米国・多国籍製薬メジャーが、ワクチンと高額新薬で、日本の公費・健康保険市場を狙っている!

11月16日、中央社会保険医療協議会(中医協)は、

平成28年度緊急薬価改定の基準
ア 平成27年10月から平成28年3月までに効能・効果又は用法・用量の一部変更が承認された既収載品で、

イ 平成28年度の企業予想年間販売額(薬価ベース)が、1000億円を超え、かつ、薬価収載された時点における予想年間販売額に対して10倍以上となる既収載品、

に該当する薬剤として、平成29年2月1日から、

小野薬品工業が製造販売するオプジーボ点滴静注20mg150,200円を50%引き下げて75,100円に、同100mg729,849円を50%引き下げて364,925円にすると、決定、発表しました。


オプジーボ(一般名ニボルマブ)は、夢の新薬と言われた抗がん剤・分子標的薬です。
免疫チェックポイント阻害剤とも言われ、がん細胞を攻撃する免疫細胞の働きを抑制する分子(免疫チェックポイント)に結合し、その作用をブロックして、免疫細胞の本来の力を発揮させ、がん細胞を攻撃できるようにする薬剤です。

当初は根治切除不能な悪性黒色腫(メラノーマ)が適用対象だったので、対象数が少なく超高額となってしまいましたが、2015年12月に切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんにも適用されることになり、対象患者が増えました。

オプジーボは、体重60kgの患者の場合、1回あたり約133万円、1ケ月あたり約300万円、1年あたり約3500万円かかります(薬価換算)。日本の健康保険の場合、患者3割負担ですが、高額療養費の自己負担限度額の制度があり、患者負担は最大でも年間100万~200万円です。残りの年間3300万円~3400万円は健康保険の負担となります。

進行性非小細胞肺がんへの適用拡大で、新規使用患者数が、メーカー推定で15000人となり、薬剤費だけで年間、3500万円×15000人=5250億円という膨大な負担(増)となってしまうのです。

日赤医療センター化学療法科の國頭(くにとう)英夫医師による、「仮に、対象となる肺がん患者の半分の5万人が、1年間オプジーボを使えば、総額1兆7,500億円のコスト増」という試算もあります。

また、オプジーボには、日本では100mg約73万円だが、米国では約29.6万円、英国では約14.4万円と、日本が異常に高いという指摘もあります。既存の抗がん剤と比較して、延命効果は、例えば約3ケ月との指摘もあり、費用対効果の問題もあります。


中医協のオプジーボ薬価50%引き下げ決定(11/16)に対して、5日後の11月21日、米国研究製薬工業協会(PhRMA)(日本に事務所があり、オプジーボを共同開発した米国ブリストルマイヤーズスクイブも加盟/日米ワクチン政策意見交換会の事実上の仕切り役))と欧州製薬団体連合会(EFPIA)は連名で、
「日本における最近の薬価に関する動向がイノベーションを評価する方向から外れてきていると感じており、日本の医薬品をめぐる制度に安定性と予見可能性を取り戻すために私ども業界団体も日本政府と共同して取り組むことを提案します」
との声明を発表しました。非常に素早い行動です。
※「PhRMA」HP 2016.11.21プレスリリース参照


続いて日本政府は、オプジーボの半額値下げを契機に、これまで二年に一度だった薬価改定を、全品を対象に毎年調査し、価格改定に反映するという、薬価制度改革の基本方針を、12月20日の財務大臣、厚生労働大臣、官房長官、経済財政担当大臣の四大臣会合で決定しました。11月25日の経済財政諮問会議の民間議員4名の提言がきっかけでした。

日本医師会や薬剤師会、製薬業界から強い反対意見が示されましたが、12月5日には、米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)、そして在日米国商工会議所(ACCJ)、先進医療技術工業会(AdvaMed)、米国医療機器・IVD工業会(AMDD)、バイオテクノロジーイノベーション協会(BIO)、欧州ビジネス協会(EBC)医療機器委員会などが連名で、
「薬価の毎年改定に反対する共同声明」
を発表しました。
※「PhRMA」HP 2016.12.5プレスリリース参照

