春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ヴォーリズを訪ねて2011年7月

2010-04-27 08:18:00 | 日記
2011/07/23
ぽかぽか春庭@アート散歩>建物さんぽ(1)ヴォーリズを訪ねて

  6月20日、武蔵境駅前にある日本獣医生命科学大学のヴォーリズ館を見ました。
 ヴォーリズは、私にとっては「近江兄弟社のメンソレータム(現在の商品名はメンターム)」の人です。子どもの頃、擦り傷でも湿疹でもこのメンタムを塗り込められました。ほんとにこれが効いたのかどうかわかりませんが、ツーンとくるメンソールの香りで効いた気になって、擦り傷の痛みもおさまるのでした。むろん、子どもの頃は近江兄弟社を創立したのがヴォーリスというアメリカ人だということなどまったく知りませんでしたが。
 
 ウィリアム・メレル・ヴォーリズは1880年生まれ。キリスト教伝道者、建築家。一柳満喜子(幕末、最後の播磨小野藩主・一柳末徳の娘)と結婚後、一柳米来留と改名、帰化しました。1964年に84歳で死去。
 ヴォーリズは正規の建築教育を受けていませんが、1908(明治41)年12月、建築設計監督事務所を開き、アマチュア建築家として活動を始めました。その建築は、本拠地近江八幡のほか、日本各地に残っています。東京にあるヴォーリス作品は多くはありませんが、教会や学校関係の建物が多い。

 その中で、ヴォーリス作品と伝えられている日本獣医生命科学大学のヴォーリズ館を見学できました。まず、守衛さんに身分証明書を見せ、受付へ。ここで見学意図を聞かれて教務課へ回された。教務課で名刺を出し、もっともらしい見学意図を述べ、案内の係の人が来るのをしばし待つ。係の女性に案内されて、ヴォーリズ館へ。

 もっともらしい見学意図とは。
 「私は、留学生教育を担当しており、日本から外国へ留学した人、海外へ出て仕事をした人、また海外から日本へやってきて仕事をした人や留学生の事跡を、教え子の留学生や日本語教師志望の日本人学生に紹介しています。ヴォーリズについても紹介したいので、ヴォーリズの設計した建物を見学させていただきたい」
 「日本事情」という授業の中で国際交流史も扱ってきたのですが、ヴォーリズを直接授業で扱ったことはありませんでした。でも、これからはヴォーリズも「国際交流史」のトピックにできると思っての「見学意図」でした。

 めんどうな手続きでしたが、きちんと案内してもらってよかったです。というのは、ヴォーリズ建築写真を掲載しているウェブサイトのいくつかは、大学正面から写真をとって掲載しています。日本獣医生命科学大学の正面入り口にある本館は、旧麻布区役所の建物を移築したものです。ヴォーリス建築事務所が移転移築の指揮をとったということですが、ヴォーリスの作品ではなく、東京市営繕課の設計です。しかし、中に入って「めんどうな手続き」をおこたったために、目立つ本館を「ヴォーリズの作品」として、間違った情報のまま、写真UPしているのです。無論、本館を旧麻布区役所として紹介しているサイトもあります。
 本館は「ヴォーリズ作品ではない」と認識して写真UPしているサイトのひとつ。
http://blogs.yahoo.co.jp/julywind727/33212603.html

 ウェブサイトの論述や写真をそのまま信用すべきではない、きちんと責任を持って発行されている辞書辞典類、参考書を参照して必ず自分で確認しなさい、と日頃学生に言っています。実際、不確実なウェブ情報を見分ける目を持つには、自分自身の目でしっかりした情報を持っていることが必要です。
 旧麻布区役所の建物をヴォーリズ作品と思い込んでしまわなくてよかった。

 ヴォーリズ館は、現在「学生クラブ活動の部室」として使用されているという係員の説明でした。内部は老朽化が進んでいました。国際基督教大学の学生寮のいくつかはヴォーリス設計事務所の作品でしたが、老朽化のため現在は立て替えが進んでいます。日本獣医生命科学大学のヴォーリズ館も、このまま老朽化が進むと、取り壊しになってしまうのかもしれません。建物自体は、何度か改築があったのかもしれません。あまり「これがヴォーリズ!」という感じはしなかったですが、見学できてよかった。見学者がたまに訪問していれば、大学側も「これは、老朽化したといっても、簡単に取り壊ししたらいけない貴重な建物かも」という認識を持ってくれるかもしれません。

 入り口には「ヴォーリズ館」というプレートが掲示されています。その隣の建物が生協食堂だったので、昼ご飯を食べたあとでしたが、きんぴらごぼう、茄子の煮浸しなどの和食小鉢をいくつか選んで、食べました。出講先以外の他大学学生食堂で食べるのは、興味津々です。周りの学生を観察しながらの食事。獣医の卵たち、女子学生が多かったです。佐々木倫子の『動物のお医者さん』人気がまだ続いているのか。
 ヴォーリズ館の中の「クラブ活動室」は、学生の部室らしく雑然としていましたが、この館ですごした日々を胸に、立派な動物のお医者さんになってほしいと思います。

