事業仕分け:漢方薬を保険適用外と評価

内閣府行政刷新会議が行っている事業仕分けにおいて、医療用医薬品の中の、漢方薬等の市販品類似薬に対して、「保険適用外とする方向性」という評価が下されました。つまり、医療機関で処方される漢方薬に、保険がきかなくなるということです。当然、患者負担は大幅に増え、医師は次第に、漢方薬の処方を敬遠するようになるでしょう。

これまで、葛根湯や婦人科薬など比較的使いやすい一部の漢方薬は、広く処方されてきましたが、薬学部と違って医学部では、他の分野と同等に漢方の講義が行われるようになったのは、ほんの数年前の2002年以降です。それまでは、医学部では漢方の講義は全くと言っていいほど行われておらず、個人的に漢方に興味を持った医師だけが研究をし、診療に役立ててきました。

それが今やっと、西洋医学と同等に漢方を学んだ医師が輩出されるようになり、街かど薬局の薬剤師だけでは成し得なかった、西洋医学一辺倒だった偏狭な日本の医療の再編は、黎明期を迎えようとしているのです。今回の事業仕分けが、そのことに水をさしはしないかと、私は危惧しています。

従って、医療機関から漢方薬を排除しかねない今回の事業仕分けは、単純に医療費抑制の目的にとどまらない、医療再編という改革そのものに影響を及ぼす重大な判断になるということを覚悟しなければなりません。

私はそもそも、セルフメディケーション(健康の自己管理)なくして日本の医療改革はあり得ないと考えています。健康を医師に丸投げするのではなく、国民一人ひとりが、自分の健康には自分で責任を持つという強い意識を持つことが、結果的には医療費の抑制につながると思います。そのためには、それを支える地域の環境、すなわち街かど薬局の信頼度を高めていくことや開業保健師制度の創設など、所謂コメディカルの人々の職能発揮が欠かせないと思っています。

特に未病の段階で体調を整える漢方薬や生薬、植物に由来する精油を用いて心身の健康や美容の増進をはかるアロマセラピーなどのオリエンタル・ハーブは、薬剤師などの専門家が街かど薬局などを拠点に、地域住民に提供すべき、位置づけの高い重要なサービスだと思います。

その意味において、本来漢方薬は、街かど薬局を中心に展開されるべき医薬品です。麻黄湯でも述べたように、漢方薬といえども使い方を間違えると副作用が起こります。体質や既往歴のほか、複数の漢方薬の併用による特定の成分の摂取過多など、一般の方々ではわからない注意点が意外に多い漢方薬を、薬剤師でない登録販売者が販売できるという現行の制度は、非常に危険です。速やかに漢方薬を第一種医薬品に分類し、薬剤師によるカウンセリングを義務付け、その上で、広くセルフメディケーションに役立てていくという展開こそが、国民利益に資するベストの方策だと思います。その場合は、勿論、満量処方です。

セルフメディケーションの拠点として、地域住民が気軽にかつ信頼感を持って薬局を利用できるように、薬剤師には尚一層の研鑽努力が求められます。人々が求める薬剤師像とは、まさにセルフメディケーションにおける、「気軽に何でも相談できる身近な専門家」なのではないかと、私は思っています。

今回の評価に私は反対ですが、もし、事業仕分けによって漢方薬が保険適用外になってしまうなら、漢方薬を人々の健康に役立てるための中心人物は、街かど薬局の薬剤師をおいて他にないと言っても過言ではなくなります。薬剤師という職業に国民は何を求めているのか、漢方薬を保険適用外にするという事業仕分けは、そのことを薬剤師に再確認させる機会と捉える必要があると、私は思います。

病巣しかみない・検査数値でしか判断しないという西洋医学の最大の欠点を、漢方は補って余りあります。頭の先からつま先まで、においも含めて生活環境に至るまで、漢方は“その人”全体を見つめ体調を整えていきます。漢方は、まさに患者さんに寄り添った、セルフメディケーションにふさわしい医療だと、私は思っています。

事業仕分け:漢方薬を保険適用外の不見識。花輪先生コメント。(はたともこブログ) 

