80年代の半ば、留守番電話機が一気に普及した時期がありました。
それまでは、録音する機械が別売りで、電話機とつなげて使うようになっていたのです。
折しも、バブル景気に向かう最中のこと。若者たちはおしゃれな一人暮らしに憧れていて、そんな若者をターゲットにした商品がいくつも出てきたのでした。
電話機を冷蔵庫に入れておくのがおしゃれな時期もあった
応答メッセージは、みんな自分の声で吹き込んで作っていたのだけど、これがなかなかキンチョーしたものです。気に入らないと、マイクロテープを巻き戻して、何度も録り直したりして。
そこに誰かが思いついてBGMを入れるようになったのは、間もなくのこと。この選曲にはみんな凝ったものでした。
“短めの前奏で、インパクトがあって...”
なんて考えたのですねぇ。
だから、そういうところに電話を掛けると、最初にまず何かの曲の前奏が流れる。そうして程良いタイミングのところでようやく、
「はい、こちらは○○です。お電話ありがとうございます。あいにく私は外出しております...」
なんて聞こえてきたのです。
丁寧な口調が泣かせます。それを聞いたほうの人物も、割とキチンとしたメッセージを吹き込んだ。
“気の利いた台詞を残さなきゃ!”なんて考えた。
今だったら「ただ今、留守にして...」というメッセージを聞いたあたりで電話を切ってしまう。他に連絡する手段がいくつもあるからですね。ましてや、そこに音楽なんか流れてきても、誰も聞いている暇なんかないだろうなぁ。
思えば当時は、ずいぶんとのんびりした時代だったのですね。