酪農から有機農業への転換 5月28日

北海道の牛乳が売れない。ホクレンは、ペットボトルのお茶や豆乳などの普及が、牛乳の販売量の低下に大きく影響していると分析しているが、新発売される他の飲料水の台頭が、牛乳の消費を低下させている大きな要因であるとの見解は、正しい分析だとは言い難い。「病気にならない生き方」の著者・新谷弘実医師が指摘しているように、牛乳は、そもそも人間のための飲物ではない。それを無理に人間の飲物とするために、粒上の乳脂肪を均一に攪拌する際、乳脂肪が過酸化脂質へと酸化し、人体にとって牛乳は、むしろ「毒」と化してしまっているという事実を、そろそろ私たちは正面から受け止めなければならない時に来ている。

特に乳幼児に牛乳アレルギーが多発していることは、紛れもない事実だ。本来、子牛の飲物であって人間の飲物ではない牛乳を、子どもたちの体が拒絶することは、実は、まったくおかしなことではない。人間が自然の摂理に反して、牛乳を大量生産し、人間の飲み物として認めようとしたことにこそ無理があり、これまでの「牛乳は健康に良い」という絶対的概念が揺らぎ始めていることは、決して不思議な話ではないのだ。

「農業情報研究所」の北林寿信氏も、余剰する北海道牛乳に触れ、ホクレンの姿勢に問題提起する人物の一人である。北林氏は、「魅力のない安い商品を大量生産してきた」政策のつけが、1,000トンの生乳廃棄の主な要因であると指摘する。商品開発の努力を怠り、本来なら人間が受け付けるはずがない生乳を、カルシウムが豊富であることだけを取り上げて、いかにも健康に良い食品であると断定し、学校給食の必須アイテムにしたてたあげたホクレンや行政の責任は、極めて大きい。アトピーや喘息などのアレルギー症状が、牛乳などの乳製品を完全に断つことで改善する事実が、牛乳が人体にとって毒であるという真実を如実に物語っている。

本来牛は草食動物であるにもかかわらず、大量に乳を搾り取るために、海外から輸入した穀物飼料や過去にはレンダリングそのものである肉骨粉や代用乳を、飼料として与えていた。その結果、乳牛の自然の摂理は乱れ、国内でも27頭のBSE感染牛が発見されるに至っている。子牛が飲むための生乳を、無理矢理、人間用の商品にするために、乳牛そのものを量産すると同時に、人工的に乳の出も良くしてきた。しかし、敏感な人の場合はアレルギー症状を起こし、少なくとも、人間の味覚にマッチするとは言い難い牛乳が、次第に私たち消費者の嗜好からはずれていくことは、ごく自然の成り行きなのだ。

輸入穀物飼料市場を繁盛させ、酪農家やJAに利益をもたらしてきた牛乳神話に対して、「そりゃないよ獣医さん」の著者である岡井健氏も警鐘を鳴らす。酪農家を牽引してきた行政や政府に、最大の責任がある。岡井氏は、自然に帰依することの重要性を指摘するが、過酸化脂質の塊「錆びた脂」である牛乳が、人体にとって有益な食品でない事実に正直に向き合うなら、酪農から他の農業への転換を指導していく責任が政府にはある。

錆びた脂である牛乳は必要ないが、広大な北海道の地で、大豆や野菜の有機農業が盛んになれば、私たち消費者にとっては、この上ない喜びだ。それは、私たち消費者の健康に多大な利益をもたらすからだ。明日から、残留農薬の規制強化のためのポジティブリスト制度がスタートするが、可能な限り農薬や化学肥料を使用していない野菜を食することは、消費者の悲願だ。しかし、無農薬野菜や有機野菜の供給量は、需要に比べて極めて少なく、それらはしかも高価だ。ホクレンが一大決心をして、酪農から、大豆や野菜の有機農業への転換をはかれば、食糧自給率の向上と併せて、国民の健康維持に多いに貢献することになる。

飼料の大半を輸入に頼ってきた北海道の酪農は、これまで、日本の食糧自給率の向上の足かせとなってきた。人体が欲しない牛乳を無理強いすることにきっぱりと終止符を打ち、健康に寄与する有機農業に大転換していくよう、政府は責任を持ってホクレンを牽引していかなければならない。ホクレンの余剰牛乳廃棄の問題は、酪農の限界を示しているのだ。健康と食糧自給率向上のためにも、有機農業こそ北海道の農業の唯一無二の選択肢なのだと、私は信じている。

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安倍官房長官の陰謀 5月27日

官房長官の私的諮問機関である「社会保障の在り方に関する懇談会」が、最終報告書をまとめた。2025年度の社会保障費総額を143兆円と予測し、潜在的国民負担率は5割を超えると見通しを示している。しかも、社会保障給付が国民所得の伸び率を大きく上回るため、現実には必要な給付額を下回る支給しかできなくなると推定している。報告書は、歳出・歳入一体改革の中で消費税を財源の一つととらえ、将来の消費税率アップを視野には入れているが、しかし、基礎年金の財源に消費税をあてる考えには、「年金制度は社会保険方式が基本である」として譲らず、あくまでも否定的だ。

