Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

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ダンジーブログ

多発

2013-12-17 | 胃の診療
胃癌が見つかる場合
病変は一カ所の場合が多いが
二カ所三カ所と多発することもある

そういう方は
胃粘膜の状態が
発ガンしやすくなっていると
考えられる

治療として胃全摘が施行されれば
新たな胃癌が発生することはないが
胃切除が施行され
残った胃がある場合には
その残った胃から
新たな胃癌が発生してくることがある

特に初回治療の時に
多発病変を認めた方は
残胃に癌が発生してくる可能性を考え
定期的に検査を受けることを
お勧めします

胃空腸バイパス

2012-10-20 | 胃の診療
 胃の出口や十二指腸が癌によって狭くなり、食事が摂れなくなることがあります。そのままにしておくわけにはいきません。しかし狭くなるほどの癌であれば、その多くは進行がんなので、治療方法の選択を慎重にする必要があります。◆遠隔転移などがなく、切除可能ならば根治を目指して切除する場合が多いでしょう。◆遠隔転移はないけれど、腫瘤が大きくて切除可能かどうか判断がむつかしい場合は、開腹して切除の可能性を探るか、まずは抗癌剤治療をして明らかに切除可能となれば手術を行うかという選択肢になると思います。◆しかし遠隔転移があるような場合には、既に切除の対象とならない場合がほとんどです。そのような場合でも食事摂取を可能とするため、そしてできればキードラッグであるTS1を服用してもらえるようにとの願いも込めて、バイパス術を行うことがあります。逃げ道として短絡路を消化管に作るということです。具体的には、狭くなっているところより口側の胃と下流の小腸(空腸)とを吻合してしまうのです。これを胃空腸バイパス術といいます。すると食べ物は胃から小腸へと流れていくことができます。癌自体の治療にはなりませんが、再び食事ができるようになるのです。◆ただ、胃癌が胃の上部まで進展している場合や、腹膜播種などのために下流の小腸にも狭窄部位があるようなときには、バイパス術すらできないことがあります。そのような時はTS1以外の抗がん剤を使用してその効果に期待する、ということになります。

播種性骨髄癌症

2012-09-17 | 胃の診療

癌が骨髄に広がり、出血傾向や著しい貧血などを引き起こす状態を、播種性骨髄癌症と呼ぶ。発症後の生存期間の平均は4~5ヶ月といわれるが、入院後数日から数週間で亡くなることも稀ではない。だから、診断がつけば、直ちに抗がん剤治療を開始する必要がある。だが、抗がん剤自体を使用できない全身状態のときもあるし、使用できて効果があったとしても根治は不可能である。◆この状態を引き起こす癌の中では胃癌が多い。内視鏡検査やCT検査などではそれほど進行していない、と思われるような患者さんに、播種性骨髄癌症を引き起こしていることも稀にある。また、術後10年経過してからの発症の報告もあるので油断はできない。◆頻度はそれほど多くない病態であり、その発症機序は解明できていない部分が多い。医療者側とすれば、その可能性を念頭において診療に当たる必要があるが、分かったところでできることが少ないだけに、説明するのもつらい。


胃癌の治療法選択 3(中等度の進行)

2012-09-05 | 胃の診療
そこそこ癌は進行しているが遠隔転移はないと思われ、他臓器浸潤もない場合は、定型手術が治療の第一選択となる。胃を切除するとともに、領域リンパ節と言われる胃から流れ出るリンパ液を受け取る領域のリンパ節を丸ごと摘出するというものである。◆リンパ節をきちっととってくることをリンパ節郭靖とよび、取るべきリンパ節がある領域を周囲の脂肪組織ごと摘出しなければならない。そのためには、胃の切除範囲をきちっと設定すること、胃壁沿いのリンパ節を取る際は残る胃の壁に脂肪組織を残さないようにすること、動脈の走行がきれいに見えるように血管周囲の脂肪組織をきちっと取ること、などが大切である。これがきちっとできていない手術は、癌に対する手術とは呼べない。◆以前は早期胃がんに対してもこの定型手術が施行されていたが、近年では必要十分な切除となる程度に、切除範囲をやや限定(縮小)するようになってきている。◆逆に少し離れたリンパ節となる大動脈周囲のリンパ節まで郭清する場合もあるが、そこを郭清することが予後の改善につながるかどうかは、結論が出ていない。

胃癌の治療法選択 1(遠隔転移あり)

2012-08-24 | 胃の診療

胃癌が見つかった後は、治療方法の選択が必要になる。その際にはまず遠隔転移の有無が治療法を大きく分ける。◆肝臓、肺、腹膜その他胃から離れた臓器への転移や、遠くに離れたリンパ節に転移が在る場合には、基本的に根治手術の対象にはならない。延命を目標とした化学療法やQOL 改善のための対症療法(緩和手術を含む)が治療の主体となる。◆この遠隔転移の有無を調べるために、超音波検査やCT検査、時にPET検査などを行い、進行度評価を行うわけである。◆ただし,細かく見ると、肝転移があっても時に切除可能なこともある。また大動脈周囲のリンパ節転移や腹水にがん細胞が浮いているという条件のみで遠隔転移ありと判定された場合は、いくつかの治療を組み合わせることにより、治癒へ導ける可能性があり,個々の患者さんで検討する必要がある。

肝転移

2012-07-30 | 胃の診療
胃から流れ出た血液のほとんどは、門脈を通って肝臓へ流れ込みます。それで胃癌の癌細胞が胃から血液に乗って流れ出ると、肝臓へ流れ着きますから胃癌の血行性転移は肝臓に起こりやすいのです。■それも一箇所でなく、複数箇所に転移を起こしやすいので、胃癌からの肝転移が見つかれば、転移巣の切除により根治できる可能性はとても低く、切除による延命も望めない場合がほとんどです。■一旦肝転移が見つかれば、基本的には抗癌剤治療が選択されることになります。そして抗癌剤治療が奏効した場合でも、手術ができるようになることはほとんどありません。■但し、経過を見ていて、転移巣が一箇所しかないと思われる場合には、切除を選択する場合もあります。そういうことは希ですが、実際に胃全摘後数年で肝転移再発が見つかり、転移巣が一箇所と判断し切除を行い、無事5年が経過した方もおられます。

タール便

2012-07-22 | 胃の診療
最近あまり見かけないが、昔道路工事の現場を通れば、真っ黒なコールタールを見かけた。真っ黒でべっとりした液状物質。これに似た状態の便をタール便と呼び、上部消化管(食道、胃、十二指腸など)からの大量出血を示すとされている。▲これは赤血球中のヘモグロビンに抱えられた鉄(ヘム鉄)が酸化されることにより黒色を呈するとされる。どろっとなるほど出血してない場合は黒色便となる。▲胃癌自体からの出血でもこのような症状が出現するが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、時に大量の鼻出血でも出現する。いずれにしろ、消化管への出血という異常事態が起きている可能性があるので、もし便が黒くなっていれば診察を受ける必要がある。▲ただ、便が黒いだけなら、貧血に対して鉄剤を服用しているときも、鉄の酸化に伴い便が黒くなることがある。

ピロリ菌

2012-07-11 | 胃の診療

胃液の中には塩酸が分泌される。その強い酸がある環境下で生きていける細菌は存在しないと思われていた。ところが1983年、慢性胃炎の患者胃粘膜からヘリコバクター・ピロリが分離された。1991年にはピロリと胃癌との関連が発表され、1994年にWHOがピロリ菌を発がん性リスク因子と認定した。★ピロリ菌の感染は5歳くらいまでに起こり、成人への感染はまれとされている。そして上下水道の普及とともに日本における感染者も減少してきている。でもすでに感染している人は胃癌発症のリスクがある。★癌年齢と言われる前に、ぜひ一度胃の内視鏡検査を受けて欲しい。そして検査の際にはピロリ菌感染の有無も同時にチェックしてもらってください。そしてピロリ菌がいたら、除菌治療をしてもらいなるべく発癌の可能性を低くしましょう。◇ただし、除菌をしたからと言って100%発癌がないわけではないので、どの程度の頻度で検査が必要か、専門医に尋ねてください。◇今後はピロリ菌感染者の減少に伴い、この菌が誘引と思われる胃癌は減ってくると予想されている。ただピロリ菌と関係のない胃癌の割合が増えてくると推測される。実際、その兆候は報告されてきている。

モルヒネと寿命

2012-07-10 | 胃の診療

末期がんの痛みを取るためにモルヒネを使うと、命を縮めると信じられていた時代がありました。今でも時に、そう信じている医師がいることには信じられない思いです。除痛を目的とした医療用麻薬の使用が、寿命を縮めたりしないことはデータが示しているのです。✿癌による痛みは、癌がよくならない限り自然とよくなることはありません。治癒困難な癌の場合は、痛みが強くなるばかりです。それを我慢させようとしたり、我慢しようとしたりすることは悲惨さを求めているようなものです。✿痛みは、心を傷つけます。意欲も活力も奪ってしまいます。ただ痛みを我慢するだけの毎日ならば、「もう止めてくれ!」と誰もが叫びたくなるはずです。✿癌性疼痛にたいする鎮痛剤の使用目安がWHOから発表されてすでに数十年。いまだに不十分な鎮痛剤使用で、痛みに苦しむ患者さんを放置するなんて許せないことでしょう。✿私たちは、死ぬまで生きています。その生きている時間を、避けられる、あるいは除ける可能性のある痛みとともに過ごす必要なんてありません。もし癌性疼痛に苦しんでいたり、苦しんでいる人が身近にいたりするのなら、ぜひ医師に対し痛みを取り除く努力をするよう訴えてください。我慢する必要はありません。

尿管狭窄

2012-07-06 | 胃の診療

腹腔内は腹膜という薄い膜に覆われています。背中側の腹膜よりさらに背側にある臓器を後腹膜臓器といい、大動脈、下大静脈、膵臓、腎臓、尿管その他があります。胃癌がこの後腹膜方向へ進展していくことがあります(後腹膜浸潤)。❥その浸潤に伴ない胃癌の治療上特に問題となるのが、尿管狭窄です。癌の後腹膜への進展に伴ない尿管が締め付けられていくわけです。尿管は腎臓でつくられたおしっこを膀胱へ運ぶ管。それが詰まってくればおしっこを体の外へ出せなくなり急性腎不全となります。❥検査上腎機能低下が明らかになるのは、尿管がいよいよ狭くなってからですから、一旦悪化し始めると短期間のうちに一気に急性腎不全へとなってしまいます。そうなった場合、尿管の中に細い管(ステント)を入れてもらいます。それにより尿の通り道を確保するわけです。ステントを入れるのは膀胱鏡というカメラを膀胱に入れ、尿管の出口を確認して入れるので手術は必要ありません。ただ、見つかるのが遅れて、尿管が完全に締め付けられてしまいステントが入らない場合は、背中から直接腎臓に管を入れる(腎瘻)必要があり、これは手術が必要です。❥腎不全になれば命にもかかわりますし、抗がん剤の使用もできなくなります。進行癌で後腹膜浸潤が疑われる場合には、常に尿管狭窄の可能性を考えておく必要があります。

転移

2012-07-04 | 胃の診療
音楽グループにしろ会社にしろ、組織が大きくなれば勢いが出てくると同時に、まとまりを維持するのが難しくなる。胃癌も、大きくなるにつれ勢いが増すと同時に、一所に収まらずよそに分派を作るようになる。転移を起こすわけである。●転移を起こす際には、大元の組織(原発巣)を離れるわけだが、(イ)離れた後血液の流れに乗ってよその臓器へと陣地を広げていくのが血行性転移、(ロ)リンパ液の流れに乗ってリンパ節という関所を占拠していくのがリンパ節転移、(ハ)胃の壁の外に癌が顔を出し、そこから直接腹膜へと散っていくのが播種性転移である。●転移を起こすと、がん細胞を体から完全に排除し、根治に持ち込むのが困難になってくる。だからこそ癌が小さいうち、転移を起こしていないうち、早期のうちに見つけるのが得策。そのためにはやはり検診が必要。全く胃の内視鏡を受けたことが無い人は是非一度受けて欲しい。●「癌になったらなったときのこと」とのん気に言えるのは、まだ癌と診断されていないからですよ。なんの症状もない人に、すでに癌があるなんてことはちっとも珍しいことではありません。なんせ日本人の約半分は癌になるのですから。そして胃癌は日本人が患う癌の代表選手ですから。

