宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

稲垣えみ子『アフロ記者・・・・』(その3):⑪君が代条例&思想及び良心の自由!⑫既得権益としての「リベラル」!⑬「声の大きな者、力の強い者」、「ガス抜き」、「犯人探し」、「親切な存在」!

2021-04-13 18:42:25 | Weblog
※稲垣えみ子(1965-)『アフロ記者が記者として書いてきたこと。退職したからこそ書けたこと。』2016年、朝日新聞出版

(11)「君が代条例」&「思想及び良心の自由」!
2011年、維新の会が、君が代の起立斉唱を教職員に義務づける全国初の「君が代条例案」を議員提案した。「リベラル」「反戦」「護憲」の朝日新聞としては見過ごせない問題だった。橋下徹大阪市長(当時2011年)は「公務員なら決まりを守れ」と平易な論理だ。(Cf. 国旗・国家法1999成立。)(Cf. 憲法19条:「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」。)「維新の会」に投票した人に記者が街に出て聞くと30人中26人が「君が代条例に賛成」だった。「当たり前のルールを守れない人が先生をしていること自体おかしい」という。(122-125頁)
《感想11》稲垣氏は、「リベラル」「反戦」「護憲」が「良心的な世論」であるべきだと考えていたが、「リベラル」・「護憲」の立場からの「条例反対」は、「時代から完全に取り残されたアナクロな存在なのかもしれない」(125頁)と述べる。だが、「思想及び良心の自由」の観点から「君が代条例」に反対することは「理想・理念」の問題だ。「アナクロ」でなく、「時代」が、「理想・理念」に反した方向に向かっているのだ。

(12)「既得権者」としての「リベラル」への攻撃:橋下徹氏!
「今世間は、インテリ業界が戦後の長い時間のなかでためてきた澱(オリ)のようなものを敏感に感じ取っている。きれいごとを言い、上から目線で、一皮めくれば既得権化しているのに偉そうに説教をたれる。」橋下徹氏は、「既得権者」として「リベラル」と呼ばれる「インテリ業界」を攻撃する。「リベラル」の親玉が朝日新聞だ。(136-137頁)
《感想12》大学教員、朝日新聞記者は収入が多い。つまり成功者だ。成功者は妬まれる。「他人の不幸は蜜の味」なのに、あいつらは成功者だ。それだけで「非成功者」は腹が立つのだ。
《感想12-2》また「リベラル」の普遍主義への反対もある。ナショナリズム(国家主義)だ。
《感想12-3》橋下徹氏は、選挙戦術として「非成功者」の「妬み」に訴え、票を獲得する。

(13)「成長」がすべてを癒した時代は終わった!
「成長がすべてを癒した時代は終わった。」(153頁)「声の大きな者、力の強い者」が限られたパイの多くを奪う。(154頁)
《感想13》「希望」のない時代だ。食っていけない。子供も産めない。結婚もできない。こじゃれたデートもできない。
(a)真面目に勉強しても就職する会社がない。日雇い(非正規雇用)のみだ。研究者でさえ日雇いだ。
(b)弱肉強食の時代!「敗者」は「無能」で「無価値」と言われる。
(c)上層の「再生産」、下層も「再生産」、中層は下層化していく。
(d)上層は財産を持ち、それゆえ子弟は教育投資(塾・家庭教師・留学・授業料等々)され高学歴となり、あるいは家産・家業・工場を引き継げる。
(e)だが財産なく、教育投資されず、高学歴を獲得できない下層出身者も多い。
(f)成功者が「敗者」を「無能」と呼ぶ根拠はない。競争条件が公正・公平でない。
(g)そもそも「無価値」の人間はいない。人間はそれ自身が「価値」だ。

(13)-2 「マスコミの『反権力』」は「ガス抜き」だった:経済成長の時代!
「経済成長の時代は、世の中はもっと簡単だった。マスコミは万年与党の悪口を言い、スキャンダルを掘り返し、ケシカランと拳を振り上げていれば誰も傷つけずに正義の面をかぶることができた。」「みんなも安心して拍手を送ってくれた。それは誰もが明るい未来を夢見ることができた例外的な時代だったからだ。」「マスコミの『反権力』」は「ガス抜き」だった。(156-157頁)
《感想13-2》中選挙区制から小選挙区比例代表並立制へと、94年1月、非自民の細川連立政権のもとで移行して以後、政治はつまらなくなった。自民党の「諸子百家」「百家争鳴」的側面が消えてしまった。「経済成長の時代」は1990年に終った。小選挙区比例代表並立制になって「失われた30年」が始まった。