今回の報告書は、少子化対策のために特に女性の働き方を見直し、女性の就労環境の改善を強調する安倍氏の本心が、実は、社会保障の負担の担い手を増やすためであったのだということを示唆するものだ。年金制度の一元化には踏み込まず、パート労働者を年金制度に組み込むことで、本音では社会保険料の納付者の絶対数の引き上げを狙う安倍氏の魂胆は、国民を欺き、国民に決して利益をもたらさない間違った改革路線だ。このやり口は、年金不正免除の社会保険庁よりも悪質だ。

年金引当金の財源確保については、社会保険料を納める人々、即ち分母の数を大きくすることを考えるよりも、まず真っ先に着手すべきは、社会保険庁の解体だ。腐敗の温床である社会保険庁の運営と事業のためだけに、年間2兆円もの保険料がドブに捨てられている。年金事務は、社会保険庁ではなく、地域の郵便局で十分に担えるものだ。年金保険料をムダ遣いしないためにも、一刻も早く社会保険庁を解体しなければならないのだ。

医療費抑制については、一定額以下を保険の対象としない「免責制度」の導入や、診療報酬の定額払い制への転換を懇談会は提案しているが、医療費の抑制のために最も重要なことは、国が国民に対して、健康を維持し病気にならない生活習慣を明確に示していくことだ。特に、メタボリックシンドロームの多くは、明らかに不摂生な生活習慣が要因となっている。医療機関にとっては、患者が量産されることはありがたいかもしれないが、健康で文化的な生活を維持するためにも、国は責任を持って、病気にならない生活習慣と正しい食育を、国民の前に示さなければならないのだ。有益性が疑問視される一部の検査項目のように、医療機関が患者を作り出すねじれた構造に、メスを入れることが必要なのだ。

介護保険制度についても、報告書にあるような財政基盤の安定化が、抜本的な改革につながるものではない。介護サービス事業者に利益を誘導するようなケアプランは、断固はじき出さなければならない。高齢者が、出来る限り自立した生活を長く維持できるよう、リタイヤ後の高齢者にも一定の社会的役割を分担してもらえるような、元気を維持するための質の高い生き甲斐を提供していくことが、国に課せられた重要な使命だ。

特に、介護保険制度では、制度を自由に操る「ミスター介護保険」と呼ばれる高級官僚と、介護ビジネス業界とのズブズブの癒着関係が、制度の進歩発展の大きな足かせとなっている。予防介護に筋トレを導入したことで、筋トレマシーン業者やスポーツクラブに莫大な利益とビジネスチャンスをもたらしたが、一方で、高齢者の日常生活に、「筋トレ」がどれほど役立っているのかは甚だ疑問だ。業界に利益を提供するためのケアプランにならないように、ケアマネジャーの公正・中立な立場の確保、即ちケアマネジャーの独立が、何よりも必要なのだ。

この懇談会の最大の問題点は、利用者の立場に立つことのできる医療関係者や介護関係者がメンバーに入っていないことだ。「国民から、いかに社会保険料を搾り取るか」という観点の議論では、持続可能な発展的提案など出て来るはずがない。240万人とも言われる団塊の世代の基礎年金引当金や、子育てに対する十分な対価を提供するためには、公共事業の削減等財政支出を徹底的に切り詰めた上で、迷わず、消費税を「基礎年金・高齢者医療・介護費用」に当てる以外に、方法はないのだ。

安倍氏は、総裁選立候補にあたって、小泉総理の靖国参拝への非難から逃れるために、主要政治課題であるサミット終了直後に、官房長官を辞任する可能性がある。国民を騙すような政策を提言する上に、政策よりも政局にプライオリティを置く人物に、国家の舵取りを任せるわけにはいかないのだ。国民にとって利益をもたらす総理なら大歓迎だが、むしろ日本を世界から孤立させかねないアメポチ・小泉踏襲路線の安倍氏を、ポスト小泉に選ぶわけには断じていかないのだと、私は強く主張したい。
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安倍政権樹立最優先の小泉総理「会期延長なし」 5月26日

小泉総理は、絶対に国会の会期延長はしないつもりだ。即ち、BSE問題や米軍再編に関する3兆円負担問題あるいは不祥事の絶えない社会保険庁など様々な重要課題を、6月18日をもって鍵のかかる箱の中に閉じ込めてしまいたいのだ。そして、この日以降は、永田町を自民党総裁選挙一色に仕立て上げ、安部政権誕生に向けて全力投球するつもりなのだ。小泉まやかし政治の最後の悪辣な戦略が、国会論議の封じ込めなのだ。

