〈検証Ⅸ-3〉宮崎口蹄疫:安愚楽牧場は厳罰に処されるべきである

茶色字:県検証委報告書からの引用

@県検証委報告書が示す安愚楽牧場の違法性                                                                                                                                                  県検証委報告書は、7例目安愚楽児湯第7牧場について、「当該農場では4月8日以前に口蹄疫の症状が出て感染が拡がり、翌9日以降にまん延状態になったと推定することが妥当である。」と記した。安愚楽牧場の通報は4月24日であり、少なくとも半月以上も感染の疑いを隠蔽していた可能性が、あらめて極めて濃厚となった(家伝法第13条「通報義務」・第14条「隔離義務」違反)。何故当局は、安愚楽牧場に対して、速やかに強制立入調査(捜査)をしないのか。当局と安愚楽との関係を疑われても仕方がないのではないか。特に7例目児湯第7牧場の従業員(当時)に対しては直接聞き取り調査を行うべきなのに、当局はいまだにそれさえも行っていない。経営側の主張だけでは調査として不十分であることは明白である。

県検証委報告書は「最初の感染経路、初発の原因究明」の中で、次のように記した。                                                                                                                                                                                                国の疫学調査に対して、地元では、7例目の大規模な企業経営牧場が初発ではないかとの意見が圧倒的に多かった。地元農家等の間では、この農場に関してさまざまなことが噂されており、事実関係が明らかにならないと、今後安心して再開できないとの声も強かった。

この農場の管理獣医師は、関連する13の農場を一括して管理しており、7例目の農場には3月から4月にかけては全く行っていないと説明している。家畜の症状は従業員から電話で聞いて、投薬等の処方を指示していたとのことであった。

このように、この農場においては、さまざまな問題が露見しており、初発であったかどうかは断定できないとしても、この農場の社会的責任はきちんと問われるべきとの意見もあった。

安愚楽牧場の飼養衛生管理は極めて杜撰だった。異常畜で尋常ならざる状況になった4月上旬、本社から専務の増渕進氏が宮崎入りし総指揮をとった。牧場長ら従業員が胃腸薬や抗生物質を大量投与していたとされ、児湯地区13農場全体(1万5千頭)を一人で担当していた専属の森山良幸獣医師は、そのような状況にもかかわらず、3月から4月にかけては第7牧場を訪問していない。

また、初発農場についての【検証結果】として県検証委報告書は次のように記した。                                                                                                                         ・7例目の農場については、当該農場を経営する会社からの聞き取りによれば、4月22日に農場の獣医師が発熱、食欲不振、流涎、びらんを確認したものの、蹄に水疱が見当たらなかったために経過観察することとし、その旨を担当役員に報告。翌23日に症状を呈する牛が増加したことや、周辺農場に感染が拡大し始めたことから担当役員が本社と協議し、県に報告を行うこととしたが、夜遅かったため、翌朝連絡することとしていたとのことである。

そして翌24日に、家保から当該農場に対して、他の農場の関連農場として立入検査を行う旨の電話連絡があり、この電話の中で、初めて農場側から家保に異常の報告がなされた。この時の家保の立入検査では、全体の半分程度の牛房で流涎を確認し、検体を採取している。

家保による立入検査、あるいは殺処分の際には、農場側から上記以外の内容の申し出はなかったが、その後の調査で、4月8日の時点で食欲不振を示した牛が確認されたこと、4月9日から17日まで多数の牛に食欲改善薬を投与していること、さらに、4月17日に農場全体に熱、鼻水等の風邪の症状を示す牛が出たため、4月18日から20日にかけて全頭に抗生物質を投与したことが明らかになった。こうした状況から、国の疫学調査は4月8日を発症日と推定している。

・しかし、4月8日の症状を口蹄疫の症状とするならば、翌9日に同一棟の数十頭の牛に食欲不振改善薬を一斉投与していること、その後数日のうちに同一の症状を呈する牛が爆発的に拡大していたこと、そして、今回の口蹄疫は発生初期においては伝染力が弱かったとされていることを併せて考えれば、作業日誌や診療記録上からは明らかになっておらず、また、従業員からの証言も得られていないものの(はた注:ジャーナリスト横田一氏、下記裁判の被告側は証言を得ている)、当該農場では4月8日以前に口蹄疫の症状が出て感染が拡がり、翌9日以降にまん延状態になったと推定することが妥当である。

・また、3月下旬に風邪、食欲不振等の症状を呈する牛がいたことは作業日誌等から明らかになっており、これらの症状が口蹄疫であったとの確証はないものの、当該農場の獣医師が一人で他の関連農場も任されていたために、管理が行き届いていなかったのではないかということも考えあわせれば、国の疫学調査が発症日として推定した4月8日より前に、当該農場で口蹄疫が発生していたと推定することが妥当である。

@安愚楽牧場への強制立入調査(捜査)は急務である                                                                                                                   以上のように、これまで裁判記録(原告:安愚楽牧場 被告:旬刊宮崎)やジャーナリスト横田一氏の取材記事等(記事1 記事2-1 記事2-2)で既に明らかになっていた内容の一部が、県検証委員会報告書でも確認された。6例目水牛農家に安易に初発冤罪を着せた国疫学調査チームは、この県検証委報告をどのように受け止めるのか。特にチーム長の津田知幸動衛研企画管理部長は、2010年12月8日衆議院農水委員会参考人質疑でも安愚楽寄りともとれる発言に終始していた。安愚楽児湯第7牧場の従業員には直接聞き取りせず、また、水牛農家・1例目・7例目(安愚楽)の全検体の抗体値等を公表しないままでは、疫学調査の公正性を疑われても仕方がない。現在の疫学調査チームは解体し、新たなチームを再編し、真実解明のために、何よりもまず安愚楽牧場を強制立入調査することが必要である。

@安愚楽牧場は獣医師法違反で処罰されるべきである                                                                                                                              県検証委報告書は「検証で明らかになった7例目の農場等における獣医師の診療の状況は、家畜伝染病予防法のみではなく、獣医師法に照らしても問題がある疑いがある。国及び県としては、事実関係をさらに調査するとともに、各種法律の規定及び趣旨に反する部分があれば、早急に改善するよう強く指導する責務がある。」と記したが、「改善指導」ではなく、獣医師でない者による投薬については獣医師法第18条違反により当然処罰すべきである。また、当局は、獣医師法第21条に基づく安愚楽児湯第7牧場の診療簿(治療報告書)の提出を求めこれを公開すべきである。

@安愚楽牧場は家伝法違反および補助金適正化法違反で厳罰に処されるべきである                                                                                        今回の口蹄疫における安愚楽牧場への手当金等は、100億円超にものぼる。もちろんその原資は国民の税金である。安愚楽牧場への手当金等の交付は、家伝法に基づき当然停止・返還請求すべきである(家伝法第58条「手当金」)。即刻、強制調査(捜査)し、犯罪事実が確定すれば補助金適正化法に基づき刑事罰に処すべきである(五年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金、又はこれを併科)。もし仮に、安愚楽牧場に対して県が「指導」という無意味なパフォーマンスに留めるのであれば、県と安愚楽とは完全に癒着しているということになるのではないか。

なお安愚楽牧場については7例目安愚楽児湯第7牧場以外の県内直営農場についても、感染隠蔽が疑われる数々の地元情報があることも申し添える。  

検証Ⅸ-1                                                                                                                                                            検証Ⅸ-2

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〈検証Ⅸ-2〉宮崎口蹄疫:宮崎県当局の違法行為が口蹄疫感染拡大の最大要因

茶色字:県検証委報告書からの引用 青色字:ブログからの引用

@宮崎県の家伝法違反(13条・14条)は明白                                                                                                                                                      水牛農家での対応と同様に家畜保健衛生所の家畜防疫員(公務員獣医師)の通報の遅れが疑われるのが1例目である。国検証委報告書には「出来れば口蹄疫であってほしくないという心情が強く働いた」と明記され、2010年12月8日の衆院農水委員会参考人質疑では、国検証委座長・山根義久日本獣医師会会長が、4/7に異常に気付き4/9に民間獣医師が口蹄疫を疑って家保に通報したのに「何ゆえそれが20日まで延びたのか」被害拡大を懸念して(市場閉鎖・移動禁止)「それで躊躇したということはヒアリングの中で述べていた」と、家保の通報の遅れを厳しく指摘した。

1例目の経緯は次の通りである。                                                                                                                                                                                      民間獣医師は4月9日、口蹄疫の可能性が否定できないと判断し家保に通報した。しかし家保は口蹄疫の検査は行わず、経過観察とした。1週間後の4月16日、獣医師が流涎等を確認し再び家保に通報。翌4月17日、口蹄疫以外の検査を行うために家保が検体採取。最初の通報から10日後の4月19日、口蹄疫検査のために検体を採取し動衛研へ送付した。

この1例目農家と水牛農家とは同じ都農町で350mしか離れていない。3/31・4/14に水牛農家を訪問した家保と4/9・4/16・4/17・4/19に1例目農家を訪問した家保とは同一(宮崎家畜保健衛生所)である(家保の記録を見れば誰が訪問したかも明らか)。同時期に民間獣医師が口蹄疫の可能性を疑って通報しているのだから、家保が為すべきは防疫指針及び家伝法に基づき、口蹄疫に感染しているのかいないのかを検査することである(検体を動衛研に送付すること)。このとき家保(家畜防疫員)が口蹄疫を全く想起しなかったということは絶対に考えられないし、あり得ない。1月22日に隣国での口蹄疫発生を受け、県庁で防疫会議を開いているではないか。