(13)-3 成長が終わり落ち目になった日本:今日もまた犯人探しが続く!
今や「成長が終わり落ち目になった日本では、誰もが『いつまでも報われない』怒りを抱え、どこかにいる犯人を探している。・・・・寄ってたかってのバッシング」。「不倫」、「不謹慎」、「偉そう」、「偏っている」とかなんだとか。だがそうやって誰かを叩いても、自分が報われるわけでもないし、世の中が良くなるわけでもない。「みんな薄々わかっている。」「それでも他にどうしていいかわからない。だから今日もまた犯人探しが続く。」(157頁)
《感想13-3》「失われた30年」(1991-2020)の内、2010年、日本のGDPは中国に抜かれ、世界3位となった。(日本のGDPは、1968年以来、米国に次ぐ世界第2位だった)。なお小泉政権(2001-2006)の構造改革路線で2004年、労働者派遣法が改正され製造業への派遣が可能となり非正規雇用が増大していった。(現在は4割。)

(13)-4 人とは、「誰かのために、何かをしたいと願ってやまない存在」!「親切な存在」!
朝日新聞社をやめて「お金のない生活」にチャレンジした稲垣氏。すると、「『どうも金がないようだ』と思った相手に対しては、人は親切なのだ」と彼女は知ることとなった。「人とは本質的に、どこまでも親切な存在なのだと改めて思うのです。人とは実のところ、誰かのために、何かをしたいと願ってやまない存在なんじゃないか。いま世の中は閉塞し、人々は罵り合い、傷つけ合い、分捕りあっているばかりのように見えるけれど、本当にそれが人の本質なのだろうか?と思うのです。」(186頁)
《感想13-4》私見では、人に本質はない。状況によって人はどうにでもなる。一方で、人は敵・外集団に対して邪悪・残忍・残虐になる。他方で、人は味方・内集団に対して親切・善良・善意になる。

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稲垣えみ子『アフロ記者・・・・』(その2):⑦ワンランク上!⑧「いつか」・「強欲」・「足るを知る」!⑨「攻撃的な言葉」!⑩「原発分の電気を使わない」!

2021-04-13 12:08:11 | Weblog
※稲垣えみ子(1965-)『アフロ記者が記者として書いてきたこと。退職したからこそ書けたこと。』2016年、朝日新聞出版

(7)「ワンランク上」:差をつけることで更なる豊かさを追求したい!
「バブル期に青春時代送った私は『ワンランク上』ということばに弱かった。人は・・・・差をつけることで更なる豊かさを追求したいのだ。差がなければ豊かさを実感できないのかもしれない。・・・・その差は本当に幸せをもたらしたのか。」(46頁)
《感想7》この世は、競争社会or生存競争社会or弱肉強食の社会だ。人に勝たねばならない。「差をつける」ことが社会の本質だ。人に勝とうとしない者は「覇気がない」と言われ、「敗者」と言われる。
《感想7-2》「虚飾・見栄の追求」が、競争社会では避けられない。
《感想7-3》だが他方で、「多くを望まない」考え方も昔からある。(Cf. 石油危機のころ「ユックリズム」が唱えられたりした。)身分制社会では「分をわきまえろ」と言われる。西洋では「死を忘れるな」(memento mori)という考え方がある。仏教の「諸行無常」だ。(ただし「死を忘れるな」は、快楽主義の意味にもなる。どうせ死ぬなら今を楽しめ!)

(8)「いつか」に思いを巡らせる!
「見渡せば、私の周囲は『いつか』の夢でいっぱいだ。いつか着る服。いつか読む本。いつか行きたい場所。いつかに思いを巡らせ、思うにまかせぬ今を慰めてきた。」(50頁)
《感想8》まことに同感だ。生きるとは「未来」に生きることだ。人生に「希望」は不可欠だ。
(8)-2 夢や欲望は際限なく広がる:「強欲」!
「気づけば夢や欲望は際限なく広がり、今度は何もかもが足りなく思えてくる。」(50頁)
《感想8-2》欲望は無限だ。「強欲」。カトリックの「七つの大罪」の一つだ。(Cf. 「七つの大罪」:傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、淫蕩、貪食、怠惰。)
(8)-3 「足るを知る」(知足)!
「強欲」から抜け出すにはどうするか?稲垣氏の場合は、「冷蔵庫」をやめてしまう。(Cf. もともとは福島第1原発事故をきっかけに「原発分の電気を使わない」と、彼女は考えた。(170頁))かくて「きょう必要なものだけを買う暮らし」に移行する。それについての彼女の感想は率直だ。「実のところかなりつまらない。夢も希望もなかりけり。」だが彼女は思い返す。「しかし生きるとは、しょせんこの程度のことなのだ。」(50頁)
《感想8-3》老子に「足るを知る」(知足)とある。分相応に満足することだ。どこまでが「分相応」かは、はっきりしないが、どこかで「あきらめられる」ように誰もがなれば、世は平和になるだろう。

(9)分断され攻撃的な言葉をあびせあう!
「人々が分断され攻撃的な言葉をあびせあう今」と稲垣氏が言う。(66頁)
《感想9》「朝日新聞」に対する党派的、思想的、「ヘイト」的攻撃は激しいから、朝日新聞記者だった、彼女は嫌な経験を沢山したのだろう。
《感想9-2》「リベラル」「反戦」「護憲」の朝日新聞と、稲垣氏は特徴づける。(122頁)

(10)「お上にまかせ、うまくいかなければ文句を言う」!「原発分の電気を使わない」!
「難しいことはお上にまかせ、うまくいかなければ文句を言う」という思考ではだめだ、しかし「私たちはいつのまにか、そんな思考にそまっている」と稲垣氏が言う。(104-5頁)だから原発反対の稲垣氏は、「原発分の電気を使わない」と冷蔵庫も洗濯機もやめた。(170, 176頁)
《感想10》「原発分の電気を使わない」ために、冷蔵庫も洗濯機もやめるとはすごい。さらに電気の暖房さえやめ、「湯たんぽ」を使っているという。(76-78頁)エライ!

