやテスト監督にあたった教員が間違っている解答を指差して教えるような「手っ取り早い」ことであってはなりません。授業規律の確立や家庭学習の習慣化に成功している取り組みを広げる努力を続けると同時に、困難を抱えている学校に対する具体的な支援のあり方を検証していく必要があると思います。(引き続き考えます)