国検証委座長・山根義久日本獣医師会会長が厳しく指摘したように、6例目水牛農家だけでなく1例目においても家畜防疫員の通報の遅れは明白であり、宮崎家畜保健衛生所は水牛農家と1例目農家とにまたがって、口蹄疫感染の疑いを隠蔽(操作)しようとしたのだ。3/31の水牛農家への家保立入調査から4/19に1例目農家の検体を動衛研に送付するまでに20日を要しており、この長期にわたる県の隠蔽こそが今回の口蹄疫感染拡大の最大の要因であることは明らかである。このように極めて重大な犯罪的行為(防疫指針完全無視および家畜伝染病予防法第13条「通報義務」・14条「隔離義務」違反)に至った県の責任は、当然問われなければならない。前述の家保(宮崎家畜保健衛生所)副所長の岩崎充祐氏は、その間4/1付で県の家畜防疫対策監に異動、それまで家畜防疫対策監だった児玉州男氏は畜産課長に異動したが、いずれも責任は重大である。

国疫学調査県検証委報告書も、繰返し、水牛農家と1例目農家について、口蹄疫を疑う症状ではなく意図的な見落としではないと家畜防疫員を擁護する趣旨の記述をしているが、1/7付で口蹄疫注意喚起の農水省通知が発出されたのを受け開催された1/22県家畜防疫会議の議論を踏まえた家畜防疫員が、防疫指針を完全無視し任務である口蹄疫であるか否かの検査(検体送付)を怠るなど言語道断である。当該家畜防疫員が家伝法違反を問われず、また安愚楽牧場も同法違反に問われないのであれば、宮崎県における家畜防疫員は何の為に、誰の為に存在するのか。

@県は防疫体制において最も重要な家伝法13条・14条を繰返し違反している                                                                                                         県の隠蔽体質を顕著に示す、もう一つの事例を紹介する。

終息に向かいつつあった6月25日、新富町のワクチン接種農家(牛500頭)の殺処分の際、口蹄疫が疑われる症状の牛1頭を発見しながら、県は検査や国への通報をしないまま作業を続行した。現場で作業していた獣医師のうち約10人が牛の周囲に集まり、「教科書で見たような典型的な症状だ」として「血液を採って、検査すべき」と相次いで主張したにもかかわらず、現場の家保・家畜防疫員は「疑わしい牛がいたが、殺処分は続ける」と命じた。

この事実は7月1日に非常事態宣言を一部解除した後の7月14日発覚(報道)した。翌15日、複数の獣医師らの所見を聞き入れなかった家畜防疫員の判断について、県の児玉州男畜産課長(前家畜防疫対策監。4/1付異動)は、「県知事から委嘱を受けた家畜防疫員の現場での権限は大きい。その判断は絶対だ」と述べた。また県畜産課は「報告を受けたのは処分4日後の6月29日。検査や国への報告をしないで殺処分したのは、現場の責任者である家畜防疫員の判断だった」と読売新聞の取材に答えた。

ところが、この家畜防疫員は、処分前に「(県の現地対策)本部に確認する」として携帯電話で判断を仰いでいたことが、農水省による現場に居合わせた獣医師への聞き取り調査で判明した。約20分間にわたり携帯電話で話し、電話を切った後「疑わしい症状の牛がいたが、上の指示で殺処分を続ける」と話したということだ。(読売記事 2010/7/15①  2010/7/15② )この事例については、国検証委報告書も指摘した。

3/31・4/9から4/19・4/22までの約3週間、感染の疑いを隠蔽した時と同様、県による「隠蔽」と「嘘」であり、明白な家伝法違反である。県という立場にありながら、当局には法律を守るという意識が全くないのである。

@東国原知事の嘘                                                                                                                                      以上のような県当局の嘘に加えて、東国原知事本人も真っ赤な嘘をついている。

報告書でも再三指摘されているが、そもそも宮崎県は2010年1月7日付の「韓国における口蹄疫の発生について」という農水省動物衛生課長通知に対して、まともに対応していない。1/7付通知を受けての県の対応は以下の県検証委報告書記述の通りである。

(県内各地域の状況)                                                                                                                                                  1月22日に県内の市町村家畜防疫担当者、農業関係団体の担当者等を集め、「家畜防疫会議」を開催した。中略。「家畜防疫会議」での情報が各農家に十分に伝達されたケースは少なく、大半の農家は韓国で口蹄疫が発生していた事実は知っていたものの、これが身近に起りうるものとして、危機感・緊迫感を持っていた状況では無かった。

(検証結果)                                                                                                                                                      市町村及びJA等に調査を行った結果、当会議(はた註:1/22家畜防疫会議)において、各農家への指導徹底について一定の要請があったことは事実であるが、参加者・機関の口蹄疫に関する危機意識を高めるまでには至っておらず、また、各農家への指導の徹底を強力に呼びかけるものではなかった。さらに、会議後に各農家に伝達されたかについての調査等も行われていなかった。

家畜防疫会議での情報が各農家に伝わっていなかったことを示す文章は、県検証委報告書の随所に出てくる。農家への情報伝達の不徹底は、明らかに感染拡大を招いた大きな要因である。しかし、東国原知事はこの点について、ブログで過去に完全虚偽の発言をしている。以下その事実を示す。

2010年6月22日付 東国原英夫オフィシャルブログ                                                                                                                                                                  政治家(公人)の発言・発信の影響は小さく無いと思う。県民や国民の皆様に間違った認識が敷衍されると困るので、例えばここで、はたともこ氏のブログ発言に対して少しだけ僕の所感を述べさせて頂いておこう。「1月7日付の『韓国における口蹄疫の発生について』との農水省動物衛生課長通知を受けて、一部の県ではHP上でも地元農家に対して注意喚起を行っていますが、宮崎県ではHP上で情報提供・注意喚起を行った形跡がありません。1月7日の農水省通知が宮崎県でも徹底されていたら、感染の拡大を防ぐことが出来たのではないかと今更ながらに強く思います」という指摘。

→本県では、確かにHP上での記載はしていないが、市町村や農業団体を通じて、FAXや電話等で農家一軒一軒に注意喚起を徹底している(農家はパソコン等をお持ちでない方が多く、電話やFAXの方が有効である場合が多い。また、HPに載せただけでお終いでいいのか?)。本県では、加えて、1月22日には、広く防疫会議も開いている。

2010年6月12日付はたともこブログ                                                                                                                                                                                                        1月7日付の「韓国における口蹄疫の発生について」との農水省動物衛生課長通知を受けて、一部の県ではホームページ上でも地元農家に対して注意喚起を行っていますが、宮崎県ではホームページで情報提供・注意喚起を行った形跡はありません。1月7日の農水省通知が宮崎県でも徹底されていたなら、感染の拡大を防ぐことが出来たのではないかと今更ながらに強く思います。

東国原氏は、報告書が指摘するように殆どの農家に情報が伝達されていない状況であったにもかかわらず、「市町村や農業団体を通じて農家一軒一軒に注意喚起を徹底している」とわざわざ私のブログに反論したのである。全くの嘘八百である。宮崎県は、宮崎家畜保健衛生所といい畜産課といい東国原知事といい、嘘ばかりついているのである。このようないい加減な県の対応・体制・体質が、今回の大惨事の最大の要因となったことは間違いない。

@県の家伝法・防疫指針違反は山積                                                                                                                                                                 県検証委報告書は「4章(6)-②現地対策本部は十分に機能したか」の検証結果に、次のように記した。                                                                                                                                     発生現場で作業に従事した者がエリア外に出る場合の消毒の不徹底、現地対策本部内での作業従事後の者(未消毒)とそうでない者との接触など、防疫上の問題があったことが指摘されている。                                                                                                                                   これは家伝法28条違反行為である。県検証委報告で目を引いたのは、感染拡大期には「特に、風(飛沫)によって大量のウイルスが運ばれたことによるものが多かったのではないかと推測される」の一文であるが、対策にあたっていた県職員の家伝法28条(病原体に触れた者の消毒の義務)違反を逃れるための言い訳ではないのか。

県検証委報告書は「第4章(7)-⑤他県との関係で問題はなかったか」で次のように記した。                                                                                                                                                                                          (周辺各県は)感染拡大についても宮崎県からの情報提供は少なく、各県とも国の発表やHP等を通じて情報を入手する状況であった。                                                                                                                   これも明らかな家伝法違反である。(第13条の4:都道府県知事は、遅滞なく、関係都道府県知事に通報)

@東国原知事の傲岸不遜な態度                                                                                                                                                         東国原知事は2011年1月14日、地元農家らで構成する口蹄疫被害者協議会に所属する農家約20人と意見交換し、被害拡大の原因や初動態勢の遅れに対する県の責任について、「怠慢、過失があったとは認識していない」と回答、農家から県の初動対応を厳しく追及されると、「マニュアルに書いてないんだよ、そんなん」と声を荒げる場面もあり、憮然とした表情でその場を後にしたという。県民の幸福を預かる県知事の言葉とはとても思えない、品性を欠く発言である。(西日本新聞記事  読売記事

@東国原知事は補助金適正化法の処罰対象となり得る                                                                                                                                                                     以上のように、県は、防疫指針を完全無視し家伝法(13条・14条ほか)に明らかに違反したと認められる。家伝法違反のものが交付金等を受取ることは家伝法違反(第58条)・補助金適正化法違反であり、手当金等の返還はもちろんのこと、補助金適正化法により刑事罰に処される(知事、その他の職員。五年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金、又はこれを併科)。知事を退任したからといって東国原氏がその責任追及を免れるものではない。東国原氏が責任を負うことは、当時の知事としての義務である。

