「狩野派 - 400年の栄華」 栃木県立博物館

栃木県立博物館宇都宮市睦町2-2
「狩野派 - 400年の栄華」
10/10-11/23



下野(現在の栃木県)方面の出身ともされる狩野派の祖、元信に続く狩野派の系譜を、主に東国に縁の深い絵師を中心に概観します。栃木県立博物館で開催中の「狩野派 - 400年の栄華」へ行ってきました。

本展覧会の概要は以下の通りです。

・重文7点、初公開作数点を含む、計80点の作品にて、近代まで至る狩野派の系譜を総覧する。(出品リスト。静岡で開催された狩野派展とは別内容。但し一部作品は重複する。)
・主に東国の狩野派を中心に展観。これまで狩野派の蒐集に力を入れてきた同館所蔵の作品も数十点紹介される。事実上の「江戸狩野展」。
・日光山の御用を狩野派の絵師をつとめた関係もあり、普段、あまり余所では公開されないご当地の寺院所蔵の貴重な品も展示されている。
・江戸末期から東京美術学校創立まで、美術史的にエポックともされる明治初期の狩野派の動向にも焦点を当てている。
・増上寺所蔵の狩野一信、「五百羅漢図」が二点ほど紹介されている。

作品には一部展示替えもあり、必ずしも常に80点が出ているわけではありませんが、上述の通り江戸狩野に的を絞った構成、及び日光山にも関連する珍しい作品の公開など、まさに始祖正信を生んだ栃木県の自負を感じるような充実した展覧会でした。適切ではないかもしれませんが、展示を見終えた後、例えば京博の特別展を一通り巡った時と同じくらいの充足感を得たとしても過言ではありません。また見知らぬ絵師の出品も多く、いささか見慣れた感もある狩野派ながら、実に新鮮味のある内容で楽しめました。

印象に残った作を挙げていくときりがないので、ここではマイベストとして特におすすめしたい5点を並べてみます。

5. 狩野永徳「洛外名所遊楽図屏風」(個人蔵)



かの京博永徳展で新出の永徳作として話題となった屏風。さすがに畢竟の大作、「洛中洛外図屏風」には及ばないが、それでも永徳ならではの細やかな線描による生き生きとした人物を通して、京の賑わいが伝わってくた。また永徳展ではやや混雑していたものの、こちらではゆっくりと見ることが出来た。

4. 狩野探幽「東照権現像」(重要文化財/栃木・輪王寺)



家光が家康の夢を見る度に描かせていたという家康の言わば神像。輪王寺に8点伝わるうちの1点。解説には「肖似性」に乏しいとあるが、一般的にいかにも家康と言ったような好々爺的な様子が憎めない。

3. 狩野探幽「東照社縁起」(重要文化財/日光東照宮)



家康の生涯を描いたという長大な絵巻。その長さは全部で何と70mを超えるそう。ここではそのうちのごく一部、巻の第一、家康の誕生シーンなどが描かれている。状態が非常に良いせいか、彩色の鮮やかな様子が特に印象に残った。きっと極上の絵具を利用しているのだろう。

2. 狩野周信「山水図屏風」(栃木県立博物館)


図版で見るとあまりインパクトはないが、実物に接すると驚くほど迫力を感じる勇壮な山水図の大屏風。起立する岩山に金の雲霞が重々しく横たわり、その下には楼閣、または遠景の湖へと連なる野山の景色が描かれている。雪舟を模したとされているが、受ける印象はまるで違った。エキゾチックですらある。

1. 狩野一信「五百羅漢図」(東京・増上寺)*全百幅のうち二幅



 

作品を見て腰を抜かしそうになったほど鮮烈な印象を与える作品。有名な一信の増上寺編「五百羅漢図」が二幅ほど公開されている。(かつて東博で公開されたものとは別バージョン。)絵を見て言葉を失うとはこのことか。私としては先日公開された東博の「動植綵絵」を超えるほど心を揺さぶられた。H23に都内で全幅公開されるそうだが、その時は本当に卒倒するかもしれない。



如何でしょうか。なお出品全点の図版、及び解説の掲載された図録が1200円、さらには入場料が250円であったことを付け加えておきます。いうまでもなく破格です。

ご紹介が遅れてしまいましたが、明日明後日の連休に少し遠出でもとお考えの方には是非ともおすすめしたいと思います。また最寄の県立美術館では、巡回展でmemeさん絶賛の「大正期、再興院展の輝き」も開催中です。(残念ながら私は時間の関係で断念しました。)

明後日、23日の月曜日まで開催されています。
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