なかでも米国は、業界だけでなく、政府も反応しました。
12月6日付のウォール・ストリート・ジャーナルは、次のように報道しました。

●米国政府は、見直しを求める書簡を、菅義偉官房長官に送付。
米国のプリツカー商務長官は12月2日付の書簡で、いかに「失望している」か、を説明。「医療関連製品のインセンティブ構造だけでなく、市場の予測可能性と透明性に対する深刻な懸念を引き起こす」と伝えた。

●全米商工会議所は、同様の内容の書簡を、安倍晋三首相にも送付。

●米国研究製薬工業協会・広報担当者・マーク・グレイソン氏
「プリツカー商務長官とトム・ドナヒュー全米商工会議所会頭の書簡は、日本の患者にとって良好なイノベーション環境がいかに重要かを強調するものだ」と述べた。

●プリツカー商務長官は書簡でオプジーボの名前を挙げなかったが、「医薬品の保険償還価格を引き下げるためのその場しのぎの制度変更」に落胆していると伝えた。
※「PhRMA」HP 2016.12.9プレスリリース参照


このように、相次いで、米国政府、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、在日米国商工会議所などから反対声明が出される中、
政府は、反対意見にも一定の配慮をして、12月20日の四大臣会合で、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を決定し、翌21日の経済財政諮問会議で報告しました。

その内容は、「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」を両立し、国民が恩恵を受ける「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現する観点から、薬価制度の抜本改革に取り組むとし、状況の変化に対応できるよう、新薬収載の機会を最大限活用して、年4回薬価を見直し、全品を対象に毎年薬価調査を行い、価格乖離の大きい品目について薬価改定を行う、というものです。

具体的な内容については、来年中に結論を得るということなので、議論はこれからですが、米国政府をも巻き込んだ米欧製薬業界・多国籍製薬メジャーの薬価引き下げへの抵抗は強力で、彼らが、高額新薬の分野で、日本の健康保険市場を標的としていることは、間違いありません。

TPPの初期の議論では、米国の民間保険会社が日本の国民皆保険制度を破壊するという懸念がありましたが、今は、明らかに、米製薬巨大企業(多国籍製薬メジャー)は、高額な新薬で、日本の皆保険「健康保険市場」を狙っています。

新ワクチンを開発し、日本で承認・定期接種化させ公費負担とし、健康な人すべてをターゲットにワクチンビジネスを展開し、さらに、高額な新薬ビジネスで、皆保険の健康保険制度を通して日本マネーを搾り取る、これが、多国籍製薬メジャーの、利益追求のストラテジーです。

日本では小野薬品が製造販売しているオプジーボの類似薬を、このほど、米国メルク(日本法人MSD)が日本でも販売します。新薬の名前は「KEYTRUDA(キートルーダ)」。このほかにも来年以降、多国籍製薬メジャーの高額新薬が、日本で続々と上梓される見込みです。

超高齢社会を迎え、平成27年度の国民医療費は41兆5千億円。そのうち薬剤費は8.85兆円(H25年度医療機関・保健薬局合計)で、医療費に占める割合は約22%です(中医協発表)。日本の健康保険制度を維持していくためには、合理的かつ正しい方策が必要です。

私は、健康保険ではジェネリック医薬品と漢方薬を中心とし、「まちかど・かかりつけ薬局」を活用したセルフメディケーションを推進していく方向に政策転換することが、医療の質を向上させ、医療制度の抜本的改革につながっていくと思います。


中医協「平成 28 年度緊急薬価改定について」(オプジーボ)(H28.11.16)

●中医協「薬価に係る緊急的な対応について」(H28.11.16)

●中医協「薬価改定の経緯と薬剤費及び推定乖離率の年次推移」(H28.8.24)

●経済財政諮問会議「薬価制度の抜本改革に向けて」(H28.11.25会議資料4-1)

●経済財政諮問会議「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(H28.12.21資料1)

●はたともこのPPPA(Power Point Policy Account)(60分)
ワクチンビジネス/新薬ビジネス

 

 

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事業仕分けで「拡充」の評価を得た「医薬品医療機器総合機構」 (ツイート)

「医薬品医療機器総合機構」に対する事業仕分けの評価は、非常に曖昧。厚労省からの現役出向者が多いという点を強調しガバナンスの抜本的改革・強化を求めるという評価内容だが、この機構の最大の問題は、新薬の承認申請をするメーカーと審査チームとの癒着。

強い要望のあるオーファンドラッグ等の早期承認につながる「審査関連業務拡充」との結論を否定はしないが、多くの場合がそうであるように、1日も早く承認して欲しいメーカー側が提出する資料を鵜呑みにし重大な副作用報告を軽視する形で承認する体質にこそメスを入れない限り、この機構の問題点は解決しない。FDAにも同様の問題点がある。

平成21年度は、事業費約31億円・人件費約27億円の合計58億円強のコストに対し、収入の90%近くの51億円が「手数料」すなわちメーカーからの新薬承認申請費用。
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長妻大臣面会の日、こんなカットもありました


記者会見でお馴染の民主党本部。
スピーチしているのは幹事長???ではなく・・・・・こんな場面もありました。
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役所の前で長妻大臣面会を待つ医療技術者7団体のみなさん


私の後方に、全国から集結した100名のみなさんが・・・・う~む、見えそうで見えない・・・すいません。
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3/15 医療技術者7団体、長妻厚生労働大臣面会


去る3月15日、日本臨床衛生検査技師会・日本臨床工学技士会・日本視能訓練士協会・日本放射線技師会・日本作業療法士協会・日本歯科技工士会・日本歯科衛生士会の医療技術者7団体と長妻厚生労働大臣との面会が実現しました。各団体の代表者から大臣に、それぞれの要望書が手渡されました。

全国から集結した医療技術者7団体のみなさんは総勢100名、大臣室にはとても入りきらないということで、急きょ、厚生労働省の講堂での対面となりました。

大変お忙しいなか時間調整をして下さった長妻大臣は、コメディカル・コデンタルの職能発揮の重要性も十分に認識されており、患者主役の真のチーム医療の実現のために、今後も更に意見をあげて欲しいと述べられました。

医療技術者7団体と長妻大臣とが同じ目的のために共鳴でき、とても有意義な時間となりました。

画像は、最後に撮影した集合写真です。前列の向かって左側に長妻大臣・川内衆議院議員、右端が私です。
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医療技術者(コメディカル)の職能発揮をバックアップ!

日本の医療は、たくさんの医療技術者によって支えられ成立しています。外来を受診するだけでも、医療事務・医師・看護師・臨床検査技師・薬剤師等複数の専門職に接します。その他、リハビリに関わる理学療法士・作業療法士等、医療機器に関わる放射線技師・臨床工学士等、眼科では視能訓練士、歯科では、人工の歯は歯科技工士が、口腔内の健康ケアは歯科衛生士がその業務にあたります。専門職である医療技術者は、全部で二十数職種にのぼると言われています。

国家資格である専門職は、それぞれに関わる法律によって業務等が規定されていますが、法律のなかには現実の実務からは乖離した内容のものもあり、それらについては、実態と職能に見合った改正が早期に必要です。例を挙げれば枚挙にいとまがありません。厚労省が、医療現場の変化やそれぞれの医療技術者の職能の実態を十分把握していなかったり、あえて目をそらしていたりして、現行のまま法制度を維持したいと考える立場の人々の主張を優先してきた結果です。

現行の法律のもとでも、省令等の改正等で業務内容を拡大しさえすれば、もっと医療現場に適合したチーム医療を推進することができるにもかかわらず、現在までのあいだ放置されてきたものも沢山あります。また、医療専門職に関わる国家試験は、例年3月末に合格発表されますが、その後の申請・登録手続きに1週間~3週間を要し、就職しても新年度の業務に即応できず、現場からは改善の声があがっています。

先般、新型インフルエンザワクチン接種に際し、優先順位1位とされた医療従事者の対象が医師・看護師に限定されていたことは、厚労省がチーム医療というものをまったく理解していないことを如実にあらわしています。

日本の医療費は、あと数年で40兆円を超える勢いで膨れ上がっています。診療報酬が適正に配分されない一方で、国民負担は増え続けています。医師だけに権限・裁量・診療報酬が集中し、専門職の職能が存分に発揮されず、効率の悪い業務体制が随所に見られることは非常に残念です。その結果、患者さんに負担やしわ寄せがきて、本来主役は患者さんであるはずなのに、医師が主役として君臨する医療が、いたるところで当たり前のように行われています。勿論、患者主役の理想的な医療が行われているところが現存することは、言うまでもありません。