検証Ⅸ-1                                                                                                                                                                                                   検証Ⅸ-3

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〈検証Ⅸ-1〉宮崎口蹄疫:6例目・水牛農家「初発」は冤罪である

茶色字:県検証委報告書からの引用 青色字:ブログからの引用

@はじめに                                                                                                                                                                   宮崎県口蹄疫対策検証委員会は最終報告をまとめ、2011年1月14日、東国原知事へ答申した。県職員も議論に参画し、そもそも知事が設置した委員会の答申であるから、県の法的責任に言及することもなく、知事の責任に至っては「問題が多すぎ、一人ではどうしようもないレベル」として一切追及していない。即ち、未曾有の大災害となった2010宮崎口蹄疫に対する責任について、県は完全回避を貫く姿勢なのである。

しかし県検証委員会は、関係農家約1,300名、県内獣医師約360名に対してアンケート調査を実施しており、その結果得た地元の生の声を報告書に掲載した。その中には県の不手際・体制の不備を指摘するものも多数寄せられている。合わせて、宮崎県児湯地区に直営だけでも13農場を有する安愚楽牧場の感染隠蔽疑いについても幾つかの意見を掲載した。特に、7例目の安愚楽児湯第7牧場で獣医師の資格のない者が投薬を行っていたことを明らかにし、これは獣医師法に抵触すると指摘した。しかし違法性への追及は「改善、指導する」の表現にとどまった。

アンケート結果等からも、明らかに6例目水牛農家よりも7例目安愚楽児湯第7牧場のほうがより強く初発の疑いが濃い。それにもかかわらず、依然として6例目水牛農家の初発の疑いを7例目安愚楽児湯第7牧場と同列に扱っている。県の責任と同じく安愚楽牧場の責任追及についても、県検証委員会は基本的には回避の姿勢なのである。国疫学調査チーム同様県検証委員会も、6例目水牛農家を初発からははずすことができないのだ。何故か。

@水牛農家が初発とされた経緯                                                                                                                            国疫学調査チームによる6例目水牛農家の発生経緯は次の通りである。

3月26日                                                                                                                                         水牛2頭に発熱、乳量低下がみられたことから獣医師が診療。その後数日間で同一の症状を呈する水牛が増加。                                                                                                         3月30日                                                                                                                    異常が9頭で認められたため、獣医師が家保に通報。                                                                                                                     3月31日                                                                                                                                                               家保が立入検査。症状は発熱、乳量低下、下痢等であり、この時点では口蹄疫を疑うべき症状とは考えず、3頭の血液、鼻腔スワブ、ふん便を採取し、ウイルス・細菌・寄生虫検査を実施。                                                                                                                                     4月 5日                                                                                                                                                    家保が獣医師から「ほとんどの水牛が解熱したが、一部の水牛の乳房に痂皮が見られ、アレルギーを疑っている」と聴取。                                                                                                                                                               4月14日                                                                                                                                                家保が再度立入調査し、4月31日に採取した3頭のうち1頭から再び採取。回復した水牛もいたが、乳質の低下、一部で脱毛が見られた。                                                                                                                                                                                    4月21日                                                                                                                                                             4/20に発生が確認された1例目の農場との関連農場であることから、宮崎県疫学調査班が立入調査。全頭が回復し症状が見られなかったが、当該農場主が1例目の農場主に初期の症状を確認したところ、自分の水牛の症状と似ていると考え、「4月1日に上唇に大豆大の潰瘍、他の1頭にマッチ棒大からゴマ粒大の白っぽい丘疹が乳房に散在していた」旨を家保に報告したとのこと。                                                                                                                                                                     4月22日                                                                                                                                                  家保が立入検査したところ、臨床的な異常は見られなかったが、検体を採取し、3月31日に採取した検体と合わせて動物衛生研究所に送付。その結果、3月31日に採取した鼻腔スワブ3検体中1検体でPCR陽性、4月22日に採取した血液で5検体中5検体が抗体陽性。

@疫学調査チームは「水牛農家初発」とするために、意図的事実誤認をしたのではないか                                                                                                        上記経緯を踏まえ、国疫学調査チームは6例目水牛農家の推定発症日3月26日とし「初発」としたが、いくつかの疑問点が浮かび上がる。

まず、3月31日の検体について、「PCR陽性」としているのは何故か。水牛農家は自身のHP上で、「3月31日の検体には抗体はできてなかったとのことです」と述べている。3/31の検体に抗体が検出されなかった理由について、疫学調査チームは説明しなければならない。「鼻腔スワブPCR陽性」のみで、疫学調査チームは「水牛農家の推定発症日が一番早い」と断定し「初発」としたが、6例目・1例目・7例目の全検体について、抗体値等を同時に公表しなければ疫学調査の公正性は担保されない。抗体値を農場主にも知らせないというのもおかしい。疫学調査チームは、少なくとも6例目・1例目・7例目については採取した全検体の抗体値等の詳細データを公表し、他の科学者らも判断できる資料を提示すべきである。

水牛農家は自身のHPで3/31の症状について、「【足に異常(初めて発見)・餌を食べず乳が絞れない】です。【よだれ・口内炎・乳房の皮膚に一部剥離があった】こんなことはありませんでした。だって家畜保健所の3名の職員さん!貴方達、全頭柵に入れて一緒にチェックしたじゃないですか!」と述べている。4月21日の『「4月1日に上唇に大豆大の潰瘍、他の1頭にマッチ棒大からゴマ粒大の白っぽい丘疹が乳房に散在していた」旨を家保に報告したとのこと。』との記述は捏造調書による事実誤認ではないのか。

水牛農家は自身のHPで、「県がなぜ検体を東京へ送らなかったか?3月31日と4月14日に私は家畜保健所から【東京へ送る】と言われています、これは従業員がつけていた日記に記されています」と述べている。「東京へ送る」という言葉は、口蹄疫を疑わなければ絶対に出てこない表現ではないか。このとき家保および県当局の人々に、国の検証委員会が通報の遅れの理由として指摘した「できれば口蹄疫であってほしくないとの心情が働いた」としか考えられず、このことは明らかに県の家畜伝染病予防法違反・防疫指針違反である。水牛農家の従業員がつけていた日記が証拠となる。なお、家伝法違反のものが交付金等を受取ることは補助金適正化法違反であり、厳罰に処される。当然、当時の東国原知事も罰則の対象となり得る。  

一方、家保の言葉通り3/31・4/14に本当に検体を送っていたとするならば、その結果は陰性だったということになる。3/31・4/14に何故家保は「検体を東京へ送る」と言ったのか、そして検体は東京に送られたのか送られなかったのか、ここをまず明らかにすることが重要である。

県検証委報告書は、国の検証委員会が指摘した県家畜改良事業団の通報の遅れについて、事業団の言い分通りあらためて「通常の発熱だった」と強調した。しかし、周辺地域に口蹄疫が蔓延し危機管理は最高レベルであったはずの状況で「口蹄疫を疑わなかった」という判断は常識的にはあり得ない。県検証委員会は、県家畜改良事業団の言い分は素直に聞くが、水牛農家の言い分は取合わないのか。県検証委員会の姿勢が問われるところである。(→水牛農家の日記一覧

@水牛農家初発は冤罪である                                                                                                             県検証委報告書は「最初の感染経路、初発の原因究明」の中で、次のように記した。

国の疫学調査に対して、地元では、7例目の大規模な企業経営牧場が初発ではないかとの意見が圧倒的に多かった。地元農家等の間では、この農場に関してさまざまなことが噂されており、事実関係が明らかにならないと、今後安心して再開できないとの声も強かった。

このような地元の意見に後押しされて、県検証委は、かろうじて6例目水牛農家を初発とは決めつけられないとしたが、水牛農家が初発でないことを積極的に証明しようとはしていない。県検証委は安愚楽牧場について経営側にヒアリングしたのみで、現場従業員には直接あたってはいない。会社の一方的な主張をただ聞くだけで国疫学調査チームと同じことを繰返したにすぎない。少なくとも、県内安案愚楽牧場の2~4月の診療簿(治療報告書)を提出させるべきである。

県検証委報告書は「(初発とされた6例目農場について)当該農場が見学者等を受け付けていたが、訪問者に関する記録は取られていなかったため、外部からの人の移動について、これ以上、検証することは困難であり、こうした人の移動によってウイルスが侵入した可能性は否定できない」としているのみであり、結局、発生原因、侵入経路については、まったく特定できていない状況である。」と記した。

県検証委報告書は、また、安愚楽児湯第7牧場は「少なくとも4月8日以前に口蹄疫の症状が出て感染が拡がり、翌9日以降にまん延状態になったと推定することが妥当である」と記した。725頭を飼養していたこの農場で検体を採取したのは5頭のみで、この農場が水牛42頭・豚2頭(豚は感染せず)の水牛農家よりも早くから感染していた可能性は高い。水牛農家を初発とした国疫学調査チームのチーム長・津田知幸動衛研企画管理部長は、「6例目水牛農家は初発ではなく、最も早い時期に検体を採取したにすぎない」と公式に言い改めるべきである。そうでなければ、水牛農家の青年の人生を踏みにじってまで、何が何でも水牛農家を初発にしなければならない理由が、他にあるということになる。

検証Ⅸ-2                                                                                                                                 検証Ⅸ-3