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漢方薬・生薬認定薬剤師


漢方薬・生薬認定薬剤師の試験に合格しました。

病巣への個別の対症療法ではなく、体全体の調和を考え体調を整えていく漢方の手法に、私は共鳴しています。

同じような症状でも、人それぞれ、その時の体質によって処方は変わる、そんな当たり前のことが当たり前に行われているのが漢方です。そこが、西洋医学との大きな違いです。

もちろん、西洋医学を否定するものではありません。ただ、西洋医学一辺倒の診療は、決して患者さんにとって有益だとは思いません。

体の中の様々なバランスが崩れることで、病気は進行します。自分なりのバランスをとることで、多くの病気は未然に防ぐことができるはずです。

医食同源!まずは、バランスの良い食事からはじめましょう。
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母校「明治薬科大学」訪問

過日、母校である明治薬科大学薬用植物園を訪れました。恩師の奥山徹教授(天然薬物学)御自ら、研修の一貫である薬用植物園実習の講師を務めてくださり、大変興味深く勉強をさせていただきました。(屋外にある薬用植物園での実習だったため、ラフな格好をしています。)

明治薬科大学は、点在したキャンパスを統合し、2000年に都下清瀬市に移転しました。今や壮大なキャンパスを誇る母校の発展ぶりは、卒業生の1人として大変心強く、同時に、薬剤師としての今が在るのは母校のおかげと、あらためて母校への感謝の気持ちでいっぱいになりました。 明治薬科大学資料館は、一般にも公開されています。医食同源の起源を探るにふさわしい充実した施設です。是非一度、来館されてみてはいかがでしょうか。

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「コンビニ処方」の是非:風邪薬・漢方薬がコンビニで買える!?

7月3日の日経新聞一面トップは、市販のOTC医薬品(医師による処方箋を必要とせず購入できる医薬品)の風邪薬や漢方薬、ビタミン剤・整腸剤などを、副作用を明記することを条件に、薬剤師でない「登録販売者(都道府県ごとの試験)」でも販売を可能にするという内容の記事でした。すなわち、コンビニでも風邪薬や漢方薬を手に入れることができるようになる、というものです。

病医院に頼らずとも、街かど薬局で必要な医薬品を購入することができることは、膨らむ医療費を抑制する上でも重要な手段です。1997年に、胃・十二指腸潰瘍の殆どを外科的に手術することなく治癒率を格段にアップさせた胃酸分泌抑制剤「H2ブロッカー」が、医師の処方によらず薬局で購入できるようになったことは、セルフメディケーションに大きな革命をもたらしました。薬剤師として街かど薬局の店頭に立ち、商品名「ガスター10」の服用方法と留意点を必死に説明していた当時を、私も懐かしく思い出します。

ガスター10を筆頭にH2ブロッカーがスイッチOTC(処方箋医薬品からOTCになったもの)として街かど薬局で手に入るようになったことは、間違いなく国民に利益をもたらしたと言えますが、その代償として、服用管理が万全でなく副作用の被害にあわれた方々もまた少なからずいらっしゃいます。中でも、致死的予後を迎えられた方々にとっては、医師の管理なく、また薬剤師の管理も不十分なまま、簡単にH2ブロッカーを服用できたことが、果たして患者利益に資するものであったのかどうか?非常に悩ましく、スイッチOTCが抱える課題は今後も続く命題になっています。

街かど薬局の薬剤師であっても、当該医薬品を購入された方々の服用管理をすべて徹底することは、残念ながら困難です。H2ブロッカーに代表される「スイッチOTC」の販売は、そこに一定のリスクが生じることを、服用する側も承知の上での解禁であると認識しなければならないのです。そこで、今回の改正薬事法の適用に直面する時、名実ともに「コンビニ処方」がまかり通ることの是非を、私は考えずにはいられないのです。

市販の風邪薬を甘くみてはなりません。薬物アレルギーによるアナフィラキシーショックはもとより、緑内障や前立腺肥大を治療中の方々にとっては、風邪薬は諸刃の剣ともなりかねません。病院で加療中の患者さんが、風邪薬だけは市販のもので済ませようとする行為は、いまや否定できないし、あってしかるべき行動でしょう。だからこそ、風邪薬を販売する薬剤師は、お客様から必要な情報をお聴きして(引き出して)、お客様のセルフメディケーションに真に貢献するために、職責を全うしているのです。