それぞれの医療技術者が、その職能を100%発揮して、患者さんにとって有益で効率的な医療が行われるように、医療技術者の役割分担を明確にして、それぞれの医療技術者に対して権限・裁量および診療報酬を適正に配分していくために、必要な法律や制度の改正を速やかに行う努力が民主党政権には求められています。これまでやろうにもかなわなかったそれらの法律や制度の改正は、民主党政権なら必ず実行できると私は信じています。なぜならば、それこそまさに、民主党が目指す「国民の生活が第一」すなわち「患者・利用者が第一」の医療制度改革に他ならないからです。
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事業仕分け:漢方薬の保険適用除外で、いくら捻出したいのか!?ムダな独法の廃止が最優先!

事業仕分けで漢方薬を保険適用外とした場合の予算削減規模について、行政刷新会議ワーキンググループの評価結果や配布資料のどこを見ても、具体的な数字はまったく書いてありません。そこで、財務省主計局の担当部署に問い合わせをしてもらったところ、あまりにも想定外の応えが返ってきて、大変驚きました。さすがの私も、唖然、です。

漢方薬を保険適用外と仕分けした財務省主計局の担当者から出た言葉は、「細かい数字は掌握しておらず、厚労省担当者とのやり取りを通しての感覚だと、(36兆円の医療費のうち)漢方薬はだいたい1千億ぐらいではないか」、というものだったのです。漢方治療の現場を大きく動揺させ、漢方治療に頼っている患者さんを不安に陥れた責任省庁(財務省および厚労省)の、なんと、これが返答です。

事業仕分けで、総額1兆8千億円をひねり出したと言われていますが、財務省のこのような回答に触れると、それさえも、極めてあやふやな数字なのではないかと、疑いたくなります。

財務省の言うとおり、漢方薬の医療費が約1千億円だとすると、そのうち国庫負担分(税金)を1/4として計算すると、250億円がこの事業仕分けによって捻出されるということになります。しかし、漢方薬を保険適用外にするという評価は、漢方医療の現場を知らない人たちによる、間違った判断です。

250億円という金額を捻出したいのであれば、厚労省所管の15の独立行政法人や720を超える公益法人の精査を、まずは先にやるべきです。厚労省自身の立ち入り検査でも、100以上の公益法人が改善すべき点があるとみなされており、独法と公益法人の事業仕分けを行えば、250億円くらい簡単に出てきます。

たとえば、国の特別会計から、(独法)高齢・障害者雇用支援機構に年間約167億円、(独法)雇用・能力開発機構に年間約769億円、合わせて約936億円組織運営費が交付されています。事業費は別途計上されており、936億円という数字は、純粋に組織の運営のためだけにかける費用なのです。

しかも、(独法)高齢・障害者雇用支援機構には、各都道府県に「都道府県雇用開発協会(社団法人or財団法人)」という組織がぶら下がっており、そこでは1日数人訪れる相談者に対して、そのままハローワークに行くよう指導しているにすぎないのが実態です。同じように(独法)雇用・能力開発機構にも、各都道府県に都道府県センターが存在します。なかでも「私のしごと館」なる無味乾燥の巨大箱モノは、つとに有名。過去には「スパウザ小田原」のような、豪華リゾートホテルまでをも抱えていました。

民間企業なら、時流に合わせて、非情とも言えるほど大胆な雇用調整や工場閉鎖を断行しコスト削減に挑むところを、独立行政法人という伏魔殿では、毎年毎年、組織運営費に莫大な交付金を費やし、組織をぜい肉で肥大化させてきているのです。どう考えても、これらの独法や付随する公益法人は信用できず、すべて必要ありません。人々に馴染み深いハローワークや都道府県などに直接事業費を渡して、雇用支援事業を効率的に行っていくべきです。

政府は、250億円という金額を捻出したいのなら、漢方薬を保険適用除外にするのではなく、高齢・障害者雇用支援機構と雇用・能力開発機構の2つの独法を、即座に廃止すれば良いのです。十分おつりがきます。事業仕分けでは、何よりも先に、独立行政法人や公益法人の仕分けを行うべきだったのです。