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〈検証Ⅷ〉口蹄疫対策検証委員会報告書が意味すること

@口蹄疫対策検証委員会報告書等、公表                                                                                            11月24日公表された「農水省口蹄疫対策検証委員会報告書」および「口蹄疫の疫学調査に係る中間取りまとめ」は、初発を6例目水牛農家としたままの、真相解明については非常に不十分な内容だった。この水牛農家に関する疫学調査チームの「調書」には、捏造された一文がある。この農家は非常に分かりにくい山中にあり訪問者は殆どいなかったにもかかわらず、「不特定多数が勝手に入っている」と記されているのだ。農場が訪問者に関する記録をとっていなかったこともあり、このことが水牛農家を初発とする根拠になっている。初発の冤罪が、水牛農家T氏の人生にどれほど大きな影響を及ぼすものか、国がT氏の人権に配慮しているとは到底思えず、一国民として国の人権無視の対応に大変失望した。

初発の真相解明なくして今後の防疫体制の確立はあり得ない。口蹄疫発生直後から地元紙・旬刊宮崎は第7例目とされている安愚楽児湯第7牧場の感染隠蔽工作の実態を、従業員への取材もまじえ伝えている。地元畜産農家などで構成される口蹄疫被害者協議会も、安愚楽牧場に対して踏み込んだ調査をしない県と国に対して不信感を募らせ、県知事に対して質問書を提出した。

@宮崎県は防疫指針に則った防疫体制をとっていなかった                                                                        検証委員会報告書には、しかし、いくつか重要な指摘がある。冒頭で、「防疫指針を中心とする防疫体制が今回の宮崎県での口蹄疫の発生に際して確実に実行されず、また、十分に機能しなかった」と、宮崎県が当初から「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に則った行動をとっていなかったことを指摘した。今回の宮崎口蹄疫を検証する上で、最も基本的かつ重要な指摘である。

私の6/12付ブログ「1/7付『韓国における口蹄疫の発生について』農水省動物衛生課長通知」は周知徹底されたのか」に対して、東国原知事は6/22付ブログで「本県では、確かにHP上での記載はしていないが、市町村や農業団体を通じて、FAXや電話等で農家一軒一軒に注意喚起を徹底している(農家はパソコン等をお持ちでない方が多く、電話やFAXの方が有効である場合が多い。また、HPに載せただけでお終いでいいのか?)。本県では、加えて、1月22日には、広く防疫会議も開いている。」と反論した。

しかし検証委は「国は、韓国での口蹄疫発生を受け、1/7と4/9に都道府県に対して口蹄疫の発生状況及び注意喚起のための通知などを発出し、家畜の臨床症状などの観察や衛生管理の徹底などを関係者に周知するよう依頼している。しかしながら、宮崎県は、こうした情報を受けて市町村、JAの関係者にまでは情報を伝達していたが、畜産農家にまで情報が伝わっていたかどうかの確認を行っていなかった。」「都道府県や家畜保健衛生所が日頃から農場の所在地や畜種、頭数などについて把握していることが重要である。しかし、宮崎県では、そうした最新の情報を十分に把握していなかった。このため初動対応などが遅れ、被害を広げたと考えられる。」と指摘している。東国原知事の主張が本当に事実なのか、知事自身が自ら検証すべきである。

@国の注意喚起のあまさ                                                                                           1/7付農水省消費安全局動物衛生課長通知は、近隣諸国の口蹄疫発生に敏感に反応し発出された点において評価できるが、都道府県・獣医師会等に通知するにとどまり、農家・農場に対して内容が周知徹底されたかを確認するまでには及んでいない。この点について検証委は、「都道府県に対する口蹄疫の防疫に関する国の指示は、近隣諸国での発生を通知するだけで事務的であった。」「実効性のある口蹄疫の防疫の指示が十分に国から都道府県に伝わっていたとは考えられない。」と、国の指導にもあまさがあったことを指摘している。

その他検証委は国の対応について以下指摘した。                                                                                         

・国と宮崎県・市町村などとの役割分担が明確でなく、連携も不足していた。

・宮崎県に国の対策本部、市町村に対策本部、首相官邸にも国の対策本部が出来るなど、対策本部が乱立した。対策本部の間では、権限と役割について混乱が生じ、時には対策をめぐって意見が対立するなど、連携もとれていなかった。

・日本周辺の中国、台湾、韓国で口蹄疫が発生しており、国は危機感を持って対応する必要があった。

・オーストラリアやニュージーランドのような徹底した口蹄疫ウイルスの侵入防止に係わる入国管理は実施されていない。

・口蹄疫に対する具体的な防疫措置の一義的な責任は都道府県にあるが、全体を統括するのは国であり、宮崎県も国も責任を十分自覚し、今後の防疫対応を改善していく必要がある。等々

@宮崎県当局の家伝法違反の疑い                                                                        初発の冤罪を着せられている6例目水牛農家は、自らのホームページで、3/31水牛を観察し検体を採取した県家畜防疫員(公務員獣医師)が「検体を東京へ送る」と言ったことを明らかにしている。東京とは当然動物衛生研究所のことを指し、口蹄疫を疑わなければ出ない言葉である。しかし、このとき検体は東京へは送られなかった。4/14も同様で、「検体を東京へ送る」と言いながらこの日も送らなかった。

この点について検証委は「防疫指針では、異常畜を発見し、口蹄疫が否定できない場合には、検体を採取し、動物衛生研究所に送ることになっている。また同時に、病性決定までの間に、殺処分の場所や防疫対策の検討などを行うようにしている。しかし、送った検体が陽性であった場合、宮崎県としてのダメージが大きく、現場ではできれば口蹄疫であってほしくないという心情が強く働いたと考えられる。このことは宮崎県だけの問題ではないが、こうした心理的な圧力が国への連絡を遅らせ、結果的に感染を広げたことは間違いない。韓国で口蹄疫がまん延し始めていたことを考えると、宮崎県はもっと早期に検体を国に送るべきであった。」と指摘している。

この指摘はつまり、宮崎県が防疫指針を全く守っていなかったと国の検証委員会が認定したということであり、3/31・4/14に家畜防疫員が「検体を東京へ送る」と言いながらこれを放置したことは、宮崎県が防疫指針どころか家畜伝染病予防法第13条(届出義務)及び14条(隔離義務)に違反した疑いが極めて濃厚であることを示すものだ。

@宮崎県の隠蔽体質                                                                                           宮崎県の「できれば口蹄疫であってほしくない」との心情は、5/13県の家畜改良事業団での通報の遅れ(隠蔽工作)にも表れた。家畜改良事業団は「発熱はあったが13日には流涎などがなかったため口蹄疫を疑わなかった」と言い訳するが、周辺が既に大変な口蹄疫パニックに陥っている状況で、このような発想があるはずがない。

家畜改良事業団については、種雄牛をめぐっても県は防疫指針を犯した。検証委は「近隣で口蹄疫が発生し、事業団が移動制限区域内に含まれているにもかかわらず、宮崎県は牛を移動させた。さらに、移動先でうち1頭に感染の疑いがあることが明らかになると、口蹄疫の防疫指針が『患畜と同じ農場において飼育されている偶蹄類の家畜の全部』の殺処分を求めているにもかかわらず、宮崎県は残り5頭の殺処分も再び見送った。」と指摘する。

更に、6/25ワクチン接種家畜の中に異常畜がいたにもかかわらず、県は国に報告せずそのまま処分した。検証委は「宮崎県では、6/25、発疹やびらんという症状がみられる牛がみつかったにもかかわらず、国に報告せずワクチン接種家畜としてそのまま処分していた。口蹄疫の典型的な症状とは認められなかったというのが宮崎県の説明だが、念のため写真を撮ったり、検体を採取するなど適切な調査をすべきであった。」と指摘する。

@殺処分・埋却に対する全くの準備不足                                                                                                  殺処分・埋却について、「宮崎県は、同県職員の獣医師で対応しようとし、民間獣医師を活用しようとしなかったため、作業が円滑に進まなかった。感染が拡大し、家畜保健衛生所のみで対応できなくなった段階で、実際の殺処分などは速やかに民間獣医師に依頼するべきであった。また、都道府県職員たる獣医師の任務に殺処分も含まれていることから、このような業務に対応できるように日頃から訓練しておくべきであった。」と検証委は指摘する。これはつまり、当初は、県の獣医師がなれない手つきで効率の悪い作業を行い、その結果、爆発的な感染拡大を招いたことを意味するものだ。

更に殺処分・埋却について、「宮崎県当局及び家畜保健衛生所職員による人員・物資の確保、現場の指揮命令などに問題があったのではないかと考えられる。」「防疫指針では、埋却などのまん延防止措置については原則として農場経営者が行い、都道府県は場所の確保に努めるように指導、助言を行うとされている。しかし、大規模に飼養している畜産農家を中心に、埋却地を確保していない畜産農家が多かった。また、宮崎県は、自己所有地での埋却が困難である場合の対応について具体的な検討をしていなかった。」と検証委は指摘する。

@全国有数の畜産県を標榜しながら口蹄疫に全く無防備だった宮崎県                                                   その他検証委報告書は、重要ポイントとして以下指摘した。

・県と市町村、獣医師会、生産者団体などとの連携が不十分で、(当初)消毒ポイントは4ヵ所しか設定されていなかった。

・市町村や生産団体においても発生前には口蹄疫に対する認識の欠如が認められ、口蹄疫の防疫への備えがなかった。

・口蹄疫を想定した研修や訓練は行われていなかった

・消毒薬の準備については、防疫指針でも『都道府県は、緊急時の防疫資材の入手方法などを検討するとともに、初動防疫に必要な資材の備蓄に努める』としている。しかし、消毒液などの備蓄は必ずしも十分ではなかった。こうした訓練の取組の遅れや必要な資材の不足は、初期の混乱を引き起こした原因となったと考えられる。