翻って、街のコンビニで、薬剤師でない人の手によって風邪薬や漢方薬が販売されるとなると、事態はどうなるでしょう。果たして、「登録販売者」なる方がお客様のバックグラウンドにまで注意をはらい、必要な情報を得て、お客様の健康に寄与する販売をどこまで行うことができるでしょうか。特に、漢方薬については、風邪薬以上に注意を払わなければなりません。厚労省は、H2ブロッカーと比較して漢方薬の規制を緩和していますが、それは大きな間違いです。小柴胡湯など一部の漢方薬を除き、世の中全体が漢方薬には副作用がないと誤解されている風潮だからこそ、漢方処方の難しさを広く情報提供する必要が厚労省にはあるはずです。

例えば、誰もが知る「葛根湯」には、狭心症や心筋梗塞の既往歴のある人には原則投与してはならない「麻黄(マオウ)」という生薬が含まれています。街かど薬局の薬剤師は、葛根湯を販売する際には、そこまで注意を払わなければならないのです。頻尿などに用いられる「八味地黄丸」は胃腸障害を起しやすく、また婦人科用として用いられる漢方薬には、リウマチやアトピー性皮膚炎の患者さんには要注意の「桂枝(ケイシ)」という生薬が含まれているものもあるのです。これらはごく一例にすぎず、偽アルドステロン症やミオパシー、更には肝機能障害などの重大な副作用の事例は、漢方薬といえども実際に報告されています。複数の漢方薬を同時に服用する場合には、成分の極量にも注意を払わなければなりません。
 
富国強兵により軍陣医学に傾倒し、負傷者への外科治療の必要性から、明治7年に西洋医学をもって日本の医学とするという『西洋七科の制』が制定され、日本における漢方医学は一時衰退してしまいました。しかし、対症療法というよりもその症状をあらわす体質の根本を解決しようとする漢方は、化学物質が氾濫する今の時代にあって、代替医療としても再び脚光を浴びてきています。一歩間違えれば毒となる漢方薬を、医師や薬剤師の説明なくして販売しても良いとする今回の厚労省の方針は、患者利益の観点からとても同意できるものではありません。使用して効果のある医薬品には、必ず副作用もつきまといます。薬物療法で最も重要なことは、むしろ副作用の管理といっても過言ではないのです。

24時間営業のコンビニで、すべての時間帯に対応するだけの「登録販売者」を配置することができるとは到底思えません。外国人の短期就労者が多く見受けられるコンビニで、公衆衛生上問題なく併用薬との相互作用や副作用についてのフォローも万全に風邪薬や漢方薬が販売されるなど、あり得ない想定です。現在でも、医薬品による副作用であることに気付かない症例は、数多く存在しています。また、事例の少ない副作用は見逃されて良いものではなく、事例が少ないからこそ広く一般に情報提供され、事故を未然に防ぐ体制をつくっていかなければならないのです。

相互作用や副作用の可能性のある医薬品を、ある意味野放しにすることは、医薬品の副作用をこれまで以上にチェックするために医薬品医療機器総合機構の職員を増員すると発表したばかりの厚労省の姿勢との整合性もつきません。医療費抑制につながるセルフメディケーションは、街かど薬局の薬剤師の存在なくして成立しません。単に利便性だけを追及して安易に医薬品の販売の規制を緩和することは、結果的に国民の健康を阻害することにつながります。厚労省が取り組むべきは、氾濫する医薬品や健康食品から国民を守るためのセイフティネットの構築でなければならず、国民をリスクにさらすことでは決してないはずだと、私は思うのです。
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「聴くボランティア」 12月2日

核家族化が進み、一人暮らしの高齢者が増えた今、「聴くボランティア」が社会のニーズに応えている。介護施設などで、高齢者の「話し相手」というよりは「聴き役」に徹し、若い頃のように自由のきかない体への不満や、残り少なくなった先行きへの不安から、つい閉ざされがちになる高齢者の心のケアを目的に広がりはじめたボランティアだ。

相手の心の訴えを聴く「傾聴」は、高齢者ばかりが対象とは限らない。年齢を問わず、病気をはじめ様々な悩みを抱える人、あるいは、孤独な日々を送る人などにとって、自分の話を聴き共感してくれる相手が存在することは、大きな支えとなる。そんな現代社会のニーズに応えて、各地に「聴くボランティア」が誕生しているのだ。