やっとメディアが取り上げた「黒塗り現地調査報告書」が物語るように、小泉政権をコントロールしているのは、他ならぬ米国だ。小泉政権に、BSEリスクから日本の国民を守る力など初めからありはしないし、米軍再編費用についても、米国に抵抗する力などあるはずもないのだ。共謀罪や教育基本法の成立を目指し会期を延長すればするほど、野党に攻め入るすきを与え、政権が窮地に陥ることが必至となった今、小泉総理は、6月18日をもって、必ず国会を閉会する。

そして小泉政権への最後のボディブローが、社会保険庁による年金不正免除の発覚だ。本来年金を納めるべき人の数を減らせば納付率がアップすることから、社会保険庁は、納付を免除する人の数を増やし分母を小さくするという悪事に出た。このやり方は、営業マンに対するノルマの厳しい損保ジャパンの体質と非常に似通っている。「民にできることは民へ」がキャッチフレーズの小泉政権は、当時、損保ジャパン副社長だった村瀬氏を社会保険庁長官に招聘し、改革をアピールした。長官就任後の村瀬氏の口癖は、「分母を消せ!」だったという。職員に厳しいノルマを押し付け、事実上、違法な手法を強制した村瀬長官こそ確信犯なのだ。真っ先に辞任すべきは、村瀬長官本人だ。事態は、不正免除が発覚した地域の社会保険事務局長の更迭で、お茶を濁せるような次元の話ではない。

2週間の販売停止命令が下った損保ジャパンの、過去3年間における保険金不払い額は10億円を超える。しかも、顧客の印鑑を大量に保有し、本人の意思を確認もせず勝手に押印していたことは、販売停止程度の措置で済まされるような問題ではない。詐欺にも近い悪質な行為で、顧客に不利益を与えた以上、社会保険庁と同様に損保ジャパンも解体する必要がある。

政府与党は、民主党との協議の場を設けることで、今国会での共謀罪の成立にいまだ期待をかけているようだが、国会論戦から逃げようとする小泉政権に、そもそも共謀罪を議論する資格などありはしないのだ。民主党は、妥協などせず、断固とした姿勢で、共謀罪や教育基本法改正案を廃案にもちこまなければならない。たとえ国会が開催されなくとも、小泉政権の大きな矛盾を国民にわかり易くアピールし、小泉流を引き継ぐ人物がポスト小泉に選ばれぬような環境づくりに、野党第一党の責任として、民主党も総力を挙げなければならないのだ。

まずは来週にも、政府に「黒塗り調査報告書」を突きつけて、国会の場で小泉政権の方針を変更させる努力をすべきだ。国民の食の安心・安全がまったく保証されない以上、輸入再々開など絶対に許してはならないのだ。米国に一点の曇りもないならば、日本の書いた調査報告書を検閲し黒塗りする必要性など、まったくないのだから。
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ケンタッキーフライドチキンの怪 5月25日

「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」の報道が事実なら、ケンタッキーフライドチキン(KFC)の実態には驚くばかりだ。今回問題視されたのはインドネシアのKFCで、PETAは次のように指摘する。インドネシアのKFCに納入されるニワトリは、成長を加速するために薬品漬けにされ、太りすぎでまともに歩くことが出来なくなっている上に、と殺する前に、羽をちぎられ足を折られ、かつ、意識があるうちに、煮えたぎった熱湯の入ったタンクに放り込まれている。このような虐待に対して、PETAのメンバーである女優のパメラ・アンダーソン氏が、非難の書簡をインドネシアKFCに送ったのだ。

2004年、PETAは、米国KFCの鶏肉加工工場でのニワトリへの虐待の実態を、ビデオに撮りネット上で公開、抗議している。ターゲットになったのは、米大手鶏肉加工会社「Pilgrim’s Pride」社のウエスト・バージニア州にある工場で、従業員が、ニワトリを蹴飛ばしたり壁にたたきつけたりしている映像には、KFC社自身「鳥肌が立つようだ」とコメントしている。生きているニワトリを、くちばしから引き裂き、首をねじり切ったり、ニワトリの目や口にタバコを突っ込んだりと、常識では考えられないような虐待を行っていたのだ。

一般従業員を装い潜入捜査をするPETAに、告発する権利などないと批判する人も確かに存在するが、報告が事実であるならば、この方法をおいて他に虐待がディスクロージャーされることはないのではないか。KFCは、「Pilgrim’s Pride」社の当該工場が、ニワトリに対して残酷な扱いをしないことが証明されるまでは取引を中止すると発表したが、「Pilgrim’s Pride」社の他の工場との取り引きは、そのまま継続されたのだ。PETAが何故、ウェスト・バージニアの工場をターゲットにしたかというと、その工場がKFCの最大の取り引き先であったからだ。

