教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

千里地区の学校はいかにして建てられたか

2006年08月12日 | 教育行政・学校運営
形あるものには設計者の夢や思想があります。建て替えが進む千里地区ですが、今から40年前、千里が日本初のニュータウンとして輝いていた1960年代に、新しい街にふさわしい新しい学校づくりが始まりました。新しい街の建設と並行して進められた千里地区の学校には市内の他の学校にはない明確な設計方針がありました。その基本方針は「児童生徒の心身の発達段階に対応した教育内容にふさわしい校舎の建設を行い、新しい住宅都市に融合した教育環境をかもしだす」というものです。

小学校を例にとって具体的な方針をみてみましょう。
①校内での事故防止のため、人の動線と車の動線をはっきり分離し、給食車などの自動車と児童が出会わないようにする。②低学年と高学年がそれぞれ独自の校内生活領域を持てるように設計し、学習・通行・用便・遊びなどの時、低学年生のゆったりとした生活リズムを保障する。③上ばきと下足のはきかえを厳格に行いうる設計とし、下足室を広くして混乱をなくするとともに、はきかえが児童の負担にならないよう、下足室を利用すれば教室と運動場や校門とが最短距離で結ばれる計画となっている。④職員室などの管理諸室は学校の中心に配置され、児童の行動が掌握しやすいようにする。⑤教育課程や教科内容の改変を見越して増築できる余地を計画的に残している。

市内の他の学校と比べると2~3倍はある広大な敷地面積(東町中学校の敷地面積は4万1千平米、隣接する東町3丁目小学校は3万6千平米)がこれらの設計を可能にしたのです。

更に⑥今までの学校では細分化されていたホールを、千里地区では普通教室から特別教室への渡り廊下の役目などをかねさせて、一つの大きな空間(中央廊下・ホール)にまとめるよう工夫し、児童の親交をのびのびと育てる広場となるように設計する⑦階段の手すりは普通より高い110センチとし児童の安全を考える⑧便所の内外両方に手洗いを設け、便器も和風のほか洋風腰掛け式を設置するといった、「贅沢」で斬新な設計が行われたのです。私はこの4月に開校した東京都品川区立日野学園での研究会に参加し、できたばかりの校舎をつぶさに見てきましたが(敷地面積が東町中の1/4という狭さ!)、40年以上前に建てられた千里地区の学校建設の「新しさ」は、今もなお生きていると思いました。

「貧すれば鈍す」という言葉があります。財政の厳しさが、教育行政の中から理想が消え去らないことを説に願っています。