功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ドラゴンアームズ/危険的刑事』

2010-10-04 22:11:16 | カンフー映画:駄作
「ドラゴンアームズ/危険的刑事」
原題:火爆行動/危險的警事
英題:Avenging Trio/Dragon Arms
製作:1989年

●う~ん…何なんだろうこの作品は?本作は日本でもリリースされた動作片で、主演は劉家輝(リュウ・チャーフィ)となっているが、色々と謎の多い映画である。
まず日本版ビデオのパッケージからして突っ込みどころ満載で、劉家輝の紹介で「『少林寺への道』でトップスターの地位を築いた云々~」と記されているが、『少林寺~』は黄家達の主演作である。また、監督の表記が「ルーチャン・クー・(原文ママ)」になっているなど、失笑モノの誤記がかなり目立つのだ(笑)。まぁこのへんはご愛敬の範疇なのだが、問題はここからだ。
 本作は台湾の名匠・郭南宏(ジョセフ・クオ)がプロデュースし、製作会社も宏華公司だとされているが、作中の表記やデータサイトでは出品人も製作会社もまったく違っている。おまけに正式な原題はビデオ版の『危險的警事』ではなく『火爆行動』が正解らしい。監督もビデオ版だと魯俊谷になっているが、こちらも本当は陳棘男(陳[車専]男?)なる人だそうで……もう何が何だか解らなくなってきたぞ??
詳しい事は私も解らないが、恐らく本来は別の会社が作った作品を郭南宏の宏華公司が改題し、表記をいじくったのではないだろうか?郭南宏は自身の作品に追加撮影などをよく行い、たびたび改題されるケースも多いと聞く。本作もそういう流れで宏華公司名義となり、そのバージョンが日本でパッケージ化された…ということなのかもしれない。

 色々と複雑な裏事情を孕んでいそうな本作だが、その中身も無駄に複雑なものだった。物語は英題にもあるとおり、かつて黒社会の曹達華(チョウ・ダッワー)によって父親を殺された3人の若者(劉少君・周秀蘭ら)が、復讐の為に闘う姿を描いたものである。これに刑事の劉家輝と李麗麗(リリー・リー)、曹達華と対立している梁家仁(レオン・カーヤン)も絡んでくるのだが、ゴチャゴチャしていて非常に解りづらいのだ。
しかも、実際の主人公は劉家輝ではなく3人の若者たちである。劉家輝は前半で主役級の活躍をするものの、中盤以降は3人組と交代。彼らが偽札を巡るトラブルに絡む展開となるが、仇である曹達華はあっさり警察に捕まってしまう。最後は梁家仁VS警察VS3人組(周秀蘭は警察側の人間なので正確には2人)の銃撃戦となり、梁家仁は逮捕。劉少君らも連行されるが「曹達華の逮捕に貢献したので賞金が出るぞ!」と喜んで劇終となる…って、仇討ちはいいのかよ!?
 一方、アクション描写に関しては特に悪くないのだが、どちらかというと出来は並程度。劉家輝や李麗麗の貴重な現代アクションは堪能できるけど、どうしても迫力不足というか決め手に欠けている感があり、凡庸な印象しか抱けない。劉家輝VS梁家仁の対戦も、殺陣次第ならもっとスゴいものが出来ただろうし、主役の3人組も動けるのだからラストバトルに参加させておけばよかったんだけど…。
結局、一番活躍しなければいけない3人が放置され、劉家輝が美味しい所を全て独占してしまった本作。3人組と劉家輝のどちらをメインにしたいのか、銃撃戦と功夫のどちらをメインにしたいのか、偽札事件と抗争事件のどちらをメインにしたいのか…あらゆる場面で優柔不断な印象を受けるが、もしかして劉家輝のスケジュールが調整できなくてこうなっちゃったのか?