エンブレル・タミフル・狂鹿病・成長ホルモン・牛乳「閣議決定された答弁の重み」 6月23日

6月15日に川内博史代議士が提出したBSEに関する質問主意書に対して、昨日22日付で答弁書が送付された。その中で、1月27日現在、米国産ウシ由来の原材料が使用されていた19品目の医薬品のうち、4品目について当該原材料が変更されたことが明らかになった。難治性白血病治療薬「リツキシマブ」(中外製薬)は、4月25日以降出荷分より、ウシ血清を米国産から豪州産またはニュージーランド産のものに切り替えたとある。ゴーシュ病治療薬「イミグルセラーゼ注」(ジェン・ザイムジャパン)は4月10日出荷分以降、血液凝固第Ⅷ因子製剤「オクトコグアルファ」(バイエル)は4月12日出荷分以降、乾燥濃縮人活性化プロテインC「注射用アナクトC2500単位」(化学及び血清療法研究所)は4月26日出荷分以降、米国産ウシ由来の原材料から植物由来の原材料等他の原材料に切り替えたということだ。

従って、残る15品目については現在もなお、米国産ウシ由来の原材料が使用されているのだ。しかも厚労省は、原材料の安定的な供給確保、あるいは原材料の変更による品質・有効性・安全性に変化が生じないことの確認等に時間を要していること等が、原材料を切り替えられない理由だと、いまだに答弁している。この説明には、国民を納得させるだけの説得力がまったくない。

発売直前に、海外の投与患者にヤコブ病が発症したことが発覚した「エンブレル」は、製造販売元のワイス社が提出した資料のみをもとに薬事審議会を開き、間髪入れず販売が許可された曰くつきの医薬品だ。その後「エンブレル」は、リウマチ患者の方々のQOL向上に、どれほどの効果を発揮しているのか、それはリスクを上回るだけの価値があるのかどうかの質問に対して、特別な配慮のもとに承認・販売を許可した医薬品であるにもかかわらず、厚労省は昨年11月の川内代議士の質問主意書に対する答弁以来、追跡調査を行っていないことが今回の答弁書によって明らかになった。自らの不作為を、厚労省は暴露したのだ。リスクマネジメントとしては失格だ。

更に今回の答弁書で、「タミフル」のカプセルの原料であるゼラチンの原産国が、平成16年10月18日出荷分以降、米国産から豪州産・ニュージーランド産・アルゼンチン産・インド産のものに変更されたことが、あらためて「閣議決定」された。正確な資料がないことがBSEフリーの理由であるインドを、原産国の1つとして答弁書に明記した意味は大きい。また、備蓄における米国産ウシ由来のカプセルのリスクについて政府の見解を求めたところ、国内では6府県において、切り替え前の米国産ウシ由来ゼラチンを使用したタミフルが備蓄されていることが明らかになった。6府県の名は示されなかったが、これを容認する厚労省の対応には一貫性がない。

牛肉が輸入規制される一方で、乳製品の輸入はなんら規制されていないが、米国産ホルスタインには成長促進のために成長ホルモンが投与されている。EUでは、成長促進のための成長ホルモンの使用を全面的に禁止し、輸入に際しても残留検査をするなど非常に厳しいチェック体制で臨んでいるが、日本は、ノーチェックに等しい状態で、米国産の乳製品の輸入を続けている。成長ホルモンの残留に関して、厚労省は、食品衛生法に基づき規格等に合わないものの販売は禁止していると今回答弁したが、そもそも食品衛生法上の添加物に天然型成長ホルモンは含まれていない。勿論、ポジティブリストにも一部の合成型成長ホルモンを除いては含まれていない。即ち、今後も、成長ホルモンに侵された米国産の乳製品が、税関をノーチェックで通過するということが明らかになったのだ。

米国では、狂牛病よりも狂鹿病(CWD)のほうが社会問題化し、CWDに感染した鹿肉を食さないよう勧告している。このほど北海道釧路市が、大量発生するエゾシカに頭を悩まし、とうとう学校給食にエゾシカ肉を導入することを決定した。質問主意書では、学校給食に使用されるエゾシカについてリスク評価の必要性を政府に求めていたが、CWDがヒトに伝達するかどうか現時点では科学的に明らかになっていないことを理由に、政府はリスク評価を行う考えのないことを明らかにした。食品安全委員会プリオン専門調査会の吉川座長でさえ、米国産牛肉の安全性は科学的に証明されたわけではないと述べている。科学的に安全性が証明されなくても米国産牛肉を輸入したり、ヒトへの伝達が科学的に明らかになっていないとはいえ、米国では既に恐れられているCWDのヒトへの感染リスクを日本政府が無視するのであれば、日本にはvCJDリスクが蔓延することになる。

理論上、政府の答弁書はつぎはぎで矛盾にあふれている。政府によって十分なリスクマネジメントが行われていると思いがちだが、実際には多くのリスクにニアミスしながら生きているということを、私たちは認識する必要がある。ベストセラー「病気にならない生き方」の著者・新谷弘実医師は、過酸化脂質を多く含む牛乳は、体に毒だと断言する。牛乳は腸内細菌のバランスを崩し、腸内に活性酸素・硫化水素・アンモニアなどの毒素を発生させる。牛乳が、アレルギーや小児の白血病や糖尿病を誘発することを示唆する論文は、幾つもあるそうだ。しかし、今回示された政府の答弁は、「牛乳の過酸化脂質が健康に与える影響については、厚生労働省において、現時点では承知していない。」の一言だ。承知していないなら、承知するよう調査するのが厚労省の役割ではないか。アクシデントを未然に防ぐためのリスク管理の徹底を、厚労省には強く願わずにはいられない。
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