ガソリン税~道路特定財源・暫定税率:もっとわかりやすい政策と説明を!

道路特定財源の暫定税率を撤廃して、ガソリン代25円・軽油代17円を値下げすること、および、本則分3兆638億円【国:揮発油税(約1兆4,198億円)・石油ガス税(132億円)・自動車重量税(2,220億円)~合計1兆6,550億円。地方:地方道路譲与税2,560億円・石油ガス譲与税140億円・自動車重量譲与税3,599億円・軽油引取税4,933億円・自動車取得税2,856億円~合計1兆4,088億円】を一般財源化するという民主党の政策は、景気への波及効果と、少子高齢化社会に驀進する現在の日本にとって、国をあげて子育て支援や高齢者福祉に手厚い保障を充当しなければならない必要性からいって、極めて正しい選択だ。

47都道府県のほとんどすべての知事が、暫定税率維持を求める理由は、当面する来年度予算に穴があくということと、彼らが不十分と認識する地元の道路整備が益々滞ってしまうという懸念からだが、この先これまで通り暫定税率が維持されたとしても、その問題が解決するわけでは決してない。例えば、菅直人氏も同調した東国原知事が主張する宮崎県の東九州自動車道の未整備区間の問題が、そのことを如実にあらわしている。つまり、これまで通り国の直轄事業として、未整備区間の建設を待っていても、これまで通り東九州自動車道は重要視されず、建設は遅々として進まないことは明らかなのだ。

東国原知事が、東九州自動車道の未整備区間の建設が何よりも重要な課題であると考えるなら、東国原知事の裁量でこの事業が進められるよう、道路行政の仕組みを変えなければならない。すなわち、道路特定財源の本則分の約3兆円を、地方への一括交付金とするしか手はないのである。その際、交付金の額は、都道府県の納税額をそのまま配分すれば良い。自分が支払った税金を自分が使うのだから、非常にわかりやすい。一世帯あたりの納税額は、東京など大都市に比べて、一家に3台4台の車が当たり前の地方のほうが多いのだから、その点でも地方に厚く配分できることになる。例えば宮崎県の場合、本則分による財源は340億円で、地方の自主財源としては大きな金額となるのだ。

ただ、従来どおりの建設方法では、必要な道路整備も十分には進まない。暫定税率がなくなる分、当然、予算が不足することになる。道路の規格の変更が、あわせて必要になってくる。国土交通省が進める高速道路などの「高規格幹線道路」や原則4車線以上の車線を確保しなければならない「地域高規格道路」のような、1kmあたり数十億円ものコストがかかる道路が、真に必要な道路であるのかどうか、今後は十分に検討し見直しを進めていかなければならないのだ。

地方にとって真に必要な道路とは、交通量のまばらな有料の高速道路よりも、バイパスであり、国道の拡幅や交差点の渋滞緩和策であるはずだ。宮崎県の場合、東九州自動車道という「高規格幹線道路」ではなく、一般国道あるいは県道としての自動車専用道路を建設すれば、コストは格段に低く抑えられる。そもそも、1日1万台以上の交通量がなければ高速道路の定義にはあてはまらないが、ジャイアンツのキャンプの時期であっても、この数字には程遠いのが宮崎県の現状だ。国の言いなりになっていたのでは、それこそムダな高規格道路の建設が地方に押し付けられ、地方の財政は益々逼迫するばかりなのである。

一括交付金制度が導入されれば、地方自治体の裁量で必要な分野に集中して予算を配分することができ、道路の規格も自由に選択可能となり、コストを抑えた道路建設が可能となる。歩道や自転車道の確保という問題はあるが、農免道や広域農道を思い出していただきたい。十分に立派な道路が、高速道路の1/10以下のコストで、建設されてきている。

更に、高速道路を無料化すれば、バイパスさえも建設の必要性がなくなる場合もある。岡山県倉敷市から広島県福山市にかけて建設されている国道2号線バイパス「倉敷福山道路」は、用地買収が難航し、事業化が決定してから20年以上経過した今も、完成の目途がまったく立っていない。地域高規格道路として計画されているため、コストも莫大だ。しかし、ほぼ並行して走っている交通量も少ない山陽自動車道を、思いきって岡山~広島の間だけでも無料にすれば、バイパスを建設しなくても国道2号の渋滞は十分に緩和されるのだ。既存のインターチェンジに加えて、入り口・出口専用のランプを幾つか作れば、新たに環境を破壊し、莫大な税金を投入せずとも、日々の渋滞は緩和できる。何故、この一工夫ができないのか。

国に任せていたのでは、全てが縦割りだ。道路公団は民営化されたとはいえ、優先的に国が保証する融資が続き、高い通行料は、地域活性化のための道路整備網の構築に、一向に寄与していない。山陽道とほぼ並行に走る中国道で、山口県を横断する際、夜間、1台の車にも遭遇しなかった経験が私にはある。暫定税率がなければ東九州自動車道は完成しないという東国原知事の主張は、前提条件が明らかに間違っているのだ。宮崎県に本当に必要な道路は、格段に突出した予算を要する高速道路ではなく、福祉や医療あるいは教育にも十分に予算が配分できるよう、極力コストを抑えた自動車専用道路であるはずなのだ。

民主党は、責任政党としての使命を十分に果たすよう、暫定税率の廃止と一括交付金の必要性を、もっとわかりやすくすべての人々に示さなければならない。暫定税率の廃止分の予算をどこから持ってくるのかという与党や首長の追及に、本則分の一括交付金化と、道路規格の変更という建設コスト抑制の手法を具体的に説明しなければならない。NYやドバイの原油価格が日々最高値を更新する中、ガソリンが25円/L・軽油が17円/L値下がりすることは、国民にとって間違いなく大きな経済効果をもたらす。民主党の主張は、決して間違っていないのだ。

与党の道路族議員の利権や国土交通省の役人の天下りのために、この先の10年間さらに59兆円もの道路特定財源がムダに使われて、良いわけがない。東国原知事を説得できないようでは、民主党に政権政党としての資格はなく、民主党にはなお一層の説明努力が必要だ。

そして願わくば、政府環境問題有識者会議の座長についた奥田氏率いるトヨタ自動車は、世界の先頭をきって燃料電池車や水素自動車の開発に力を注いでもらいたい。高速道路の通行料にインセンティブをもたせるなどして、少なくとも近い将来、運送事業用の車両だけでも水素自動車に大きくシフトしていくことを、地球環境保全の観点からも、私は強く望みたい。道路インフラ=国力という認識は、いまや時代錯誤だ。既に環境との共生の一歩を踏み出したEUを見習って、日本には、自然環境に対して謙虚で、革新的かつ賢明な選択が求められているのだと、私は思う。
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