「聴く」は「聞く」とは異なり、十の目と心を持ってきくことであり、相手の全てを受け止める気持ちがなければ出来ない行為だ。「聴す」と書いて、「ゆるす」と読む。相手がどんなこと言っても、まず一旦は許し受け止めることが傾聴の基本なのだ。が、実際には、なかなかできないことだ。相手の言動に敏感に反応してしまいがちな態度を、自戒し聴き上手になることは、難しいがでも目指さなければならない姿勢だ。ディベートとは異なる、「傾聴」の奥義を認識し、その能力を高める努力が必要なのだ。

日経に掲載されていた「傾聴のポイント」を紹介する。
1. 話をする相手を大切な存在だと考える。
相手が寝たきりでも認知症でも、聴き手にとっては大事な人。

2. 相手がいつも主人公であり、その話を興味を持って聴く。
興味が持てないと、話を聴けない。

3. 相手の話に批判・反論をしない。
相手の話を否定しないで、ありのままを受け止める。

4. 相手がどんな気持ちで話しているか、その気持ちをくみ取る。
つらい思いを話す相手には、そのつらさを疑似体験する気持ちで聴く。

5. 相手に聴き手の考えを押し付けない。
相手がより多く話すことで、自分の考えを整理し、自ら問題を解決していくのをお手伝いする気持ちで接する。

「聴くボランティア」は、誰でもができるものではない。きちんとトレーニングを受けた人、あるいは人生経験の豊かな人間力のある人でなければ務まらない。時代は「聴くボランティア」を求めている。「傾聴」する人が増えてくれば、思いやりのある人権の豊かな社会になるだろう。私も「聴す」心を肝に銘じて、日々精進していきたい。
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薬剤師の報酬 11月9日

政府による医療制度改革の大キャンペーンが始まった。レセプトや領収証明細の開示・総額管理制度による医療費の管理・診療報酬の引き下げ・ジェネリック医薬品の推奨・先発品をジェネリック医薬品の薬価に近づけるなど、これまで聖域だった部分にメスは深く切り込みはじめた。そしてついに、医師をはじめ医療従事者の人件費(一人当たりの報酬も含めて)の抑制もターゲットとなる様相で、いよいよ医療業界にも大変革の波が押し寄せてくる。

病院薬剤師の給料は、医師のそれの1/2~1/3。大卒・国家資格の割には、看護師あるいは事務職員とほぼ同等の扱いだ。医療費抑制の流れの中で、この先、削られることはあっても、決して肉付けされることなど望めない医療従事者の給料において、薬剤師もその例外ではない。

周知のように、来春の入学者より、薬学部は6年制に移行する。より臨床分野での研鑽を積み、医療現場で医師と対等に渡り合える人材を育成することが、6年制移行への趣旨とされている。しかし、である!果たして、6年制薬学部を卒業し国家試験に合格した薬剤師は、医師に比肩する給料を受け取ることができるだろうか。

病院内での医師の処方箋に基づく調剤業務への「報酬」が、6年制を理由に倍増するとは思えない。薬剤師が、医師と共同で処方を組み立てることは、通常の外来診療では、まず有り得ない。入院治療へのコミットは大いに考えられるが、だからといって薬剤師の「報酬」が倍増するとは、やっぱり思えない。

ただ一点、薬剤師の報酬を上げるべきだと考える職域がある。街角薬局の薬剤師は、患者さんとのコミュニケーションの中から、医師以上に患者さんのプライバシーを知ることになり、服薬説明にとどまらず、患者さんの生活全般に渡り相談にのることが多い。さながら、街角薬局はよろず相談室だ。その場合、十分に患者利益に貢献しているとみなされるので、医師による処方箋に対する調剤業務と比較して報酬は上げられるべきだと私は思う。

医師の処方によらない非処方箋薬の種類を増やし、医療用の医薬品を薬剤師の裁量で患者さんに処方できるようにして、所謂「街角薬局」を地域の健康ステーションとして、公平中立な立場でケアマネジャーを置くなど有効に活用して、結果として医療費の抑制につなげていくことができれば理想だ。

