goo blog サービス終了のお知らせ 

くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

ある日の風景 新しいコーヒー

2005-11-01 23:07:32 | エッセイ

 今日はTULLY'Sでコーヒー豆を買った。
 ダッチマンズブレンドという名前のブレンドで、「酸味は要らない、苦みとコクの強いやつ」というオーダーに応えてくれたものだ。
 あれ、何だか格好つけてる台詞だな。しかし好みなのだから仕方ない。実際はもっとソフトな言い方だったと思うが。
 豆を挽いているあいだ、サービスの一杯を飲みながら、現像の終わった写真を眺めた。TULLY'Sに来る前に、近所のDPEに寄ってきたのだ。
 先週末にISO100のカラーで撮ったのだが、殆どが失敗作だった。それがあまりにもお粗末な失敗で、しかもその原因が何となく分かっていることだったから、意気消沈してしまった。

 家に戻り、気分を回復させるために、写真科学の本や雑誌を読んだ。僕の場合、写真であれ絵であれスポーツであれ、参考になるいいものを見て、気分を回復させることが上達への早道なのである。気に入らない方法だが、もう充分に分かっていることだ。
 しかし途中でレンズのことが気になりだし、そのレンズを使うにはCONTAX(もしくはヤシカ)を買うほかないので、ヤフーオークションや量販店のサイトを眺め始める。そこから物欲がふつふつと沸いてきて、それらを買うにはどうしたらいいのかと思い始め、支払い方法とか仕事(収入)のことに思いは移り、しまいには今後の身の振り方まで考え始めた。きっかけが何であれ、最後には仕事とジンセーの話しになってしまうのだ。まったくイヤになるなあ。

dutchmans400

 コーヒーを買ってきたことを、すっかり忘れていた。湯を沸かしておいて、ドリッパーにペーパーフィルターをセットする。しかしそれらの作業は、手先だけが機械的に行っていた。というのも頭の中では、まだ仕事のことやら今後の自分のことで一杯だったからだ。
 しかし、封を開けたその瞬間。
 思い掛けず、思い掛けず、素晴らしい芳香が漂った。注意を向けていなかったせいもあるが、それは今まで出会ったことのないやつだった。鮮烈で、複雑で、程良く発酵した匂い。僕は鼻腔から、何度も匂いを吸い込んだ。こいつは力強く、迷いというものがまるでない。

 変な話しだが、何だか泣けてきた。

 

追:この記事は『NEKOのブログ』「コーヒー」にトラックバック。
 


海辺に住みたい

2005-10-29 07:28:00 | エッセイ

yuigahama400

 海辺の生活に憧れるようになりました。
 以前は「海か山か」と問われれば、「山!」と迷うことなく選択していたのです。湖畔とか、渓流のそばとか、やはり水辺ではあったのだけど。
 神奈川、千葉、静岡といった、東京近郊の海に出掛けるようになってから、海辺はいいものだなあと思うようになったのであります。幼い頃に出かけた地方の海は、観光地は観光客用にしか開発されてないし、そうでないところは寒風吹きすさぶ貧しい漁村だったのです。だから海というのは、遊びには行っても住むところなぞとは絶対に思わなかったのですね。


yuigahama2400

 千葉に住んでいる友人と、バーベキューをしたときがありました。
 彼の家族とともに材料を仕込んで、車で5分ほど走れば海岸に到着。防波堤沿いにはすでに多くの車が路上駐車しており、聞けばそのあたりでは路上駐車が当たり前だと言うではないですか。
 夏の陽射しと汐風にさらされて、ビールと焼肉の宴。やがて肉が食べきれないことが分かると、近くで遊んでいた高校生のグループを呼びつけて振舞ってしまう。ついでにこっそりビールなども飲ませてしまう(内緒です)。それから彼らと腕相撲勝ち抜き戦をして、子供と砂遊びをして、陽が暮れかかる頃にはアルコールに満たされたまま車で帰宅(ここも内緒です)。

 あのときの開放感は、今でも忘れられない。千葉は日本のカリフォルニアなのだなあとまで思ったのですよ。カリフォルニアに行ったことないけど。
 ああ、海辺っていいですねいいですね。江東区でもいいから、海辺に住みたいなぁ。


追:この記事は『Cafe Seewind』“潮風キャンプ”にトラックバック。


遙か時の彼方を経巡って戻ってくるものたち

2005-10-27 18:07:18 | エッセイ

 この長いタイトル部分を『立ち読みのススメ』
“咳をするあるてぃ 風を捲いてへばりついた犬の遠吠えが ぼくの外套にべっとりと こすってもこすっても三日月の形に落ちこんでゆく 真っ直ぐな深遠は ななめに歪む夜に 虚しく咳きこんでぼくをうつす”
にトラックバック。こちらのタイトルの長さは空前絶後だ( 'o')b