・各地域における第1例が確認された際の周辺農場に対する調査を感染の拡大防止の懸念から、立入検査ではなく電話による聞取調査のみとしたのは、不十分であった。

・口蹄疫発生後、宮崎県は、地域の畜産農家から発生農場の場所などに関する情報を求められたにもかかわらず、個人情報保護を理由として求められた情報の提供を行わなかった。等々

@家伝法違反のものが手当金等を受取れば補助金適正化法により厳罰となる                                                       以上のことから、今回の宮崎口蹄疫の感染拡大の最大の要因が、宮崎県の防疫体制の不備であることはもはや明らかだ。1/7付農水省消費安全局動物衛生課長通知がまったく周知徹底されず、また10年前の口蹄疫の教訓も生かされず、全国有数の畜産県を標榜しながら宮崎県は口蹄疫に対して極めて無防備であった。しかも発生当初から防疫指針を無視し、ルールに則った防疫対策をとらなかった。検証委の報告書をもとにしても、宮崎県が家伝法に違反した可能性は極めて濃厚だ。家伝法に違反したものが手当金等を受取ることは補助金適正化法により厳罰(刑事罰・警察マター)となる。県知事もまたその対象となり得る。また、安愚楽牧場は、今回100億円にものぼる手当金等を受取る計算だ。しかし感染隠蔽の疑いは極めて濃厚で、検証の結果、事実が確定すれば安愚楽牧場も補助金適正化法による厳罰の対象となり得る。(→安愚楽牧場の感染隠蔽疑惑

初発の真相解明をはじめ真実が公表されなければ、地元農家は安心して畜産を再開できない。このまま安愚楽・県・国一体の巨額税金(手当金等)不当取得・水牛農家冤罪事件が黙殺されて良いのか。その為に水牛農家の一青年の人生を踏みにじって良いのか。この不条理は必ず正されなければならない。

自らが国の防疫指針を全く守らなかった県の畜産課・家畜保健衛生所と、農水省消費安全局動物衛生課とが主導してきたこれまでの疫学調査チームには、感染源・感染ルートの解明は不可能だ。しかし、疫学調査チームの中間取りまとめは確定ではない。今後新しい情報が提供されれば、内容は修正・改訂される。係争中の安愚楽牧場と旬刊宮崎との裁判の場での真実の解明も期待される。あるいは地元農家等が刑事告発等を行えば、捜査機関による強制捜査もあり得るかもしれない。真実が解明・公表されなければ、どんなに検証しても意味はない。

 

(参考)                                                                                                                                            口蹄疫ブログ 検証Ⅰ~Ⅷ

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〈検証Ⅶ〉宮崎口蹄疫は大阪地検特捜部事件と同じで調書捏造・冤罪事件である

宮崎口蹄疫は大阪地検特捜部事件と同じで調書捏造・冤罪事件である 

 

公式には4/20第1例目を確認した宮崎口蹄疫は、7/5の第292例目を最後に8/27終息宣言が出されました。4ケ月あまりの間に37,454頭の牛、174,132頭の豚、14頭の山羊、8頭の羊、76,143頭のワクチン接種動物、合計287,751頭が殺処分となりました。

 

 

@宮崎県当局自身が家伝法違反の疑い

 最初に家畜の異常を正直に県の家畜保健衛生所に通報したのは6例目のモッツァレラチーズをつくる水牛農家です。水牛農家は、発熱や下痢等の症状を呈する水牛の検査を、県の家畜防疫員(公務員獣医師)に3/31要請しました。3/314/14には県家畜保健衛生所が水牛の検体を東京の動物衛生研に送ると水牛農家に言いました。しかし、実際に検体が送られたのは感染拡大が始まりつつあった4/22になってからでした。

韓国や台湾・中国では既に口蹄疫が発生し、17日には都道府県に対して注意喚起の農水省動物衛生課長通知が出されていましたので、3/314/14の段階で県の家畜防疫員が検体を動物衛生研に送っていたなら、感染拡大を防ぐことができた可能性も高く、県の対応は家畜伝染病予防法第13条「届出義務」・14条「隔離義務」違反の疑いが極めて濃厚です。(→水牛農家の日記 フライデー11/12号 1, 2

 

 

@「初発は水牛農家」は冤罪。初発は第7例目の大規模農場の可能性

 この水牛農家の検体は4/23感染が確認され第6例目となりましたが、現在は疫学調査チームや検証委員会によって3/31の検体が陽性であったことから「初発」の疑いをかけられています。ここでは県当局が水牛農家に関する「調書」を捏造したのではないかと思われます。3/314/14に水牛の検体を動物衛生研に送らなかった県の失態(家伝法違反)を隠ぺいした可能性があるのです。

 

しかし水牛農家よりももっと前から感染が始まっていたと疑われているのが、7例目とされている大規模企業経営型農場である安愚楽児湯第7牧場です。この牧場では遅くとも3月中旬頃から感染の疑いがあったにもかかわらず通報せず、感染を隠ぺいしていた疑いが強く、10/19の県と国の口蹄疫検証委員会合同会議でもこのことについて議論がありました。現地取材したジャーナリストの横田一氏も同牧場の現役従業員から直接、3月中旬頃にはこの牧場の牛が既に感染していた可能性を示唆するインタビューをとっています(→フライデー7/2号 フライデー7/30号 1, 2)。

 

この安愚楽児湯第7牧場は725頭の肉用牛を飼養する大規模な牧場で、この牧場の殺処分が行われた4/26、殺処分にあたった約50人の人々は壮絶な光景を目の当たりにすることになりました。殆どの牛が酷い感染状態にあり、現場の人々は上司の指示を仰ぐまでの数時間、手をつけることができなかったということです。中には口蹄疫の潰瘍が治りかけているものもあり、まさにこのことは、ずっと以前から感染していたことを強烈に物語っています。

 

 

@地元紙「旬刊宮崎」と安愚楽牧場の訴訟

 いち早く安愚楽児湯第7牧場の感染隠ぺい疑惑を報じたのが地元紙・旬刊宮崎です。結果的にほぼ間違いのない詳報でしたが、この記事に対し安愚楽は即謝罪広告掲載等を請求する訴訟を宮崎地裁に起こしました。当時は全国の多くの人々が県に同情的でしたので安愚楽も強気に出たのでしょうが、その後地元農家からも初発の真相解明を求める声もあがり、いまとなっては訴訟を起こしたことを安愚楽は後悔しているかもしれません。何故なら、旬刊宮崎の記事はその後次々と明らかとなった事実に符合する内容だからです。この訴訟によって、逆に、安愚楽牧場の家畜伝染病予防法13条(届出義務)・14(隔離義務)違反が証明されるかもしれません。

 

 

@宮崎県畜産試験場が感染拡大の最大の原因か

 宮崎口蹄疫が今回これほどまでに被害が拡大したもう一つの大きな要因が、10例目の県畜産試験場の豚への感染です。豚は呼気中に牛の約3,000倍ものウイルスを放出し、県畜産試験場の日本で初めての豚への感染は、今回、感染ルートとして非常に重要な意味を持っています。しかし、これについても今のところ掘り下げた議論・言及はありません。県は292事例全てに書かれているはずの「調書」を公開していません。個人情報はふせて、調書(=実態)については公表すべきです。→グラフで見る発生戸数の推移(鹿児島大 岡本嘉六教授HPより)

 

 

@国と県の検証委員会が真実を解明することが極めて重要

 今回の宮崎口蹄疫を検証する上での最大のポイントは

県の調書捏造疑惑と

県・安愚楽双方の家畜伝染病予防法13条(届出義務)・14条(隔離義務)違反容疑の解明です。

そして家伝法違反を犯したものが手当金等を受け取ることは補助金適正化法違反です。

補助金適正化法には厳罰があり(29条~335年以下100万円以下)、知事もその対象となり得ます。

 

被害にあわれた農家の方々が、安心して畜産を再開することができるよう、真相究明は急務です。しかし現状では県も国も検証委員会や防疫調査チームをつくってはいるものの、明らかに真相解明からは逃げています。初発の疑いをかけられたままの水牛農家の青年は、冤罪に苦しみながら今厳しい生活を送っています。

 

このままでいいのか。

犯罪の疑惑から目をそらし、夢を追い東京から宮崎へ移住し起業した水牛農家の青年を追い詰めるだけ追いつめておいて、それで良いのか。

このブログではさらに真実の追求を続けます。

 

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〈検証Ⅵ〉宮崎口蹄疫:国県検証委員会合同会議により真実は解明されるのか

10月19日、宮崎口蹄疫問題で初の国県検証委員会の合同会議が開かれました。この席で県側が初めて、初発は6例目の水牛農家ではなく7例目の企業経営型大型牧場(安愚楽児湯第7牧場)である可能性に言及しました。→記事

 

会議は非公開ですが会議後、農水省口蹄疫対策検証委員会の山根座長は「どこが初発かについては県から厳しい意見が出た。我々には水牛が初発という意見しかないが、それよりも前にかなり静かに進行していたのでは。(7例目の牧場は)査察に入ると既に治癒したものが多かったと言っていた」と会議でのやりとりを紹介しました。

 

ジャーナリスト横田一氏が雑誌フライデー(7/26/18発売)で「4月25日に口蹄疫陽性が確認された大規模X牧場の殺処分が行われた4月26日、殺処分にあたった約50人の人々は壮絶な光景を目の当たりにすることになった。牧場にいた725頭の殆どの牛が酷い感染状態にあり、現場の人々は上司の指示を仰ぐまでの数時間、手をつけることができなかった」とレポートしていましたが、これまで公式には隠蔽されてきた「真実」が、10月19日初めて公式に議論の俎上に乗ったのです。同時に取材に答えた永山英也宮崎県総合政策課長は「県として初発が7例目とは断定はしていないが、地域には6例目(水牛農家)と断定することに疑問の声もある。早く通報しただけで初発になる可能性がある」と述べました。→関連ブログ