日本薬剤師会「悲願」の薬学部6年制でも、卒後の地位が不十分な状況では、来春入学する学生がかわいそうだ。プライマリーバランス実現のため、医療費が歳出削減のターゲットの一つとなることは、数年前から自明の理だった。何をもって薬学部6年制は、「悲願」だったのか。非処方箋薬の種類を増やし、「街角薬局」の薬剤師が、地域の人々の健康管理に名実ともに一役かえるように、合理的な薬剤師改革を行って、医療費抑制にもつなげていく必要がある。
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子宮頸ガン予防ワクチンの開発 10月7日

子宮頸ガンというと、最近では「STD(性病)」の一種とみなされている。子宮体ガンは同情をかうが、子宮頸ガンの場合は、「自業自得」との印象を与えることが多く、真面目な女性が罹患した場合、なかなかその説明がやっかいだ。

そんな子宮頸ガンに対して、このほど画期的な報告があった。STDの一種とみなされているように、子宮頸ガンは、ウイルスにより感染する。米国の医薬品大手企業メルク社が、ウイルス感染を防ぐためのワクチンの開発に、ほぼ成功したと発表したのだ。胃潰瘍や胃ガンの原因菌であるヘリコバクタ・ピロリを発見した学者は、本年のノーベル医学生理学賞を受賞したが、子宮頸ガンのワクチンの開発は、それに優るとも劣らないすぐれた功績だ。

日本でも近年、若い世代の子宮頸ガンが増え、無防備なセックスによる「ヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)」の拡大が一因だと考えられており、感染予防のためのワクチン開発が現実のものとなれば、とてつもなく大きく社会に貢献することになる。村上ファンドではないから、私は「メルク株がお買い得」などとは言わないが、2006年の販売開始を目指しているとされるこのワクチンの開発が本物なら、特に、性の無法地帯である発展途上国の女性にとっては、人生がガラリと変わるくらい劇的な福音だ。

いまだかつて、女性が男性を襲い問題となった事案を、あまり聞いたことがない。日本でも、いつも事件沙汰になるのは、男性が女性を襲う場合だ。自らの性的欲求をコントロールできない人物を、人格者として認めるわけにはいかないが、残念ながら現在も、特に途上国では、女性がいつも性的犠牲者となり続けている。そんな女性に多い、途上国では人災とも言える子宮頸ガンが、ワクチン接種によって激減することになるのであれば、これ以上ない喜びだ。

翻って日本では、ワクチンの開発が、自由奔放な性をもたらすものでは決してない。どんな場合も節度をもって、誇り高く人間は生きていかなければならない。男性は特に自己コントロールに徹し、女性も奔放な性を弄ぶことのなきよう、人としての最善の努力をはらい、健康な人生を歩みたい。
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連休前は大忙し 4月28日

明日からの連休を控え、今日は遅くまで残業している人も多いだろう。「お疲れさまです」本当に。GWであっても、地域には必ず休日当番医が存在し医療機関が完全に閉鎖することはないが、そうはいっても今日は、患者さんがごった返し、息つく暇もないほどの忙しさだった。

調剤する薬剤師の立場で見ると、混み合う時は、「大勢の患者さん」をいかにお待たせすることなく適切に投薬していくかという点に主眼を置くことになるのだが、患者さんにしてみれば、どんなに混雑していても「私は私」。当然だ。いつもより1分くらいはカットしても、患者さんときちんと向き合いお話をさせていただく姿勢を忘れずに今日も従事したつもりだが、きっと不十分な点もあっただろう。

薬が出てくるのをじっと待っているいつもの患者さんと、たまたま目が合っても、順次お渡ししているので即座には対応できない。気がついたら同僚薬剤師が投薬完了し、その方の姿が見えなくなっていた。あわてて追いかけていって、言葉を交わす。かと思えば、一通り投薬の説明が終了した途端に、「憲法は絶対に守って下さい!」と訴える患者さん。その熱意に圧倒されるひとこまもあった。思わず「9条ですよね」と答える。

聴けば、この方は満州へ出征し、日本軍の侵略の様相をその眼に焼き付けて帰還された、戦争は地獄だと知る数少ない生き証人の1人なのだ。村単位で火をつけ、その村を消滅させる。火をつける前には、その村の女性すべてを犯す。その繰り返しで侵略していったのだと教えて下さった。戦地から生還されたことに罪悪感を抱き、日本は反省すべきところは反省し、アジア諸国に謝罪することは当然だと、話して下さった。