 常に手元にある本というものがあります。引っ越しの多い僕にとって、それらは本当に厳選されたものであります。何しろ、引っ越しのときは少しでも重量&容量を減らしたいのだから、
「こいつはもう読まないかな...」
と本を大量に手放してしまうわけですね。売って金になるわけでもないけど、段ボール箱が減った分だけ、引っ越し代は安くあがる。
 その激しい戦線をくぐり抜けてきた本というのは、エライのです。カンナン辛苦を乗り越えて、なのです。しかし今回のお話は、そっちの本ではないのだ。

bookshelf400

 転居が終わり、やがて生活にも落ち着きが出てくる。大きな本棚も購入した。さて、今夜あたりあの本でも読みながら過ごすか...なんていう至福のひとときに。
「おや、あの本がない。うわー、あれどうしても今夜読みたいのにいい!」
と、予想以上にうろたえてしまう事態が、必ず発生するのです。僕は生来衝動的な人間なので、“読みたい”“聴きたい”“観たい”の突発的感情を抑えることがはなはだ困難なのであります。 
 なんとなれば、またぞろ同じ本を購入することになる。読めばやはり面白いから、一時熱中する。同じ著者の本が増えてくる...。
 しかし次の引っ越し時には、またまた手放すわけです。この循環が、十年も二十年も続いているのですね。

 こんな目にあわせてしまう作家を具体的に挙げると、大藪晴彦、ロバート・B・パーカー、片岡義男、東海林さだお、ディック・フランシス、開高健などなど。大藪晴彦なんか、一番循環率が高いです。同じ本を4、5回は買い直しているもの。
 しかしこれらの作家の本は、大抵は文庫本で入手出来るのであります。それだけ売れている作家だということであります。僕なんか何したって、どうということもない大御所であります。
 だから怒らないでね。

 本に埋もれそうになりつつ『雲海の涯(はて)に~』「本を読むには?」にもトラックバック。


卵とナツメグ

2005-10-20 01:50:58 | エッセイ

campinganegg300

『不埒な天国~Paradiso Irragionevole~』“Hot Cake”にトラックバック。
 作者albero4さんの
「日曜日になるとホットケーキが食べたくなったリしませんか?」
という問いかけに、思わずいろんな事柄が思い浮かんでしまったです。

 卵料理にナツメグを入れるというワザがありますね。卵の臭みを消すためだけど、これが僕には幾つになっても楽しい作業であります。『ぐりとぐら』だったか、『ひとまねこざる』だったか、好きな絵本に出ていたのだ。
「ナツメグ入れて、オムレツ作ろう」みたいな描写だったはず。何の絵本だったかなぁ。
 この作業が楽しいのは、まぎれもなく絵本の世界を自分で再現しているからなのでしょう。子供の頃には憧れだった、西洋文化の世界であります。
 他にも、キャンプに行って料理を作るということ、森の中で何日か過ごすということ、それらが好きなのも絵本の影響だと思われます。こうして街で生活をしているとき、ふと森の生活を想像すると、それは驚くほど絵本的な世界となって思い浮かぶからであります。
 むむ、トラックバックするような記事ではなくなってしまった。しかしalbero4さんの記事は、“三つ子の魂百まで”を思い起こさせる、実に暖かい記事だったのですよ。 


逆上! 秋のお夕飯

2005-10-12 16:03:07 | エッセイ

「夕食のメニューを何にするか」これはなかなか迷うものでありますね。
 日中にお会いした、どこぞの社長さんが
「今夜も食事会に呼ばれてんだよな。ホテルの食事も飽きたよ...」なぞと、わざとらしい倦怠感をにじませながらのたまわれたりすると、
「くっそー今夜は洋食だ。ピザもステーキもサラダも食ってやるぞ。ファミレスだけど、もう何もかも食ってやるぞ!」
 と、わりかし簡単に逆上します。ホテル=洋食という昭和的誤解に気づくことなく、この時点では洋食に決定と思われます。
 しかし帰りの山手線で池波正太郎を読んだりすると、
“旨味のある鴨肉の脂に、冷えた竹酒がよく合う...”なんてセンテンスに心奪われて、
「んー、今日あたりだいぶ冷えてきたし、日本酒がいいかな。牡蠣も解禁になったし、やっぱ日本人は和食だな...」
 と昼間の逆上一気に醒めてしみじみ路線に変更。まあいずれにせよ、この時点では外食ということです。 
 しかし家に帰って一息つくと、何だか外出が面倒に思えてくる。取りあえずこの空腹をなだめておこうと冷蔵庫を開けると、昨夜の残りのたらこが見える。
「これで白飯をかっこんだら美味いだろうな。おまけに金掛かんないしな」と米を研いで炊飯器にセットし、棚にあった焼き鳥の缶詰で飲み始めるのだが。のだが...。

 空腹時の酒は利く。焼き鳥はすぐに食い終わり、猛烈に空腹感が起こっている。「米飯ってのは時間が掛かりすぎるんだよっ」と悔しまぎれに呟いて、隣のコンビニに駆け込む。酔っぱらった目には、あらゆるものが美味そうに見える。お好み焼き、薫製たまご、浅漬けにおにぎりセットに緑のたぬき大盛り。予想外の出費に驚きつつ部屋に戻ると、炊飯器から勢いよく湯気が出ている。間もなく炊きあがりである。

 もはやメニューも何もあったもんじゃない。お好み焼きをつつきながら緑のたぬきを啜って、おにぎりをパクついたところで飯が炊きあがる。悔しいから茶碗によそってたらこで食ってみれば、これが悲しいほどに美味い。
「俺、たらこと飯だけで充分だったんだよなぁ...」
 狂態を深く恥じ入りつつ、なぜか落涙までしつつ、秋の夜は更けていくのであります(泣くことないだろ)。