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稲垣えみ子『アフロ記者・・・・』(その1):①もっともらしい意見!②人生は厳しく、そして面白い!③人間はややこしい!④閉塞!⑤悲劇や不平等や理不尽!⑥買い物は、「爽やかで豊かな行為」!

2021-04-13 09:08:53 | Weblog
※稲垣えみ子(1965-)『アフロ記者が記者として書いてきたこと。退職したからこそ書けたこと。』2016年、朝日新聞出版

(1)「もっともらしい意見」を「スマートに書く」!
公(オオヤケ)に本名で「コラム」を書き「新聞」に発表するとはどういうことか?「偉そうに書いているお前はナンボのモンジャ」という声が頭から消えたことはない。「実際本当にナンボでもないんですから」と稲垣氏が言う。「どこかで聞いたもっともらしい意見をまるで自分の意見であることのごとにスマートに書く」ようなことはしないという。(5頁)
《感想1》『朝日新聞』の記者の悩みだ。「もっともらしい意見」を「スマートに書く」ことができる分だけ、彼女は賢い。世の中で無難に生きていくためには、「もっともらしい意見」を言い・書く「スマート」さがないといけない。

(2)ポジティブな人だ!
「人生は厳しく、そして面白いです」と 稲垣氏(51歳)が言う。(7頁)
《感想2》とてもポジティブな人だ。「人生は厳しく、早く死んでしまいたい」とはこの人は言わない。幸いだ。なお稲垣氏は独身。

(3)「人間はややこしい」!
2009年のアメリカのドキュメンタリー映画が、「白人のようなサラサラ髪を求めてやまぬ黒人女性」の今を描く。「半世紀前には、同じ黒人社会で、アフロは自由と解放の象徴だった。」アフロという「同じ髪型がわずかな時の差で解放の象徴から克服すべき対象へと一変する。つくづく人間はややこしい。」(25頁)
《感想3》50年は長い。世の中も人間も変わる。「十年、ひと昔」だから50年前は、5つも「昔」で、昔の昔の昔の昔の昔だ。世の中は変わる。そこで生きる人間も変わる。「人間はややこしい」!

(4)社会も閉塞している!成長は止まり、人口は減り、不安を背景に対立は深まる!
現在(2014年)の日本について、稲垣氏が言う。「社会も閉塞している。成長は止まり、人口は減り、不安を背景に対立は深まる。」
《感想4》ひどい時代だ。自分/家族の身を守り、生活していくだけで大変だ。若者が就職・結婚・子育てしながら、稼いでいける可能性が小さくなった。日本は「失われた30年」!稲垣氏はしかし元気だ。「それでも未来は変えていけるはずだ」(26頁)と言う。

(5)「悲劇や不平等や理不尽」にまみれても、何が何でも生き抜かねばならない!
稲垣氏が言う。「私たちのまわりは悲劇や不平等や理不尽にまみれ、だれかがその犠牲になっている。悪いのは誰なのか。もしかしたら、私の問題ではないのか。」(31頁)
《感想5》私たちの「まわり」でなく、「私」が「悲劇や不平等や理不尽」に苦闘し、「犠牲」になっていたらどうするか?ともかく、生き抜かねばならない。狡猾に、人を騙し、長い物に巻かれ、虎の威を借り、口八丁手八丁、目から鼻に抜け、何がなんでも生き抜かねばならない。
《感想5-2》幸いにも、稲垣氏は、「悲劇や不平等や理不尽」にまみれていない。それらの「犠牲」になっていない。

(6)買い物は、「爽やかで豊かな行為」だ!
買い物は単に「欲を満たす行為」であるだけでない。「買い物」は「お金という対価を通じて、それを売る人、作る人を支持し応援する行為でもある。」買い物は、「爽やかで豊かな行為」だ。そう稲垣氏が言う。(34-35頁)
《感想6》顔が見える販売者・生産者(Ex. 個人企業・小企業・個人生産者)には、確かに、稲垣氏の言うとおりだ。
《感想6-2》ただし「大企業」に関しては事情が複雑だ。「大企業」の売る人、作る人は誰か?経営者、出資者、従業員、原料や部品提供企業?
《感想6-2-2》「クリーン・エネルギー」に配慮する企業、「原発」に反対する企業、「フェアトレード」を推進する企業(割高なのでプアな消費者は買うのは大変だ)等々を選んで「買う」ことができる。

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