<つづく>
01:38 コメント(0) ページのトップへ
2011年07月24日


ぽかぽか春庭「ヴォーリズのチャペル」
2011/07/24
ぽかぽか春庭@アート散歩>建物さんぽ2011/06(2)ヴォーリズのチャペル

 7月18日、祝日なのに出講日。明け方に女子サッカー中継を見ての出勤でしたから、仕事を終えるとちょっとお疲れ気味。仕事帰りの寄り道も、手近な場所にしました。
 寄り道さんぽは、国際基督教大学(ICU)キャンパス。ときどきバスでこの大学の裏門を通りすぎるのですが、バスを途中下車して中に入ったことはありませんでした。

 大学というところ、近所に住んでいる人にとっては、よい散歩コースにもなる場所ですが、通りすがりの者にとっては、用もないのに入りづらい場所です。ICUキャンパスにも、そこら中に「大学に用のない者の立ち入りは、ただちに警察に通報します」という立て看板が立てられています。裏門から入って、キャンパスの林の中を歩くにも「私のごとき、とてもキリスト教信者には見えない怪しげな面構えの者が歩いていると、通報されちゃうかも」と、ちょっとどきどきです。

 ICUは、都内の大学のなかでも、学生の「在学満足度」がトップクラスの大学のひとつです。大学のキャンパス環境、授業内容、大学食堂などへの総合的な満足度を学生アンケートによってランク付けする調査で、例年「満足度の高い大学」。授業内容など内部のことはわかりませんが、外見からいって、キャンパス環境という面での満足度トップは頷けます。都内の公園と比較して、広さから見ても有数の「大学演習林」がキャンパスに接続して広がっています。

 演習林は立ち入り禁止ですが、演習林のほかにも広い林があり、林の中に職員住宅が点在し、キャンパス内に学生寮が何棟も立っています。大学は都心にあっても、寮は遠い郊外にあるというところも多いのに比べて、この環境でキャンパス内の寮なら、進学させる親御さんには安心な環境に思えるでしょう。
 真新しい寮の名前は、オークハウスOak house樫寮、ギンコウハウスGinkgo house銀杏寮、ゼルカヴァハウスZelkova house「樫寮」と名付けられていました。オークは知っていたけれど、銀杏と樫を英語でなんと言うのか、始めて知りました。

 裏門から林を抜けて、食堂が目に入ったので、ランチタイムにしました。学食もとてもきれいで、18日は祝日ですから、一般学生はおらず、食事をしていたのは、寮生活をしている留学生が多かったです。白身魚フリッターセット(スープ、ごはん、サラダつき)、茄子のフライ、煮物小鉢の3品とって780円でした。
 
 キャンパス案内地図を持って来なかったので、お目当てのシーベリー礼拝堂を探して、広いキャンパスをほぼ一周しました。付属高校のほうまで行ってぐるりと周り、結局元の大学食堂へ戻りました。シーベリー礼拝堂が見あたらなかった理由は、シートがかぶせられていて、見えなかったからです。改装中でした。

 建物紹介のブログの中には、ICUディッフェンドルファー記念館を「ヴォーリズ設計」として写真を出し、「ヴォーリズらしさが感じられない」という評を載せたサイトもあります。大学の施設案内に書いてあるとおり、ディッフェンドルファー記念館西棟は、2000年に完成したヴォーリズ建築事務所設計、大成建設施工の施設です。W.Mヴォーリズは1964年に亡くなっているのですから、2000年完成の建物をヴォーリズ自身が設計できるはずありません。ヴォーリズ設計事務所の後継者たちは、ヴォーリズ精神を受け継いではいるでしょうが、2000年の建物が1880年生まれのヴォーリズ自身の設計とは異なった趣になっているのは当然でしょう。

 ヴォーリズが生きている頃に完成したのは、大学創立貢献者の名を冠したシーベリー礼拝堂です。1959年完成(設計=ヴォーリズ建築事務所/施工=大成建設)。こちらの礼拝堂も、ヴォーリズ事務所設計といっても、ヴォーリズが直接設計に関わったのかどうかは不明です。

 チャペル全体にシートが掛けられていて見ることができなかったので、またの日に再訪することにしました。私はよくよく、ついていないらしい。前に、明治学院大学礼拝堂(東京都港区、1916年ヴォーリズ設計 )を見に行ったときも、チャペルは改装中だったのです。このときは、ヘボン式ローマ字のヘボンさんを訪ねて行ったのであって、ヴォーリズが見られなくてもそうがっかりはしなかったのですが。
 次回は、明治学院チャペル。


<つづく>
07:52 コメント(0) ページのトップへ
2011年07月26日


ぽかぽか春庭「明治学院礼拝堂(白金チャペル)」
2011/07/26
ぽかぽか春庭@アート散歩>建物さんぽ(3)明治学院礼拝堂(白金チャペル)