 

永山英也県総合政策課長は、県の畜産課・家畜保健衛生所と農水省消費安全局動物衛生課と口蹄疫疫学調査チームが一体となってこれまで示してきた「6例目の水牛農家が初発」というストーリーに対して、7例目安愚楽牧場の感染隠蔽(家畜伝染病予防法13条の届出義務違反・14条の隔離義務等違反)の可能性を示唆し、初めて公式に疑問を投げかけたのです。

 

疫学調査チームによる感染源・感染ルートの解明は今日に至るまで遅々として進まず、疫学調査チームとは別に設置された国の検証委員会は現在までのところ12回にわたり会議を開いてきましたが、農水省が提示する資料を基に議論するにとどまり、到底真実にたどりつくことは不可能でした。しかし、10月19日の国県検証委員会合同会議でこれまでの「暗黙の了解」がついに破られ、今後新たな展開が予測される状況になったのです。

 

県・国によって初発(感染源)とされてしまった6例目の水牛農家T氏は、断続的に自身のHP(10月末でHP閉鎖とのこと)で言葉を選びながら意見を述べてこられましたが、19日の国県検証委員会合同会議を受け、10月20日「水牛が初発だと言っているのは宮崎県の家畜保健所(家畜保健衛生所)と畜産課なのです」とついに言及しました。

 

この水牛農家T氏は3/31県職員に検査を強く要望しています。3/31・4/14には県家畜保健衛生所が検体を東京・動物衛生研に送ると言ったとT氏農家の従業員が日記に記録しています。しかし、県が実際に検体を東京に送ったのは感染拡大が始まりつつあった4月22日になってからでした。T氏によると、県は4月22日になって検体を送った理由として、「疫学関連農場として立入したら3月31日の報告と異なる内容を牧場主が言いだしたので3/31に採取した検体を4/22になって東京に送った」と主張しているそうです。まさに特捜検察の調書捏造のような話で、県職員による家畜伝染病予防法違反あるいは公文書偽造・証拠隠滅等、更に7例目の隠蔽に関与していたとすれば、県が犯罪行為を重ねた結果感染が拡大したことになり、重大かつ深刻な問題です。→関連ブログ

 

T氏は10月21日、検体の採取は各牧場全体の10%は取るべきで、症状の出ていない牛・治った跡のある牛からも採取し、牛舎が分かれているなら平均して採取すべきだと主張しています。同氏の牧場に水牛は42頭いましたが、採取した検体は3検体、うち1検体が陽性でした。一方7例目の牧場は、725頭(肉用牛肥育)のうち5検体しか採取しておらず、同氏の主張はもっともです。

 

同氏は、「でも結局、、、あの牧場の隠蔽を防ぐ体制なんてないよな、、、系列牧場の移動は自由、獣医師法があっても専属獣医師なら怖くない、、、宮崎の抱える問題は大きいな、、、」と続けています。

更に同氏は、「私は疫学調査チームに言いました。『もし隠蔽していた牧場があるとしたら、わざと感染させたと思います』うなづいていました、、、まあそうなるわね、、、もし隠蔽していたらの話です(8/8付)」、「捜査権を持つ警察が捜査しないと感染源は特定できない(7/30付)」とも述べています。

 

10月12日に開催された疫学調査チーム第6検討概要には、「高いバイオセキュリティレベルを保つための設備を持つ10例目農場(県畜産試験場・日本で初めて豚に感染)については、口蹄疫が発生する4月20日以前は、①車両に関する消毒は、畜産関係車両に限っていたこと、②豚飼養エリアへ入場する際のシャワーの義務付けは部外者だけであったこと、③豚を移動する際には舎外を歩行させていたこと、等が改めて確認された。」と記されています。つまり、肝心の県の職員自身が「感染ルート」だったことを、疫学調査チームはついに事実上認めたのです。

 

10月18日の国県検証委員会合同会議で県側が提示した新たな疑問に対して、誰が客観的な立場で解明していくのかは重要な問題です。公式の会議の場で違法行為があった可能性が指摘された以上、7例目の牧場に対しては、水牛農家T氏が主張するように捜査機関が入り調査すべきです。県の畜産課(岩崎充祐家畜防疫対策監ら)・家畜保健衛生所と農水省消費安全局動物衛生課(伏見啓二国内防疫調査官ら)が主導してきた従来の疫学調査チームでは、感染源・感染ルートの解明はもはや不可能です。

 

あわせて、22日国会で口蹄疫免税法案が可決成立しましたが、国からの手当金等については罰則規定のある補助金適正化法に基づいて適正に支給されるようチェックが必要です。



参考
口蹄疫ブログ:検証Ⅰ~Ⅴ


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*7段落目の1行目の「3/21・31県職員」を「3/31県職員」に訂正しました。(2010.11.21)

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宮崎口蹄疫:感染ルート・初動の遅れ解明の論点

口60 口蹄疫対策では何よりも迅速な殺処分(家伝法16条「直ちに」)・埋却(同21条「遅滞なく」)が必要。宮崎日日新聞によると24時間以内の処分終了は18農場のみ。6日以上が200農場。最長35日。豚2頭に4日の例もある。何故こうなったのか。埋却地の確保・補償問題も解明すべき。

口58 口蹄疫疫学調査チーム。最初の感染は6例目で3月中旬頃。1例目・7例目(企業経営型牧場~抗体検査した牛は5例)は3月下旬頃。4/20以前に10農場以上に感染、10例目の県畜産試験場(最初の豚)も含む3/31水牛農場で家畜防疫員が口蹄疫を何故疑わなかったのか、最大の謎。

口57 東国原知事は6/21付ブログに「サーベイランスは重要である」「特に1例目・6例目・7例目については、僕も関係者・担当者に何度も聞き取り調査等をしている」と記述。9例目(えびの)、10例目(県畜産試験場)、280例目(都城)も合わせ、まずこの6例の調査結果を発表すべきでは。

口56 7/20山田農水大臣。川南の大規模農場で公表前から口蹄疫が発症していた農場があるのでは?との質問に、「調査報告がある。疫学調査チーム・第三者委員会の検証で、国・県・担当地区の責任、体制の不備も含め検証する」と発言。国民にも調書・復命書を公開し、国と県で検証議論すべき。

口55 7/19共同。宮崎口蹄疫で川南町の大規模農場(第7例目)で、通報6日前から牛数頭でよだれ症状、国の抗体検査ではこの農場の感染時期は遅くとも4月上旬とみられる、との報道。家伝法第13条「届出義務」・14条「隔離義務」違反となれば、補助金・交付金等は当然支給されない。 

口53 宮崎県新富町で6/25口蹄疫の疑いのある牛を国に報告せず殺処分。そこに派遣されていた獣医師は写真撮影や採血を求めたが、県の公務員獣医師である家畜防疫員は拒否防疫より制限解除優先で家伝法違反の疑い濃厚。6/25の家畜防疫員の『復命書』を公開すべき。

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〈検証Ⅴ〉口蹄疫清浄国資格回復のための「清浄化検査と感染源・感染ルート解明」

7月4日以降、宮崎県で新たな口蹄疫の発生は報告されていませんが、日本が「口蹄疫清浄国」と再び国際社会から認められるまでには、今後相当な時間がかかりそうです。しかし、日本の畜産業界にとって一日も早い清浄国復帰は至上命題です。

≪ワクチン接種地帯外周等での清浄化検査が必要≫                                            初期の封じ込めに失敗した今回は、想像をはるかに超える感染拡大を招き、やむを得ずワクチン接種に踏み切ることになりました。「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針(以下、防疫指針)3(1)には「ワクチンは発症の抑制に効果があるものの、感染を完全に防御することはできないため、無計画・無秩序なワクチン使用は、本病の発生又は流行を見逃すおそれを生ずることに加え、清浄性確認のための抗体検査の際に支障を来し、清浄化を達成するまでに長期間かつ多大な経済的負担や混乱を招くおそれがある。」と書かれています。

ワクチン接種地帯については感染が起きていた可能性があり、しかも、ワクチンの効果によって症状が抑えられ発症を確認できなかった可能性もあるということから、ワクチン接種地帯外周への感染拡大のおそれを否定できません。ワクチン接種家畜を全て殺処分したからといって、ウイルスを撲滅したことにはならない可能性があるのです。鹿児島大・岡本教授は、ワクチン接種地帯の外周についての清浄化検査=抗体検査は、日本が清浄国の再認定を受ける為には不可欠であると述べています。(ワクチン接種地帯外周における清浄化検査:鹿児島大・岡本嘉六教授

また、ワクチン接種地帯である川南周辺には、大量の糞尿・堆肥・敷わら等が現在も残っており、ここにも生きたウイルスの存在を否定できません。ワクチン接種地帯外周や日向市・木城町・西都市・宮崎市の発生農家周辺3km→10km圏内での抗体検査は行われておらず、このままでは当然OIE(国際獣疫事務局)から清浄国資格を再び与えられることも相手国から輸出を許されることもないと、岡本教授は述べています。(口蹄疫清浄化への道程:鹿児島大:岡本嘉六教授

家畜伝染病予防法や防疫指針は、清浄化に向けたこれらの抗体検査を義務付けてはいませんが、防疫指針「第1 基本指針」には「(関係者は)国際的な本病清浄国の防疫原則に則り、殺処分により本病の撲滅を図り、常在化を防止する対策を実施することが重要である」と明記されています。

