指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『雑居家族』

2018年11月11日 | 映画

女性作家の轟夕起子の家に起こる様々な日常的な事件を描く、庶民映画。

夫は織田政男で、本当は詩人なのだが、サラリーマンで一家を支えている。轟は、流行作家で、家で小説を書くのだが、故郷の小豆島から親戚の娘左幸子がいきなり出て来て、混乱を起こす。

轟は、子を産めない体で、自分の子でない男女を引き取り育てている。

            

轟の姉の元夫の伊藤雄之助も傑作な男で、元は二枚目だったらしいが、戦争で頭をやられたのか、稼ぎが全くなく、妻の飯田兆子らに馬鹿にされている一文無しで、轟の家に来ては誰にでも小銭を借りる始末。

左は、実は妊娠していて、その無軌道ぶりには轟も呆れるが、人の良い、轟も織田も結局は左を許し、皆元気に生きていく。

その悲喜劇は、ほとんど落語的で、戦前から経済の高度成長時代までの庶民世界は、江戸時代とほとんど変わりのないものであったことがよくわかる。

頬の手術以前の宍戸錠が、これまた親戚の子で居候する大学生に扮していて笑える。

木村威夫の美術は、世田谷の梅が丘の丘陵を利用して本物の家を建てている。日活は本当に金があったのだなと思う。

国立映画アーカイブ



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