事件以降、「Pilgrim’s Pride」社から日本への輸入はストップしていた。ところが、昨年11月、ハンバーガーチェーン「DOMDOM」が、同社のチキンスティックを1ヶ月半の期間限定で輸入販売した。DOMDOMには、「ドムチキン」と「ドムチキンナゲット」の2種類のチキンメニューが存在するが、そのトレーサビリティは明らかにされていない。今回、インドネシアのKFCの鶏肉加工工場が告発の対象となったことで、下請け先の加工工場の問題もさることながら、下請け会社に厳しい条件を突きつけているに違いないKFCそのものにも、何か問題があるのではないかとも考えられる。

KFCが使用するチキンが、成長ホルモンが投与され、短期間でまともに歩けなくなるまでブクブクに太らされたニワトリの肉であるということは、虐待と同様に、食の安全の観点から大問題だ。ファーストフードは、マクドナルドが100円バーガーを売り出したように、非常に安価な食品だ。しかし、安ければ安いなりの理由が必ずあるわけで、KFCがそうであるように、成長ホルモン漬けの肉を使用し、様々な添加物によって味や見た目・保存期間を調整していることを、私たちは忘れてはならない。

少なくとも、食品安全委員会は、ポジティブリスト制度によって残留農薬の取締りを強化することには着手した。次は、食肉の飼育の段階で使用されている成長ホルモンについても、厳格な基準を設けるべきだ。鶏肉のみならず、米国では牛肉にも大量の成長ホルモンが投与されていることを、決して見逃してはならないのだ。

便利で安いファーストフードは、幼児からサラリーマンに至るまで、多くの消費者に支持され愛されている食品だが、実は、食べれば食べるほど健康を阻害する体に良くない食品であることは、もはや疑う余地もない。しかも、肉の加工の段階で、生きている動物に対して異常な虐待が行われているのだとしたら、私たちはおいそれと、例えばKFCを口にするわけにはいかないのだ。そして何よりも今もっとも重要なことは、企業のモラルだ。多くの消費者の安心・安全がまったく保証されないまま、米国産牛肉の輸入再々開を決定するアメポチ政府に乗じて、間髪いれず輸入に踏み切る牛丼チェーンの企業倫理は、食の安心・安全よりも利益追求を最優先する、消費者の信頼にまったく応えないものだ。消費者の健康は、消費者が自ら守るよりほか確実な手立てはないということを、私たちは肝に銘じなければならないのだ。
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安倍官房長官の出馬表明 5月24日

安倍官房長官は今日の講演で、9月の自民党総裁選に向けての事実上の出馬表明をしたようだ。官房長官の立場にある安倍氏が、国会終了後のサミットを見届けて出馬を表明すると宣言したことは、即ち、通常国会の会期の大幅延長はないということであり、サミットを乗り切りさえすれば、後は自民党総裁選一色になるという政局のシナリオの、自らが主導権をとるという意思表示でもある。

内閣官房長官という立場上、これまでは慎重な発言を繰り返してきた安倍氏だけに、今日の発言は、いわばこれが「本筋」であって、みんなに「ついてこい」と掛け声をかけているようにさえ思われる内容だ。安倍氏を後継総裁にするために、いかに小泉総理が安倍氏と入念な打ち合わせをしているかがうかがえる話だが、しかし、二人の思惑に、易々と私たちは乗るわけにはいかないのだ。

民主党が国民投票法案で、憲法改正に関する投票の有権者の年齢を16歳以上にしたことは、国会対策上の一種の予防線なのかもしれない。何故なら、通常国会の大幅延長がないということになれば、成立が確実であるのは、行政改革関連推進法案と医療制度改革法案だけになる。それでも尚、共謀罪と教育基本法案と国民投票法案とを、政府が成立させようとするならば、民主党案を丸呑みするしかなくなるのだ。事実上の与党国会対策委員長は小泉総理自身なので、民主党案の丸呑みくらい、平気な顔をしてやりかねないのだ。民主党は、実は「大どんでん返し」の丸呑みなどされぬよう、ハードルを高くする必要があったのだ。

行政改革推進関連法案は、あさってにも可決成立する勢いだが、これこそまさに天下の悪法だ。天下りの禁止一つできないどころか、利益追求を第一とする民間業者に、公共サービスを売り渡す「市場化テスト法案」を含んでいる。多数決の論理で民主党が待ったをかけられないことはいたしかたないにしても、共謀罪と同じく、行政改革推進関連法案の大きな欠陥を、民主党が国民に対してアピールできかねていることは、非常に残念としか言いようがない。

当の小泉総理にしてみれば、民主党案を丸呑みすることによって、共謀罪が可決成立するのであれば、まさに御の字に違いない。教育基本法にいたっては、自民党右派の中には、民主党案を歓迎するムードさえある。民主党は、全てが政府与党の政略であることを踏まえて、与党に丸呑みされないような、地に足のしっかりとついた法案を編み出さなければならないのだ。軽率な与党案への歩みよりは、国民が期待するところでは決してない。