しかし現実には、上記の清浄化検査を行う前に、宮崎県は7月16日、川南・高鍋地区の移動制限を解除しようとしています。抗体検査を行わなければ陰性も陽性もないわけですし、感染報告がなく臨床検査(目視検査)で異常が確認されないからといって移動制限を解除するということは、清浄国資格回復のために大きな障害となる可能性があるのです。

家畜伝染病予防法防疫指針の最大の問題点は、「都道府県知事がこれに従わないということを想定していないことだ」と岡本教授は指摘しています。民間種牛6頭の扱いのみならず、この間、宮崎県知事は「特例」を主張し続けてきました。法律や規則を遵守しないと言ってはばからない宮崎県知事の姿勢は、今後の防疫対策に悪影響を及ぼすでしょう。一日も早く清浄化へのスタート地点に立ち、ジャパンブランドの輸出再開を実現する為には、宮崎県に代わって国が責任を持って清浄化検査等の防疫対策を行っていくしかありません。

OIEは、口蹄疫ウイルスが国内に存在しないことの証明のために、陸生動物衛生規約8・5・8条で「ワクチン接種家畜を全て殺処分し3ケ月間発生のないこと」としていますが、これには当然のこととして、イノシシや鹿等の野生動物への感染のないことの証明も必要です。特措法にも「都道府県知事は、偶蹄類に属する野生動物に係る口蹄疫の発生の状況の監視その他の当該野生動物に係る口蹄疫の発生の予防及びまん延の防止のために必要な措置を講ずるものとする」とあり、ワクチン接種地帯外周、日向市・木城町・西都市・宮崎市の発生農家周辺3km→10km圏内での抗体検査の他に、イノシシ・鹿等の野生動物に対する抗体検査も行わなければならないのです。

拙速な移動制限解除は、清浄国資格回復に向けて、事態を大きく後退させることになりかねず、山田農水大臣が川南・高鍋地区の移動制限解除に非常に慎重な構えを示す理由はそこにあります。

≪清浄国資格回復には感染源・感染ルート解明も不可欠≫                                     また、OIEが清浄国資格を認め相手国が輸出を認めるようになる為には、その上に、少なくとも最新の発生事例の感染ルートの解明は不可欠だと言われています。勿論、今なお真相究明が行われていない初期感染ルートや、当初感染を隠ぺいした可能性のある企業経営型牧場で何が起こっていたのか、また4月28日の県の畜産試験場のブタへの感染ルート等の解明も必要です。

防疫指針には、「都道府県畜産主務課は、家畜、人及び車両の移動、飼料の利用、物品の移動、渡り鳥等の野生動物との接触の可能性、気象条件等を網羅的に調査する。農水省はこれらの調査に基づき感染源及び感染経路の究明に努める」と記されており、特措法においても、「感染経路及びまん延の原因究明に努めなければならない」と定めています。

更に、感染源・感染ルートの解明は、OIEや相手国に対する報告のみならず、国民の税金が投入される補償金問題にも直結する大変重要な問題です。政府は、600億から700億円にものぼる補償費用の大半を、一般会計の予備費から支出し、残りを特別交付税から支払う予定にしています。国民の税金が使われる以上、『補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)』に照らし合わせて、補償金が適正に支払われたかどうかの判断が求められます。この法律には厳しい罰則規定があります。宮崎県で何が起こっていたのか、真実を国民に知らせる義務が宮崎県と国にはあるのです。うやむやにされることは許されません。

防疫指針4(1)では、「家畜防疫員は過去21日間の家畜の移動(出入りを含む)及び過去7日間の人の出入りその他の接触を調べ、調書を都道府県畜産主務課に通報する」と規定しています。第1例目から第292例目までの全ての『調書』と、今年1月7日以降の家畜防疫員をはじめとする関係者の『復命書』を、宮崎県は公開すべきです。宮崎県知事は、家畜防疫員が口蹄疫を見過ごした3月31日(4月23日に6例目として公式発表)と4月9日(4月20日に1例目として公式発表)の症例について、家畜防疫員が口蹄疫を疑うことは困難であったと主張しています。しかし、宮崎県知事は、1月7日農水省動物衛生課長通知については県下の関係者にFAXや電話等で通知し、1月22日には防疫会議を開いたと述べており、「口蹄疫を疑うことができなかった」という家畜防疫員や知事の主張は納得できるものではありません。通常のリスクコントロールやガバナンスの観点からいっても、この時、家畜防疫員が口蹄疫を疑わないということはあり得ない話だと思います。

移動制限は、地元のみなさんに非常に不便な暮らしを強いることになっています。一日も早い制限解除を願う皆さんの気持ちは理解できますが、国際社会から口蹄疫清浄国として再認定されるには、最後まで手綱を緩めることができないのもまた事実であり、一日も早い清浄国資格回復は、日本そして宮崎県の畜産の復活・発展のために必要不可欠なことだと思います。口蹄疫清浄国資格の回復と国民の税金の適正使用の為に、十分な範囲での清浄化検査と感染源・感染ルートの解明が一刻も早くなされることを望みます。

 

家畜伝染病予防法

口蹄疫対策特別措置法

口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針(防疫指針)

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)

口蹄疫発生状況図(鹿児島大・岡本嘉六教授)

口蹄疫〈検証Ⅰ~Ⅴ〉:はたともこブログ

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〈検証Ⅳ〉「口蹄疫防疫措置実施マニュアル」6/24農水省消費・安全局長通知

宮崎の口蹄疫は6月19日以降新たな発生はなく、現段階ではワクチン接種の2万頭あまりの処分を残すのみとなりました。28日からは西都市・宮崎市・国富町で移動・搬出制限区域解除のための清浄性確認検査が開始される予定となり、関係者のみなさまのご尽力とご労苦に心から敬意を表します。

去る6月24日、隣県地域の防疫体制の徹底も考慮して、まだ口蹄疫の終息宣言が出されないなか、「口蹄疫防疫措置実施マニュアル」が農水省消費・安全局長の名で通知されました。今回宮崎県で防疫指針通りに実施されなかったことなどを教訓にして、口蹄疫の被害を最小限にとどめるために当事者・関係者がとるべき行動の原則を、家畜伝染病予防法・特定家畜伝染病防疫指針をベースにあらためて強調する内容になっています。逆に言えば、このマニュアルは、今回宮崎で何が起こっていたのかを表すものでもあると思います。

冒頭の「1防疫措置の基本方針」では、口蹄疫の被害を最小限にとどめるための、農水省の強い意志を表しています。

1 防疫措置の基本方針

本病の防疫対策は、本病の早期発見及び早期通報のための監視体制の強化を図るとともに、発生時においては迅速な殺処分及び埋却等によるまん延防止対策を講じ、その被害を最小限にくい止めることが基本である。

「2異常家畜の発見の通報」の項目では、都道府県公務員であり口蹄疫の専門家たる獣医師である「家畜防疫員」の役割の重要性を、あらためて強調しています。

2 異常家畜の発見の通報(抜粋)

(1) 家畜防疫員は、家畜の所有者、獣医師等から異常家畜を発見した旨の通報を受けた場合は、遅滞なく県畜産主務課に連絡・・・

(2) 家畜防疫員は、原則通報から2時間以内に当該農場に到着する。家畜防疫員は、現地到着後、車両を農場施設の外に置いて、防疫衣を着用し、現地に携行した用具をもって施設内に入る。

(3) 家畜防疫員は当該施設に入って直ちに、異常家畜及び同居家畜の鼻腔、口唇、口腔、舌、蹄部、乳頭部等を中心とした臨床検査を徹底する。その際、すべての異常家畜(異常家畜が多数の場合は代表的な数頭)の病変部位をデジタルカメラで鮮明かつ十分に撮影すること。また、防疫指針に基づき、適切に病性鑑定用材料を採取する。

(4) 家畜防疫員は、最寄りの家畜保健衛生所から当該写真及び飼養状況や病歴等の疫学情報(不明疾病の現地調査票等)を畜産課及び動物衛生課に電子メールで直ちに送付すること。この場合においても、防疫指針に基づき可及的速やかに動物衛生研究所に病性鑑定用材料を送付し、精密検査を依頼する。

(8)写真による判定が困難な場合は防疫指針に従いPCR等の病性鑑定を実施し、その結果に基づき対応する。

(9)家畜防疫員は、病性が決定されるまでの間、異常家畜の所有者に対し、防疫指針に基づき飼養家畜の隔離、関係者以外の農場への立入禁止、農場の応急的な消毒等を指導し、病原体の散逸防止を図る。

「3発生確認後の発生農場及び周辺における防疫措置」「4移動制限区域内で講じる防疫措置」の項目では、感染拡大防止のために本来行うべき獣医師による積極的発生動向調査を重視し、殺処分には獣医師以外の者も獣医師の指導のもと活用するよう指示しています。また、複数の畜舎を有する農場への畜舎間の家畜の移動の禁止の徹底についても明記しています。

3 発生確認後の発生農場及び周辺における防疫措置(抜粋)

(1) 当該疑似患畜は、当該農場内で疑似患畜と判定後原則として24時間以内に殺処分を終了する。なお、豚の殺処分においては電殺や炭酸ガスによる殺処分など効率の良い方法を検討する。

(2) 迅速かつ効率的な殺処分を行うため、積極的に民間獣医師の有効な活用を行う。また、獣医師以外の者であっても獣医師の指導の下で殺処分への活用を図るものとする。

(3) 埋却地は当該農場又は当該農場の周辺とし、疑似患畜と判定後72時間以内に埋却を完了する。やむを得ない事情により、これらの埋却地を確保できない場合には、公有地(国、県等)を利用する・・・

