功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『天使行動2』

2010-10-22 00:00:00 | 女ドラゴン映画
「天使行動2」
原題:天使行動之二火鳳狂龍
英題:Angels 2/Iron Angels 2
製作:1988年

▼ド派手な銃撃戦と功夫アクションに彩られた快作『天使行動』。本作はその続編にあたり、降板した西城秀樹に代わって方中信(アレックス・フォン)が主役に起用されています。
しかし、前作の方中信は敵に捕まったりラストに出てこなかったりと扱いが酷く、主役としてのインパクトに欠けています。そこで製作サイドは、思い切って物語のメインを李賽鳳(ムーン・リー)から方中信へと変更。彼にまつわる熱いドラマを用意することで、シリーズの新たな顔役・方中信を印象付けようとしたのです。
さらには前作を越えるアクションシーンを構築すべく、ジャッキー映画に参加する前の唐季禮(スタンリー・トン)を武術指導に抜擢。まさに気合十分で製作された本作ですが、どうも何か忘れているような気が…(後述)

■李賽鳳・方中信・呂少玲らエンジェルズ一行は、休暇を利用してマレーシアを訪れていた。そこで彼女らは偶然にも、方中信の旧友で現在は大富豪の陳庭威、同じく旧友で現在はCIA捜査官の蕭玉龍と出会った。
親友たちと再会し、和やかな時間を送る方中信だが、その平穏はあっさり破られる事となる。実は陳庭威は反政府ゲリラの首領で、現政権を打破して理想国家の建国を目論んでいたのだ。ゲリラの調査をしていた蕭玉龍は拘束され、なんとか親友を説得しようと試みるのだが…。
 その頃、失踪した蕭玉龍に代わって調査を依頼されたエンジェルズは、陳庭威の正体を知って愕然としていた。彼に思いを寄せていた呂少玲は、潔白を証明しようとゲリラのアジトに単独で潜入する。しかし、そこで彼女を待ち受けていたのは、己が理想のために蕭玉龍を殺めた陳庭威の姿であった。
呂少玲がゲリラに捕まり、政府の掃討作戦が目前に迫る中、エンジェルズは新たな仲間・カリーナと合流。大勢の敵兵が待つ密林地帯に降下するも、皮肉な結末が彼女たちを待ち受けていた…。

▲前作では功夫アクションに重点を置いていた本シリーズですが、今回はコマンドアクションやスタントに力が入れられています。
序盤はいきなり銃撃戦で幕を開け、マレーシアの町中や密林を駆け巡るカーチェイスを挟みつつ、クライマックスはジャングルでの大銃撃戦! これがまた前作に負けず劣らずのムチャクチャさで、爆発した小屋から兵士が燃えながら吹っ飛ばされたり、高所からの落下スタントなどが次々と飛び出していました。
当然、主役の3人は今回も大規模なスタントを演じていて、とりわけ李賽鳳が爆破された小屋から飛び降りる所と、その直前に呂少玲が滑車で脱出する場面が最高にデンジャラスです。
もちろん格闘戦もしっかり用意されており、ラストの李賽鳳VS陳文清(唐季禮の助手)と李賽鳳VS元徳は珠玉の好勝負でした。功夫シーンもスタントもテンポが良く、本作を見るとジャッキーがなぜ唐季禮を手元に置いたのかがよく解ります。

 また、ストーリーも善悪の攻防戦だった前作から進化し、3人の男を中心とした男泣かせのドラマが繰り広げられています。
友を信じて殺された蕭玉龍、理想のために暴走した陳庭威、友を止めようとする方中信…このへんの描写はよく出来ていて、なんとなく『刺馬』の主人公たちを連想させるものがあります。この3人に呂少玲の恋路も絡み、物語は衝撃的な結末を迎えますが…はて、誰か忘れているような…。
 そう、実は本作のスタッフはすっかり李賽鳳のことを忘れてしまい、完全にストーリーから弾き出してしまっているのです(爆)。作品の本筋は3人の男たちがメインだし、恋愛パートは呂少玲が担当。印象的なラストにおいても李賽鳳は居合わせてすらいません。
最も活躍しているはずのキャラクターが、最もドラマに絡んでこないという異常事態…果たして、製作中に誰か李賽鳳のことに気付かなかったのでしょうか?(汗

と、いうわけでストーリー部分に疑問符を残している本作ですが、アクションに関しては文句なしの出来であることだけは間違いありません。新たな仲間とスタッフを加え、シリーズはいよいよ最終章に向けて動き出しますが、それについては次回にて。