JR新大久保駅の転落事故が大きな反響を呼んでいる。転落した見知らぬ男性を助けるため、目前に迫った電車を顧みずプラットホームから飛び降りた二人(関根史郎さんと李秀賢さん)の善意と裕樹への賞賛が続く。韓国留学生李秀賢さんのお別れの集いには、総理大臣も出席した。勲章が贈られるということである。
プラットホームからの転落事故はJR東日本だけで57件あったという。記録されたものは列車が10分以上止まり死傷者が出た場合のみであり、すぐに助け出されたケースは記録として残らない。「東京視力障害者の生活と権利を守る会」が200人の視覚障害者を対象に調べたら3人に2人がホームから落ちた経験を持っていることが分かったという。
転落事故は珍しくはない。転落した男性を助けるどころか自分の命もなくしてしまった二人の死を無駄にしないということは、転落事故を防ぐための具体的な対策を国と鉄道会社が行うということである。それは第1に事故を防ぐための人員配置であり、第2に駅の構造上の改革である。
第1のプラットホームへの人員配置については、逆の方向に社会が進んでいる。国鉄がJRに衣替えしてから人員削減のため無人ホームは激増した。いまや都市部でさえプラットホームにはモニターカメラがあるだけというところが多い。転落する人をモニターがとらえても駅員が気づくのか、駅員が気づいてから現場に駆けつけて間に合うのか、疑問は多い。
それでは駅の構造はどう変わったのか。新幹線の生みの親と言われた技術者の島秀雄さんは1982年にすべてのプラットホームに橋にあるような欄干(らんかん)をつけることを提唱された。この提案は東北新幹線の各駅や東海道新幹線の一部の駅で実現された。しかし費用がかかることを理由に一部の駅での実施に終わっている。どんなに効果的な提案であっても、お金がかかるという理由だけで退けられてしまう。
事故を防ぐ立場にあるはずの政治家や鉄道会社からの善意は伝わらず、力も金も無い市民が命を張ってみせた善意だけがここにある。(生徒指導部だより『千里馬』145号2001年2月2日)
プラットホームからの転落事故はJR東日本だけで57件あったという。記録されたものは列車が10分以上止まり死傷者が出た場合のみであり、すぐに助け出されたケースは記録として残らない。「東京視力障害者の生活と権利を守る会」が200人の視覚障害者を対象に調べたら3人に2人がホームから落ちた経験を持っていることが分かったという。
転落事故は珍しくはない。転落した男性を助けるどころか自分の命もなくしてしまった二人の死を無駄にしないということは、転落事故を防ぐための具体的な対策を国と鉄道会社が行うということである。それは第1に事故を防ぐための人員配置であり、第2に駅の構造上の改革である。
第1のプラットホームへの人員配置については、逆の方向に社会が進んでいる。国鉄がJRに衣替えしてから人員削減のため無人ホームは激増した。いまや都市部でさえプラットホームにはモニターカメラがあるだけというところが多い。転落する人をモニターがとらえても駅員が気づくのか、駅員が気づいてから現場に駆けつけて間に合うのか、疑問は多い。
それでは駅の構造はどう変わったのか。新幹線の生みの親と言われた技術者の島秀雄さんは1982年にすべてのプラットホームに橋にあるような欄干(らんかん)をつけることを提唱された。この提案は東北新幹線の各駅や東海道新幹線の一部の駅で実現された。しかし費用がかかることを理由に一部の駅での実施に終わっている。どんなに効果的な提案であっても、お金がかかるという理由だけで退けられてしまう。
事故を防ぐ立場にあるはずの政治家や鉄道会社からの善意は伝わらず、力も金も無い市民が命を張ってみせた善意だけがここにある。(生徒指導部だより『千里馬』145号2001年2月2日)