(4) ②消毒薬・殺鼠剤・殺虫剤等を的確かつ迅速に使用し、昆虫、小動物等による病原体の拡散防止を徹底する。

4 移動制限区域内で講じる防疫措置

(1) 家畜防疫員は、移動制限区域内にある農場のリストアップを行うとともに、発生農場から半径3km圏内にある農場に対して電話による聴き取り等により、これらの農場における異常畜の有無を速やかに確認する・・・

(2) 畜産課は国と協力して、発生後直ちに、発生農場から半径1km圏内にある農場については抗原検査及び抗体検査を、移動制限区域内にある大型肉用牛肥育農場及び大型養豚農場については臨床検査をそれぞれ実施し、口蹄疫ウイルスの浸潤状況を調査する。

(3) 畜産課は、複数の畜舎を有する農場に対して、畜舎間の家畜の移動の禁止を徹底する。

「5その他」の項目では、移動区域内にある共同たい肥舎の利用の禁止も指示しています。また、農場従業員や訪問者の行動歴の調査にも言及し、特に畜産関係車両や防疫作業車両の厳重な消毒を強調して、企業経営型牧場等大型農場の家畜の移動状況や、家畜防疫員の行動記録の分析の重要性を示唆しています。

5 その他(抜粋)

(1) 特に、畜産関係車両や防疫作業車両については、農場出入りの度に運転手及び車両内部も含め厳重な消毒を徹底するとともに、併せて一般車両の消毒も実施すること。

(3)疫学調査を実施するに当たっては、

① 家畜防疫員は、発生の確認から21日前まで遡って実施すること

② 農場従業員の行動歴、宅配便等の入退場、農場への訪問者等を調査すること。特に農場への訪問者等については訪問前後の行動歴についても調査すること

(4) 移動区域内にある共同たい肥舎については、その利用をやめること

(5) 病性鑑定について、国の現行のPCR検査に加えて簡易キットの実用化を進める。

(6) 疑似患畜の埋却が困難な場合に備え、国は移動式レンダリング車と焼却炉との組合せによる焼却の実用化を進める。

山田農水大臣は、副大臣時代、現地の対策本部に張り付いて対応にあたっていました。まさに宮崎で何が起こっていたのかを目の当たりにしてきたひとりでもあり、農水大臣として、今必要なことをこのようにマニュアル化されたのだと思います。デジカメ画像での鑑定など画期的な項目もありますが、基本的には家伝法やこれまでの防疫指針に則った内容です。あらためてそれらを厳守するよう、農水省が求めたと言うべきものです。

家畜への愛着やあらゆる面での不安など交錯する様々な思いがあるのは当然ですが、農場・農家のみなさまには口蹄疫の被害を最小限にとどめるために、その思いを超えての対応が求められ、そのためにこのようなマニュアルや法律が存在するのだと思います。農水省は、1月7日の韓国での口蹄疫発生を知らせる動物衛生課長通知が周知徹底されなかった反省を踏まえ、今度のマニュアルがすべての都道府県で実行できる体制にあるかどうかの確認を、今後は繰り返し行っていくことがとても重要だと思います。

口蹄疫防疫措置実施マニュアル(6/24農水省消費・安全局長通知)

山田農水大臣単独インタビュー(宮崎日日新聞6/24付)

はたともこ口蹄疫ブログ 〈検証Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ〉

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〈検証Ⅲ〉なぜ口蹄疫パンデミックを防ぐことができなかったのか

4月28日、PCR法による遺伝子診断で日本で初めて「豚」の口蹄疫が確認されました(公式発表10例目)。豚は牛に比して口蹄疫ウイルスの感染伝播力が極めて強く、豚への感染は今回のパンデミックを左右した激震のひとつでしたが、その「最初に感染した」豚が、地域の豚の飼養管理を行い家畜ふん尿処理施設を持つ「宮崎県畜産試験場川南支場」の豚であったことは驚くべき事実です。今回の防疫体制のガバナンスとリスクコントロールを検証する上で、なぜ県の畜産試験場の豚が最初に感染したのか、その感染ルートを解明することは非常に重要です。

FAO「口蹄疫緊急時対策の準備」には、口蹄疫感染ブタが呼気に排出する空中ウイルス量は、ウシの3,000倍に達し、その潜伏期間は10日前後で、感染後ウイルスの排出は臨床症状が現れる最大4日前から始まるとあります。すなわち、日本で初めて口蹄疫陽性が確認された畜産試験場の「豚」は、遅くとも4月17日頃までには感染し、4月23日頃から大量の口蹄疫ウイルスを撒き散らしていたことになるのです。口蹄疫を疑い検体を採取したのは4月27日午前10時なので、4月23日頃から数日間、本来地域の防疫の拠点となるべき畜産試験場で、感染豚は牛の3,000倍もの口蹄疫ウイルスを放出し続けていたことになるのです。

ところで、公表された情報によると、要請に応じ県の公務員である家畜防疫員(獣医師)は、3月31日水牛農家を訪問しました。このとき家畜防疫員は口蹄疫を疑わず「普段の下痢」と判断しましたが、3週間以上が経過した4月23日、この水牛の検体は口蹄疫陽性と確認されました(公式発表6例目)。

また4月9日にも要請に応じ、県の家畜防疫員は別の農家を訪問しています。その際「経過観察」としましたが、4月17日再度訪問した時も口蹄疫を疑わず、4月19日20時にやっと口蹄疫の検査を実施するための検体を採取しました。その結果翌20日、陽性と確認されました(公式発表1例目)。

いずれも宮崎県家畜保健衛生所の家畜防疫員が現場に出向いていますが、結果的に、潜伏期間を考慮すると3月25日頃から水牛(6例目)が、4月3日頃から牛(1例目)が既に口蹄疫に感染していたこと、また、少なくとも3月31日、4月9日、17日の三度にわたり、口蹄疫との認識のないまま家畜防疫員が口蹄疫ウイルスに曝露していたということがわかります。

今となっては、1月7日の韓国での口蹄疫発生を知らせる農水省動物衛生課長通知と2月19日の台湾での口蹄疫発生を知らせる農水省プレスリリースが、なぜ宮崎県の家畜防疫員や関係者に周知徹底されなかったのか、大きな疑問です。これが今回の口蹄疫パンデミックを防ぐことができなかった理由の一つであり、国と宮崎県に大きな責任があることは言うまでもありません。

極めて感染力の強い口蹄疫が1月・2月と隣接する韓国・台湾で発生した以上、国が定める「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に従い、宮崎県の家畜防疫員は口蹄疫を疑った防疫体制をとらなければなりませんでした。同指針では、確実な診断が得られるまでは農場を閉鎖し防疫関係者以外の立ち入りを禁止しなければならず、その場で口蹄疫が否定できない場合には家畜保健衛生所は都道府県畜産主務課に連絡するとともに、家畜防疫員(獣医師)は独法・動物衛生研究所に検体を搬送し検査を受けなければならないとしています。

一方、ジャーナリスト横田一氏の取材レポートにもあるように、4月25日に口蹄疫陽性が確認された企業経営型牧場の殺処分が行われた4月26日、殺処分にあたった約50人の人々は壮絶な光景を目の当たりにすることになりました。牧場にいた725頭の殆どの牛が酷い感染状態にあり、現場の人々は上司の指示を仰ぐまでの数時間、手をつけることができなかったということです。この牧場は4月24日午前9時、口蹄疫様症状を示す牛がいると県に通報していますが、状況からいって、それよりもずっと以前から症状を示す牛がいたことは明らかで、そのことを隠ぺい・放置していたとなると、それは家畜伝染病予防法違反(13条の届出義務・14条の隔離義務等)であり刑事罰に値する犯罪です。

3月頃の発生当初、なぜ「家畜伝染病予防法」や「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に則った防疫体制がとられなかったのか、今回の口蹄疫パンデミックを検証する上で、最も基礎的な疑問であり、また最も重要な要素です。感染ルートの解明と併せて、この間に宮崎県の関係各所・農場・農家で起こったことすべてが情報開示されなければ、周辺地域の防疫体制にも影響します。真実が公表されなければ、将来に教訓として生かされません。

鹿児島大学・岡本嘉六教授も指摘しているように、有効な防疫体制には、獣医師による未感染地域の積極的発生動向調査が不可欠であるとFAO「口蹄疫緊急時対策の準備」に書かれています。宮崎県では殺処分に大半の獣医師があてられ、未感染農場に立ち入り調査をする積極的発生動向調査が行われてきませんでした。現地で対応にあたっていた経験をもとに就任早々の山田農水大臣は、6月10日都城で口蹄疫陽性が確認された直後の13日、周辺地域での積極的発生動向調査を開始しました。今回の口蹄疫パンデミックによる隣接各県のダメージを最小限にとどめるためにも、農水省は、家畜伝染病予防法やガイドラインに則った防疫体制がとられているかどうかの確認を、今後はしっかりと行っていかなければならないと思います。

「1月7日農水省動物衛生課長通知」

「2月19日農水省プレスリリース」

「家畜伝染病予防法」

「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」

「口蹄疫対策特別措置法」

鹿児島大学・岡本嘉六教授HPより抜粋

 「FAO口蹄疫緊急時対策の準備:第2章この疾病の特徴」

 「発生農家周辺の調査が始まった」

〈検証Ⅱ〉獣医師の配置を間違えた宮崎県:鹿児島大・岡本嘉六教授に学ぶ口蹄疫対策(はたともこブログ)

〈検証Ⅰ〉「1/7付『韓国における口蹄疫の発生について』農水省動物衛生課長通知」は周知徹底されたのか(はたともこブログ)

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