功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

坂本浩一×特撮(1)『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』

2014-06-04 23:03:57 | 日本映画とVシネマ
「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」
製作:2009年

▼成龍(ジャッキー・チェン)の華麗なアクションに魅せられ、倉田保昭が創立した倉田アクションクラブに入門。のちに渡米し、『アンダーカバー』系列や『バウンティ・ハンター/死の報酬』でアクション指導を担当した日本人が存在します。
その名は坂本浩一…ハリウッドと日本をまたにかけるアクション監督で、ワイヤーワークを得意とするアルファ・スタントを設立した中心人物の1人でもあります。今月はそんな坂本監督が手掛けた、数々の特撮ヒーロー作品に触れていきたいと思います。
 氏は『パワーレンジャー』シリーズでアクション監督に着任し、やがてプロデューサーや監督として作品に携わっていきました。監督としては『Devon's Ghost: Legend of the Bloody Boy』などのマーシャルアーツ映画も撮っていますが、そんな彼に日本で初めてメガホンを握る機会が巡ってきます。
『パワーレンジャー』シリーズの展開がひと段落した2009年、坂本監督は40年以上の歴史を誇る円谷プロの代名詞・ウルトラマンの新作映画に参加。同志の野口彰宏をアクション指導に招き、これまでにはなかった派手なアクションでスクリーンを彩りました。
内容としては、ウルトラ兄弟を中心に展開していた『ウルトラマンメビウス』の世界観に、未来の地球人が怪獣を操って戦う『大怪獣バトル』をドッキングしています。オープニングに各作品の説明があるので、未見の人でも安心して作品を楽しめるはずです。

■かつてウルトラの星を襲った巨悪・ウルトラマンベリアルが復活。ウルトラの父はウルトラ戦士たちと共に人工太陽・プラズマスパークを守ろうと奮戦する。が、プラズマスパークの動力源であるエネルギーコアを強奪され、星ごと氷漬けにされてしまった。
なんとか生き残ったウルトラマンメビウスは、地球人のレイオニクス(怪獣を操って戦う者)・南翔太と協力。残されたプラズマスパークの光でパワーを補充し、初代ウルトラマンやウルトラセブンとともに怪獣墓場へ向かった。
 そこではベリアルがギガバトルナイザーという道具を使い、100体もの怪獣を使役していた。ウルトラ戦士たちは応戦するが怪獣軍団とベリアルのパワーは強大であり、おまけに南がベリアルにそそのかされて悪に魅入られてしまう。そしてセブンが…。
そんな絶体絶命の状況の中、ひとりのウルトラ戦士が戦場に降り立った。彼こそが、ウルトラセブンの息子にして新世代のヒーロー・ウルトラマンゼロだった!

▲…それにしても、今まで色んな作品のあらすじを書いてきましたが、ここまで実際の役者の名前が出てこない文章を書いたのは初めてかも知れませんね(笑
背景は9割がCG、登場人物の大半が人間じゃない等、本作は従来の地球を舞台にしたウルトラ作品とは雰囲気が違います。そのため、巨大ヒーローとしての存在感や神秘性が欠如していますが、戦闘シーンをテンポよく繋いでいるのであまり気にはなりません。
 アクションに関してもレベルが高く、とりわけ前半のベリアルによるウルトラの星襲撃シーンは出色の出来です。ややウルトラ戦士の噛ませ犬化が顕著ですが、これでもかと出てくるウルトラ戦士・怪獣の姿は見ているだけでも楽しめました。
しかし、純粋に格闘アクションを堪能したいというのなら、本作は不適当だと言えます。確かに格闘描写は見事ですが、戦っているのは宇宙人や怪獣ばかり。数少ない人間による格闘シーンでも、相手がみんな宇宙人なのでマスカレイド(仮面舞踏)のような雰囲気が漂っています。
 同じマスカレイドでも、人間が変身する等身大のヒーローならまだ感情移入の余地はありますが、本作で戦うのはすべて人外の存在です。個人的にはどうしてもこの一点が気になってしまい、いまいちアクションに乗り切れなかったですね(殺陣そのものは良質なんですが…う~ん)。
この他にも釈然としない点は幾つかあるものの、子供向け・ウルトラ作品ファン向けのお祭り映画としては間違いなく傑作の部類に入る本作。ちなみに坂本監督はこの翌年、『パワーレンジャー』を生み出した東映で大仕事をすることになるのですが……続きは次回にて!