「講談社野間記念館の名品」 講談社野間記念館

講談社野間記念館文京区関口2-11-30
「感興を呼び起こす美の競演 - 講談社野間記念館の名品」
10/24-12/20



講談社創業100年、また記念館開業10周年を記念して、館蔵のコレクションを計100点以上展観します。講談社野間記念館で開催中の「講談社野間記念館の名品」へ行ってきました。

美術館のいわゆるメモリアル展というと、さも館蔵の作品が半ば総花的に陳列されている印象も否めませんが、特徴のあるコレクションを誇る同館の名品展は一味も二味も違っていました。まずは本展を大別する三つのテーマをご覧下さい。

1.「野間コレクション」:創業者野間清治が蒐集した、同時代の近代日本画画壇コレクション。山口逢春、速水御舟、山村耕花など計39点。
2.「村上豊作品群」:H16年以降、画家本人より寄贈を受けた村上豊の作品を約20点ほど紹介。
3.「出版文化資料」:大正から昭和にかけて講談社の出版した雑誌の挿絵原画。東山魁夷、堂本印象、伊東深水ら計45点。

創業者に縁のある画家の作品はもとより、雑誌の挿絵原画など、出版社ならではのラインナップこそ、今回の展観の見どころであるとお分かりいただけるのではないでしょうか。それではいつものように印象に深い作品をいくつか挙げてみます。



横山大観「千与四郎」(1918)
順路冒頭にいきなり展示されるハイライト的な大作屏風。六曲一双の大画面に、幼き千利休の登場した鬱蒼とする木立の光景が表される。たらし込みの岩や木の幹の瑞々しい色彩感をはじめ、鮮やかな緑青による葉の空間を埋め尽くすような描き込みなど、いかにも大観らしい画風が目を惹いた。

速水御舟「梅花馥郁」(1932)
御舟が形態追求に邁進していた頃の独特なフォルムをとる梅花。うねる線に異様な気配を感じた。

山口蓬春「十二ヶ月図」(1927)
野間ならではの色紙コレクションから蓬春の十二ヶ月図を全点展示。すすきの野をかけるキツネの描かれた12月の情緒的な様子が心にしみた。

山村耕花「江南七趣」(1921)
耕花が中国に取材して描いた全7面の絵画をこちらも全点紹介。靄に覆われた上海市内を流れる大河の景色は山水画風。全7面、色彩感を大きく変えている画風が印象に残った。

伊東深水「『講談倶楽部』昭和21年表紙原画」(1949)
文字通り「講談倶楽部」の表紙を飾った深水の美人画のうち6点が公開。いわゆるグラビアという認識で良いのだろうか。いかにも深水画らしいやや艶やかな女性が、例えば湯上がり後の火照った頬を見せて佇んでいる。

その他、近年、例えば2006年の「小説現代」などの表紙絵を手がけた村上豊の作品では、雛などを描いた可愛らしい挿絵原画などが印象に残りました。



名画とともに、講談社の雑誌の変遷を一部追うことが出来るような展示ともいえるかもしれません。



私の行った日はたまたまあいにくの天候でしたが、展示内容はもとより、静まり返った館内より雨に濡れるお庭を眺めるのもまた一興でした。雨の似合う美術館など都内でなかなか他にありません。

12月20日まで開催されています。
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )