一気に

燃え立つような黄色の衣装を
身に纏っていた銀杏並木が
その装いを一気に脱ぎ落とし始めた

銀杏が葉を落とす速度の
これ程早い事に
改めて気がついた

時の移ろいを
強く意識する年齢になってきた
という事だろう

歩きやすい地域

アメリカの老年学会で、歩きやすい環境の整った地域に住むと、高齢者の精神機能低下が遅くなる可能性があると発表された。きちっととデザインされた研究ではないので、学術データとしては弱いものである。
しかし、高齢者が歩きやすい地域というのは、多くの人にとって住み良い環境が整っている地域ということになるのではないだろうか。歩行という運動が人の体に良い影響を及ぼす事は間違いないであろうから、街の整備の過程において歩きやすいというキーワードを盛り込む事は大切なことのような気がする。
歩きやすい歩道、緑豊かな環境、充分な時間をとってある歩行者用信号、途中で少し休めるようなベンチの設置、身近にある訪れたくなる施設など、少し考えるだけでも住みやすそうなイメージが湧いてくる。
それは、生活のスピードを多少落としても、周りから迷惑がられない空間でもあるだろう。

気づかない

ふらふらと家に帰る
道すがら空を見上げる

星が見えない
なんだ星がない
なんて思わず言ってしまうが

目を凝らすと
わずかに星の瞬きが見える

星がないのではなくて
私の目に見えていたかっただけ

生きていると
気がつかないままに
通り過ぎている事
たくさんあるんでしょうね

見える 見えない

ずいぶん低いところまで
雲が降りてきており
近くの山影が全く見えない

私にとっては
普段見ている風景

そこに山があると
思いながら見ているが
初めてこの景色を見る人にとっては
山は存在しない

見えなくてもある
あっても見えない
というような事は
よくあることである

時

周りを見ながら
ゆっくりバイクを転がすと
驚くほど立派な銀杏の木に
気がつくことがある

光線の具合によっては
燃え立つような鮮やかな黄色となる
枝自体はそれほど見えず
豊かな葉を身にまとっている

これまでもずっとそこに
いたはずなのに
気がつかなかった

それぞれの生き物に
それぞれの 時
があるということなのだろう

わからない

視点を変えろと言う

人の目を通して
物事を見ろと言う

母親や 父親の目を通して
物事を見ることすらできなかった私には
なかなか無理な相談だ

それに想像力を働かそうとしても
出てきたイメージは
結局自分の目を通して現れたもの

他人の気持ちや考えが
自分にはわかった
と勘違いするより

人は皆自分の目を通してしか
世界を見ることができない
という事実を
深く認識する方が
大切なのではなかろうか

敷物

ソファーで横になり
うつらうつらしていると
どうも重苦しい

目を開けると
私のお腹と胸の上に
猫が1匹ずつうずくまっている
息苦しさを感じるはずである

それぞれ眠っているのかと思ったら
時折 フゥーー～ッ
などとお互いを威嚇している
このまま体上の乱闘になれば
爪を立てられて
痛い思いをするのは私である

それぞれの首筋を優しく撫ぜ
ゆっくりと降りてもらった

少し油断していると
体の上に乗ってくる猫達
人を敷物と思っているのか
寒くなるにつれ
すぐにやってくる

学び続ける

中途半端な季節だが
1人の栄養士が
転勤となる

数年間の間に
職種を超えた連携が
患者さんにとって
とても重要なことだと気づいた男

卒業と同時に
赴任してきたときには
戸惑うばかりの状態だったが
今や栄養のラウンドを
仕切る程に成長した

日々自分で考え
学び続ける大切さを
改めて教えてもらった

彼の新天地での活躍を祈る

きっと
なすべきことを
自分で見付け出し
突き進んでくれることだろう

ガチャガチャポン

　政治、経済、法律。社会を生きていくうえで、大切なものだとは思うのですが、これまでの人生で、まともに勉強したことがない。政治がらみのややこしい話には、どうも突っ込みを入れることができない。
　でもね、どのような権利も無制限に主張できるものではなく、限度というものがあるのが普通だろう。だから首相の持つ衆議院の解散権にも、きっと縛りがあるものだろうと思うのだが、違うのだろうか。
　小さな子供が、砂場遊び、積み木遊び、お絵かき、ままごとなどをしていても、何か気に入らないことがあるとぐちゃぐちゃにしてしまうことがある。テレビゲームなどをしていて、ちょっとうまくいかないところがあると、リスタートボタンをすぐに押してしまうことも。そして算盤や電卓で計算していて、途中で分からなくなるとご破算にしたりクリアボタンを押したりする。
　今回の解散にはそのような雰囲気を感じる。なにか気に入らないことがあって、首相が安易にガチャガチャポンをしているように見えてしまう。巨額のお金を使って、選挙をやるような理由がよく分からない。
　しかし、やるからには、選挙の争点を明らかにする必要がある。そしてそれは自民党が決めることではなく、国民が決めることだろうと思う。このわけの分からない解散、そしてそれに続く選挙は、これからの日本にとって大きな曲がり角になる可能性があるような気がするので、政治はわからん、とうっちゃらずに、私にしてはめずらしく、少しは考えてみようと思う。

落葉

だらりとぶら下がっている
色はそれぞれ微妙に違うけれど
だらりと脱力し
落ちる時を待っている

抗うこともなく
全てを何かに任せきっている

木の幹とも
先に旅立った葉達とも繋がっている
際どい瞬間

期限

様々なものに期限がある

試験日
書類提出日
入学の日 卒業の日
旅への出発日
退職の日 等々

期限に余裕があると感じると
人ははどうしても
油断してしまう
そして間際になって慌て出す

人生の期限
に対しても同じなのだろう

そもそも人生では
期限が判然としない
という事はあるが
期限のあることをついつい忘れて
日々を過ごしてしまう
ずっと先のことだと
思っている

そしてなんとなく
自分にも期限が近づいてきたかな
と気づいたときに慌て出す

最後を感じたとき
少しでも穏やかに過ごせる様に
何時頃であるかはわからない
人生の期限ということに関して
時には考える時間を持ちたい
と思う

誕生日

今日は親父の誕生日

何年も前から
齢を重ねることは
できなくなったが

それでも
あゝ 誕生日だなあ
と思う

親父の享年程
生きる自信はないが
親父がどんなに子供のことを
見守ってくれていたかが
年を重ねるにつれて
わかるような気がする

今後さらに見えてくることが
あるのではないかと
楽しみである

漢方薬局

漢方薬を扱う薬局から
漢方薬を取り寄せて
服用されている患者さんを
時に見かけます

それも電話相談だけで
ずっと処方を継続されていたり
さらには処方内容の変更
までされたりしている場合があります

先日受診された方は
最初だけ薬局まで相談に行かれ
漢方薬を出してもらい
その後数年にわたり
電話相談だけで
処方薬を変更されていました

最近体調が悪くなってきた
ということで相談に来られました

症状をお聞きするところ
現在出されている漢方薬にたどり着くことは
ある程度納得がいくのですが

直後ご本人を見なければ
わからない情報というものは
とても多いものです

診察後に処方変更し
様子をみたところ
体調は良くなってきました

処方したお薬は
薬局で最初に出してもらったもの

本人を見ていれば
そこに戻れただろうが
話を聞くだけで処方をしてしまった結果
お薬がずれてきてしまったのだろう

薬を出す方も出される方も
きちっと対面する
という事を心がけて欲しいものだ

厚着

自転車通勤

半袖から長袖となり
下着が少し厚くなり
ジャケットを羽織り
手袋をし
ついに襟巻き

秋から冬へ
向かいます

次は
タイツに
厚めのジャケット

筋肉量が減りつつある体
寒さにとんと弱くなる

多発肝転移

胃がんの手術後で
経過を見ていた患者さん

ある月に
正常であった腫瘍マーカーの値が
ほんのわずか正常上限値を超えた

測定誤差ということもあるので
1ヵ月後に再度血液検査を行うとともに
CT検査を行った

残念ながら
腫瘍マーカーは急激に上昇し
CTでは多数の肝転移が見つかった

4ヶ月前のCTを見直してみても
全く腫瘍の影は見られない

体の中で
急速に癌細胞が
数を増やしているようだ

この急激な変化を
抗がん剤が
効果的に抑えてくれることを願う