更に、日本でも歴史の真実をきちんと教えるべきだと、強調された。「曖昧な記述の教科書を合格させる文部科学省に責任がある」と、力説された。その方の甥御さんは、海外勤務でシンガポールに赴任した際、現地の資料館で初めて日本軍の生々しい侵略行為の真実を知り、恥ずかしさとショックで呆然としてしまったそうだ。

忙しい時間だったので、2週間後の次回また、戦争体験についてじっくりとお話を聴かせていただくこととした。そうかと思えば、「嫁に被害妄想・被害妄想と言われるが、被害妄想とはいったいどんな病気か?」と尋ねる患者さん。聴けば、お嫁さんがその方を殴るらしい。何しろ今日は忙しい1日だったので、不本意ながらいつもよりやや短めに切り上げざるを得ず、しかし一通りの話はお聴きし、自ら患者さんが席を立たれるところまで慎重に対話させていただく。

さて、ご存知の通り、ある患者さんのご子息が、俳優の「やべけんじ」さん。これまで数々のトレンディドラマに出演しているが、直近の出演情報をお父上から入手したので紹介する。是非、是非見てね。そして一緒に応援してね。

「やべけんじ」出演情報
4月29日(金)23:15 TV朝日・金曜ナイトドラマ「雨と夢のあとに」
・地域により放送時間が異なる
→http://www.tv-asahi.co.jp/ameyume/010onair/index.html
5月10日(火)22:00 フジTV「曲がり角の彼女」(青木さやかが出てるやつ)

※映画も撮影中で、夏頃、公開予定だそうだ。楽しみ!
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消費者と薬局との乖離 3月5日

所謂「薬局」「薬店」で、薬の効能や副作用について薬剤師から必ず説明を受けていると答えた消費者は、全体の14%、時々説明があると答えた人は49%で、約1/3の消費者が「説明を受けていない」と感じているという調査結果が、先日、厚生労働省から発表された。かたや店舗側の主張は、「必ず説明する」が41%に達し、消費者との意識の乖離が非常に大きいことが判明した。

一般の薬局・薬店の棚に並ぶ医薬品は、病院から処方される医薬品(要処方箋薬)と比較して効果が緩慢で副作用も少ないという印象が強いが、それは認識の甘い非常に危険な発想だ。TVコマーシャルを通して誰でも知っている有名な風邪薬でも、人によっては皮膚が壊死し場合によってはショック死するほど重大な副作用を引き起こす可能性を秘めている。スティーブンス・ジョンソン症候群という言葉を、耳にしたことのある人は多いだろう。

使用後、体に異変を感じたら、「様子を見る」といって放置することなく、直ちに病院で受診する必要性がある。薬を購入する際、最も重要なことは、効能効果や使用方法もさることながら、副作用の傾向についてきちんと認識しておくことだ。それが消費者の責任とも言える。万が一、運悪く副作用の被害を被ったなら、独立行政法人・医薬品医療機器総合機構が受託している「医薬品副作用被害救済制度」に賠償を求めることが可能である。医薬品を購入した薬局・薬店に、まずは相談すると良い。

一方、販売店側の特に薬剤師は、消費者から説明を求められなかったことを理由に、医薬品についての説明を怠るようでは、社会的責任を果たしたとは言い難い。医薬品を求める消費者は、ウキウキ・ルンルン気分でやって来るわけではないので、薬剤師があまりに社交的であり過ぎることは問題だ。しかし、消費者が気軽に言葉をかけ易い明るさと包容力が、薬剤師には求められる。

「知ったかぶりはしない・威圧的な態度はとらない・必要以上に興味本位につっこまない」そして、何より、「知り得た情報をむやみに第三者に漏らさない」店頭に立つ薬剤師に求められる法律にも定められた最低限の義務だ。ましてや4月からは、個人情報保護法も施行される。薬剤師は、これらの要素を、消費者は肌で感じ取っているということを忘れず、医薬品の専門家として「効能効果」「使用方法」「起こり得る副作用」についての的確な情報を、人間力を持って消費者に提供していかなければならないのだ。

特に、使用方法については、利用者の置かれる環境によっては通り一遍の説明では不十分な場合がある。利用者のバックグラウンドも大切な情報の一つである。が、隣の芝生見たさの詮索は、必ず消費者の心を傷つける。本当に消費者のことを思っての問いかけか、そうではないか、店頭での応対の際には、薬剤師の人格そのものが現われる。そのことを、まずは薬剤師が肝に銘じて消費者と接することを遂行していけば、「説明した・しない」などの行き違いは、起こらないものと考える。処方箋の調剤においても同様だ。私自身も自戒して業務にあたりたい。