安倍官房長官の、事実上の立候補を表明する発言で、国会が大幅延長されない可能性が高まった以上、民主党案を丸呑みされて結果的に与党ペースに巻き込まれることのないように、民主党には強い信念が求められる。下手な妥協や歩み寄りは、絶対に国民からは支持されない。民主党に求められることは、与党との協力ではない。目先の利益に惑わされない、確固たる政権への強い意志に裏付された芯の通った政策なのだ。教育基本法や共謀罪で、与党と歩み寄ることなど絶対にあってはならない。小沢代表の方針は、そんなところにはあるはずがないと、私は確信する。
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少子化支援こそ未来への公共投資 5月23日

少子化社会対策専門委員会で、猪口邦子大臣と有識者らとの間で論点の隔たりがあるのは、猪口大臣の思いこみバラマキ施策の連発がわざわいしている。出産の無料化や0歳から3歳までの乳幼児手当ては、決して無意味とは言わないが、しかし、それが抜本的改革を促すものとは到底言い難い。経済的支援を充実させたい猪口大臣だが、思いばかりで、その財源についてはまったくの白紙だ。更に、安倍晋三官房長官が主宰する政府の少子化社会対策推進会議が、「育児保険」や「子育て基金」を提案しても、具体的な中身はなく、行動の指針さえ出ていない。猪口大臣の少子化対策は、残念ながら小手先だけの思いつきメニューとの感をぬぐえないのである。

猪口大臣にとって最悪だったのは、シンガポールを真似してなのか、政府の責任で「お見合いパーティ」を開催するよう閣内打診していたことだ。結婚できる能力がありさえすれば、国に面倒を見てもらわなくてもみんなさっさと結婚する。結婚しない大きな理由は、格差が拡大し、多くの若者に結婚し子どもを育てるだけの経済力がなくなったからだ。国が責任を持つべきことは、お見合いなどではない。格差社会の是正と、何よりも子育てに対する社会的評価の裏づけなのだ。「国営のお見合い」を言い出す猪口大臣に、他の専門委員もすなおに従う気分にはならないだろう。何を思いつくのも猪口大臣の自由だが、それが政策として成立し得る内容なのか否かの吟味だけは、きちんとしてもらわなくてはならない。

猪口大臣に対立する少子化社会専門委員有識者らの主張は、経済的支援よりむしろ、働き方の見直しや、地域や家族の多様な子育て支援について重きを置いたものだが、職場環境の整備や地域のネットワークの構築は勿論必要なファクターではあるが、一朝一夕に片付く問題ではない。様々な職業がある中で、子育て世代が安心して子育てに取り組める保障を、政治がどういう形で提供できるかが最大の鍵になる。

子育てを応援する上で最も重要なことは、子育てに対して、十分な社会的評価を与えることだ。理念と同時に、子育てに対する十分な対価を、国の責任として子育て世帯に提供することが必要なのだ。児童手当の拡充や子育て支援税制の導入などと小出しにするのではなく、子ども一人につき月額5万円を支給することを、政治は決断すべきだ。仮に子どもを3人育てるなら、その世帯は自動的に月額15万円の収入を得ることになるのだ。こうすることによって、子育てが具体的に社会的評価の対象となり、「子育て」がれっきとした「仕事」になる。猪口大臣のような思いつきのメニューでは、持続性がなくバラマキにしかならないが、経済的支援は、やはり重要なファクターだ。

高速道路やダムの建設に替わる、21世紀型の公共投資が「子育て支援」なのだ。不必要な道路やダムに何兆円もかけるよりも、子育てに投資することのほうが、より発展性がある。子育て投資こそ、まさに、未来への公共投資そのものなのだ。2004年の出生数の合計は、約111万人。仮に18歳まで支給するとして単純計算しても、111万×18年×12ヵ月×5万円=11兆9,880億円となる。膨大な数字だが、環境破壊型のムダな公共事業を削減し、消費税を基礎年金財源に限定することによって、年間240万人にものぼる団塊の世代の基礎年金引当金を確保しつつ、同時に、年金世代の自然減少も考慮していけば、いずれは基礎年金財源と子育て財源とは均衡し、子育て財源の確保は十分に可能となるはずだ。子育て世帯が、社会からのバックアップを実感できるよう、子育てを「仕事」として認め、評価の証として十分な対価を得ることが出来るように、国が責任を持つことが重要なのだ。
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サラ金問題で本性見たり「小泉総理の暴言」 5月22日

18日の参議院行政改革特別委員会での、民主党前川清成議員の質問に対する小泉総理の答弁が酷い。サラ金のグレーゾーン金利に関連して、貸金業の在り方について問われた総理は、「金利が高くても借りる人は沢山いる。法律で金利の引き下げを決めると、必ずヤミ金がはびこる。貸すほうも悪いが借りるほうも悪い。」と、とてつもない暴言をはいたのだ。多重債務者の苦難にまったく心を寄せないどころか、むしろ貸金業界を擁護する前代未聞の発言ではないか。一国の総理大臣の言う台詞ではない。これでは、フロント政治家そのものだ。とうとう、小泉総理の本性が出た。

