功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『アレクサンダー・ルーのザ・ニンジャ・シティ』

2009-03-12 21:58:18 | カンフー映画:珍作
「アレクサンダー・ルーのザ・ニンジャ・シティ」
原題:猛龍殺星("殺"は旧字)/忍者在美国
英題:Ninja In The U.S.A.
製作:1985年(87年?)

▼羅鋭(アレクサンダー・ルー)のニンジャ映画は2つの種類に大別できる。
ひとつは『ニンジャ・ハンター』のように功夫映画へニンジャをプラスアルファした作品、もうひとつは『スーパー・ニンジャ』のように現代を舞台にした現代動作片だ。前者は香港での公開も視野に入れた内容であり、後者は海外市場向けに国際的なムードを取り入れ、マンネリにならないように差別化を図っている。本作は後者に属する作品で、アメリカを舞台に外人のキャストが多く参加しており、作品としては『スーパー・ニンジャ』に近い。
だがこの2つは方向性こそ違えど、根っこの部分は全く同じだ。アクションはいつもの過剰な早回しファイトだし、出演者も羅鋭作品で見た連中ばかり。作品自体のテイストも同様で、血とおっぱいと暴力の乱れ打ちという点は一貫されている。監督は『ニンジャ・ハンター』に続いて呉國仁が担当しているが、何故か今回の英名はデニーズ・ウー名義になっている(HKMDBによるとジェームズ・ウーという英名だったはずだが…?)。

■ニューヨークで続発する黒社会の抗争事件…その影には巨大麻薬組織を率いるジョージ・ニコラス・アルバーゴ(腹心にユージン・トーマスと唐龍)と、彼の指揮するニンジャ軍団が存在した。
捜査官の常山はこの事件を追うが、彼にとってジョージはベトナム戦争時に自分たちの命を救ってくれた恩人でもある。ジョージは事件の容疑者であったが、常山は過去の恩義から彼を疑う事は出来なかった。一方、常山と共にジョージに助けられた過去を持つ羅鋭は、李芸敏と崔旻奎(!)の元で静かに暮らしていた。記者の妻と結婚して幸せの絶頂にあった羅鋭。だが、ふとした偶然で手にしたフィルムを見たことで、羅鋭はジョージが麻薬組織の首領であることを知ってしまう。
フィルムの奪還を目論む組織は崔旻奎を叩きのめして羅鋭の妻を誘拐。羅鋭はジョージの組織に全面戦争を挑むが、立場と意見の相違から友人である羅鋭と常山は対立してしまう。その後、和解した2人はジョージと組織を一網打尽にすべく、襲い来る敵と死闘を繰り広げていった。
だが、組織から妻が乱暴される様を記録したビデオが届けられ、羅鋭は単身組織へ直接殴りこみする決意を固める。羅鋭はかつて江生(すっかり老人役がお似合いになってます・涙)から受けた教えを思い出し、ニンジャへ姿を変えるとジョージのお抱えニンジャ軍団を殲滅。ユージン・トーマスら幹部も始末し、いよいよ因縁のジョージとの対決を向かえる!

▲前置きから話は続くが、羅鋭のニンジャ作品はいずれも同じタッチで作られており、ロケ地もキャストの顔ぶれも功夫アクションも、ほぼ全部の点において大差は無い。また、本作では李芸敏と崔旻奎という韓国功夫片おなじみの顔がゲスト出演している点で目を惹かれるが、アクションをひとつも披露しないので何の意味も成していない(江生は『ニンジャ・キッズ』でも共演済みだし…)。
善役として羅鋭をサポートする常山、意外とキレのいい技を見せるジョージなど、見られる部分もあるにはある。が、それらがワンパターンな作品構成の中に埋没してしまっているのは頂けない。マンネリ回避の為に様々な策を弄してはいるものの、作品として新しいものは何一つ生み出せなかった…これが羅鋭のニンジャ作品に共通する欠点の全てである。
羅鋭はニンジャ映画以降、次第にサブキャストや武術指導に徹するようになるが、果たして彼にとってニンジャ映画とはどのような世界であったのだろうか。