胃癌と言われたら

2012-07-02 | 胃の診療
胃癌の治療方針は、病気の進行度によって大きく異なります。ですから、胃癌と言われたら、組織検査で実際にがん細胞を認めたことを確認した上で、どの程度の進行度で、どのような治療方法が選択できるのかを尋ねる必要があります。▼ 必ず聞く必要があるのは、以下の5項目です。1:胃の壁のどの深さまで胃癌が存在するのか(早期癌か進行癌か)。2:リンパ節転移はあるのか。3:血行性転移(肝臓、肺、その他への転移)は認められないのか。4:腹腔内へ散らばっていないのか。5:総合的に進行度はどれくらいで、どのような治療方法が選択できるのか。▼早期であるほどに体にかかる負担が少ない治療方法を選択できるでしょう。ごく早期であれば、内視鏡による治療が可能です。早期でもすこし胃の壁の深くまで癌が浸潤していれば、手術になりますが、少し控えめな手術が可能です。逆に転移があるような場合は手術を選択できずに、抗がん剤治療などが必要となってきます。▼手術となった場合、10年位前から腹腔鏡を用いて、小さな傷で行う手術を行うことがあります。どの程度の進行度まで腹腔鏡を利用するかは施設により多少方針が異なるので、その点も聞いておく必要があります。▼いずれにしろ、胃癌と言われたら、進行度(病期)がどれくらいなのかを、必ずお聞きになってください。

局所療法

2012-06-30 | 胃の診療
癌の治療で問題となるのは転移。発生した場所で大きくなった癌は、別の場所に分派を派遣するようになるのである。胃の近くのリンパ節くらいまでの転移なら、手術で一緒に取り除ける。しかし、肺や肝への転移は血液を通って癌細胞が流れ散ったことを表している。つまり癌がすでに局所には留まっていないということ。★癌治療の種類を局所療法と全身療法に分けて考えると、手術と放射線治療は局所療法、抗がん剤などの薬による治療は全身療法と言える。局所療法としての手術が癌の根治を狙えるのは、癌が局所にとどまっている間。だから離れた場所に胃癌が転移すれば、もうメスの及ばない状態になっている可能性が高い。★転移があって取り切れなくても、癌細胞を少しでも減らした方が良いだろうということで、数十年前は減量手術の名のもとに切除をすることもあった。しかし、それが延命につながらないとわかっている現在、無理筋と思える手術は行われない。遠隔転移があれば、第一選択は抗がん剤治療などである。

腹痛

2012-06-29 | 胃の診療

「癌だといわれても、痛みも何も症状はありませんが。」と言われる患者さんがしばしばおられる。でも多くの胃癌患者さんに痛みなどの症状はない。気がつかないうちに進行していく。■胃癌と診断された患者さんが腹痛を感じている場合は、①かなりの進行癌になっている、②胃潰瘍もできておりその痛みを感じている、③胆石症その他胃癌以外の疾患による痛みを感じている、などの場合と思われる。②③で早期に胃癌が発見されれば幸運である。知らぬ間に①になっていれば完治は難しい。■やはり症状がなくても、40歳を過ぎれば、胃癌検診として内視鏡検査を受けることをお勧めする。そしてピロリ菌のチェックも。■ピロリ菌に感染している人は、胃癌発症の危険性が高まるといわれている。ピロリ菌陽性と診断されれば、その除菌治療を受けるとともに、以後の胃癌検診も継続して受けたほうが良い。その場合の検診をうける間隔は、胃の状態によって医師が指示してくれるはず。

胃癌治療ガイドライン

2012-06-28 | 胃の診療
宝くじに当たる確立は極めて低いけど、当たったときに入る金額がとてつもない可能性があるから、買う人がいるのも頷ける。でも胃癌の治療を受けるのに、治る可能性が極めて低い上にとてつもなくいいことが待っているわけでもない治療方法に賭ける、などというのは頷けない。◆しっかりした臨床研究から、7割近くの人に効果があると分かっている治療方法を捨てて、他の治療方法との比較試験すらしていない効果の薄い治療方法を採るというのはどういう考えからなのだろうか。◆しかも怪しげとまでは言わないまでも、効果があることが検証されていない治療方法は保険適応ではないことが多い。その上ちょっとお高めのものも多い。するとすごい出費である。がん治療が高いといっても、保険で認められている治療方法なら、当然保険がきくし、癌にも効く可能性ありなのに。◆胃癌といわれたら、せめて「胃癌治療ガイドラインの解説」という本を書店に注文して読んで欲しい。この解説書は第2版までしか出ていないので、詳しく見れば少し時代遅れの部分はあるが、基本は押さえられる。慌ててネット検索をかけて、統一性の無い知識をかき集める前にぜひ。