犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

裁判員の守秘義務

2009-07-06 00:16:32 | 言語・論理・構造
元裁判員: 「私、裁判員を経験してからというもの、何だか全てがおかしくなってしまって、仕事にも戻れません」

精神科医: 「そうなんですか。あなたはその裁判でどのような経験をして、どのようなショックを受けられたのですか」

元裁判員: 「それは守秘義務があって言えないのですが、とにかく色々なことがショックで、何もかもが信じられなくなって…」

精神科医: 「色々なことというのは、例えばどのようなことですか」

元裁判員: 「それを言ってしまうと守秘義務に抵触してしまい、裁判所から罰を受けたり、事件の関係者から因縁をつけられたりするので…」

精神科医: 「困りましたね。では、言える範囲でいいですから、具体的に、どのようなことが信じられなくなったか話して頂けますか」

元裁判員: 「それも守秘義務の範囲なので詳しく言えないのですが、何だかもう怖くて、こんなことがあっていいものかと…」

精神科医: 「こんなこというのは、どんなことですか」

元裁判員: 「守秘義務があるので詳しく話せないのですが、何だかもう今まで信じてきた価値観が全部崩壊してしまったような…」

精神科医: 「もう少し具体的に言ってもらわないと、私もどうしようもないので、とにかくあなたの経験を話してくれませんか」

元裁判員: 「守秘義務に反しない程度に申し上げれば、私の人生において過去にないほどの、立ち直ることのできない衝撃を受けたということです」

精神科医: 「それであなたは、どのように立ち直れないのですか」

元裁判員: 「もう、夜も寝られないし、寝ても悪い夢ばかり見るのですが、夢の内容を話すと守秘義務に違反してしまうので言えません」

精神科医: 「なるほど。あなたの悩みは、守秘義務に縛られて、言いたいことが全然言えないということですね」

元裁判員: 「全然違います。そんな些細なことではありません。もう、裁判員に選ばれる前の人生には戻れない絶望の苦しみです。私はそれで来ているんです」

精神科医: 「ですから、あなたは裁判でどんな経験をしたんですか」

元裁判員: 「それは守秘義務があるので言えません」

精神科医: 「お手上げです」


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冗談で済まないのが怖いところである。