「クレ・サラの金利問題を考える連絡会議」代表の宇都宮健児弁護士によると、年間3万人を超える自殺者の3割近くが、多重債務に苦しんで追い詰められた人々ということだ。お金がなければないほど高い金利を支払わされるという弱肉強食社会の構造の矛盾が、根底にある。いわば、多重債務者を自殺に追い込むのは、公然と格差社会を是認・助長する小泉総理本人であるとも言えるのだ。

クレジットやサラ金は、1~2%の金利で大銀行から資金を調達し、20%以上の金利で消費者に融資する。サラ金大手4社の場合、違法なグレーゾーン金利で、3,000~5,000億円の営業収益をあげる。2006年3月期連結営業利益1,234億円のマツダと比しても、いかにサラ金が暴利をむさぼっているかがわかる。それでも、日銀の量的緩和解除以降、調達金利が上昇に転じ、1%上昇すると100億円以上の利益が吹き飛ぶとして、融資残高1兆円を超える大手4社は憂慮する。

何より、サラ金と大手銀行が恥も外聞もなく資本提携し、共同戦線をはって顧客の取り込みにいそしむ構図は、銀行の品性から言っても好ましいものでは決してない。サラ金の上前をはねる大手銀行には、品位のかけらもないではないか。大手銀行の不良債権処理に公的資金をつぎ込んだところまでは許されても、この上、銀行と資本提携関係にあるサラ金の違法な高金利までをも容認する政府の姿勢は、明らかに、借り手よりも貸し手を優遇し、強い者をより強くする弱肉強食路線だ。資金繰りに困る弱い立場にある消費者を、完全に斬り捨てる政府のやり方は、格差を更に拡大させるものだ。

「金利を引き下げ、業界が貸し手を選ぶようになると、ヤミ金がはびこる」との総理の発言も、まったく理に叶っていない。ヤミ金こそ、違法な組織的犯罪集団ではないか。出資法に基づく届出もせず、法外な金利を上乗せするヤミ金は、名実共に犯罪者集団だ。政府案を借りるならば、ヤミ金は、まさに「共謀罪」の対象そのものではないか。私は、共謀罪よりも参加罪のほうがより明確でわかりやすいと考える立場なので、将来的には、ヤミ金も参加罪の対象である組織的犯罪集団に加えるべきだと主張したい。

いずれにしても、小泉総理の非常識な発言には、総理の本音が見事に凝縮されている。小泉政権が掲げる改革とは、弱者を切り捨て、強い者だけが生き残る、格差拡大政策なのだ。しかも、いずれは行き詰まり、国家を崩壊の危機にさらしかねないものばかりだ。郵政民営化は、330兆円にものぼる国民の資産を、アリコやAIUを率いるAIGグループなどの外資に明け渡すための民営化だった。米軍再編費用として、3兆円とも言われる膨大な資金を米国に提供する小泉総理は、一方で基地を押し付けられる日本各地の住民感情を、完全に無視している。ブッシュ大統領のご機嫌取りのために、安全性の確認もおぼつかない状態で、牛肉の輸入再々開の決定を下すのも、やっぱり小泉総理だ。

冷酷非情・国民無視の小泉改革は、9月で完全に終わりにしてもらいたい。小泉路線を継承する人物が次期総理では、近い将来、間違いなく日本は完全に空中分解する。小泉改革の大きな過ちを正すためには、もはや政権交代しか方法はない。サラ金に手を出さざるを得ない庶民の生活に、思いを寄せられる政治家でなければ、総理の資格などありはしないのだ。
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韓国・北朝鮮問題「北風と太陽」 5月21日

韓国の選挙は激烈だ。統一地方選挙で優位に立つと言われるハンナラ党代表で、来年の大統領選候補の朴槿恵氏が、顔面を切りつけられ10cmもの傷を負った。現行犯逮捕されたのは元懲役囚で、15年にも及んだ自身の服役期間の長さへの不満から切りつけたのだと供述しているようだが、もう一人逮捕された仲間の男は、与党ウリ党の党員とも言われ、政治テロである可能性も十分にある。

盧武鉉政権は、横田滋さんの訪韓に対して、予想通り冷たい反応だった。北朝鮮との融和を重視する盧武鉉政権にとって、韓国で拉致問題が重大な政治問題となることは得策ではないと判断しているからだ。一方、ハンナラ党の朴槿恵代表は、横田滋さんと面会し、拉致問題に党を挙げて取り組むことを言明した。

日本国内では、韓国民団と朝鮮総連との「歴史的和解」が大きな話題となった。拉致問題や不良債権問題で窮地に立つ朝鮮総連の救済策とも言われるこの「和解」は、盧武鉉政権の「太陽政策」と連動していることは間違いないようだ。あるいは、日本の国会で大問題となっている「共謀罪」とも関係があるかもしれない。

