功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『片腕拳王2005』

2011-07-29 22:15:53 | カンフー映画:珍作
「片腕拳王2005」
原題:獨臂拳王
英題:Fight To Win/One Arm Hero
製作:2005年

●武術学校に籍を置くバクスター・ハンビーは、生まれつき片腕が無いというハンデを抱えながらも、黄家達(カーター・ウォン)の指導を受けて達人に成長していた。ところがある日、ハンビーは母親から「貴方のお父さんはもう亡くなっているけど、実は腕に刺青を入れた男に殺されたのよ」と、衝撃的な事実を告げられる。彼は必ずや父の仇を討つことを心に誓うのだが…。
その頃、国宝強奪を企むマフィアの一団が、ヨーロッパから仲間の王文成(サモハン作品などに携わったベテラン)を呼び寄せていた。王文成はハンビーと同門の兄弟子で、その実力も並ではない。彼はマフィアの命令で国宝を奪うと、海外から格闘家のモーリス・トラビス(K-1にも出場した本物のプロ選手)を召集。この男を利用し、国宝を国外に持ち出そうと企んだのだ。
 モーリス本人は格闘大会に参加するため来訪したのだが、その大会にはハンビーも出場していた。王文成は国宝流出計画と平行してハンビーたちの元へと接近。そこで彼は、ハンビーがかつて殺した男の息子であった事を知り、真実を知る彼の母親を暗殺してしまう。自分を支えてくれた母の死に嘆き悲しむハンビー…。しかし、彼はその苦難を乗り越えて決勝まで進み、見事に優勝を果たすのだった。
大会が終り、勝利を祝うささやかなパーティが行われた。ところが、そこでハンビーは王文成の腕に母親から聞かされた刺青を発見する。「お前が父さんを殺したんだな!」「そうだ…そして母親を殺したのも俺さ!」 かくして、ハンビーと王文成の最終対決が始まった!

 今月は黄家達のフィルモグラフィーを大まかに辿ってきましたが、ラストに紹介するのは日本製の作品です。正確には日本と香港の合作映画ですが、舞台が中国なので香港っぽさはあまり感じられない作りとなっています。製作には中国電影合作製片公司も関わっているので、どちらかというと日本・中国・香港合作の映画といった方がいいかもしれません。
なお、本作は同年に製作された『武生情未了』という作品と出演者が被っており、何らかの関係があったものと思われます。『武生情未了』はフィルマークを率いた黎幸麟(ジョセフ・ライ)が製作した作品で、主演はあの石天龍。本作に黎幸麟の名はありませんが、プロデューサーの中にフィルマークの主要スタッフだった黎慶麟(ジョージ・ライ)の名前が確認できました。まさかこんなところで彼らと出会うとは!(爆

 さて、本作は仇討ち&格闘大会だけのシンプルな物語ですが、それ故にボリューム不足な内容になっています。その代わり殺陣のレベルは高く、腕の無い方でもビシバシと攻撃を叩き込むハンビーには圧倒されてしまいました。それに負けじと親友役の松田優も奮闘しています。彼はVシネで活躍する肉体派スターですが、本作で見せる動きは明らかに他作品と違います!見せ場は最初と最後だけですが、ファンならここだけでも見る価値はあると思います。
そして黄家達も激しい立ち回りを演じており、ほとんどスタント無しで全てのアクションを演じています。終盤では王建軍(李連杰と同じ武術学院出身の猛者)と夢の対決が実現し、素早い連続攻撃で迫る相手に対し、ドッシリと腰の入った拳打で立ち向かっていました。…と、このように功夫アクションは見どころが沢山あるのですが、ストーリーがそれを相殺しています。せめてサブエピソードなどがもっと充実していればなぁ…(涙

 黄家達……彼が歩んだ道のりは起伏に富み、生半可な行程ではなかったことが察せられます。地域の枠を越え、数え切れないプロダクションを渡り歩いた背景には、我々の想像もつかないような経緯が秘められていた事でしょう。
しかし、道を進むたびに彼は様々な"顔"を手にしてきました。大衆から親しまれた功夫スターとしての顔、ワールドワイドに活躍する国際派俳優としての顔、そして大勢の門下生を有する武術家としての顔…。30余年に渡る行脚の末、黄家達は単なる功夫職人に留まらない、幾つもの"顔"を持つスターとなったのです。
黄家達特集は今回で終了となりますが、黄家達自身の歩みはまだまだ止まりません。恐らく、彼はこれからも映画と関わりを持ち続け、また新たな"顔"を私たちに見せてくれるはずです。果たしてそれはどのような物なのか?膨らむ期待と希望を胸に仕舞いつつ、これにて本項の締めとしたいと思います。(特集、完)

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