詳細は定かでないが、自民党の中川国対委員長が、郵政民営化法案成立後に、内閣改造があると発言したそうだ。党内の反対論を押さえ込む常套手段だが、もはやそんなことでは効き目がないとこまで、小泉総理の求心力は低下してしまっているのではないだろうか。
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三共製薬の名も消える 2月19日

三共製薬と第一製薬が、10月にも経営統合するそうだ。
日本の製薬会社の数倍の売上げ高を誇る外資系企業は、当然、新薬開発にかける研究開発費も日本企業の数倍だ。米国ファイザーや英国グラクソ・スミスクラインなどが日本市場を席巻する中、日本の製薬会社も生き残りに必死だ。4月には、山之内製薬と藤沢薬品が合併して、明日を照らす「アステラス製薬」も発足する。

新薬が上梓されるまでには、数百億円の研究開発費と10年以上の期間がかかると言われている。複数の新薬の開発を進めるためには、事実上数千億円もの経費が必要になるということだ。現代医学でも太刀打ちできない病気は、まだまだ沢山存在する。医師そしてコーメディカルの能力の向上と合わせて、1人でも多くの患者さんの命を救うためには、新薬開発は医療の至上命題だ。人類はその大半を、民間の製薬会社に依存するしかないのだ。

約20年前、御巣鷹山に墜落したJAL123便東京発大阪行きの機内には、塩野義製薬の頭脳の中枢である研究者たちが勢ぞろいしていた。1985年の事故以降数年間、塩野義製薬にめぼしい新薬の発売はない。

製薬会社は、新薬の薬価を少しでも高く設定し、経費を回収しようとする。会社として当然のスタンスだ。しかし、20年~25年間の新薬の特許期間が過ぎてもなお、高い薬価が維持されることは、国民利益の観点からすると肯定できるものではない。そこで登場したのがジェネリック医薬品だ。特許期間終了後は、先発医薬品の1/2~1/3の薬価で使用できるジェネリック医薬品を、活用しないてはないのだ。超高齢化社会を迎え、国の重要課題の一つである医療費の抑制にも、ジェネリック医薬品は貢献する。

今年も続々と有力医薬品の特許がきれ、雨後のタケノコの如くジェネリック医薬品が登場する。先発メーカーにとっては、競争相手が現われることは、嬉しい話しではないだろう。しかし、国民には大きな利益をもたらすものだ。今後は、製薬会社の経営統合とあわせて、先発メーカー自体、分社化などの形態でジェネリック医薬品メーカーを創設するケースも出てくるだろう。既にエーザイ㈱が取り組んでいるように。

国民は皆平等に、医療の恩恵を受諾できるものでなければならない。医療は、金持ち優遇であっては、決してならない分野だ。特定療養費制度の拡充による混合診療の導入も、低所得者に不利に作用するのであれば意義が無い。自由診療の幅が広がり、風邪をひいても全額自己負担という事態を招くようでは、人々に平等に医療を享受する国家とはいえない。ジェネリック医薬品で薬価を抑制することは、非常に大切なことなのだ。

私が薬剤師になりたての頃は、武田・三共・山之内・第一・塩野義・大日本・中外・藤沢などなど、みな、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。時代は流れ、今年中にこれらの社名の殆どが消えてしまう。少し寂しい気もするけれど、外資に独占されないためにも、経営統合は残された唯一の手段だ。歴史に残る名医薬品を、次々と世に送り出してきた名だたる日本の製薬メーカーの今後の奮闘を、心から願う。

この季節、製薬会社にとって、花粉症の治療に用いられる抗アレルギー薬はドル箱医薬品だ。しかし、ワクチンや舌下減感作療法のほうが、花粉症対策としては断然有望であることが実証されたこんにち、これらの治療法が日本国内で1日も早く承認されることが、国民利益と医療の発展につながっていくというものだ。抗アレルギー薬を売りまくるために、製薬メーカーが承認を阻止すべく厚生労働省に圧力をかけることは、決してあってはならないことなのだ。
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