 (承前)というわけで、20日水曜日、台風の雨がときおり激しく降る中、に明治学院大学(明学)を再訪しました。夫の姉の母校です。2000年に50歳で亡くなってしまった義姉も、若い日にはこの礼拝堂を見ながら通学していたことでしょう。
 「英語を学ぶことに意欲を持つおっとりした娘」だったであろう義姉に、ぴったりの学校だったろうと思います。同じ頃に学生時代をおくったはずなのに、学園紛争真っ盛りの中、ろくすっぽ通学しなかった私と比べると、義姉のキャンパスライフはかなり違った色合いだったのではないかと想像します。

 雨が降ったり止んだりの中、目黒駅から庭園美術館へ。「ロシア皇帝の愛したガラス展」を見たあと、白金台の八方園の脇の道を桜田通り方面へ向かって降りて行きました。
 早稲田の大隈講堂とか東大の安田講堂など、大学を紹介するときに一目でその大学だとわかる「ランドマーク」になる建物がそれぞれの大学にありますが、明学を象徴する建物は、正門を入ってすぐのところにある、この「明治学院礼拝堂(白金チャペル)」です。

 チャペルの2階からは、賛美歌のオルガン伴奏を練習する音が聞こえてきました。ドアをそっと開けてみると、「部外者立ち入り禁止」の札と、階段にはロープ。日曜日のミサのときは、内部には入れても写真を撮ったりはできないでしょうし、オープンキャンパスの日は、礼拝堂が見学できるかどうかわからない。何度かの改築改装を経て、現在は卒業生の結婚式などにも使われているそうです。
 前回来たときは、宣教師館だったインブリー館(現在は同窓会事務局が使用している)の内部を見ることができたのですが、今回は「閉鎖中」でした。

 白金チャペルは、1915年(大正4)11月30日に定礎。翌1916年(大正5)3月落成。延べ床面積は589平方メートル。建築様式は英国式、設計はヴォーリス建築設計事務所。百年後の「オープンキャンパス」で、見学者にとって「大学の顔」として印象の残る、美しい建物です。「ヴォーリズさん、いい仕事残しましたね」ってな感じ。

ヴォーリズの建物紹介サイト
http://gipsymania.exblog.jp/4574496/

 よそ様の大学に行ったとき、必ずすること。学生食堂で一食。
 明学は、1,2年生は横浜キャンパスで学び、3,4年生だけ白金キャンパスで学べる方式だからかもしれないけれど、学内、もう試験もあらかた終了したのか、学生はそんなに多くない。明学の学食は夏休み仕様に入ったらしく、メニューが少ない感じ。寮がキャンパス内にあって、学食で食べる学生が大勢いるICU学食のメニュー充実していたのに比べると、選択肢に迷うことなく、山菜おろし蕎麦350円と小鉢の鮹オクラ和え物100円をチョイス。「学食比較研究」は、私の「B級食べ歩き」のテーマのひとつです。

 大学大学院教育を合計で17年間受けてきて、卒業した三つの大学、私立2校と国立1校に加え、講師として出講してきた大学は、私立4校、国立3校。1970年から2011年まで40年間に通ったキャンパスは、合計10校になります。通学通勤したキャンパスの多さだけを言うなら、「最もたくさんのキャンパスの中を歩いた女」になるんじゃないかしら。キャンパス評論家、なんちゃって。

 そのキャンパス比較論でいうなら、今のところ、国際基督教大学ICUが「フィトンチッド散歩には一番」という結論。「広いキャンパスを3000人ほどの少人数学生の学費で維持するために、施設維持費がめちゃくちゃ高い」と言われているので、学費払っている学生さんの勉学のじゃまにならぬよう、散歩いたしませう。

 建築散歩に適切な大学は、東大本郷キャンパス。早稲田大学、慶応大学など。都内の大学建物探訪のためには、以下のサイトが参考になります。

http://maskweb.jp/c_education.html
http://maskweb.jp/c_education-u.html
http://maskweb.jp/c_education-s.html
http://maskweb.jp/c_education-c.html
http://maskweb.jp/c_education-c2.html
http://maskweb.jp/c_education-h.html

 ICUの中を歩いたとき「学外者は警察に通報します」なんていう立て看板を見て、「用もないのに歩いていると通報されちゃうかも」と心配しましたが、ほんとうは、そんな心配しないで、学外者も堂々とキャンパス散歩を楽しんだらいいんです。国立大学はもちろん、私立大学にも、我々の税金から多額の補助金が使われているのです。
 犬の散歩お断り、というのはわかりますし、授業中の教室のわきを声高におしゃべりしながら歩いたりするのは論外として、学生のじゃまにならないように歩くのなら、「私はこの大学のために税金を使わせてやっている」と、大きな顔で歩き、散歩を楽しみましょう。

<おわり>
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 春庭夏の読書メモ | トップ | 2010/04/29 »

コメントを投稿