日本と韓国・北朝鮮との情勢は、このところ益々連動しつつ変化しているように思う。来年の韓国大統領選挙の結果も重要だが、韓国・北朝鮮にとって、今年9月の自民党総裁選の結果も極めて重要なファクターだろう。安倍晋三内閣と福田康夫内閣とでは、まさに「北風」と「太陽」との違いがある。

日本と中国との関係は、靖国問題のトゲさえ抜いてしまえば、米国も含めた利害関係の調整で、殆どの問題は解決可能だ。しかし、韓国・北朝鮮との隣人関係は、竹島問題一つとってみても、単なる利害関係の調整ではとらえきれない要素も大きく、拉致問題も含めてその解決は極めて難しい。安倍晋三内閣の「北風政策」でも、福田康夫内閣の「太陽政策」でも、解決に向かった十分な政策は打ち出せないのではないか。

ここは、小沢一郎内閣の「北風と太陽」政策が、最も対応能力が高いのではないか。このことを、日本国民と世界に対して大きくアピールして欲しいと、私は思う。
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米国産牛肉問題「日米専門家協議の茶番」 5月20日

どう考えても単なる通過儀礼でしかない3日間に及んだ日米専門家協議。予想通り、来月中旬には米国産牛肉の輸入再々開が決定される見通しだ。見ている方が空しささえ覚える日米協議、実態は「協議」でもなんでもなく、一から十まですべては米国の言いなりなのだ。

この期に及んで、私たち消費者が、日本政府をまったく信用できない理由がある。昨年12月12日の輸入再開決定直後に行われた、農水・厚労両省による現地調査の報告書の全体が、いまだに明らかにされていないという点だ。しかも、明らかにできない理由が酷い。米国から、了解が得られなかったからなのだ。

輸入再開決定の翌日、昨年の12月13日、政府調査団は10の食肉処理施設の現地調査に向かった。その時点で日本向けの輸入が承認されていた施設は40施設あったにもかかわらず、日本政府に調査が許可されたのは、米国から指定された10施設に留まっている。そのことからも、この調査が殆ど調査の体をなしていないことがわかる。調査団の渡米直後に成田に到着した、再開後第一弾の輸入元のパッカー(Harris Ranch Beef)を急遽調査対象に加えたことで、日本は結局11の施設を調査した。

1月上旬になって、ひとまず現地調査報告書の概要が発表されたが、まさに単なる「概要」でしかなく、詳細の発表はずれこんだ。政府によると2月下旬に正式な報告書は出来上がったが、「米国の了解を得ないと発表できない」という耳を疑うような理由で、公表は更に先送りされたのである。個人情報を含んでいることと、SRM(特定危険部位)の除去方法などについては企業秘密であって、米国の了解を得ないことには発表できないとする政府の主張は、事ここに至り、安全の確認が最優先されなければならない事態にあって、到底承服できるものではない。米国のTVカメラでさえも加工施設の内部の撮影は禁じられているということだが、安全性の根拠を示さずして、輸入再々開の交渉など出来ようはずもないではないか。

待望の調査報告書は、「米国の検閲」が終了した4月末、やっと日本に帰ってきた。ところが、ここで、更に大きな問題に直面することになる。なんと、その報告書のいたるところが、黒マジックで墨塗りされていたのだ。量にして約半分以上のページにわたって、塗り消されていたといっても過言ではないそうだ。いったいどういうことなのだ!!そもそも、日本政府内部の報告書を、調査対象となっている米国が検閲するなんていう話があるだろうか。いかに、日本政府が、米国の顔色をうかがう「忠犬ポチ公」であるかがわかる。信じ難い。何のための現地調査なのか。

その後こんにちに至るまで、いまだに調査報告書の全体は公表されていない。手元には当然全文があるにもかかわらず、米国の指示に従い全文を公表しない政府は、いったい誰のための、何のための政府なのか。この報告書を、包み隠さず日本国民に公表することなくして、輸入再々開なんてあり得ない。専門家協議では、今後も消費者の意見を聴きつつ、パッカー35施設の現地調査も行いながら、慎重に事を進めていくとしているが、所詮は米国の検閲つき、調査しているのかされているのか、さっぱりわからない状態では、何をしてもなんの意味もない。

段取りは、わかりきっている。ブッシュ大統領に輸入再々開の催促をさせる前に、日本政府が輸入再々開を決めることで、政治的に決定したのではないように見せかけるため、日米首脳会談より前に、輸入再々開を日本政府は決めるに違いないのだ。こんな国民不在・アメポチ政権を、この先も継続して良いとは、誰も思わないはずだ。

