Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

癌性リンパ管症

2006-06-13 | 医療・病気・いのち
 癌の末期には、呼吸困難が出現してくることがある。

 肺の転移巣が気管に影響を及ぼしている場合、胸水が貯留している場合、いわゆる悪疫質による場合その他があるが、癌性リンパ管症による場合もある。

 肺のリンパ管に癌細胞が広がり、酸素を十分に血液中に取り込めなくなった状態である。吸入療法や、理学療法、薬物療法、酸素投与などで対応するが、原因である癌細胞の増殖をコントロールできなくなっている場合が多く、症状を払拭することは困難である。

 痛みと同様、息苦しさは主観的なものであり、医療者はその訴えをきちっと受け止め、少しでも症状を緩和する努力をしなければならない。

 終わりのない息苦しさとともに夜を過ごすくらいなら、眠らせて欲しいと思うかもしれない。

親の死

2006-06-10 | 想い・雑感
 火葬場の煙が上がらない日はまず無い。死は日常である。
 毎日誰かの親が亡くなっているであろうから、親の死も日常である。

 しかしある個人にとって母親あるいは父親の死は、生涯一回きりの特別な経験である。親が先に死ぬのは当たり前と言われても、親のいない状況が当たり前とはなかなか思えないものだ。

 時が随分経ちその状況に慣れてきたように見えて、ふとした拍子に親に会えないという現実に改めて悲しみがわき起こる。理性では当たり前と分かっていても、感情では納得出来ていないのであろう。

 現代のように、生を讃えても、死を見つめないあるいは見つめる機会が少ない時代では、ますます受け入れるのが難しくなるのではないだろうか。

 

急変?

2006-06-08 | 医療・病気・いのち
 癌の末期になると徐々に状態が悪くなり、最後の日がいつ頃か予想がつくものとイメージしている人が多いようだ。しかし実際の印象では、最後は急速に悪くなる。

 特に緩和ケアによって、症状をコントロール出来ている方は、亡くなる1~2週間前から比較的急速に状態が悪化することが多い。時には、家で過ごされていて急に状態が悪くなり、病院に運ばれ何時間かで亡くなる場合さえもある。

 見た感じはまだまだ大丈夫だろうと感じている間にも、癌は確実に増大しているのである。死から目を背けることなく、その日に備えて、少しでも後悔のない時間を過ごしておかなければ、言葉をかける間もなかったということになる。

 「今」を大切にすることは万人にとって必要なことだが、身近に癌の方がおられるなら、よりその人との時間を大切にして頂きたい。最後の時はあっという間に通り過ぎてしまう。

見功者

2006-06-05 | 想い・雑感
 歌舞伎、落語、漫才などは、芸人と観客が一体となって一つの場を作り上げる。芸人が観客を育て、逆に観客が芸人に磨きをかけていくというのが理想的と思う。芸人を育てられるほどの客になると、その芸能だけでなくある程度の広い見識が必要になる。そのように優れた客を見巧者と呼ぶらしい。

 絵画の盗作疑惑が話題になっている。絵画などでも創作する側と見る側との双方が刺激し合ってより良きものが創造されるという面があるだろう。

 芸術選奨を決める側というのは、当然それだけの眼力と、広い見識があるというのが前提であろう。多くの盗作疑惑のある作品を作り続けて来たらしい作者に、賞を与えてしまったことは、選者が見巧者ではないことを示している。

 現代日本の、楽して生きるという風潮を示しているのか、プロ意識の欠落を示す出来事がたくさんある。そのようなものを他山の石として、プロとは何かを自分自身に厳しく問うていきたい。

痛み

2006-06-04 | 医療・病気・いのち
 痛みの程度を伝えることは難しい。

 食道癌の手術を他院で受けた後、ずっと痛みがあるという人が来られた。手術の影響とのことで様子を見られていたようである。まず消炎鎮痛剤を処方したが、全く痛みが取れない。再発は無いと言われているようだが、どうも痛みが強そうだ。またSCCという腫瘍マーカーが上昇しており、再発もあると思われた。その方の表情はいつも少しほほえんだような感じなのでよく分からなかったが、痛みの強さを5段階に分けて考えると、5段階という我慢できないほどの痛みであると言われる。オキシコンチンを処方してもまだ痛みで夜目が覚めるとのこと。

 そこで入院の上、塩酸モルヒネの持続皮下注入をはじめたところ、1日に120mgは必要な状態(経口剤ならば300~400mg)であり、やはりかなりの痛みだったのだと思われる。

 他人の痛みは分からないといわれるが、心の痛み同様、肉体的痛みも個人の感覚であり伝えるのが難しい。少し痛むのを1、耐えられないほどの痛みを5と5段階に分けたりして、うまく伝えることが必要だし、医療者は聞き出すことが必要だ。

 

癌化学療法の目的

2006-06-01 | 医療・病気・いのち
 胃癌などの消化器癌の再発に対する化学療法を行う場合、その前提としてしっかり認識する必要がある点が2つあると思います。

 人は必ず死ぬという点と、血液の悪性腫瘍(白血病など)などと違い消化器癌は現在の抗癌剤ではほとんど完治しないという点です。

 そこをしっかり押さえておけば、ひどい副作用を我慢させてまで治療を行い、患者の残された時間を苦しみで埋め尽くしてしまうようなことはなくなるでしょう。

 抗癌剤治療を行うことが目的なのではなく、患者自身がよりよい状態で過ごせる時間を少しでも長くすることが消化器癌再発に対する現時点での抗癌剤治療の目的なのだと考えています。