それにしても、医療用漢方薬を事業仕分けの対象にしておいて、財務省も厚労省も事業の正確な基本的データを持っていないという状況を、私たちはどのように解釈すればよいのでしょうか。今回の事業仕分けでは、誰が見ても仕分けの対象となるべき事業は幾つもありましたが、漢方薬の保険適用除外のように、明らかに間違いであると同時に、管轄である厚労省も予算を査定する財務省も、事業に関する正確なデータを持っていないことが判明すると、誰が何を基準に仕分けの対象を選んだのか、今となっては非常に不可解でなりません。

人間を見ず病巣しか見ない、検査データ至上主義の西洋医学の欠点を補って余りある漢方は、西洋医学と並んで、日本の医療を支える両輪のひとつです。2002年からは、薬学部に続き医学部においても他の分野と同等に漢方の講義が行われるようになりました。未病の段階から人体に有益に作用する漢方は、セルフメディケーションにおける必須アイテムでもあり、膨大に膨らむ医療費の抑制に、むしろ大きく寄与する存在です。

政府が正しく漢方の意義を理解し、漢方薬を保険適用から除外するという愚挙に出ることのないよう、心から願っています。また漢方薬・生薬認定薬剤師のひとりとして、私も、漢方薬の有益性について更に情報発信していくよう、これからも努力します。

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事業仕分け:漢方薬を保険適用外の不見識。花輪先生コメント。

漢方薬を保険適用からはずすという事業仕分けに対して、以前からこのブログでも紹介している北里大学東洋医学総合研究所所長の花輪壽彦先生が、11月29日付けの日経新聞に、次のようなコメントを発表されました。

漢方なんでも道場

「事業仕分けの対象に:漢方薬、保険適用外の懸念」

Q.行政刷新会議が漢方薬を保険適用からはずす、と決めたというのは本当ですか。

A.11日の行政刷新会議・事業仕分け作業の結果、医療用漢方製剤を保険給付からはずすという案が承認されました。まだ、政府の最終決定というわけではないようですが、「財源削減」だけを目的に下された判断で、漢方治療の専門家として「信じられない」と言わざるを得ません。

漢方薬は薬局でも購入できるから保険適用から削除、という短絡的理由から決められたようです。とても容認できません。

民主党のマニフェストには「統合医療の確立ならびに推進」として「漢方、(中略)などを統合医療として、科学的根拠を確立します」と書いてあります。

今回の行刷会議の見解はマニフェストにも反しています。

先人の苦労によってやっと漢方薬が日常診療において普通に保険医療として定着し始めました。この時期に、十分な議論を経ずに、パフォーマンス的にカットするこの作業は復権した「日本の伝統医学」の灯を消す暴挙です。

現在、東洋医学会を中心に、署名活動などで「反対」を表明し、「漢方薬が保険で服用できなくなる事態」を回避すべく動いています。(北里大学東洋医学総合研究所所長 花輪 壽彦)

この声明に、私もまったく同感です。

しかし、東洋医学会は、署名運動の前にやるべきことがあったのではないか、というのが私の率直な心境です。厚労省の発表によると11月25日時点で、新型インフルエンザによる死亡者は73人、うち15歳未満の死亡者は21人で全体の30%近くに達しています。それらの症例のプレスリリースを読むたびに、感染初期に漢方薬の麻黄湯を服用していたら、重症化せずに済んだのではないかと、思います。

特に自己主張や自己判断が難しい乳幼児の場合、様子がおかしいと気付いた段階で、保護者が子どもにまず麻黄湯を服用させることは、重症化を防ぎ命を救う可能性のある非常に重要な措置と言っても過言ではないと思います。

ところが未だに、厚労省の新型インフルエンザ対策ガイドラインに、選択肢の一つとしてさえも、麻黄湯は含まれていません。漢方専門家による働きかけが不十分であることは、言うまでもありません。

東洋医学会は、漢方の専門家集団として、新型インフルエンザに対する麻黄湯の有効性を、国民に対して積極的に情報提供すべきだったと思います。処方医である前に漢方の専門家として、特に小さな子どもを持つ保護者に対しては、薬局で麻黄湯を買って常備しておいて、いざという時に備えるべきだというアドバイスを、服用の注意事項も含めて、積極的にインフォメーションすべきであったと思います。新型インフルエンザ対策への積極的な関わりが、薬剤師会も含め漢方専門医には、欠けていたと言わざるを得ないのではないかと思います。

一方で、次のようなエピソードもあります。厚労省医政局の担当者の中にも、麻黄湯の有効性に対して理解を示す人が存在し、ある漢方メーカーに対して「(新型インフルエンザ対策として)麻黄湯を推奨しようか」と話したところ、そのメーカーは、原料である生薬の供給が不十分だとして、厚労省による麻黄湯の推奨に対してネガティブに反応したそうです。このような消極的な姿勢が、結局は漢方メーカー自身の首をしめることにもなるのです。

漢方の専門家が、積極的に新型インフルエンザ対策に行動を起こしていたら、漢方薬が保険適用から除外されるなどという事態に陥ることは、絶対になかったと私は思います。

まずは、漢方の専門家は、新型インフルエンザ感染初期には、タミフル・リレンザと比較して、麻黄湯が同等以上の効力を持つことを、国民全体に周知徹底する努力をすべきです。広く国民に漢方薬の意義を認知してもらうよう積極的な働きかけをしないまま、あわてて保険適用除外の問題だけを主張しても理解は得られません。

そしてメーカーは、原料となる生薬の供給体制の強化のために、厚労省に働きかけをして国家としての解決策を導くべきです。また、抜き打ちの検査体制も確立をして、メーカーが製造する漢方薬の配合などへのチェック機能の強化も必要です。漢方専門医や薬剤師による適切な啓発活動と同時に、メーカー側の企業努力も、漢方の信頼度をアップさせるためには不可欠です。

花輪先生が診療に当たられている北里大学東洋医学総合研究所は、厳選された高品質の漢方生薬を使用し、保険適用外の生薬も駆使して個々人に合わせたテーラーメイドの診療を行っているため、すべて自由診療です。必要な時には私も漢方の大家であられる花輪先生の診療を受けたいと思いますが、自由診療のため残念ながら私には手が届きません。誰もが気軽に漢方治療を享受するためには、漢方薬を保険適用からはずすことは、絶対にあってはならないことなのです。

漢方薬が、現代の医療に欠くことのできない重要な治療ツールとして、国民全体に認識されるためにも、これを機に、漢方の専門家の積極的な情報発信を、私は心から期待します。

漢方薬を保険適用から外さないよう、全国各地で署名運動が始まっています。漢方治療の実態とその重要性を民主党政権に正しく理解してもらえるよう、私も全力で働きかけをしてきます。

電子署名はこちら

→事業仕分け:漢方薬を保険適用外と評価(はたともこブログ)

麻黄湯に関する注意事項

★麻黄湯は、インフルエンザに対して予防的には用いられません(症状のない時には服用できません)。

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漢方の真髄:セルフメディケーション


2009.9.20日経新聞「漢方なんでも道場」に、”我が意を得たり”の文章がありました。

「自分の健康は自分で守る=セルフメディケーション」が、これからの医療に欠かせない視点だと思います。


(記事)
Q.61歳女性。漢方やサプリメントがはやっているようですが、私は毎日の食生活や運動など日常生活の管理や心の持ち方の方がずっと大切だと思います。漢方ではもっと養生を「強調」すべきではないでしょうか。

A.質問者は「最近、病院に行くと何種類もの現代医薬品が出される。さらに漢方薬も追加された。症状をいうたびに薬が増える感じです」と不満を語っています。
「養生」が第一で、病気も未病(みびょう)、すなわち、病気の芽のうちに治すのが、漢方治療の基本です。

養生の重要性は江戸時代の多くの医家が述べています。

例えば、後藤艮山(ごとうこんざん、1659~1733)は湯熊灸庵(ゆのくまきゅうあん)との「あだな」があります。温泉や、熊の胆(くまのい、熊の胆汁を乾燥したもの)、おきゅうで体をあたためるととてもよいと説きました。病気のセルフメディケーション(自分の健康は自分で守る)を最も重視した優れた医家でした。

身体の「気」のめぐりが滞ると病気になる、薬はみな「毒」であり、体内の不調は食事でなおすのが基本で、風邪などの時でも漢方薬を一時的に使用するのに留めるべきだという立場でした。

漢方治療の基本は間違いなく養生です。

(北里大学東洋医学総合研究所所長 花輪 壽彦)
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