郵政民営化を筆頭とする一連の「アメポチ改革」の継続のために、与党が執念を燃やす共謀罪や教育基本法の成立を諦めても、何が何でも安倍政権誕生を目指す小泉総理の意気込みは、もはや狂気の沙汰だ。BSE感染リスクよりも「アメポチ」を優先させる政府なんて、小泉政権だけで十分だ。ポスト小泉は、小泉路線を踏襲する人では困るのだ。とにかく、何よりもまず、昨年12月の現地調査報告書の全てを、国民の前に正直に示すことが先決だ。そのことなくして、輸入再々開は、議論の俎上にものぼらないのである。

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共謀罪より参加罪

さすがに河野衆議院議長が、共謀罪の強行採決に待ったをかけた。特にメディアが極めて高い関心を寄せるこの法案を、更なる与党修正案が提出されたとはいえ、このまま強行採決するには、機が熟していないと判断したからだ。

そもそも、当該条約「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」は、1999年(平成11年)1月に審議がスタートし、2000年(平成12年)7月に開催された第10回特別委員会において、条約の案文について各国合意が成立、同年11月15日、国連総会で採択されたものだ。同12月、日本は条約に署名したが、実は、条約の案文作成の段階で、日本は共謀罪について積極的にかかわっていた。

第5条「組織的な犯罪集団への参加の犯罪化」

1締約国は、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。(a)次の一方又は双方の行為(犯罪行為の未遂又は既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とする。)

()共謀罪

金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの

()参加罪

組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為

a組織的な犯罪集団の犯罪活動

b組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)

共謀罪の項の下線の部分は、日本の要求によって加筆されたものだという。政府は、条約に基づく国内法立法のため、2002年(平成14年)9月、法制審議会に諮問するのだが、その時点で既に、共謀罪の法案要綱が提示されることとなる。共謀罪の条文そのものに日本のおそらくは法務省の意向が、このように明示されていることからもわかるように、参加罪を選択することが可能であるにもかかわらず、検討すらせず、日本は初めから共謀罪一本に絞っていたのだ。

本来なら、国会や法制審議会に図った上で、共謀罪を選択するのか、参加罪を選択するのか、あるいはその両方を選択するのかを決めるべきだった。G8の中でもフランス・イタリア・ドイツ・ロシアは参加罪を選択している一方で、日本は、外務省と法務省、特に法務省の強い意向が働き、官僚の独断で共謀罪を選択してしまったのだ。なぜ共謀罪を選択したのかという問いに対して、法務省は、「参加罪は日本の法制度には無いが、共謀罪は日本の法制度に既にあったからだ」と回答している。まったく納得がいかない。これでは説明にもなっていない。

あらゆるところで反対されている政府案は、当初、長期4年以上の自由刑・619にも及ぶ犯罪が処罰の対象となっていた。政治団体の収支報告書不提出でさえ対象となるうえ、市民団体が、辺野古沖の海上ボーリングを阻止しようと船を出すことを相談しただけでも、威力業務妨害罪の共謀罪に問われることになるのだ。明らかに組織的犯罪とは無縁のものや地域の切実な市民運動が共謀罪に問われる政府当初案は、民主主義を根底から覆すものだった。さすがに、与党は修正案を提出し、市民運動まで対象とはしないと主張しているが、その保証はどこにもない。政権が変われば解釈が変わってしまうような法律は、そもそも法律としては不適格だ。

外務省や法務省の面子のために、国民を無視して勝手に共謀罪を選択し、あとは条約上の義務だからと政府案を押し付ける政府の姿勢は、断じて許されるものではない。まさに官僚政治そのものではないか。しかも、共謀罪を採用したアメリカ・イギリス・カナダが、どのような国内法を運用しているのかさえ、政府は調査もしていないのだ。民主主義国家では、個人の自由が最大限に尊重されなければならない。強行採決しようとした政府案は、集会・結社の自由や思想・信条・言論の自由を剥奪する民主主義とは正反対の強権的な法案だ。国民を守るどころか、国民を抑圧するための法律になりかねない。

審議が続行されることを機に、もう一度、参加罪についても検討をすべきではないかと私は思う。両者を比較すれば明らかなように、参加罪のほうが、より条約本来の趣旨にかなっている。共謀までいかず参加しただけで罪に問われるが、処罰の対象が極めて明確に定められる。組織的な犯罪集団すなわち、指定暴力団やアルカイダのような国際テロ組織、国際的な密入国組織である蛇頭や歌舞伎町界隈を席巻する台湾マフィアなどに対象を限定すれば、参加罪こそ誰もが納得する極めてわかりやすい法律となる。

この際、むしろ、参加罪の新設に方向転換すべきではないか。国際的な組織犯罪の防止あるいはそれと戦うことが、条約本来の目的だ。善良な国民の自由と安心を守るためにも、共謀罪ではなく、「指定暴力団」「国際テロ集団」「蛇頭」「マフィア」に対象を限定した参加罪の創設を、私は強く求めたい。

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